逝きし世の面影

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「北朝鮮の人工衛星」批判社説に疑問

2009年03月10日 | 東アジア共同体

『新聞時評』 毎日新聞3月10日 

私は、全国紙の社説に関心を持っている。
特に毎日、朝日は、他の全国紙に比べ公正性、中立性が高いと見れれている。
したがって、読者にとっては物事の判断の指標として受け止められる確率が格段に大きいと思う。
それだけに社説を書く際の責任は重いはずだ。

したがって、2月29日付毎日社説『人工衛星でも容認できない』及び翌日付朝日社説『北朝鮮ミサイル「ロケット」は通らない』には唖然とした。
両社説には北朝鮮に対する嫌悪感が溢れ、北朝鮮バッシングの雰囲気の支配する国民感情への迎合を感じる。

『宇宙条約で権利認める』
この問題を論じる出発点は、いわゆる『宇宙条約』により、宇宙の平和利用は『全ての国がいかなる種類の差別もなく・・・・自由に探査し及び利用する事が出来る』(第一条)権利である事を確認することである。
日本を含め多くの国がその権利に基づき宇宙利用を行っている。
北朝鮮もその権利を行使できることは自明だ。

『弾道ミサイルも衛星用ロケットも基本的には同じ技術によって飛ぶ』(毎日)、
『誘導装置を備えたロケットがミサイルに他ならない』(朝日)というのなら、
平和憲法を持つ日本が宇宙利用すること自体も許されないはずだ。

両社説は、国連安保理決議1718が、北朝鮮に対して、『弾道ミサイル計画に関する全ての活動』を停止する事を求めていることを根拠に、人工衛星打ち上げもミサイル計画に関連が有り、この決議に違反すると主張する。
つまり両社説は安保理決議があるから北朝鮮は宇宙開発上の権利が行使できない、と言いたいのだろう。

しかし、訪中した中曽根弘文外相が北朝鮮の発射は安保理決議違犯だとの立場を伝えたのに対し、『中国側は賛同しなかった模様』(2日付毎日)という。
『中国とロシアは最近、北朝鮮が人工衛星を打ち上げた場合、制裁は困難だとの立場を韓国政府に伝えた』(4日付共同電)ともいう。
当たり前だ。
『弾道ミサイル計画に関連するすべての活動』という文言が宇宙利用の条約上の権利をも奪い上げる、と読む事にはどう見ても無理がある。
そもそも安保理がすべての国家に認められる条約上の権利まで禁じる権限があるとは思えない。

『ブッシュ路線のツケ』
1998年の北朝鮮のロケット発射に際して、日本では『北朝鮮脅威』論を増幅する騒ぎが起こったが、毎日社説の指摘のように、
米国は『ごく小型の衛星を打ち上げようとしたが失敗した』との判断を公表した。
しかし毎日社説はなお、『北朝鮮が・・・・ミサイルだけを発射し、人工衛星の打ち上げに成功したと再び虚偽の発表をする可能性も排除できない』という。

『北朝鮮は国際秩序に挑戦し、周辺国を脅迫してきた』(毎日)、
『ミサイルに関して、北朝鮮はいわばやりたい放題だ』(朝日)というが、北朝鮮の核実験までの強硬姿勢はブッシュ政権の強圧政策が招いた結果という認識、米国内では今や常識である。
だからこそオバマ政権の対北朝鮮対話・交渉路線につながろうとしている。
北朝鮮問題は日本の重要な外交問題だ。
両紙には、多角的に情報を提供し、理性的な国内世論を喚起する気骨を持ち、冷静な社説を心がけてほしい。

浅井基文
1941年愛知県生まれ。1963年外務省入省。条約局国際協定課長、アジア局中国課長、駐英公使などを歴任。
1988年東京大学教養学部教授に就任。1990年日本大学法学部教授。1992年明治学院大学国際学部教授を務める。
2005年4月、広島市立大学広島平和研究所所長に就任。


『やっと日本も理性的な意見が聞かれる時期に』

ブッシュ政権のイラク進攻の失敗や、小泉改革の負の遺産を目の前にして、やっと自分の回りの物事を感情的にではなく理性的に、自分本位の主観的判断ではなく冷静に客観的に見られる雰囲気が、日本にも復活しつつあるようだ。
しかし実に長かった。
98年のテポドン騒動の3年前の95年にあったオウム事件。
共産党や私達護憲派はこの問題で、何も反省すべき失敗は無かったのか。?
よく思い出して欲しい。
マンションの共用部分に入ったオウム信者を住居不法侵入で逮捕したり、道で拝んでいる信者を道路交通法で逮捕。裁判ではもちろん有罪で、短期だが懲役刑(実刑)になっていた。
あの時、相手が『オウムだから』『悪い奴だから』と公安警察や司法(警察、検察、裁判所)の超法規的拡大解釈を私達は見てみぬふりをしなかっただろうか。?
誰でもが入れる共同住宅の公共部分に立ち入ったオウム信者を逮捕して10年も経たない04年に共産党員が政党ビラを配っていただけで、同じ容疑で逮捕される。
今回も、『共産党だから』、『嫌な奴だから』と、見てみぬふりをすれば、必ずいつか同じ災難が、自分自身に降りかかってきます。

『9・11事件と北朝鮮問題の共通点』

今オウム事件を大きくし、よく似た事件に9・11と北朝鮮がある。
方やアメリカ人から正気を失わせ、方や日本人から判断力を奪った。
98年のテポドンを、アメリカ始めとする世界各国は人工衛星の失敗と捉えるが、日本だけが強引にミサイル説を主張し各国に認めさせる。
確かにミサイルと人工衛星ロケットには技術的に全く同じ部分が多く含まれ、弾道弾のみに必要な特殊な技術は、大気圏再突入時に大気との摩擦を緩和し先端の爆弾を守る先端部分ノーズコーンのみとも言ってよいほど似通っている。
人工衛星用ロケットも弾道ミサイルも殆んど同一のものである。
その意味では、日本側主張にも言い分はあった。(ビデオ映像が正しいならテポドンは大気圏に再突入出来ないのでロケットの可能性が高い)

しかし国益を優先するあまり、『小さな真実』に目を瞑り、無理やり事実を捻じ曲げた事によるツケは大きかった。
日本側に北朝鮮相手なら、『何をやっても許される』との風潮が生まれる。
訪朝時に拉致被害者の話を小泉は初めて聞いたと嘘発表しているが、森前首相はサミットで外国首脳に第三国での発見を吹聴していた。
その後日本政府は拉致被害者横田めぐみさんのDNA鑑定では偽装工作までして世界の物笑いの種をつくっている。
横田めぐみさんのDNA鑑定、日本版ネオコンが偽造 (朝鮮、台湾問題 / 2008年03月03日
http://blog.goo.ne.jp/syokunin-2008/e/4f1a92a9abfa8da7d1449b63d48c5f58

イラク開戦前にブッシュのアメリカがイラクのフセイン政権に取った、露骨に不真面目で不正な手法を、日本政府が北朝鮮に対して今でも変わることなくとっている。

しかし、今や時代は流れ世界は変わり、9・11事件はアメリカ政府公式報告書の信用度は地に落ち、信じている人は極少数。
(ブッシュ政権崩後数年以内には新しい動きが出る。10年以内には政権幹部の何人かは弾劾されるでしょう)
ひょっとしたら正気に返るのは麻生太郎首相の日本人より、オバマを選んだアメリカ人の方が早いかもしれない。

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