検証・電力システムに関する改革方針

「自然エネルギーですべての電力をまかなう町」の第2部です。

引退町長の安堵 連載小説260

2013年04月06日 | 第2部-小説
「それにしても」
と大滝は言って言葉を続けた。
「林業がこれほどひどく落ち込むとは思わなかった。私もいろいろ考えたが木材需要環境が激変して日本の林業は全体として供給過剰になっている。今は整理淘汰の時代。ここをしのげばなんとかなる。最低ギリギリ、町に製材所は1つ残す。まあ戦線を後退・縮小して再興の到来に備える。そういう思いで貝田さんの占部林業はつぶしてはいけない。支えろとこの松本課長に指示した。しかし占部林業は倒産の瀬戸際にある」
「それは貝田さんご本人からも聞いています」
 公平がこたえた。

「そうですか、そうであれば話は早い。貝田林業の経営を正確につかみ、必要であれば銀行に返済猶予をしてもらう。そしてぜひ、検討してもらいたいことがあります」
「はい、何でしょう」
 大滝の要望に公平は応えた。
「占部林業は占部町一の林業家です。経営支援の一策として木が売れるような施策を考えてほしいのです」

 そういうと大滝は公平の顔をまっすぐに見つめた。
将太は大滝の様子から占部林業の経営は相当追い詰められているのだと思った。
 大滝の要望に公平はほんの1、2秒だったが即答できずにいた。公平が何か言おうとするより早く大滝が話を続けた。
「どうすればいいか方法はこの松本課長に任せると良いと思います」
「占部林業は私たちが考えている町おこしのカナメです。もしつぶれるようなことがあれば私たちが考えていることがうまく運ばないと思いますので占部林業の経営を支えることに力を尽くすのは、大滝さんと同じです」

「そうですか、ありがとうございます。どうぞよろしくお願いします」
大滝は安堵した様子を体いっぱいに表わして頭を下げた。

 大滝はあと数日で町長でなくなる。引退するとは思っていなかった自分の手で占部町を再生したかったのだと将太は思う。しかしガンにかかっていることが分かり断念した。気がかりになっていた占部林業問題を公平に引き継ぐことができたことで大滝は本当に安堵している。だが大滝が元気な内に、占部町が確かな再生に動く姿を見せてやりたいと思った。