Devil's advocate(悪魔の代弁人、天邪鬼、なんでも反対する人)はすごく大事。日本には馴染みがない…。和を以て尊しとする社会だから…
社外取締役がどれくらいDevil's advocateであるべきなんだろう。どれくらい会社の意思決定に関与すべきなんだろう。以下引用は、歴史的にDevil's advocateが発展してきた経緯と実務的工夫。
要旨を述べますと、Devil's advocateの本質は「意思決定プロセスに関わらない」ことにある。意思決定プロセスに関わると、属人的な遠慮忖度が生まれるから、「何でも遠慮なく意見を言う」というDevil's advocateの本領を発揮しにくい。
以下、『巨大システム失敗の本質』クリス・クリアフィールド/アンドラーシュ・ティルシック著(櫻井祐子訳)から引用(訳文不正確なところは微修正)。
~~~以下引用~~~
この(中山註:Devil's advocateの)手法に高度な技術は必要ない。実際、組織内に外部者を置く方法は、大昔からあった。
ローマカトリック教会は何世紀もの間、聖人認定の審問の際に、「信仰の擁護者」、いわゆる「悪魔の代弁者」と呼ばれる役回りの人を立て、候補者の至らない店などをあえて指摘させて、性急な決定を防いだ。悪魔の代弁者は、反論を提出するまでは意思決定プロセスに関わらないため、候補者の推薦人たちの先入観に影響されなかった。
この手法の現代版が、イスラエル参謀本部局、略称アマーンの「悪魔の代弁者室」である。このチームには精鋭たちがそろい、諜報局による分析を批判的観点から考察し、異なる前提条件を検討する。
最悪のシナリオの可能性を指摘し、国防組織全体の見解に異議を投げかける。彼らのメモは諜報局の指揮系統を飛び越して、すべての主要な意思決定者に直接届けられる。「クリエイティブ」という言葉は、軍の情報解析を考えるときにふつう思い浮かばない言葉だが、諜報局の元部門長はこういっている。「<悪魔の代弁者室>があるおかげで、アマーンの情報分析は集団思考に毒されずに、クリエイティブになれる」と。
スポーツライターのビル・シモンズは、スポーツチームも同じような手法を取り入れるべきだという持論のもち主だ。「どんなプロスポーツチームも<常識担当副社長>を採用すべきだという確信を、私は日々強めている」と彼は書いている。
「ただし注意点として、常識担当副社長は会議に出たり、候補選手をスカウトしたり、内部の情報や意見を得たりせず、映画を見たりして、いちファンとして暮らしている。大きな意思決定をするときにだけ招かれ、すべての情報を与えたうえで、先入観のない意見を表明する」。
ここまで挙げたのは、どれも同じ基本原則をもとにした手法だ。一部の人を意思決定プロセスから意図的に外すことにより、外部者の視点を取り入れ、内部者が見落としがちな問題を見つける。そしてこの手法を取り入れるのは、大きな組織でなくてもできる。