南条君から、引っ越しパーティの予約が入った。
本来なら、南条君の部屋でというのが、筋なのだろうけど、
部屋が狭いし、コロナ禍ということもあって、マスターの店でと言う事になったらしい。
メンバーは、店の常連と、図書館の同僚が渚ちゃんの他に一人。
テーブルは、離して座るということで、準備を始めた。
渚ちゃんと久実さんが手伝いに来てくれた。
一人一人の皿にサンドイッチや唐揚げ、アスパラの肉巻きや、ポテサラ、串カツ、ミートボールが、
マスターの手に寄って素早く盛り付けられていく。
マスター、一人で作るの大変だったでしょう?
久実さんが、驚きの声を上げる。
まだ、散らし寿司や、おでんも有るよ。
皆が、きっと喜ぶよね。
渚ちゃんは、バイトの経験者だから、マスターの盛り付けた皿を、手際よくテーブルに並べて行く。
久実さんは、飲み物や、コップを並べる。
加藤のおじいちゃんが、ワインを持ってやって来た。
ちょっと早過ぎたかね?
皆さんも、そろそろ来るでしょうから、お座りになってて下さいよ。
加藤のおじいちゃんは、マスターに促されて、奥の席に座った。
次に来たのは、南条君だ。
ラフな感じの水色のセーターが、良く似合っている。
お世話になりますと、マスターに挨拶して、加藤のおじいちゃんや、渚ちゃん達にもお礼を言った。
大体、準備が整った頃、冬子さんと椿さん親子、図書館の同僚の伊達さんが、やって来た。
わあ、凄いご馳走ですね、この店に初めてやって来た伊達さんは、感嘆の声を上げた。
皆が、それぞれのテーブルに付いたのを見計らって、南条君が前に出て、簡単に挨拶した。
マスターのお蔭で、こんな美味しそうな料理を用意して頂いたので、皆さん楽しんでいただけたら、何よりです。
これからも、どうぞよろしくお願いします。
加藤のおじいちゃんが、乾杯の音頭を取って、皆がグラスを重ねた。
マスターもカウンターの中から、乾杯とグラスを掲げた。
マスターの横に並んだ渚ちゃんが、それにしても、父さんと、空君遅いよねと、心配してる。
ドアが、開いた・・・。