静かな劇場 

人が生きる意味を問う。コアな客層に向けた人生劇場。

いちご同盟

2011-07-21 23:14:32 | Weblog
ちょっと気を引いた小説です。

主人公の良一は中学3年生。
ピアノ教師の母の影響もあり、ピアノを嗜むものの、一体何の
ためにピアノを練習しているのか、ふっきれない気持ちを抱え、
また、自殺への誘惑にも似た気持ちが影のようについて回って
います。

その良一が、野球部のエース・徹也と、その幼なじみで入院中
の少女・直美との交流を通して、心の変化を遂げていく、とい
うようなストーリーです。

その中の一節。

………………………

つまり、こういうことだ。
人生というものに関して、ぼくは三つほど、疑問があった。

第一は、ピアノを弾くのは好きだけれど、いまのぼくの技量
では、とてもピアニストなんかにはなれそうもないというこ
と。

第二は、たとえピアニストになったとしても、それが仕事に
なってしまうと、いい気分でピアノが弾けなくなるのではな
いかということ。

そしてもう一つ、ものすごい苦労をして、有名なピアニスト
になったとしても、死んでしまえば、それでおしまいではな
いかということ。

どうせみんな

死んでしまうんだ。

自殺した小学生のメッセージが、頭の中でこだましている。

あの少年は、11歳で、世界を見通してしまったのだ。
生きていたって、ろくなことはない。

世界に向かって「ばかやろう!」と罵声をあびせた少年に対
して、いったい誰が反論できるだろうか。

結局のところ、ぼくの疑問は、その一点に収束する。

三田誠広
『いちご同盟』より



どうせ死ぬのに、なぜ生きるんだろう?

生きることが楽しいことばかりならいざ知らず、
生きるのは困難の連続だ。

人間は生きて苦しむ生き物かもしれない(夏目漱石)

なぜ生きる。 そう、それは永遠の問い。