Gift of Love / Sissel Kyrkjebo
ノルウェーのシンガー、シセル・シルシェブーの歌声を初めて聴いたのは、94年のリレハンメルオリンピック開会式。
透きとおった光の柱が、空に向かってすっくと立っているようだった。
(わかりにくい例えだの)
その声に魅了されて、シセルの歌を聴くようになった。
ビブラートをかけない、のびやかで澄みきった声。
自分の気持ちもすうっと、光の柱と一緒に高みに連れて行かれるような気がして、疲れると、深呼吸をするようにシセルの歌を聴く。
「Gift of Love」は、シセルがオリジナルとポップスのスタンダード・ナンバーを歌っているアルバム。
その中に、ニール・セダカ作の『Solitaire』が収録されている。
ソリティア、一人遊びのカードゲームのこと。
パソにも大抵入っていて、煮詰まるとよくやったものですが。
一人遊びを孤独になぞらえた歌。
メロディーはあくまで美しく、歌詞は救いようも無く暗い。
There was a man
A lonely man
Who lost his love
Through his indifference
シセルが歌う『ソリティア』。
真冬の空気のようにきりっと澄んだ歌声は、ソリティアという言葉の持つ絶望を、残酷なまでにくっきりと浮かび上がらせる。
彼は、ただ一人きりでゲームを続けるだけだ。
歌い出しの静けさが嘘のように、
ラストに向けて、徐々にシセルは高々と声を張り上げて歌う。
まるでひっそりと硬く凍っていた湖の氷が溶けて、春の嵐に湖面が激しくうねり始めるように。
And solitaire's the only game in town
And every road that takes him
Takes him down
While life goes on around him everywhere
He's playing solitaire
どうか彼の人を孤独という絶望から救ってください、と祈るように。
救いようの無い歌のはずが、シセルが歌うとひとすじの希望を感じさせる歌に変わり、そこには光が射す。
光の柱。
「Solitaire」Neil Sedaka / Phil Cody より歌詞一部引用