ケルベロスの基地

三本脚で立つ~思考の経路

BABYMETAL探究(カワイイ(kawaii)考2)

2015-05-10 22:32:42 | babymetal
ついに、2015年のワールドツアーがはじまった。
メキシコ公演も、詰めかけたファンを魅了し、ヘヴィメタルの激しさ・楽しさを満喫させ、笑顔で帰途につかせるものになったようだ。
(そのことにはもう誰も驚かないはずだ。彼女たちの「実力」からして当然の結果だから。でも、これって、僕たちは慣れっこになってしまっているけれど、もの凄いことですよね。)

それに先立ち、「Road of Resistance」の公式MVが公開されたが、この曲に対しては、昨年のO2 Academy Brixtonでのお披露目の時から、「かわいい成分が足りない」といった不満も、ちょくちょく目にした。(対になるコメントが、「あわあわ」早よ公式化を!、だ)。
そう言いたくなる気持ちもわからなくもないのだが、BABYMETALにおける「カワイイ(Kawaii)」とは、「RoR」にはそれが足りない、と言われるようなものではないのではないか

つまり、例えば「ドキドキモーニング」のMVに露わなような、<ヘヴィメタルに合わせてダンスするいたいけな幼女達>という質の「かわいい」からは、いまのBABYMETALの「カワイイ」は明らかに変質している。
僕はそれを、「カワイイ」の「進化」あるいは「深化」(学術的な意味でのレボリューション=突然変異&自然淘汰ではなく、一般的な意味でのレベルアップ)だと捉える。
それは、彼女たちが歌で舞踊でヘヴィメタルを「演」奏しているのだ、という、このブログでも執拗にこだわる考え方からして、彼女たちにおける「カワイイ」のヘヴィメタルとしての説得力(「演」奏としての観客に与える効果)は、どう見ても、格段に向上している、としかいえないからだ。

つまり、(これも繰り返しになるが)、「重音部」時代にはあった(幼女的な)「かわいい」につきまとっていた「まがいもの」の感じ(あくまでも、現在と比較したときの僕の印象です)は、今のBABYMETALにはみじんも感じられない。
「RoR」のMVには、風格さえ感じさせる、本物(ただし、きわめて異形の本物)のパフォーマンスが繰り広げられている。
「RoR」の公式MVを観てのほとんどの人の率直な感想は、「カッコいい」だろう。
それを、BABYMETALはかつての「カワイイ」から「カッコいい」に変わった(変わってしまった)のではなく、またひとつ新たな「カワイイ」の次元・位相が増えたのだ、と僕は感じている。

あえて、図式的に「かわいい」(非BABYMETAL)と「カワイイ」(BABYMETAL)とを分けるならば、次のようになるはずだ。

a「かわいい」→「カッコいい」「凶暴」等と対置されるような幼なさ・プリティさ。
(ドキドキモーニングのころは、かわいかったのに…。RoRには、かわいさが足りない…)

b「カワイイ」→「カッコいい」「凶暴」をも含む、激しく美しいチャーミングさ。

b「カワイイ」はa「かわいい」をも含みながら、それを大きく超えた概念だ。

そんな都合のよい「カワイイ」などあるのか、と言えば、BABYMETALこそ、それを体現している唯一無二の存在だ、ということになる。

日本語のひらがな表記とカタカナ表記の文字面の印象の差は、BABYMETALにおけるKawaiiが、「かわいい」ではなく「カワイイ」なのだ、ということを象徴的に表現しているように僕は感じる。

「かわいいは正義」ではない。
「メタルは正義、カワイイも正義」なのだ。
僕たちは、BABYMETALによって、こんな「カワイイ」(含:カッコいい、凶暴、激しい、美しい)があったのか!という認識の革新を味わってもいるのだ。


個体発生は系統発生を繰り返す、という言い方があるが、それを借りるなら、BABYMETALというユニット個体の、デビュー以来5年の「カワイイ」の「進化」は、またBABYMETALが体現する「カワイイ」METALというジャンル(サブジャンル)の「進化」「深化」でもある。
(まあ、今のところこのジャンル(サブジャンル)にはBABYMETALしかいないのだから、ほとんど同義反復なのだが。)

デビュー時の「かわいい」が全くなくなった訳ではない。それを含みつつ、BABYMETALの「カワイイ」は、より多様に、より激しく、より美しく、よりヘヴィに、よりメタルに(も)なりつつある、のだ。
(もちろん、それを、初期の「かわいい」を失った、アイドルとしての堕落だ、と感じる人もいるかもしれないが)。

そういう意味で、公式MVの「RoR」は超孥級の新しい「カワイイ」である。いまのBABYMETALのみが実現できる、唯一無二の「カワイイ(kawaii)」だ。
(それでいて、メキシコ公演での、「RoR」の「演」奏後の「シーユ―!」ならぬ「アミーゴ!」は、「かわいい」を求めるファンをもニンマリさせるものだったろう)。


BABYMETALは、「カワイイ」においても、道なき道を突き進んでいる、のだ

BABYMETALの「カワイイ(kawaii)」とは、かくも、凄絶にレベルアップしてゆくものである。
すでに成長が止まってしまった僕たちおっさん達とは異なり、まるで人間の新生児が誕生後とんでもない速度で日々成長するように、BABYMETALは信じられない速度でレベルアップする。
「BABY」という名にはそうした凄みがあることを、彼女たちのパフォーマンスを見ていると痛感する。

だから、「カワイイ」という言葉の響きの甘さに目をくらまされてはいけないのだ。

「カワイイ」とは、すでにカワイイを失った僕たちおっさんには持ち得ない、凄み・高みを持ったものなのである。
それを、歌で、舞踊で、「演」奏して見せることで、BABYMETALのパフォーマンスは、凶暴な「カワイイ」という唯一無二の極上のヘヴィメタルたりえているのである。




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