彦四郎の中国生活

中国滞在記

新型コロナワクチン接種を巡って❸アジア各国での感染拡大—人間関係をも壊すこの禍

2021-07-04 17:47:22 | 滞在記

 新型コロナウイルス感染拡大の世界的パンデミックが再び深刻なステージにたっている。従来株から英国型や南アフリカ型やブラジル型、そして新たなインド型(デルタ株)と、ウイルスの変異型が再び猛威をふるっている状況が今年に入ってある。特にインド型の感染力はそれまでのものよりもかなり強く、昨年まではそれほど感染が深刻化していなかった東南アジアや東アジア、中東でも感染が広がっている。

 インドは今年の5月上旬の感染拡大ピーク時には1日の感染者数が40万人を記録したが、その後 減少傾向が徐々に見られ始め、この7月上旬の1日の新規感染者数は5万人になってはきている。そしてインドから広がったデルタ株は現在、東南アジアや東アジア、そして中東のイランやトルコなどへと感染が広がった。東南アジアでは今、マレーシア、フィリピン、インドネシア、タイの感染状況が深刻だ。また、ミャンマーでも広がってきている。東アジアでは、台湾の感染状況も6月上旬は深刻だった。(※7月上旬の1日の新規感染者数―イラン1万人、トルコ4800人、サウジアラビア1400人、ミャンマー1500人、タイ5200人、マレーシア6300人、インドネシア2万3000人、フィリピン5600人、韓国700人、モンゴル2400人、ロシア2万2000人、ベトナム450人、ラオス20人)

 中国以外の東アジアの国々で、台湾とモンゴルは昨年来、感染者数をほぼ抑えつづけてきた国だったが、この5月に入り急劇な感染拡大が起きてきた。モンゴルは隣国のロシアからか、台湾はデルタ株の感染拡大だった。台湾ではこの5月上旬ころから市中感染が発見され、瞬く間に感染がひろがった。感染のピーク時は6月上旬の1日の新規感染者数が500人~600人。その後減少し始め、この7月上旬になって50人ほどになっている。

 中国の報道やインターネット記事をみると、連日、この台湾の感染拡大やワクチン接種について皮肉を込めて報道していた。台湾の蔡英文総督の髪を振り乱した表情や頭を抱えて困っている顔写真(合成写真かと思われる)がよく使われていた。

 中国政府からのワクチン提供を断ったこともあり、日本から提供された英国アストラゼネカ製のワクチン150万回分などを使ってのワクチン接種で139人が死亡したと連日報道していた。(ワクチン接種とこの死亡の関連性はまだ詳しく調査はされていない。アストラゼネカ製ワクチンの接種で、台湾において「血栓」(アストラゼネカワクチン接種で稀に起きている。)での死亡例は報告されていないが、「それみたか!中国のワクチン提供を断るからこんなことがおきるのだ」という論調の報道や記事である。日本政府がさらに100万回分のワクチン追加提供を予定していることに対する中国政府の批判記事もこの間よくみられた。(日本政府は、インドネシアやベトナムにもアストラゼネカ製ワクチンを提供した。日本政府はこの6月1日にアストラゼネカ製ワクチンの薬事承認をしているが、日本での集団接種ではまだ使用していない。)

 いま東アジアでも東南アジアでも、アジア全体が直面する課題は、ワクチン接種の遅れである。各国の全人口のうちで、1回でもワクチンを接種した人の割合(6月下旬)をみると、モンゴル(59%)、シンガポール(51%)、韓国(30%)、日本(20%)、ロシア(11%) を除けば、アジア諸国の多くが10%に届いていない。

 中国はこの7月上旬で12億回超の接種を完了しているので、1回でも接種をした人の比率は60%くらいにのぼるかと推測される。そして、中国は世界40カ国以上に3億5000万回超の中国製ワクチンを提供してきた。中国ではこの6月に入り、中国南部の広東省などでインド株の感染拡大が少し広がり、都市封鎖や大規模なPCR検査の実施によって短期間で抑え込んだ。6月18日、広東省深圳の空港内の飲食店従業員1人の感染が判明した際には、その日、空港離発着400便の運行が全て停止されキャンセルとなった。

 中国では4種類のワクチンが開発されている。中国製の現行ワクチンは全て「不活化ワクチン」(熱やアンモニアなどで不活化[殺した]ウイルスを投与して抗体をつくる従来のワクチン製造方法のもの)。現在使用されているものとして「シノバック製」や「シノファーム製」の中国製ワクチンはよく知られている。従来からのワクチン製造法でつくられているため、副作用などの問題は、米国の「ファイザー製」「モデルナ製」、英国の「アストラゼネカ製」のワクチンと比較して少ないとされてはきた。問題はコロナウイルスへの抗体の有効性(ききめ)である。

 中国の「シノバック」も「シノファーム」も中国政府はその有効性は79%と発表はしている。だが、中国のワクチン提供を受けたブラジルは治験の結果、その有効性は50.4%と発表した。中国政府からワクチン提供を受けた他の国では治験の結果の有効性は80%と発表している国もある。いずれにしても、その有効性には大きな課題があるようだ。中国製ワクチンの提供を受けているインドネシアやチリでは感染が拡大している。特に人口335万人のモンゴルでは、全人口の58.7%が1回以上、52.1%が2回以上の接種(中国製ワクチン) を接種しているにも関わらず、7月1日の1日の新規感染は2400人にまで増加した。(これは日本の人口で換算すると、日本での1日の新規感染者数が約9万1000人と試算される。)

  この4月10日、中国疾病センター(CCDC)トップの高福氏が公式の会見で、「中国製ワクチンは予防率は高くはない」と話したため、世界は驚いた。その後、高福氏は中国共産党系新聞「環球時報」で、「ワクチンの有効性は高い時もあれば低い時もある」と、前出の発言の打消しをおこなった。(上記写真の人物は高福氏)   中国との経済的な結びつきが強く「一帯一路」政策にも参加しているイタリア。そのイタリア首相が6月25日、「中国のワクチンは有効ではない」と見解を述べたことに、中国政府はでは「WHOではすでに中国のワクチンを承認している」とした上で、「安全性と有効性は十分に証明されている」と反論した。

 中国製ワクチンの有効性が低い原因はその製造方法にあると言われている。このため、中国も欧米のワクチンのようなmRNAワクチンの開発製造を今後進めていくとみられている。また、安全性に関しては、中国製造ワクチンは「中長期的なスパン(期間的長さ)でみた場合、ADE(抗体依存性感染増強現象—ワクチン接種によって作られた抗体が、ウイルスの細胞への侵入を防ぐのではなく、逆に侵入を助長する現象)の懸念を指摘する声も出始めている。

 中国のワクチンは、一般的な冷蔵庫で保管できるというメリットはある。(2度〜8度での保管) このため、流通網や冷蔵設備の発達していない国々ではとても接種に使いやすいワクチンだ。(「ファイザー」̠−80度~−60度、「モデルナ」−25度~−15度、「アストラゼネカ」も中国製と同じ2度~8度) 

 ■WHOは中国製ワクチンがその有効性の問題から、なかなか承認しなかったが、2021年5月1日に「シノファーム」を、6月2日に「シノバック」を承認した。(WHOのワクチン承認の最低基準有効性率は50%)

◆シンガポール政府は、新型コロナワクチン接種者に対し、集まりに参加する場合の検査を免除しているが、中国製ワクチン「シノバック」を接種している人は、コロナ検査を受ける必要があると7月3日に発表した。「シノバックワクチンがインド株感染を防ぐという証拠は十分ではない」と理由を明らかにしている。また、フランス政府はワクチンを接種した入国者に対する隔離暖和措置を発表したが、中国製ワクチンは対象外としたことから、中国側は「同等の制裁」を行うと抗議した。

 韓国政府は、7月1日から海外でワクチン接種を終えた韓国人・外国人に対して2週間の隔離措置を免除することを発表した。免除対象のワクチンは、ファイザー、モデルナ、アストラゼネカ、ヤンセン(ベルギー製)だけでなく、中国製の2つのワクチンも含まれている。中国製ワクチンをこのような免除対象に入れるのは韓国が初めてだ。中国政府は韓国政府のこの措置を歓迎している。韓国の文在寅政権らしい忖度かと思う。

■ロシアは世界で最も早くコロナワクチン(スプートニクV) を開発し生産体制をつくった国だ。しかし、ワクチン接種は進んでいない。ようやく1回目以上接種した人は人口の11%にすぎない。これは、プーチン政権への不信、ワクチンへの不信が大きいからと言われている。

◆イギリス政府は、「ファイザー製ワクチンを2回目接種した2週間後に、インド型の変異ウイルスに対して88%の有効性を示したという研究結果」を公表した。

■日本においては、昨日7月3日の1日の新規感染者数は1881人とまだまだ深刻だ。特に東京は716人と再びの増加の一途をたどる。神奈川県・千葉県・埼玉県も増加傾向で完全に第5波に入っている。大阪府は148人と再びやや増加傾向。蔓延防止等措置法が7月11日まで出されているところでは他に、京都府は16人、兵庫県は22人、北海道は30人、福岡県は36人、愛知県は45人と減少傾向。11日に解除される蔓延防止措置法は、関東の4都県には延長されるだろうが、大阪府にも延長が必要かもしれない。東京五輪まであと19日に迫っている。

■このコロナパンデミック禍、そしてワクチン接種を巡ることに関して❶~❸のシリーズで書いてきた。改めて思うが、ワクチン接種を巡って、家族間、夫婦間、友人間でも意見の相違から人間関係が壊れる、正常ではない事態に晒されるということも起こっていることは悔しい。

 私の親しい友人の一人から今日電話があった。電話で15分ほど話したあと、その友人に、「近々、会おうか」と告げたら、「おお、会いたいなあ。でも、あんたはワクチン接種をすでにしていて、コロナスパイクが体内に入っているから、残念ながらもう会うことはできないので、こうして電話で話しているんや…。コロナスパイクが体内に入ったら、他人にコロナを感染させてしまうからな‥残念だが‥」と返答された。「コロナワクチン陰謀論」に強く信じているいる友人だ。こんなことが身近に起きるとは‥。

 そして、改めて思う。「コロナ禍の元凶は何なのか、誰たちなのか、どういう組織なのか、新型コロナ発生とヒトへの感染の起源の真実とは‥」と。