検証・電力システムに関する改革方針

「自然エネルギーですべての電力をまかなう町」の第2部です。

信用金庫訪問 連載小説275

2013年04月24日 | 第2部-小説
 「自然エネルギー推進室」室長、将太は満開の白梅が放つ甘酸っぱい薫りただよう頃、信用金庫をたずねていた。訪問はあらかじめ連絡をしてあった。約束の時間きっかりに訪問するとすでに顔なじみになった東方信用金庫占部支店の片桐支店長は「やあ、お疲れ様です。どうぞ、どうぞこちらへ」と満面の笑顔で接客用ソファに案内した。若い行員が気の利いた湯飲みを盆に載せて入ってきた。

「室長さんは、太陽光発電の普及にずいぶん精力的にまわっておられますね。ご苦労様です」
 自分から話を切り出すのは商人の鉄則だ。片桐は体にピシッと合ったスーツは誂えたものだと一見して分かった。
「私のこと、噂になっていますか?」
「みなさん感心していますよ。熱心だって」
「それはありがとうございます」
「もうどれほどご訪問されているんですか?」
「ほぼ30軒ほどでしょうか」
「30軒もですか。それはすごい。一ヶ月足らずでしょ」
「そうですね。大体、そんなものですね」
「太陽光パネルが急に増えましたからね。ビックリしています」
「増えたと分かりますか」
「それは分かりますよ。車で走っていたら、ここにもある。そんな感じです」
「今日、お伺いしたのはその太陽光パネルの普及について、ぜひご検討していただきたいことがあってお伺いしました」

 将太が来訪の用件を切り出すと片桐支店長は「実は、私の方からもご検討していただきたいことがありまして。冨田さんをお訪ねさせていただこうかと思っていたところです」
「私にですか」
「ええ」
「どういうことで?そのお話を先にお伺いしましょうか」