神尾和寿は11~12行の作品を6編掲載している。どれも軽妙な語り口なのだが、具体的に描写された物事は少しずつずれていく。それにともなって話者の気持ちも少しずつ捻れていく(本当は逆なのだろうけれど)。
「脱出する(か)」は、”何か”が「ふえていく」作品。最上階から地下にまでふえる”何か”には「思わず ぽんぽんと柏手を打って/拝んでしまう」のだ。
足の踏み場もない
脱出する(か)
指を折って 数えていけば
最期に挨拶を交わすべきは
きっとあの人
廿楽順治は今度は”場所シリーズ”で書いているようだ。
2編のうちの「女子大学前」。おそらく夏目漱石と縁のある女子大学なのだろう。「漱石風の男が/刃先を入れ/女子を何枚にもさばいてい」るのだ。こうして”場所”がもたらす物語が展開される。
氏名を
お椀のように伏せながら
わたくしは会話にただれた路地を落ちていった
「それから」
などといっている
(註:原文は各行とも下揃え)
とんでもない内容であり展開なのだが、何故かイメージはしっかりと地についている。妙な現実味もあったりする。切実なのだろう。
「今、わたしの関心事」という頁では毎号4人の寄稿者が半頁の回答を寄せている。清水あすかの、港に置き去られたコーヒー缶についての考察が面白かった。それはゴミなのだろうか、という。
そのとき放っているのはゴミというよりも、まだ自分の身体なも
の、ではないか。中には二人でしゃべった内容や、海の匂いや、す
すった鼻の音などが、底のコーヒーと共に入っている。
「脱出する(か)」は、”何か”が「ふえていく」作品。最上階から地下にまでふえる”何か”には「思わず ぽんぽんと柏手を打って/拝んでしまう」のだ。
足の踏み場もない
脱出する(か)
指を折って 数えていけば
最期に挨拶を交わすべきは
きっとあの人
廿楽順治は今度は”場所シリーズ”で書いているようだ。
2編のうちの「女子大学前」。おそらく夏目漱石と縁のある女子大学なのだろう。「漱石風の男が/刃先を入れ/女子を何枚にもさばいてい」るのだ。こうして”場所”がもたらす物語が展開される。
氏名を
お椀のように伏せながら
わたくしは会話にただれた路地を落ちていった
「それから」
などといっている
(註:原文は各行とも下揃え)
とんでもない内容であり展開なのだが、何故かイメージはしっかりと地についている。妙な現実味もあったりする。切実なのだろう。
「今、わたしの関心事」という頁では毎号4人の寄稿者が半頁の回答を寄せている。清水あすかの、港に置き去られたコーヒー缶についての考察が面白かった。それはゴミなのだろうか、という。
そのとき放っているのはゴミというよりも、まだ自分の身体なも
の、ではないか。中には二人でしゃべった内容や、海の匂いや、す
すった鼻の音などが、底のコーヒーと共に入っている。
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