瀬崎祐の本棚

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詩集「月光の音」  北爪満喜  (2017/03)  Memories

2017-04-17 13:39:48 | 詩集
 北爪の詩と写真で構成された38頁の美しい作品集。
 表からは24頁の「月光の音」で、3編の詩、12葉の写真。そして裏からは14頁の「登る彼女 昇る月」で1編の詩、3つの組み写真と3葉の写真。あとがきによればポエトリー・フェスティバルで展示したり、ビルの通路に常設展示したりしている作品とのこと。

 波面を飛ぶ白い鳥と霞んだ月の写真が置かれた次の頁に、詩「消えられないあれを 引き上げたい」。海に自転車が落ちて沈んでいる。その自転車は、人に見られているので、消えることができないでいるのだ。彼女(自転車)は私が置き去りにしてきたもののようで、水の中から私を見ているのだ。

   ほんとは
   彼女が目を向けたときだけ
   繋がっていいよと
   私は まなざしのロープを投げられているのかもしれない

 最終連で私は「ロープを掴んで ゆらゆら登ってくる言葉を/書き留め」ている。藻だらけになって私(瀬崎)の中に沈んでいるものは、どんなものなのだろうか。

 裏からの「登る彼女 昇る月」では、天空に高い月と、歩道橋を駆け上がって行く女性の写真が、見開き頁の左右に配置されている。女性たちはどこかへとても急いでいる。そのために輪郭もこの場所からは滲んでいるようだ。

   汚れた街の目をのぞき込めば
   体が 映って
   バックミラーに
   陽差しや風と同じように
   過ぎてゆく 移ってゆく

 最終部分は「登ってゆく/越えてゆく/渡ってゆく//あ、月だ」。白い月や蒼い月。それから放出されている波動は張りつめた音となって地上を満たしているのかもしれない。
コメント
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