逝きし世の面影

政治、経済、社会、宗教などを脈絡無く語る

南北朝鮮のクロス承認を模索した日本(中曽根康弘)

2017年12月21日 | 東アジア共同体
『1991年9月17日、南北朝鮮が国連に同時加盟する 』

26年前の1991年に北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)と南朝鮮(韓国)の両国が国連加盟を全会一致で認められた。もちろん日本も北朝鮮を含む南北の両国の国連加盟に賛成している。
ところが、日本政府は今も北朝鮮を国家として承認していない。
国際法上の国家としての要件(国家承認の要件)とは、『一定の領域においてその領域に在る住民を統治するための実効的政治権力を確立していることが必要とされている』なので北朝鮮は国家の要件を満たしているが日本政府は、『また,我が国としては、当該主体が国際法を遵守する意思と能力を有しているかについても考慮することとしている』(鈴木宗男議員の質問主意書に対する2006年小泉内閣の答弁書)
北朝鮮の国連加盟以来日本は26年間も延々と考慮しっぱなし。
日本を含む世界中の国が国連加盟を承認した北朝鮮を、国家として承認していない異常事態が現在に至るまで続いているが、この26年間で日本国は極限まで右傾化した結果、今では河野外務大臣は他国にも外交関係の断絶を呼びかけているが、日本は断絶云々以前の状態で、そもそも北朝鮮を国家だと認めていないのである。
南北朝鮮の国連同時加盟ですが、これはソ連や中国が南朝鮮(韓国)を承認し、同時に日本や米国が北朝鮮をそれぞれ承認するするという『クロス承認』することで、第二次世界停戦以後では最大規模の朝鮮半島の軍事紛争を平和裏に解決することが決められていた。
南北クロス承認ですが、ソ連のゴルバチョフ大統領が唐突に辞任して仕舞い、1991年12月25日にソ連自体が消滅することでこの約束が有耶無耶にされて、今まで問題が続くことになった。
ところが今回、26年前の冷戦崩壊以前の『冷戦の真っ盛り』、(表向きは)米ソが激しく対立していたと世界中の全員が思っていた1980年代に、早くも中曽根康弘首相が南北朝鮮のクロス承認の構想を語っていたことが、日本国の外交文章から明らかになった。

『反故にされた(先送りされた)南北クロス承認の約束』
★注、
冷戦崩壊よりもかなり早い時期の驚きの南北朝鮮のクロス承認ですが、これは海軍主計将校時代に『土人女を集めて慰安所を作って将兵に喜ばれた』などと自伝に書くような小物政治家の中曽根康弘一人が考えた話では無くて、たぶんキシンジャーなどの裏人脈。アメリカ政府などのパブリックな権力中枢を裏で操るプライベートな本物のエスタブリッシュメントが密かに動いたと思われる。(今回の公開も、もちろん米国のエスタブリッシュメントによる承認と『指示』があった)
アメリカのトランプ大統領が目指すのは(誰の利益にもならない)半世紀ぶりの朝鮮戦争の再開に見えるのはディール(偽装、ハッタリ)であり、30年以上も放置されていた南北朝鮮のクロス承認である可能性が遥かに高い。

『中曽根元首相、ソ連けん制のため韓中・日朝関係の改善を同時推進』2017-12-21 ハンギョレ新聞

日本外務省一般公開した1980年代外交文書で明らかに 
胡耀邦共産党総書記に「韓国が中国と国交正常化望んでいる」  
「日本は北朝鮮と貿易事務所を設置したい」とも提案
中曽根康弘元首相(99)が1980年代に国交正常化に向けた韓国政府の意向を中国に伝えた事実が、日本の外務省が20日に一般公開した外交文書を通じて明らかになった。
中曽根氏は首相だった1986年11月、中国北京で胡耀邦当時中国共産党総書記と会談し「韓国首脳部から『中国との国交、それに至らぬとしても、経済文化など民間の交流の拡大を希望していることを中国政府に伝えてほしい』と言われた」と述べた。胡総書記は「(韓国が)対中関係改善を望むのはいいことだが、(中国がこれを受け入れるためには)、北朝鮮と他の社会主義諸国の理解を求めなければならない」と断った。韓中はそれから4年後の1990年に貿易事務所を設置して関係改善の糸口をつかみ、1992年に国交を正常化した。

当時、中曽根首相は韓国が中国との間に相互に貿易事務所を設置を望んでいると伝えると共に、「(国交が樹立されていない)日朝間にも同様のことを行う用意がある」とも提案した。胡総書記は「北朝鮮に(日本の意向を)それとなく伝え、どう思ってるか探ってみたい」と答えた。しかし、胡総書記は中曽根首相との会談から2カ月後に失脚した。
中曽根氏が韓中と朝日の関係改善を同時に進める構想を提示した背景には、旧ソ連を牽制しようとする意図があった。中曽根首相は、胡総書記に「(貿易事務所の設置を通じて)北朝鮮が北極海(旧ソ連)の方に向かわず、我々の方へ向わせることができる」と話した。
胡総書記は、中曽根首相に南北が対話を通じて緩やかな連邦制を実施することが必要との考えを述べた。胡総書記は中国が南北と米国3カ国対話を北朝鮮に打診したが、北朝鮮が中国の提案について「怒って大変だった」と伝えた。
胡総書記は中曽根首相に中国国内政治と関連し、「年寄りを引退させる」と話した。しかし、その後、党の長老格らがむしろ改革政策を推進した胡総書記を退けた。
戦後政治の総決算を掲げた中曽根元首相は、日本の新保守政治の出発を知らせた政治家と評価されている。首相として初めて靖国神社を参拝したのも中曽根氏だった。このため、中国政府は1986年、日本に靖国に代わる施設を作ることを提案したこともある。しかし、安倍晋三政権によって右傾化がさらに進んでいる状況では、中曽根元首相はむしろ穏健に見える。
2017-12-20 ハンギョレ新聞



孫崎 享‏ @magosaki_ukeru · 2017-12-21
韓国大統領、五輪と重なる米韓軍事演習の延期提案。終了は3月18日,多くの人は北朝鮮のミサイル発射は金正恩の異常な攻撃性とみなしているが、本年春米韓合同大演習を行い、韓国軍30万人参加で8週間継続、目的は政権打倒。貴方が北の指導者ならどうする。

A-1:事実関係
韓国大統領「五輪と重なる米韓軍事演習の延期提案」(12月20日NHK)
韓国のムン・ジェイン(文在寅)大統領は、例年、2月から3月にかけて始まる米韓の合同軍事演習について、来年は、ピョンチャンオリンピックとパラリンピックの開催時期にほぼ重なるため、訓練を延期するようアメリカ側に提案し、検討が進められていることを明らかにしました。
韓国大統領府によりますと、ムン大統領は、19日、アメリカのNBCテレビとのインタビューで、例年、2月から3月にかけて始まる米韓の合同軍事演習について、来年はピョンチャンオリンピックと、それに続くパラリンピックの開催時期とほぼ重なるとしたうえで、「アメリカ側に合同軍事演習を延期することを提案し、現在、アメリカが検討している」と述べました。
ムン大統領としては、演習の延期によって朝鮮半島の緊張を和らげた状態でオリンピックなどを開催・・・

コメント
No.1
ムンジェインは演習が延期されるかどうかはひとえに北にかかっている、などとエラそうなことを言っていますが、北朝鮮が韓国と米国を破滅させる核抑止力を持てばいずれ米韓軍事演習は行われなくなることが確実です。
米韓の強力な軍による演習は北が弱いからこそ行われる脅迫ですから。
開戦すれば一週間で鴨緑江まで到達してみせるとの韓国の将軍の大言壮語もされなくなるでしょう。
私がキムジョンウンの政治アドバイザーなら、委細かまわずやれとアドバイスしますね。
No.2
> 貴方が北の指導者ならどうするか。
とっくの昔に打倒されてしまった国の住人にとっては考えが及ばない問いでないか、とも思う。
No.3
それにしても、孫崎さん。
「北朝鮮」のミサイル実験をミサイル発射というのはもうやめにしませんか。
かつて多くの国が同様のことをしましたし、今もしていますがそれらの国のすることを「ミサイル発射」とはマスコミは決して言わない。
国民に、怖いねぇと言わせて煽りたいマスコミのずるさに孫崎さんまで乗ることはないでしょう。
No.4
それに孫崎さん
目的は政権打倒、と書かれていますが、要するにそれは朝鮮民主主義人民共和国に対する侵略行為を、和らげた表現でいったに過ぎません。
軍事侵略へのハードルを下げる言葉です。
今日での戦争は常に目的は政権打倒、こちらの言うままになる政権樹立です。
相手の住民を皆殺しにして領土を分捕るのはチンギスハーンの時代に流行した戦争目的です。仮にキムジョンウンが南を攻撃しても目的はやはり政権打倒ですよ。



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『日朝国交でソ連牽制の中曾根外交案件』 (ローレライ)
2017-12-21 16:54:11
『日朝国交でソ連牽制の中曾根外交案件』は『中国牽制でも成り立つ話』
返信する
朝鮮半島を戦時状態に保つ日米の安全保障政策に乾杯 (海坊主)
2017-12-31 17:30:01
この朝鮮半島における南北クロス承認に付随する国家承認は、1950年年代から続く休戦状態を解決する重要な機会になったはずです。でも日米両国はこれを反故にした、ということは1991年がどのような年だったかと深く関係していると思います。

少しそこに至る流れを整理してみます。故ボリス・エリツィン氏が1989年に政界に復帰してロシア共産党のトップに就任すると、翌1991年6月にロシア共和国大統領に就任します。この流れが1991年末のゴルバチョフソ連大統領の辞任とソ連解体に向かいました。私は大学時代のサークル合宿先で1991 年8月のソ連クーデターの劇をテレビで眺めていました。この時、ゴルバチョフからエリツィンにパワーが移行したようにソ連は社会主義から資本主義に移っていたのですね。つまり1991年のクロス承認は西側と東側の拮抗した対立状態の中で、相互が相手を脅威を感じつつ義務を遂行する状況には既になくて、パワーはバランスを欠き米国側の思うままになっていた、ということでしょう。
これまでに米国が国家間の取り決めを相手側を尊重して守ったことは決してなく、フェアに見えたケースは全て国益に叶っていたからと解釈出来ます。私はその後のユーゴ紛争から世界に目を向けるようになりました。そして、今の世界の姿が自分なりに理解できるようになったのはそれから相当後のことですが。

さて、孫崎氏の問いかけについて私はどう応えられるでしょうか。それは当然、宗純様と同じく今まで通りあるいは今まで以上に軍事的活動を推し進め、内外にアピールすべき、というもの。関東軍特殊演習が齎したものは独ソ戦への戦力集中を防ぐソ連という国家の消耗であり、戦前からの仮想敵国に脅威を与えることでした。同じことが米韓合同軍事演習の目的にも孕んでいると言えます。北朝鮮は、ここに屈してしまったら地球上から消滅することを十分に理解しています。そして米国がそのようなプレッシャーをかけ続ける理由は、北朝鮮に地理的なオフショアバランスを乗り越える軍事兵器を持っていない、と米国が認知しているからに他なりません。だからこそ宗純様の言われる「委細かまわずやれ」が正解なのです。

そして、北朝鮮は軍事力増強一辺倒の狂乱した国家では全くありません。金正恩氏が兵器開発と同じぐらい情熱を注いでいるのが食糧増産政策。戦うためには、兵站が常に維持されなければなりません。戦時中の日本軍は兵站を維持することが出来ませんでした。(戦争遂行可能期間を甘く見積もって)軽視していたということもあります。現地で調達する、という蝗のような収奪を余儀なくさせた(あるいは当初からその考えだった、という民族差別的な見方も成立します)のは兵站が簡単に途切れたからです。これは兵站自体を軽視していたという考え方に他なりません。兵站を維持するための配備、防衛、維持の計画を怠ったのです。否、そこまで力を注ぐことができなかったのです。つまり、負け戦を自分から始めたということ。国家のために戦場に突き落とされた兵士は、早晩見捨てられる運命に居ました。これが、日本という国家の本質でもあります。

さて、日本はますます食料自給率を下げ海外からの輸入への依存度を高めています。これは自ら戦争を遂行する能力を捨てていると言わざるを得ません。北朝鮮は覚悟を持って食糧自給率の向上に努めています。これはきっと平時の食糧事情の改善にも向かうでしょう。

北朝鮮の軍事的アピールに云々いうよりもまず、日本が朝鮮半島での有事に巻き込まれた時にも耐えうる備えをしているのかを自問自答すべきであり、それが否であるのなら、有事の火種となりえる米韓合同軍事演習にNOを突きつけるべきです。正常ならそうしますよね。でもそうではない。これはこの社会が正常から傾いているから。
でも、今の社会の基準からすれば私たちのような意見を持つ者が狂っているのです。否、狂ってしまっているということなるのです。
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