(前回からの続き)
先日の公会議で安倍首相は、割高な携帯通信料が家計を圧迫しているとの認識から、その引き下げの検討を指示したとのこと。一生活者として携帯料金がこれを機に下がるのはありがたいが、生活コストを引き下げて家計を助けたいという気持ちが少しでも首相にあるのなら、同料金よりも生活必需度が高いエネルギー費と食料品価格を下げるための政策を先に実行すべき―――というのが、上記の首相指示を伝えるニュースに接したときの個人的な思いです。
・・・もちろん、そんなことが安倍首相にできるわけはありません。シツコク綴っているように、安倍政権が始まって以降の光熱費(電気代やガス代など)や食費の上昇は「アベノミクス」つまり円安誘導に必然的にともなうもの。そのためこれらのコストを下げようとすることは自身の政策自体を否定することになってしまいます。だからといって食費等の相次ぐ値上がりを放置したままだと、その根本原因である「円安」とその誘導策であるアベノミクスに対する国民の嫌悪感が高まってしまう・・・
ということで安倍首相は、携帯電話3社体制の固定化という、円安以外の要因で高止まりしている携帯通信料を問題視し、その値下げを実現させてみせ、国民の物価高に対するフラストレーションを少しでも和らげるとともに、国民の注意を同料金に向けさせることで円安への視線が厳しくなるのを食い止めようとしているのではないか・・・
こちらの記事等にも書きましたが、電気料金もこれに似ています。アベノミクスで円建て燃料費が高騰したことを受け、これまでに多くの電力会社が料金の値上げ申請をしてきましたが、安倍政権はその都度、料金の上げ幅の圧縮を各社に求めてきました・・・って多くの場合、各社の経営努力に言及しながら、です。つまり同申請の背景に電力会社の努力不足があると暗に指摘することで、その真の原因が燃料コスト高騰をもたらした自らの円安誘導政策にあることを国民に悟られないようにしている(?)、といった具合。まあ電力会社は「燃料費がかさんだのは政府の円安誘導のせいで・・・」なんて絶対に言えません。東電の原発事故以来、各社の立場はすっかり弱くなりましたからね・・・
では、そこまでして安倍政権が円安状態を守ろうとする理由は何か?ですが、まずはやはり「株」でしょう。つまり円安・・・で外国人投資家の買いがもたらす株高を維持したいということです。これこそわたしが言うところの「カブノミクス」(株だけが取り柄、という意味)―――アベノミクス最大の成果といえるもの。GDPや国民の資産総額は円安誘導で実質的に(価値の国際標準であるドルで測定すれば)激減しているなか、株価(日経平均等)だけはアベノミクス前後でドル建て・円建て価格の双方で上昇しましたからね・・・。で、その株価のメインエンジンこそは円安だから、これを否定的に捉えるわけにはいきません、円安のせいでガソリン代やエンゲル係数がどれだけ上がろうが・・・
まあわが国がアベノミクスの株高で得たものと円安誘導で失ったものの差し引きは、どう考えても超マイナスでしょうが・・・