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羊日記

大石次郎のさすらい雑記 #このブログはコメントできません

俺物語!! 6

2015-05-21 21:47:41 | 日記
試合前日の柔道場、今日も猛男は部員を投げ飛ばしていた。「次!」続く部員も投げ、抑え込む猛男。「猛男君、次自分と組んで下さい」「次自分スッ!」「その次僕スッ!!」すっかり人気者の猛男!「剛田、俺達の為に!」「よし、俺達も続くぞッ!!」デジャブ感を出しつつ、やたら涙脆い先輩部員達も稽古に励んだ。結果、日が暮れるころには部員達はボロボロになっていたが、猛男はわりと平気だった! 試合前のクールダウン等しないのだ!!(確かに、男に頭を下げられ、引き受けた以上は、全力でぶつかりたいというのは有るが)考え込む猛男。
帰り道でも考えていた。(大和が頑張れと言ってくれたからなぁ。大和、しばらく大和の声を聞いていないが、こんなに声を聞かなかったのは初めてだ)夜空におにぎりと一緒に大和を思い浮かべていた猛男は、ケータイ電話を取り出し、大和にメールを打ち出した。『こんばんは、でんわしていいか?』送信すると即、大和から電話が掛かってきた。驚きつつ出る猛男。「猛男君! ウチだよ!」微笑む猛男。「どうしたのぉ?」「大和の声を聞きたかっただけだ」「え? 声? じゃ、ウチ喋るね」土手に腰かける猛男。「えーと、大和です」土手から何か摘まむ猛男。「猛男君、元気ですかぁ?」摘まんだのはいつか大和の髪に不思議と付いていた花と同じ小さな花だった。ほっこりする猛男。「ウチは元気だよぉ。えっと、どうしよう、喋るって難しいね。あ、試合明日だね」「砂と来い」「楽しみだなぁ!」「見てくれ!」猛男は夜の川の前で話していた。
自宅学習していた砂川はマンションの廊下を歩く猛男の足音を聞き分け、この間のスコーンの袋を一つ持って家から出てきた。耳の良い砂川。ちょうど猛男が玄関のドアを開けたところだった。「稽古終わったの?」「ああ、明日の試合、18時だからなぁ」
     7に続く

俺物語!! 7

2015-05-21 21:47:34 | 日記
「猛男」大和のスコーンを渡す砂川。もう一袋は砂川家で食べたようだ。「これは大和の?」「よくわかったな。お前のこと考えてたら、作り過ぎちゃったんだってさ」「どうして? 俺の所に持ってこないんだぁ?!」「邪魔しちゃ悪いってさ」「邪魔な訳あるかぁッ!!!」結構な勢いの猛男。「だよねぇ」予想通りだった砂川。「大和さん、お前の試合楽しみで死にそうになってたよ。じゃあ、おやすみ」砂川は自分の家に戻っていった。(大和、そんなことは一言も、ただ頑張れと。大和ぉ)猛男はスコーンを越しに大和の笑顔を思い浮かべた。
試合当日、会場には屈強な柔道関係者がゴロゴロいた。砂川と大和は連れだって現れ、気付いた柔道着姿の猛男に出入り口の辺りから手を上げる等して合図した。猛男は近付いてきた。「大和」手を取る猛男。「こっちだ」会場の集英高の部員達のいる所へ連れてゆく猛男。「一番近くで見てくれ」驚愕する集英高部員! 砂川もスーッと大和の後ろに付いて来ていた。「猛男君」ときめく大和。
その間に入る形で猛男並みの巨漢が現れた!「おう、猛男! 久し振りだな!!」尾安化高の岩山強だッ!!!「おう、強か。久し振りぃ」親しげな猛男。「小学校の時、同じ道場だった友達だ」「あ、初めまして。猛男君の彼女の大和です」凄い自己紹介! 唖然とする強。「彼女ぉーッ?!!!」強のHPは大幅に減った!! MPは元々持って無い!! 頭を振って立ち直る強!「ぬはははッ!! 勝負あったな猛男!! 中学まではお前の方が強かったけど、俺は高校に入ってから全国行ってんだ! 彼女作ってチャラけてる奴に負けねーかんなッ!!」いいぞ、もっと言ってやれ!「猛男君、ウチもっと端っこで見てるから、むしろ外からでも大丈夫」「強、彼女は、いいぞ」(ダルビッシュ!!)よくわからんが打撃を受けた強!「真ん中で見ていてくれ」
     8に続く

俺物語!! 8

2015-05-21 21:47:25 | 日記
「うん、頑張って、猛男君!」大和がときめく中、いよいよ試合開始前となり、両校は整列して向かい合っていた。砂川と大和は控えの部員が正座する前に座っていた。凄いとこ座ってるよ!強は思った。(柔の道は一日にしてならず、色恋にかま掛け、時間を浪費した猛男に最早勝ち目は無い!)「礼!」一礼する両校。(強さとは、なんだ?)自問する猛男。団体戦は大将の猛男までに2勝2敗だった。猛男の試合で決まる!
「大将、前へ!」「すまん剛田、頼む」破れた副将はすれ違い様に猛男に話し掛けたが、その気迫に気圧された。「彼女にいいとこ見せようったって、そうはいくかってんだ!」「礼! 始め!」試合開始!「さあ来い、オラァッ!」私語で挑発する強! 指導は入らず!「おう?」ここで強は猛男の気迫に気付いた。その構え、富士山の如し!!(強さとは、なんだ?)「でぇぇッ!」気圧されず、向かってゆく強!
(柔道一筋のこの俺が、腑抜けた猛男に負ける訳ねぇッ!!)凄まじい組み手争い!! 先に襟を取る強! 頑張れ、強!!(負ける訳ねーんだッ!)外掛けで倒しに掛かる強! まだだ! 耐えられた! 間髪入れず内掛けで倒しに掛かる強!! これも堪えられた!(負ける訳ねーんだぁッ!!!)猛男を背負う強! 行け、強ッ!!!
しかし、さばかれた! 組み手争いから、襟を掴まれる強! 猛男の不動心の顔ッ!! 強引に掴まれた手を払ってしまう強!「待て! 指導!」指導を受けてしまった強!「クソッ!」三度組み手争い、先に襟を取り、自分の襟は取らせない強! いや、逆手で取られていた! 左袖を取られ、相手の右手は抑えようとする強! 猛男との力比べに耐える強!! 何か仕掛けようと歯を見せてしまう強! 察する猛男! その瞬間! 猛男は左肩を捻入れ、巻き込み、腰を跳ね上げた!! 左で背負われ投げ飛ばされる強!
     9に続く

俺物語!! 9

2015-05-21 21:47:17 | 日記
(これがお前の、強さ!)打ち付けられた強!「一本ッ! それまで!」歓声が上がる。倒れたままの強に手を差し伸べる猛男。拍手が起こる。強はその手を取り、起き上がった。泣いてる強の肩を叩く猛男。
決着後、整列する両校。「ありがとうございました!!」互いに礼をした。集英高の部員に囲まれる猛男。「あーあ、男の目から見ても格好いいよね」と、隣の大和を見る砂川。大和はのぼせ上がっていた。全てが済んで夜、会場の外に駆けてきた猛男。「お疲れさま!」砂川といた大和が手を振っていた。「格好よかったぁ」「ありがとう! 大和!!」大和の手を取る猛男。「お前の応援してくれたお蔭だ」「ううん! はぁああ」昇天仕掛ける大和。「猛男、大和さん気絶しそうになってるから」(強さとは、なんだ? わからない、だが大和。俺はどこまでも大きな男になりたい)
3人で連れ立って帰ってゆく「星が綺麗だなぁ」「ねぇ、そうだ! ウチね。猛男座を発見したんだよ!! あれとあれを繋ぐと猛男君が笑ってる星で、あれが猛男君が背負い投げしている星で」「俺には大和に見えるぞ。あれとあれを繋ぐと大和が笑った顔だ」「猛男座の隣だぁ!」「どれ?」よくわからない砂川。「わーい、嬉しい!」星空を差し、あれがあの時の何かであったり誰かであったりと、猛男達は指差し続けた。
・・・青春ですなぁ。しかしこのままオリンピックを目指す話にはならないようだ。競技を続けるのも才能だから、強だってまだまだ芽があると思うぜ。負けるな強ッ!!