彦四郎の中国生活

中国滞在記

中国による、韓国への報復がエスカレートする中も―現代韓国文化の影響を強く受け始めた中国女性

2017-03-14 12:36:01 | 滞在記

 韓国の「朴槿恵(パク・クネ)」大統領が、3月10日 憲法裁判所の判決により大統領職を罷免された。これに対して韓国国内は賛否を巡って多少混乱している。北朝鮮はいち早く異例の「大歓迎だ」との早期コメントを発表した。中国政府は、事実を伝えるのみで特にコメントは発表していないが、おそらく歓迎しているであろう。日本政府としては、日韓関係の改善傾向が昨年末よりあっただけに、また 5月に行われる次期「韓国大統領選挙」の行方がとても憂慮すべき推移となっているだけに、大きな不安を抱えることとなる。

 独走的な支持が集まる最有力候補者「文在寅」は、極端な「北朝鮮寄り」「反日反米」の路線を提示しているから、これからの日・中・韓・北・米・露の関係の中、東アジアは新たな動乱期に入る可能性さえある。古代中国の春秋戦国時代、国々が結んだり離れたりして 互いに覇を伺う様子を「合従連衡(がっしょうれんこう)」と呼んだが、今 東アジアはそんな時代に突入したといえる。日韓だけの問題なら距離をおいて推移をみればいいのだが、情勢は複雑化の一方で日本の対応も難しさを増すばかりだ。今、日本においても、国家数十年の計を深める真剣な議論と現実的な対応が急務なのだが---。「豊洲と築地を巡る問題」や「私立幼稚園・小学校開校」を巡る一連の問題を、日本のメディアや国会でのトップニュースやトップ議題にあげている場合じゃないような気もするのだが。

 余談だが、朴槿恵元大統領(65才)は、誰かに似ていると感じ、親しみを感じさえもしていたのだが、つい3日ほど前に日本のBS放送で「島倉千代子の人生」という特集番組を見て、はたと気が付いた。あの島倉千代子さんに顔立ちや どこか憂いをふくんだ悲し気な雰囲気が似ていたのだ。この「お千代さん」こと島倉千代子(2013年死去・享年75才)は、私の祖父・父・私にとっての3代にわたる ファンだった。15・6年ほど前に 大阪府枚方市でのコンサートに行き、ペンライトを振ったこともあった。

 韓国と中国との関係だが、上記のグラフ写真を見ても分かるように、韓国の貿易額は中国との貿易が突出して多い。輸出に関しては①中国約25%②アメリカ約12%③日本約8%となっていて、中国への依存度がとても高い。 朴前大統領の就任後は、中国寄りを鮮明にし 日本やアメリカに対して距離をもち アメリカの制止を振り切ってAIID(アジア・インフラ銀行)に加わったり 昨年9月に行われた異例の「天安門前での抗日勝利記念・中国軍大軍事パレード」にもロシアのプーチン大統領などとともに参加し「中韓蜜月関係」をもった。その後、北朝鮮の核への脅威の高まりやアメリカからの「米中どつちにつくの?」と強硬に迫られて、これを受け入れ、「THAAD(高高度防衛ミサイルシステム)―アメリカの最新鋭地上配備型迎撃システム」の配備を決定した。これに対して、中国政府は 配備反対の猛烈な抗議を韓国とアメリカにしている。

 この中国からの抗議を示すものとして、昨年より韓国に対する「THAAD報復」が始まっている。これまで、韓国は「特に化粧品、エンターテインメント、スマートホンなどの電子製品、自動車、食品、観光」などは、中国なくして経済が成り立たない状況となっている。経済分野における中国からの露骨な制裁処置に、韓国は大きな打撃を受けてきている。

 昨年より、中国における韓国人のコンサートや映画・ドラマ放映が禁止されたり制限が大きくなった。(「限韓令・韓流スター放送出演禁止措置) 今まで中国のテレビでも流されていた韓国人俳優のCMも放映禁止が多くなるという事態から制裁は始まった。今年の2〜3月に入り、中国人の韓国旅行をも禁止する流れが大きくなっている。北京・上海や山東省や江蘇省一帯の観光会社を招集した会議を開き、韓国行き旅行商品(団体ツアー)の販売を中断するように伝えている。この流れは全国の旅行会社に今後通知されるようだ。年間約1700万人の海外からの観光客のうち、約半数の約800万人が中国からの観光客(※日本への中国人観光客・昨年度約700万人より多い)となっていた韓国社会での影響は大きいと思われる。 [2011年に勃発した「尖閣諸島」事件問題により、当時 中国政府は日本への観光商品販売を1年間あまり全面禁止した。]

 また、THAAD配備の用地を韓国政府に売却(ロッテ社のゴルフ場用地)した 「韓国ロッテ」に対して、中国国内の99店舗のうち 55の店舗で営業禁止措置を報復している。今後、さらに化粧品などの輸入制限措置などを実施する可能性も大きい。これらの報復措置は、中国経済にも一定のダメージを及ぼすが、韓国製品が中国国内で大きく出回っているだけに、中国の自国製品購買を誘うねらいもあるようだ。

 上記の写真は、中国のある小学校で行われた「韓国のTHAAD配備に対する抗議、ロッテの商品不買運動」の唱和をさせている様子(インターネット配信)。これに対してネットユーザーからは、「THAADについてよく知らない小学生に、この唱和教育は やりすぎだろうが」というような反応もけっこうあった。

 話は少しかわるが、中国による、韓国への報復がエスカレートする中でも、現代韓国文化の影響は 中国人の特に女性に対しての影響は しばらくやみそうにはないように思える。中国の若者たちの中でも、特に10代から20才までの年齢層は かっての日本より「韓国文化・いわゆる韓流」の影響の中で育った世代だ。テレビのドラマや歌の世界でも韓流第一世代ともいえる。

 このアジアでは、アジアの4大妖術として「日本のメイク術・韓国の整形術・中国のフォトショ術(アプリでの写真修正)・タイの性転換術」と言われて久しい。今、中国では「韓国式の整形手術や韓国式の化粧」をする女性が少しずつだが多くなってきている。特にここ2年間の変化は大きい。もともと中国人は化粧をしない自然な感じの文化だった。私が2013年9月に初めて中国の大学に赴任し中国で暮らし始めた当時、化粧をする学生は 「たまに偶然見かけるくらい」で、ほとんどいなかった。「黒く長い黒髪で、化粧をしない素朴な感じ」の学生がほとんどだったが、たった4年間あまりで 大きくかわりっつある。韓国風の化粧をする学生が、まだ少ないが普段にみかけることが多くなったのだ。茶髪も増えてきている。

 上記の写真の左から1番目〜5番目は同一人物。15才の少女が韓国式の整形手術を施術した後の写真。乳房もシリコンを入れて豊乳房としたようだ。中国のネットで掲載されていたが、ネットユーザからは「幽霊みたい」とかの反応もあったが、本人は整形に大満足しているようで、「私の人生は輝き始めた」と反論のコメントをしている。一番左の元の顔立ちも可愛らしく美しいのだが---。昨年は1年間で約300万人が整形手術を受けたという。一番右の写真は別の女性の整形写真。整形後の顔はまったく別人の顔立ちとなっている。[※百田尚樹の小説『モンスター』は、素晴らしい小説だった。整形手術を受け人生を変えていく女性の物語。整形を受けたい女性の心理がとてもよく描けていた。]

 世界には大きく分けて3つの化粧の流れがあるという。「日本風・欧米風・韓国風」の3つだ。韓国風化粧の特徴は3つある。「①眉毛を太く並行に(真っ直ぐに)描く。②目をぱっちり大きく明るく作る。③顔面の肌の色を白っぽくする。」これは、パッと見ると「人工的な人形」みたいで、私などは ものすごく違和感を感じる。しかも、顔立ちがみんな同じにように見えてくる。

 中国の女性にとって、韓国風の化粧は最も重要な「韓流」の一つとなってきている。中国女性の素朴な美しさを変えてきている韓流化粧というものに私などは嫌悪感さえ感じるが、みなさんは この化粧、どう思うだろうか。まあ、好みの違いと言われてしまえば、それまでだが。また、茶髪は この1年間で 成人女性で かなりなスピードで増えてきている。中国女性の素朴美はどこに行くのだろう---。

 ◆中国という現在の国家は、すくなくとも2050年の先までを見据えて国作りをしているように思う。現在の中国政府の国家的スローガンは「中国の夢」というものだ。政治経済的にも軍事的にも世界の中心的な国とするというものだ。すでに、シルクロード戦略の一環として、世界銀行にかわるアジアインフラ銀行を設立し、多くの国々の参加を集めている。また、海洋進出に力をそそぎ 海軍・空軍の近代化をすすめ 南シナ海の実質支配をもほぼ完了している。次は東シナ海での実質支配を進めていくだろう。アジア全域だけでなく、ユーラシア、太平洋にわたる広大な地域を、中国が中心となって支配・又は「中国第一」と考える国家を増やすというのが「中国の夢」だ。また、いわゆる「政治の民主化をどのようにして段階的に進めるのか」という課題も考え始めている。

 現在の韓国を巡る政治・経済情勢は、そのような中国政府の大局で動いている面も強くあるように思う。中国の東アジア戦略のためには、「沖縄の日本国からの独立」という新たな状況のシナリオも 中国に在住していて あながち 皆無ではないように思えてきている。これらの新たな国際状況下のもと、日本の各政党(自民党・民進党・共産党など)は どのような議論を進めているのだろうか なかなか具体的に 議論を経たその大局観が見えてこない。「世界史の転換の中で、日本よ 世界動乱に備えよ!」という国際情勢なのだが。(※私は、日本の政治の最重要二大課題[問題]は、①「働く人々の問題」(正規雇用実現や労働環境改善など)―労働者の立場を守る政策実現②「国際情勢下の外交問題への対応」の二つだと思う。)

◆韓国次期政権が、THAAD配備を撤回するなどして中国の怒りを鎮め、再び中国との蜜月関係(中国第一方針)を築くようになれば、中国の報復解除やスワップ(通貨協定)の延長にもなってくるだろうが、その場合、アメリカとの関係悪化は決定的なものとなり、韓国での「アメリカ軍撤退」という情勢になる可能性は大きい。中国にとっても北朝鮮にとっても、このように韓国が「中国を中心とする政策転換」に はっきりと舵をきることは 歓迎するところだろう。あまりにも大きな経済的中国依存の現状下、韓国国民は、そのような道を選ぶかもしれない。