tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

官製春闘の中身と同一労働・同一賃金

2016年12月24日 09時42分30秒 | 労働
官製春闘の中身と同一労働・同一賃金
 過去3回同一労働・同一賃金について書いてきたので、これ以上書かなくてもいいのかも知れませんが、やっぱり追加することにしました。

 非正規労働者が、自ら望んで非正規で働いている人たちばかりになった時、政府が同一労働・同一賃金を政策課題にするような事態は自然消滅するだろうと書いてきました。
 
 非正規雇用が異常に増えた主因は、円高に対応するために企業が、已むにやまれず正規を減らし非正規を増やして平均賃金を下げようとしたことにあると書きました。
 今、異常な円高は解消し、企業経営も正常に戻りました。企業は円高の際の逆のプロセスを進める、つまり正常な雇用状態に復元しなければなりません。

 それをしないと、格差社会化、社会の不安定化、従業員の教育訓練不足、現場力の低下、企業自身の質の低下などが起こり、政府も困って同一労働・同一賃金政策などを考えなければならなくなります。
 企業は先手を打って、雇用の正常化に取り組み、政府が余計な世話を焼かないで済むように早急に行動する必要があります。(労使が協力でやれればベストです)

 非正規を増やして人件費コストを切り下げてきたのですから、復元するには人件費コストの増加が必要になります。これは為替レートが復元したのですから、それによって増加した付加価値の中から捻出するのが当然です。

 官製春闘の中では、政府は、賃上げを奨励し、財界も、上げられるところは上げるべきとか、ボーナスや手当の形でもよいといった言い方をしています。
 こうした発言の目的は、賃金を上げて消費を増やそうというところにあるようです。

 しかし、それでは問題の解決にはなりません。今必要なことは、不本意な非正規雇用を正規に転換し、正規の賃金に復元することで、円安による付加価値増(「 円安と労使の果たすべき役割」2013/2/1付け)をその原資に充てることです。
 それでまだ余裕があれば、「賃上げでもボーナス増でもどうぞ」でしょう。

 政府が個人消費支出の増加を狙うならば、賃上げより、雇用の安定の方が消費性向上昇の効果が大きいことを過去の経験から学ぶべきでしょう。

 付け加えれば、春闘における賃金の改善は雇用構造の復元が完了してからにすべきなのです。これは労使も、伝統の「賃金より雇用が大切」という伝統の中で最優先課題とすべきです。
 順番が逆転するので、同一労働・同一賃金などといった問題が起きるのです。

 残る問題が1つあります。理想とされるオランダのように、正規・非正規といった区別の無いのが一番いい。同じ仕事なら賃金も同じ、最も公正は制度といった考え方です。
 この問題の解決法は実は極めて明白で、日本流の「企業への専属」を要請する「正社員」制度をやめることです。日本流なら全員非正規、それが欧米流の正規労働者です。

 採用は欠員補充のみ、賃金は職務給+成果給(job and performance)、年功はナシ、定期昇給も定期異動もなし、ブルーとホワイトは別枠、昇進昇給は転職で、給与・報酬はトップマネジメントまでマーケット価格、定期一括採用もありませんから、就職協定の必要もない、ただし若年層の失業率は平均の2倍というのが一般的でしょう。

 これは、すでに述べましたように、企業と人間の結びつきの在り方、考え方が、社会・文化の伝統の中で、欧米と日本では基本的に違っているからです。今の日本社会ではとても受け入れられないと思います。

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