瀬崎祐の本棚

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詩集「水辺に透きとおっていく」  望月遊馬  (2015/05)  思潮社

2015-06-04 20:23:41 | 詩集
 第3詩集。93頁に16編を収める。
 柔らかな言葉がうねっている。悲しみがあったり、何かを希求する気持ちもあったりするのだろうが、そこには怒りはない。自らが置かれた風景をそのまま受け止めている。その感性が柔らかなのだろう。
 「木馬の/目に映る河のほとりで/あたたかな水がせりあがってゆく」とはじまる「真冬の葬列」は、誰の葬列なのか、いや、何の葬列なのかも明かされぬままにわたしの祈りが描かれる。

   朝とはほどける水のこと
   けれど
   ゆるんだ靴紐のように夏を予感させるものではないから
   わたしはてのひらをかさねて
   目のうすい光に
   祈りを捧げている

 ここでも話者は静かに葬列があらわそうとしているものを受け止めている。そのように受け止められたときに、葬列は美しいものとなっていくのだろう。
 手紙に書かれていたという文言を核にして展開される「写真のなかでクレイシュの子どもたちが溢れて」。おそらくは話者以外には意味が通じないことを承知の上で書かれたであろう詩行だが、それは「うつくしい/うつくしい」。

   受話器のむこうで風の音がする
   それが終わりになるための
   しずかな
   音

   夢に墜ちていく

 詩が伝えるものは意味ではないということをあらためて思う。
 後半には少年少女を描いた7編の散文詩がある。白く尖った少女の指先は少年をつらぬき(「先端恐怖少女」)、また少年は頼りなげな小さな飛行機となって男から街から飛び立とうとしている(「少年飛行機」)。そこには新緑の木々のような匂いを放つセックスが感じられた。
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