今夜も本をまくらに。

山歩きが好き、落語が好き、おいしい物が好き、中島みゆきが好き、
でもやっぱり活字がなければ生きていけない私。

八月の六日間

2014年09月13日 | 「本」のひきだし

ブクログより



八月の6日間に何が起こったのか?北村薫と聞くとこんな風に思ってしまいますが、いえ特に事件が起こるわけではないのです。
帯の説明文を読むとどうやら山行の話らしいのです。
ですから今回初めて北村薫を読んでみました。
この年にして、まだまだお初!はあるものです。

編集者である主人公(四〇歳前後女性)は仕事の合間を縫って山に出かけます。
季節ごとにまとまった休みを作ると山に出かけていきます。二月の三日間、十月の五日間というふうに好きな山域を選んで縦走します。
時には仕事が押して前夜遅くなり、ほとんど睡眠がとれなくて寝不足で体調が悪くて(どこかで聞いたような・・・)ふらふらしながら歩いたり、風邪で熱が出て予定を変更したり、それでも山に出かけていきます。

女子が単独で山を歩いていると、必ずと言っていいほど声をかけられますね。私でさえ(まだ女子の端くれ)誰彼と声をかけてくださいます。よっぽど心細げに頼りなげに見えるのでしょう。
「どちらまで?」「どこから?」山で声を掛け合うというのは、決して興味本位ではなく情報を交換したり、何かあったときの後々の参考のために、あるいはそのときの状況のアドバイスであったり、とても大切なことなんですよ。とある山で出会った人はおっしゃっていました。

この主人公もほとんど単独なので例外なくあちこちで声をかけられ、時にはうっとうしいななどと思いながらも、体調の悪いときに出会った人のアドバイスに従い、賢明な判断で救われたりします。

挨拶だけですれ違う人もいれば、意気投合して一緒に歩き出す人もいれば、下界に降りてからもお付き合いが続く人もいます。
山って本当に最初から垣根が無くて、誰とでもすっと話が始まってしまう、とてもよくわかります。
まあ、下界の日常では主人公も仕事、プライベートとそれなりに苦労があって、それだからこそやりくりして作った時間を山で満喫するのです。

うんうん、とってもわかるわぁ。
私もいつか、山から山を縦走して、疲れたところの山小屋で、休憩、宿泊、といった山歩きをしてみたいものです。時間や日にちを気にしないで。


八月の六日間 / 北村薫
★★★★☆

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