何を見ても何かを思い出す

He who laughs last laughs best

幸と希望を願う歌

2018-01-12 23:55:55 | ニュース
新年恒例の「歌会始の儀」が12日、皇居・宮殿「松の間」で、「語」をお題に行われた。

毎年楽しみにしている「歌会始の儀」。
勿論どのような歌を詠まれるのかという楽しみもあるが、あの独特の節回しの調子がたいそう好きで、録画を繰り返し聞いた時期もある。
そんな「歌会始の儀」で詠まれる お歌に講釈を垂れるような恥知らずではないつもりだし、その才覚も勿論ないが、思いや願いを重ねさせて頂きたい歌、きれいな歌、瑞々しさと深さのある歌など、心に残るお歌を記しておきたい。

万両 
長く赤い実をつけていることから、家が長く栄えるという縁起木
花言葉は「寿ぎ」「徳のある人」


皇太子殿下
復興の住宅に移りし人々の 語るを聞きつつ幸を祈れり

雅子妃殿下
あたらしき住まひに入りて閖上の 人ら語れる希望のうれし

皇太子御夫妻は今年そろって被災地の復興について詠われているが、雅子妃殿下は東日本大震災以降の七回の歌会始のうち4回 東日本を詠んでおられるため、被災地を取巻く環境の変化と伴に、雅子妃殿下の被災地や復興への強い思いも気づかされる。
だが、大震災翌年に詠まれた お歌に難癖をつける者もいた。
平成24年 お題「岸」
春あさき林あゆめば仁田沼の岸辺に群れてみづばせう咲く

宮内庁によると、雅子妃殿下は、東日本大震災による被害に心を痛められ、被災地の人々や(かつて訪れたことにある)福島県の美しい自然にも思いを馳せられてお詠みになられという。
これに対し、被災地となった仁田沼について、「呑気に『みづばせう咲く』と詠うとは何事か」と難癖をつける者がいたのだが、歌というものは、悲しいことを、そのまま 悲しい辛い苦しいと歌うばかりが能ではないし、’’予祝’’ということある。
例えば、年賀状に、年末せっせと「明けましておめでとうございます」と書くのは、あらかじめ「おめでとう」と’’予祝’’の言葉を口に出すことで、神様の御加護を確かなものにする目的だという。

かつてあった美しい自然が、必ずや取り戻せると祈りつつ、その美しさを前もって詠い上げておく’’予祝’’
年の始めの歌会始で、繰り返し被災地の復興を祈り詠われる御心に、願いを重ねさせて頂きたいと思っている。

ジュリアン 運命を開く


彬子女王殿下
祖母宮の紡がれたまふ宮中の昔語りは珠匣のごとく

珠匣(しゆかふ たまくしげ)という言葉を知らなかったので、検索してみると、’’美しい櫛の箱’’の意味で、万葉集にも詠まれているという。
ならばと、「万葉集」(訳注 桜井満)を紐解くと、二首見つけたのだが、そのうちの一首が詠み人知らずだという。(桜井氏訳注による「万葉集」では、’’玉櫛笥’' とも ’’玉くしげ’’とも表記されているが、珠匣に同じ)

万葉集(訳注 桜井満)より
京職藤原大夫、大伴郎女に贈る歌三首(のうちの一首 巻4ー522)
をとめ等が玉櫛笥(たまくしげ)なる玉櫛の 神(かむ)さびけむも 妹に逢はずあれば

大宰府の諸卿大夫および官人等が筑前国の蘆城の訳家(うまや)で宴する歌二首(のうちの一首、巻8ー1531)
玉くしげ 蘆城の川を今日見ては 万代までに忘らえめやも

「歌会始の儀」も歌を一般に公募するが、それは、日本最古の歌集に詠み人知らずの歌が収められているという姿勢を受け継いでいるからだろうか?などと想像させてくれた お歌に感謝。


承子女王殿下
友からの出張土産にひめゆりの塔の語り部をふと思ひ出づ

お歌に、「出張土産」とさらりと詠みこむ感性の瑞々しさと、そこから、ひめゆりの塔の語り部へ繋ぐ深さが、好ましく感じられるお歌。

この雅な宮中行事を、気持ち良く拝見できる日本であって欲しいと強く願っている。


<皇太子ご夫妻「閖上」を歌に>1/12(金) TBC東北放送 19:52配信より引用
新春恒例の歌会始の儀が12日行われ、皇太子ご夫妻が去年11月の名取市訪問を踏まえ、被災者の幸せを祈る歌を詠まれました。
お二人が訪れた災害公営住宅の住民からは「閖上の名が歌として残る事になりうれしい」との声が聞かれました。
皇居で行われた歌会始。このなかでは皇太子さまが「復興の住宅に移りし人々の語るを聞きつつ幸を祈れり」、雅子さまは「あたらしき住まいに入りて閖上の人ら語れる希望のうれし」と詠まれました。
ともに去年11月の名取市閖上への訪問をもとに詠まれたもので、人々の幸せを祈る思いや、希望を見出しつつある被災者の姿に安堵された思いが込められています。
皇太子ご夫妻と対面した災害公営住宅に住む三浦りょう子さんは、閖上が歌に詠まれたことを「大変うれしく思う」と語りました。
また三浦さんは、「雅子さまが詠まれた“希望のうれし”の言葉に自分たちが話したことが表されていて感動した」と話していました。
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