検証・電力システムに関する改革方針

「自然エネルギーですべての電力をまかなう町」の第2部です。

「電力システムに関する改革方針」は利権抗争のストーリ

2013年09月13日 | 検証・電力システム
 4月2日閣議決定の「電力システムに関する改革方針」はその2カ月前に発表された「電力システム改革専門委員会報告書」(2013年2月)に基づくものだと言われています。
 確かに改革の3つの目的、「安定供給を確保する」「電気料金を最大限抑制する」「需要家の選択肢や事業者の事業機会を拡大する」は「電力システム改革専門委員会報告書」の提言通りです。

 主な改革の内容も専門委員会の提言に沿っています。
しかし、この2つの文書をよく比較検討すると重要な問題を閣議決定の「改革方針」は「専門委員会提言」を骨抜きしています。
 例えば「専門委員会報告書」の提言は一般電力事業者に認めている地域独占と総括原価方式は小売全面自由化の中で「廃止」方向を提言しています。ところが閣議決定の「改革方針」では「送配電事業については、引き続き地域独占とし、総括原価方式等の料金規制により送配電線等に係る投資回収を制度的に保証する。」としています。しかもそれは安定供給の確保のために必要だとしています。

 総括原価方式は電力会社に高収益を「制度的に保証する」ものです。民主党政権から自民党政権に交代して「閣議決定」は電力業界の利権を守る方向転換をしたのです。
 ところで「電力システム改革」は戦後、何度か行われていますが最も激しく政官財が抗争したのは1997年から2003年の第3次制度改革といわれる改革です。

 背景に1990年代の円高、産業空洞化問題と日本経済のバブル崩壊による景気どん底があります。そのなかでも地域独占、総括原価方式で高収益を保証された電力料金は世界の中で一番高いと言われ、産業界から不満・是正の声が起こります。この声に押されて時の佐藤信二通産相が97年1月、「発電、送電事業の分離はタブーとされてきたが、大いに研究すべき分野だ」と発言。これに通産省の官僚・村田成二(元事務次官)が関係しています。

 村田成二は94年、公益事業部長時代から電力10社による発送電独占システムの改革をめざします。それは電力10社の市場独占を快く思わない産業界の意向とアメリカ側の規制緩和要求(電力の市場開放)に応えたものでした。
 しかしこの抗争は村田の敗北に終わります。電力会社が総反撃に出て、まず自民党エネルギー総合政策小委員会の委員長、事務局長で東電出身者や電力族が村田の「改革」に反対。村田は次官を2年勤めて2004年に退任したからです。「村田改革」否定されたことから総合資源エネルギー調査会電気事業分科会報告書(2003年)は「発送電部門の一体的な運用・整備、広域的指示用の整備、電源開発投資環境の整備、需要家選択肢の確保」などを出します。

 この報告書を受けた電気事業法の改正が2005年に行われ、小売自由化が段階的に実施されます。また2004年2月に「電力系統利用協議会:ESCJ」が設立されます。
 そして発送電一環体制を維持させつつ、送配電部門と発電部門の会計分離を実施します。しかし産業界は電力全面自由化と発送電分離をしてこそ日本の再生が始まるとして電力システムのいっそうの改革を求めています。その背後にアメリカの電力市場開放・規制緩和要求があります。

 そうした攻防戦の中で自民党政権から民主党政権に交代しました。福島第一原子力発電事故も起きました。新政権は産業界、アメリカの意を酌み取って電力システム改革に着手します。
 その検討委員会が今年2月報告書を出した「電力システム改革専門委員会」です。昨年2月に発足して1年かけてまとめています。委員会報告としては異例の長さです。この専門委員会に提出された「事務局提出資料」。これを見ると自民党政権が推進した「電力システム」を支えた官僚が民主党政権になって、さまざま抵抗しながら政権の意向を無視することもできず、しかし積極的に意向に沿うこともできず。いかに自分たちが推進してきた電力システムを守るか。それに知恵を出し、抵抗してきたため、時間もかかったと言えます。

 そしてできた「電力システム改革専門委員会報告書」。それを骨抜してできたのが今回の閣議決定。権力闘争、利権争いがそこにあります。「改革方針」は何を目標にしているのでしょうか。次回


 「電力システム改革方針」は再エネを排除する

2013年09月12日 | 検証・電力システム
  「みんなで育てる再生可能エネルギー」
 資源エネルギー庁がホームページや説明会・講演で使っている「標語」です。
 政府がホームページをはじめとして講演資料で資源エネルギー庁は「みんなで育てる再生可能エネルギー」とアピールしているのだから「改革方針」は、それを具体化している。そんな期待を持って読んだのですが違うようです。

 「改革方針」で「再生可能エネルギー」の言葉が出てくるのは次の2回です。
「再生可能エネルギーの導入等を進めるとともに」
「特に出力変動を伴う再生可能エネルギーの導入を進める中でも」
 この言葉だけ読むと、再生可能エネルギーを育てるのだ!と。
 読み手にそう思わせるだけです。「改革方針」を書いた官僚の凄腕です。
 
 一方、総発電量の3分の1を占めていた原子力発電が稼動停止していることについては
「原子力発電への依存度が大きく低下し、大半の発電が既存火力に依存する中・・・」
 と、触れる程度で終わって、それ以上、ふれていません。原発をどうするのかについては何も言っていません。ここでも含みを持たせています。

 はっきりしているのは「改革方針」は原子力発電、再生可能エネルギーは「あてにせず」、既存電源で電力需給をまかなう計画・方針だということです。

 だが総発電量の3分の1を占めていた原子力発電が稼動停止している中でどう「安定供給を確保する」し「電気料金を最大限抑制する」のか。

 「改革方針」をていねいに読むと「改革方針」は発送電分離、小売全面自由化の言葉にまぎれて、再生可能エネルギーはお茶を濁す程度の普及にとどめ、電力会社の新たな寡占をめざし、原発を電力の基幹にするのが目標だということがわかります。

 飛躍していると思われかもわかりませんが「電力システム改革方針」は再エネを「育て」ません。電力市場から排除します。それをこれから関係資料に基づいて明らかにします。


原発ゼロでも電力は大丈夫、政府も認める

2013年09月10日 | 検証・電力システム
 原子力発電が稼動しなくても必要電力はまかなえる。これは政府も言っていることです。
 例えば、今年(2013年)4月26日、政府は2013年度夏季の電力需給対策を発表しました。これは「電力需給に関する検討会合」のとりまとめを受けてのものです。
 この発表の前、電力需給検証小委員会が「2012年度冬季の需給検証」結果を発表しています。「いずれの電力会社管内においても、最大需要日において、瞬間的な需要変動に対応するために必要とされる予備率3%を超えており、需給ひっ迫に至ることはなかった」という結果でした。
 予備率とはピーク需要電力量に対して供給力(発電出力)の余裕割合です。
要するに、原子力発電が稼動していない中で、冬のピーク需要はまかなえたということです。
 さて、今年夏の電力需給はどうだったのでしょか。
その予測を分析したのは「電力需給に関する検討会合」です。2013年4月26日に「2013年度夏季の需給検証に当たっての基本的な考え方」を発表しました。

 この中で供給見積もりをしていますが再生可能エネルギー(太陽光、風力)については、下記のように見積もりました。
○太陽光発電は、固定価格買取制度による導入増を考慮しつつ、確実に見込める出力を評価。
○風力発電は風況によりピーク時に出力がゼロになることがあり、供給 力として計上しない。
 
 注・太陽光発電の2012 年度夏季実績は121 万kW でした。2013 年度夏季の太陽光発電の供給力の見込みは、9 電力の合計で119 万kWです。2013年度の見込みが少ないのは2012年度の日射量は予想より多かったこと。2013年度は日射量が少なくなることもあるのでリスクを考慮して供給力を減らしたと説明しています。
 風力発電を供給力に計上しないのは、 「ピーク時に供給力の実績がほとんど出ない場合も相当数あるため、ピーク時に確実に見込める供給力として評価することは困難である。したがって、風力発電については、2013 年度夏季のピーク時の供給力としては見込まない」と判断したからだと言っています。

 その上で、2013年度夏季の電力需給見通しは「2010年度夏季並の猛暑となるリスクや直近の経済成長の伸びなどを織り込んだ上で、いずれの電力会社管内でも瞬間的な需要変動に対応するために必要とされる予備率3%以上を確保できる見通し」と判断。
 その見通しを各社(北海道電力、東北電力、東京電力、中部電力、関西電力、北陸電力、中国電力、四国電力及び九州電力)ごとにみたのが下記の表です。
電力需給検証小委員会報告書(案)について(概要)(平成25年4月)
   関西電力だけが原子力発電2機稼動しての見通しですが他の電力会社の原子力発電は稼動ゼロです。そしてこの夏、猛暑でしたが「計画停電」も「電力使用停止命令」も発することなく、夏は過ぎ去りました。
 政府が予想した通り、原発はなくても電力は間に合ったのです。
 そして気になることは太陽光発電、風力発電です。実際はどうだったのでしょうか。 政府はほとんど評価していません。無視しているように感じます。





緊迫感がない「電力システム改革方針」

2013年09月09日 | 検証・電力システム
 「電力システム改革方針」(以下「改革方針」という)を読んで、みなさんどんな感想を持ちました?
 私は、緊迫感がないと思いました。
 「あれっ!」という驚きです。なぜなら日本の電力供給は福島第一原子力発電(以下「福島原発という)の水素爆発以降、関電の大飯原子力発電所で2機稼動(3号機は9月2日、停止。4号機は同月15日停止。定期検査のため)していましたがそれ以外の原子力発電はすべて停止しているんですよ。

 下の図表、一番上の表は福島原発事故以前の発電量です(10社合計)
 原子力発電の発電量(平成22年度)は一般電気事業者(北電、東北電、東電、中部、北陸、関電、中国、四国、九電、沖電)10社の33%を占めています。



 。

 日本の原子力発電は総発電量に占める割合から分かる通り、政府は「基幹エネルギー」「ベース供給力」と呼んできました。
 そして図3の通り、54機もの原子力発電が稼動していたのです。

 その原子力発電がすべて停止(大飯原発も停止して日本のすべての原発が停止した時期もあった)。

 普通であれば真っ青になって、代替電源を確保する手立てをしなければいけない事態です。あるいは、非常事態で電力を確保できないから産業界、国民に原子力発電が止って、生産できなくなった電力量に見合う、「節電」を強力に求める。電力の使用制限命令の発動など。あってもおかしくない事態です。電力のことなどよく知らない私など普通の国民はそう思います。

 ところが「改革方針」は少しもあわて、ふためいていない。ケロッとして「改革」の目的は「安定供給を確保する」「電気料金を最大限抑制する」「需要家の選択肢や事業者の事業機会を拡大する」であると述べているのです。

 総電力量の33%を占めていた原子力発電が停止しているのに、そのベース電源をどうするのかを問題にしないで「安定供給を確保する」ことなどできるのか。私などはまずそれを感じました。

 そして思いました。原子力発電は稼動しなくても必要とする電力はまかなえるからだ!と。そういえば福島第一原発の建屋水素爆発は2011年3月12日から15日に発生した。
 この事故を受けて各地の原子力発電は定期検査を期に次々と停止した。そして現在に至るまで2度の冬と3度の夏の電力ピーク需要を迎え、支障なく乗り切ってきた。

 福島原発発生当初こそ「計画停電」や電気事業法にもとづく電力使用制限命令が大口電力消費企業に発せられましたがそれも2011年の夏だけ。それ以降、節電の呼びかけはやられたがそれ以上の「要請」や「命令」は発せられることなく、夏、冬の電力ピーク需用を乗り越えてきた。原子力発電が稼動しない中、電力会社同士、日常頻繁な電力融通というやりくりをすることなく乗り切ってきたのですから、矢張り原子力発電はなくても大丈夫なのだと思いました。

 原発はなくても大丈夫なのになぜ「電力システム改革」なのでしょう。

電力システム改革、学ぶ最適資料その2

2013年09月06日 | 検証・電力システム
ドイツの家庭電気料金構成2013年 ドイツ連邦再生可能エネルギー機関

ドイツの電力、電源別構成2011年 連邦統計局

ドイツの電力、電源別構成、1990年から2012年の推移 AGEB研究所資料

EU連合各国の電気料金-EU連合HP

ドイツにおける脱原発のための立法措置
海外立法情報課  渡辺 富久子

ドイツの2012 年再生可能エネルギー法
海外立法情報課  渡辺 富久子

ドイツの再生可能エネルギー資料集2012年度

 非核オーストリア第149憲法


 資料紹介は以上です。
「資料」のダウンロードは早めに済ませておくようにお勧めします。アップの時期が過ぎると閉じるところもあります。

電力システム改革、学ぶ最適資料

2013年09月05日 | 検証・電力システム
電力システムに関する改革方針」(閣議決定)と「電気事業法の一部を改正する法律案」を検証するために必要な資料の紹介です。私の「検証」はこれらの資料を使って行います。資料紹介はまだ続きます。

過去の温室効果ガス削減目標及び地球温暖化対策・施策について

日本国温室効果ガスインベントリ報告書(NIR)  2013.4.12 国立環境研究所

各省のポテンシャル調査の相違点の電源別整理

電力システム改革専門委員会報告書  2013年2月

総合資源エネルギー調査会電気事業分科会制度環境小委員会中間取りまとめ(平成23年2月)

再生可能エネルギー電源の導入円滑化に向けた系統ルールについて(次世代送配電システム制度検討会WG1)

次世代送配電システム制度検討会第1ワーキンググループ報告書(平成23年2月23日)

エネルギー白書2013年 資源エネルギー庁

エネルギー基本計画 2010年6月

エネルギー政策基本法

電力調査統計 資源エネルギー庁

電力システム改革の概要

2013年09月04日 | 検証・電力システム


電気事業法の一部を改正する法律案概要。経済産業省にリンクしています。クリックして実物をダウンロードしてください。

「電力システム改革」を検証するためにはさまざまな資料をそろえることが第一歩です。まず何をどうしようとしているのか。必要と思われる資料を以降、ご紹介します。

電力システムに関する改革方針

2013年09月03日 | 改革方針-閣議決定
電力システムに関する改革方針(閣議決定・平成25年4月2日)

 低廉で安定的な電力供給は、国民生活を支える基盤である。
 東日本大震災とこれに伴う原子力事故を契機に、電気料金の値上げや、需給ひっ迫下での需給調整、多様な電源の活用の必要性が増すとともに、従来の電力ステムの抱える様々な限界が明らかになった。
 こうした現状にかんがみ、政府として、エネルギーの安定供給とエネルギーコストの低減の観点も含め、これまでのエネルギー政策をゼロベースで見直し、現在及び将来の国民生活に責任あるエネルギー政策を構築していく一環として、再生可能エネルギーの導入等を進めるとともに、以下の目的に向けた電力システム改革に、政府を挙げて取り組む。その際、電気事業に携わる者の現場力や技術・人材といった蓄積を活かす。

Ⅰ 電力システムの改革の目的
1.安定供給を確保する
 東日本大震災以降、原子力発電への依存度が大きく低下し、大半の発電が既存火力に依存する中、分散型電源を始め、多様な電源の活用が不可避である。特に、出力変動を伴う再生可能エネルギーの導入を進める中でも、安定供給を確保できる仕組みを実現する。
 これまでの「同じ価格で需要に応じていくらでも電力を供給する」仕組みではなく、需要家の選択により需要を抑制したり、地域間の電力融通等の指示を行うことができる仕組みを導入し、需給ひっ迫への備えを強化する。

2.電気料金を最大限抑制する
 原子力比率の低下、燃料コストの増加等による電気料金の上昇圧力の中にあっても、競争の促進や、全国大で安い電源から順に使うこと(メリットオーダー)の徹底、需要家の選択による需要抑制を通じた発電投資の適正化により、電気料金を最大限抑制する。

3.需要家の選択肢や事業者の事業機会を拡大する
 電力会社、料金メニュー、電源等を選びたいという需要家の様々なニーズに多様な選択肢で応えることができる制度に転換する。また、他業種・他地域からの参入、新技術を用いた発電や需要抑制策等の活用を通じてイノベーションを誘発し得る電力システムを実現する。

Ⅱ 主な改革内容
 上記の3つの目的からなる電力システム改革につき、以下の3つの柱を中心として、大胆な改革を現実的なスケジュールの下で着実に実行する。

1.広域系統運用の拡大
 電力需給のひっ迫や出力変動のある再生可能エネルギーの導入拡大に対応するため、国の監督の下に、報告徴収等により系統利用者の情報を一元的に把握し、以下の業務を担う「広域系統運用機関(仮称)」を設立し、平常時、緊急時を問わず、安定供給体制を抜本的に強化し、併せて電力コスト低減を図るため、従来の区域(エリア)概念を越えた全国大での需給調整機能を強化する。
①需給計画・系統計画を取りまとめ、周波数変換設備、地域間連系線等の送電インフラの増強や区域(エリア)を越えた全国大での系統運用等を図る。
②平常時において、各区域(エリア) の送配電事業者による需給バランス・周波数調整に関し、広域的な運用の調整を行う。
③災害等による需給ひっ迫時において、電源の焚き増しや電力融通を指示することで、需給調整を行う。
④中立的に新規電源の接続の受付や系統情報の公開に係る業務を行う。

(周波数変換設備、地域間連系線等の整備)
 なお、広域系統運用を拡大するため、広域系統運用機関が中心となって周波数変換設備、地域間連系線等の送電インフラの増強に取り組む。
また、地域間連系線等の整備に長期間を要している現状にかんがみ、関係法令上の手続きの円滑化等を図るため、重要送電設備を国が指定し、関係府省等と協議・連絡の場を設置するなどの体制を整備する。

2.小売及び発電の全面自由化
(小売全面自由化)
 家庭部門を含めた全ての需要家が電力供給者を選択できるようにするため、小売の全面自由化を行う。その際、需要家が適切に電力会社や料金メニュー、電源別メニューなどを選択できるよう、国や事業者等が適切な情報提供や広報を積極的に行い、また、スマートメーターの導入等の環境整備を図ることで、自由な競争を促す。

(適正な料金の確保)
 ただし、一般電気事業者の料金規制は、電気の小売業への参入の全面自由化後も、実際に競争が進展していることを確認するまでの間、経過措置として継続する。また、料金規制の撤廃後(電気の小売料金の全面自由化後)も、需要家保護のため、最終的な供給保障を送配電事業者が行うことや、離島において離島以外の地域と遜色ない料金での安定供給を保障する等の措置を講じる。

(発電全面自由化等)
 さらに、小売の全面自由化と併せ、発電の全面自由化(卸規制の撤廃)や、卸電力取引所における電力の取引量を増加させるための取組、商品先物取引法の対象への電気の追加の検討等を行う。

3.法的分離の方式による送配電部門の中立性の一層の確保
(中立性確保の方式)
 発電事業者や小売電気事業者が公平に送配電網を利用できるよう、送配電部門の中立性の一層の確保を図る。具体的には、一般電気事業者の送配電部門を別会社とするが会社間で資本関係を有することは排除されない方式(以下「法的分離」という。)を実施する前提で改革を進める。
法的分離の方式は、機能分離の方式と比較した場合、送配電設備の開発・保守と運用の一体性が確保でき、安定供給や保安の面で優位であるほか、送配電部門への投資、発電事業・小売事業の経営の自由度の面でも優位性がある。また、外形的に独立性が明確であるが、一層の中立性を確保するための人事、予算等に係る行為規制を行う。
 また、法的分離を行った場合でも、給電指令等を行う送配電事業者が発電事業者との間で協調して災害時の対応や需給調整・周波数調整等を行えるよう、必要なルールの策定を行いつつ、制度を構築する。なお、制度の実施に向けた検討の過程で仮に克服できない問題が新たに生じ、実施が極めて困難になった場合には、一般電気事業者の送配電系統の計画や運用に関する機能のみを広域系統運用機関に移管する機能分離の方式を再検討することもあり得る。

(安定供給の確保)
 送配電事業については、引き続き地域独占とし、総括原価方式等の料金規制により送配電線等に係る投資回収を制度的に保証する。また、引き続き、系統全体での需給バランスを維持する義務を課すことにより、安定した周波数や電圧など、経済活動の基盤となる高品質な電力供給を確保する。
 さらに、緊急時等における国、広域系統運用機関、事業者等の役割分担を明確化し、国が安定供給等のために必要な措置を講じる枠組みを構築する。
 このほか、全面自由化に当たって、小売電気事業者の供給力確保や、広域系統運用機関が将来の電源不足に備えて行う発電所の建設者の募集等、必要な制度を新たに措置することで、安定供給に万全を期す。

Ⅲ 関連する制度整備
1.関係法令の見直し
 小売の全面自由化に伴い、一般電気事業、卸電気事業等の事業類型を見直す。これに伴い、関係法令における、いわゆる公益事業特権や税制等について、

 新たな電気事業制度上の枠組みに従い、需給バランスの維持等の義務を有する送配電事業者に加え、小売電気事業者、発電事業者といった各主体が安定供給上の責任を果たすことも踏まえ、各個別法令の目的と電気事業の適確な遂行とを勘案しつつ、必要な措置を講じる。

2.行政の監視機能の強化
 自由化された市場における電力取引の監視・モニタリングやルール整備、送配電事業に関する料金規制や行為規制の厳格な実施、緊急時及び平時における安定供給確保等に万全を期すため、行政による監視機能を一層高める。このため、電気事業に係る規制をつかさどる行政組織のあり方を見直し、2年後を目途に、独立性と高度な専門性を有する新たな規制組織へと移行する。

Ⅳ 改革を進める上での留意事項
1.一般電気事業者の資金調達環境との関係
 今回の電力システム改革により、垂直一貫体制と総括原価による料金規制を前提とした一般電気事業者の資金調達環境は大きく変化することとなるが、巨額な設備投資を必要とするという電気事業の特性に加え、一般電気事業者が発行する電力債の発行額の規模にかんがみ、その取扱いの変更が金融市場全体に与える影響について十分配慮する必要がある。
 特に、足下においては、原子力発電所の稼働停止等に伴い、一般電気事業者の事業収支や資金調達環境が悪化していることから、かかる状況の推移を踏まえ、事業者間の公平な競争環境の整備等、電気事業の健全な発展を確保しつつ、電力の安定供給に必要となる資金調達に支障を来さない方策を講じる。
 具体的には、送配電部門の中立性の一層の確保の実施に際しては、今後の金融市場の動向等を踏まえることとし、一般担保を含めた金融債務の取扱いや行為規制に関して、必要な措置(経過措置等)を講じる。

2他の政策との関係
 電力システムが直面する構造的な変化の下で電力供給の効率性・安定性を確保するには、電力システム改革以外の他の政策的措置が必要となる可能性がある。こうした中、自由化後の電力市場において活発な競争を促す観点から、原子力政策をはじめとするエネルギー政策を含め、何らかの政策変更等に伴い競争条件に著しい不利益が生じる場合には、これを緩和するため、別途その必要性や内容を検討した上で、必要な政策的措置を講じる。

Ⅴ 改革プログラム
 今回の電力システム改革は、大きな事業体制変革を伴うものであり、関連する法令の手当等を含め、十分な準備を行った上で慎重に改革を進めることが必要である。このため、実施を3段階に分け、各段階で課題克服のための十分な検証を行い、その結果を踏まえた必要な措置を講じながら実行するものとする。
 なお、沖縄地域については、地域の特殊性を踏まえた制度とする。
電力システム改革の速やかな実施に向け、関係省庁は連携して改革の内容の具体化を進めるとともに、法律案その他の制度的準備を整える。

1.第1段階:広域系統運用機関の設立
 平成25 年(2013 年)通常国会には、昨今の電力の需給ひっ迫状況の改善等に資するよう、広域系統運用機関の制度の創設を中心とした法律案を先行的に提出する。広域系統運用機関は、平成27 年(2015 年)を目途に設立する。
 また、段階的かつ確実に改革を進めるため、本法律案の附則に、以下2.の電気の小売業への参入の全面自由化に係る制度、以下3.の送配電部門の中立性の一層の確保に係る制度及び電気の小売料金の全面自由化に係る制度を構築するために必要な法律案を提出する時期やその実施時期をプログラム規定として措置する。

2.第2段階:電気の小売業への参入の全面自由化
 平成26 年(2014 年)通常国会に、電気の小売業への参入の全面自由化に係る制度を構築するために必要な法律案を提出し、平成28 年(2016 年)を目途に、これを実施する。

3.第3段階:法的分離による送配電部門の中立性の一層の確保、電気の小売料金の全面自由化
 平成30 年から平成32 年まで(2018 年から2020 年まで)を目途に法的分離の方式による送配電部門の中立性の一層の確保に係る制度及び電気の小売料金の全面自由化に係る制度を実施することとし、そのために必要な法律案を平成27 年(2015 年)通常国会に提出することを目指すものとする。
 また、電気の小売料金の全面自由化に係る制度を平成30 年から平成32 年まで(2018 年から2020 年まで)の間に実施することとした場合に、小売電気事業者の間の適正な競争関係が確保されていないこと等により、電気の使用者の利益を阻害するおそれがあると認められるときは、当該制度の実施時期を見直す。

Ⅴ 改革プログラム
 今回の電力システム改革は、大きな事業体制変革を伴うものであり、関連する法令の手当等を含め、十分な準備を行った上で慎重に改革を進めることが必要である。このため、実施を3段階に分け、各段階で課題克服のための十分な検証を行い、その結果を踏まえた必要な措置を講じながら実行するものとする。
なお、沖縄地域については、地域の特殊性を踏まえた制度とする。
電力システム改革の速やかな実施に向け、関係省庁は連携して改革の内容の具体化を進めるとともに、法律案その他の制度的準備を整える。

1.第1段階:広域系統運用機関の設立
 平成25 年(2013 年)通常国会には、昨今の電力の需給ひっ迫状況の改善等に資するよう、広域系統運用機関の制度の創設を中心とした法律案を先行的に提出する。広域系統運用機関は、平成27 年(2015 年)を目途に設立する。
 また、段階的かつ確実に改革を進めるため、本法律案の附則に、以下2.の電気の小売業への参入の全面自由化に係る制度、以下3.の送配電部門の中立性の一層の確保に係る制度及び電気の小売料金の全面自由化に係る制度を構築するために必要な法律案を提出する時期やその実施時期をプログラム規定として措置する。

2.第2段階:電気の小売業への参入の全面自由化
 平成26 年(2014 年)通常国会に、電気の小売業への参入の全面自由化に係る制度を構築するために必要な法律案を提出し、平成28 年(2016 年)を目途に、これを実施する。

3.第3段階:法的分離による送配電部門の中立性の一層の確保、電気の小売料金の全面自由化
 平成30 年から平成32 年まで(2018 年から2020 年まで)を目途に法的分離の方式による送配電部門の中立性の一層の確保に係る制度及び電気の小売料金の全面自由化に係る制度を実施することとし、そのために必要な法律案を平成27 年(2015 年)通常国会に提出することを目指すものとする。
 また、電気の小売料金の全面自由化に係る制度を平成30 年から平成32 年まで(2018 年から2020 年まで)の間に実施することとした場合に、小売電気事業者の間の適正な競争関係が確保されていないこと等により、電気の使用者の利益を阻害するおそれがあると認められるときは、当該制度の実施時期を見直す。

「電力システムに関する改革方針」の構成

2013年09月03日 | 検証・電力システム
  今年(2013年)4月2日、安倍内閣は「電力システムに関する改革方針」(以下、改革方針という)を閣議しました。この改革方針は全5ページの文書。五章から構成され、第一章は目的、第二章に目的を達成させるための取り組み、第三章、四章に制度整備と留意点、第五章に改革の内容を具体化させる工程プログラムを明記しています。

 冒頭で電力システムを改革する必要性をのべ、改革の目的は3点。電力の➀安定供給を確保する、➁電気料金を最大限抑制する、➂需要家の選択肢や事業者の事業機会を拡大する。
 第二章は3つの目的を実現するために3つの事業、①「広域的運営推進機関の設立」、➁「電気の小売業への参入の全面自由化」、➂「法的分離による送配電部門の中立性の一層の確保、小売料金の全面自由化」を実行するとしています。

 第三章、四章はそのために必要な制度整備を行う。留意点として電力システム改革以外、「何らかの政策変更」があった場合、その「内容を検討した上で、必要な政策的措置を講じる」としています。

 第五章は事業の実施時期は3段階に分けて行うとして、実施内容と実施時期を明らかにしています。

 この改革方針に沿った内容は先の第183回国会(1月28日から6月26日)に「電気事業法の一部を改正する法律案」(以下「改正法案」という)として提出しました。提出されたのは「改革方針」の第一段階の「広域的運営推進機関の設立」をするための法律案で、第2、第3段階の事業実施と時期行程プログラムは法案附則に明記しました。改正法案は衆院で通過しましたが参院で審議未了により廃案になりました。しかし次期、国会に再提出されるのは間違いないと思います。

 「電力システムに関する改革方針」全文は、当ブログ、「改革方針・閣議決定」カテゴリにあります。

新企画を開始します

2013年09月02日 | 第2部-小説
 「自然エネルギーですべての電力をまかなうわが町」連載小説は構想を練るため、途中ですがひとまず中断します。
 政局の変化が連載小説より早く、物語の方がついていけなくなりました。

 エネルギー問題は引き続き、日本の大きな問題だと思っています。おりしも安倍内閣は今年4月「電力システムに関する改革方針」を閣議決定し、その内容にそった「電気事業法の一部改正法案」を国会に出しました。衆議院は通過しましたが参院で審議未了により廃案になりましたが次期、国会に再提出するのは間違いないと思います。

 この法案はあまり良く知られていません。発送電分離、小売全面自由化になると歓迎する声がありますが、私は手放しで歓迎できないと思っています。再生可能エネルギーの普及にとっても大きな壁になると思います。
 なぜか。次回連載は、検証「電力システムに関する改革方針」にします。