郷土教育全国協議会(郷土全協)

“土着の思想と行動を!”をキャッチフレーズにした「郷土教育」の今を伝えます。

夢二 エデホン (小石川・子ども風土記ー8 )

2018年07月02日 | 機関誌

 
大正三年、竹久夢二は一冊のコマ絵帳を出版しました。

この「夢二エデホン」と名付られたミニ画集には、動植物・風景・くらしの道具、そして人々などが美しく描かれていましたが、次のような、子どもたちに対する深い愛と尊敬の気持ちを表す「前書き」が添えられていました。
 

「・・・稚き子よ、私は御身の画いた『九本の脚を持てる馬』の絵を決してとがめだてはしない。御身の母君は、或いはまた学校の先生は、『馬の脚は四本あるものなり』と教へるかもしれない。しかし安ぜよ。御身の馬の絵に、脚が九本あるといふことは、決して偽りではない。九本の馬の絵が偽りでないごとく、四本の脚もまた偽りではない。何故なれば、馬が牧場を走る時、実に、脚は九本に見えるから。
 
・・・御身の直覚は誠に正しいものであった。また、母上と先生とは、馬の脚を数へてみた経験から、『馬の脚は常に四本なり』と信じている。それゆえ脚が八本に見えたり九本に見えたりする時には、自分の眼を疑っているのだ。そして、やっぱり四本だと思はるるとしている。
 
されど稚き子よ、御身は決して御身の視覚を疑ってはならぬ。四本に見えたら四本に画き、九本に見えたら九本に画くがよい。
他人の経験を信じて、自分の感覚を疑ふことは、自然と神とを疑ふことである。芸術家にとって、それほど卑しいことはない・・・」

                (「郷土教育 708号」より)

-M.N-

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