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“燐光群”主宰・坂手洋二が150字ブログを始めました。

『天使も嘘をつく』は、竹下景子さんが『ブルークリスマス』以来に挑戦するSFでもある?

2016-11-13 | Weblog
燐光群新作『天使も嘘をつく』は、けっしてSFではないのだが、劇中に撮影されようとしているSF映画があるという背景の「設定」は出てくる。
SF映画といっても、私が十年以上前に慶應義塾大学の巽孝之教授ら「アメリカ文学会」にその題名で話すように依頼されて行った講座「冷戦期のアメリカB級表現に於ける核恐怖」という題名にぴったりするような、B級のものである。そんな講座をアンチョコを一切持たずに何百人かの学者さんたちばかりを前に一時間半話せてしまった自分にも呆れたが、まあ頼んできた巽教授も巽教授である。
そうしたB級表現の多くは、一つの街が、宇宙からの生命体に乗っ取られるというストーリーである。
「冷戦期」のアメリカB級SF映画の多くが、ソビエトや核兵器への恐怖心からうみだされたとする仮説。「共産主義という名の全体主義」や「核兵器」への脅威が、多くの場合、アメリカの片田舎の街が、未知の力や未確認生物に支配されるという展開をとらせる。ワンパターンということではある。
これはちょっと設定が違うが船という共同体が一種の村という相似形といえなくもないスタンリー・クレイマー『渚にて』に始まり、『ブロブ』『マックィーン絶対の危機』『遊星からの物体X』『ボディ・スナッチャー』『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』等が該当する。
ジョージ・A・ロメロの『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』は史上初のゾンビ映画だが、死人をゾンビとして甦らせる怪光線はもちろん核兵器のメタファー。ゾンビに支配される街は、当時膠着状態に陥っていたベトナム戦争で、米兵たちにとって「幾ら殺してもわき出てくるように思えた」というベトコンに怯え、一度も自分の国で地上戦を体験したことのないアメリカが生じさせた、もしも自分の街が見知らぬ敵に乗っ取られたらという、「潜在的な恐怖心」を体現しているといえる。
そう、それはどこか、「トランプのアメリカ」を支えるバックグラウンドの層だ。

さて、『天使も嘘をつく』出演の竹下景子さんといえば、SF映画の代表作がある。倉本聰さん脚本の『ブルークリスマス』である。
『ブルークリスマス』は、1978年東宝映画製作、岡本喜八監督。
特撮映画の本家である東宝が「特撮を一切使わないSF映画」を目指した意欲作ともいわれているらしい。
世界各地にUFOが頻繁に現われ、それと遭遇した人間の血が青く変質する。青い血の人間が世界中で急激に増加する事実を各国の政府が隠蔽する、というスケールの大きな物語である。UFOと地球人類の遭遇そのものよりも、排除しようとする国家の謀略に重点を置いた政治ドラマである。最終的には軍事力による青い血の人間の根絶が行われる。
ヒロインの景子さんは勝野洋演ずる国防庁特殊部隊員の恋人役で、やはり血が青くなってしまうのである。この映画は予告編からいきなり景子さんの「私、血が青いの」というような告白の台詞にインパクトがあった。
倉本聰さんのオリジナルシナリオは、製作の前年に『キネマ旬報』に掲載された。私もそのとき読んだ。傑作だと思った。映画化されたのはほんとうによかった。封切り時に見たからもう三十八年前のことなのだが。
大島渚さんが監督した田村孟さんの『少年』もそうだが、昔はなかなか映画化が実現しないでいるシナリオをあえて雑誌に掲載するということはよく行われた、
『ブルークリスマス』は当時東宝映像の社長だった田中友幸氏が雑紙掲載に目に留めたことが製作の契機になったそうだ。
『新世紀エヴァンゲリオン』で、使徒の波長パターンとして表示される「BLOOD TYPE:BLUE」が、『ブルークリスマス』の英語題名からの引用であるそうだ。庵野秀明監督はこの映画と岡本喜八監督の大ファンなのだそうである。

そんなわけで劇中の映画『天使も嘘をつく』は、竹下景子さんが『ブルークリスマス』以来に挑戦するSFである、ともいえるのである。

乞御期待。


⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯

燐光群新作

『天使も嘘をつく』


世界を変えられる映像を撮れるなら、魂だって売る。
『天皇と接吻』に続いて「映画」と「民主主義」を問う、竹下景子×燐光群の最新作!

戦争や破滅の先にしか、「新しい時代」は見つけられないのか。
「未来」に向かう途中経過ではない、「いま」を生きる。

『チェックポイント黒点島』、そして『3分間の女の一生』から6年、クリモトヒロコ=竹下景子の、新たなる冒険。

竹下景子 馬渕英里何 円城寺あや 中山マリ
鴨川てんし 川中健次郎 猪熊恒和 大西孝洋
樋尾麻衣子 杉山英之 武山尚史 東谷英人 荻野貴継 
百花亜希 田中結佳 宗像祥子 秋定史枝 大浦恵実 塩尻成花

作・演出○坂手洋二
照明○竹林功(龍前正夫舞台照明研究所)
音響○島猛(ステージオフィス)
舞台監督○橋本慶之
美術○じょん万次郎
演出助手○大河内直子
衣裳○小林巨和
文芸助手○清水弥生 久保志乃ぶ 桑原睦
宣伝写真○姫田蘭
宣伝意匠○高崎勝也
協力○アイ・バーグマン ホリプロ 浅井企画 DULL-COLORED POP (有)スタッフ・テン
制作○古元道広 近藤順子 
Company Staff○桐畑理佳 山村秀勝 脇園ひろ美 鈴木菜子 番匠郁 松岡洋子 根兵さやか
   福田陽子 鈴木陽介 西川大輔 宮島千栄 橋本浩明 内海常葉 秋葉ヨリエ
主催○有限会社グッドフェローズ
後援○杉並区
提携○NPO法人劇場創造ネットワーク/座・高円寺 

東京公演
11月18日(金)~ 27日(日) 座・高円寺1
開演 平日夜7時 日曜・水曜は昼2時のみ 土曜・火曜・木曜は昼2時・夜7時の二回公演  

アフタートーク

11/21(月)ジェイムズ八重樫(シアターアーティスト)
11/22(火)福島みずほ(参議院議員・社会民主党副党首)
11/25(金)永田浩三(武蔵大学教授・ジャーナリスト)

いずれも夜の部です。本公演のチケットをお持ちの方、ご予約の方はご入場頂けます。

http://rinkogun.com/tenshi.html



【全席指定】 
◇一般 4,200円(なみちけ使用可)
◆劇団特別割引(劇団予約・燐光群オンラインチケット扱いのみ) 
■一般 3,800円  ペア 7,000円 
■U-25(25歳以下)/大学・専門学校生2,500円 高校生以下1,500円 ※U-25/学生券は前日迄にご予約の上、当日受付にて要証明書提示。 
<なみちけ>
座・高円寺の劇場回数券「なみちけ」もご利用いただけます。
「なみちけ」とは、4枚綴りのチケット引換回数券です。座・高円寺で上演する主催・提携公演であれば、お一人1枚1ステージにご利用になれます。ひとつの公演に何回足を運んでも、お友達と一緒に使ってもOK。
一般用12,000円(1シート3,000円×4枚)、学生及びシルバー用10,000円(1シート2,500円×4枚)です。詳細は座・高円寺チケットボックスまで。

【前売扱所】
◆座・高円寺チケットボックス(月曜定休) 
■03-3223-7300(10:00〜18:00)  窓口(10:00〜19:00)■オンライン予約 http://za-koenji.jp/
◆F/T チケットセンター
■03-5961-5209(12:00~19:00 定休日あり)■オンライン予約 http://festival-tokyo.jp
◆燐光群オンラインチケット(U-25/ 学生券を除く) http://rinkogun.com 
■24時間いつでもホームページ上でご予約頂き、セブンイレブンでチケットをお受け取り頂けます。
■お支払いは現金(セブンイレブン)、またはクレジットカードとなります(手数料はお客様負担)。
■※会員登録(無料)が必要です。

◆ご予約・お問合せ
■燐光群/(有)グッドフェローズ 03-3426-6294■ticket-rinkogun@ee.alles.or.jp
■①<お名前/電話番号/希望日時/チケットの種類と枚数>をお伝え下さい。こちらからのお返事を以てご予約とさせて頂きます。
■②当日、開演の10分前までに受付にお越し下さい。代金と引換でチケットをお渡しします。
■ この時間を過ぎますと、あらかじめご用意しておりましたお席にご案内できない場合がございます。
■※キャンセル・日時変更はできません。 

◎以下のサービスは劇場で承ります 
お申込・お問合せは座・高円寺チケットボックス 03-3223-7300まで

*車椅子スペースをご利用の方は、前日までにお申し込みください(定員あり) *障がい者手帳をお持ちの方は、座・高円寺チケットボックスでのご予約に限り1割引きになります。 

*託児サービス(11月19日・22日・24日・26日 各14時公演/定員あり・対象年齢1歳~未就学児・1週間前までに要予約)料金:1,000円

○座・高円寺
〒166-0002 杉並区高円寺北2-1-2 03-3223-7500
JR中央線「高円寺」駅 北口徒歩5分
※土・休日の中央線快速は高円寺駅に停車しませんのでご注意ください。
※駐車場はございませんので、お越しの際は公共交通機関をご利用ください。

前売開始○10月9日(日) ※劇団での販売は11:00〜

【国内ツアー】
[岡山]11月29日(火)岡山市立市民文化ホール
[名古屋]12月1日(木)・2日(金)熱田文化小劇場
[津]12月4日(日)・5日(月)津市芸濃総合文化センター 
[伊丹]12月8日(木)〜 11日(日)AI・HALL(伊丹市立演劇ホール)
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