Blog of SAKATE

“燐光群”主宰・坂手洋二が150字ブログを始めました。

日本のジャーナリズムを殺したのは「平和国家日本」を消滅させた安倍である

2015-02-01 | Weblog
イスラム過激派組織「イスラム国」による日本人人質事件は、拘束していたジャーナリストの後藤健二さんとサジダ・リシャウィ死刑囚(ヨルダンで収監中)の交換期限とした29日日没(日本時間29日深夜)から2日以上が過ぎ、膠着状態と思われていた。
1月31日深夜(日本時間2月1日未明)、「イスラム国」は後藤さんが殺害される様子を映したビデオ映像を「日本政府へのメッセージ」としたインターネット動画サイトに公開した。
後藤さんとみられる男性がひざまずき、横にはナイフを持った黒ずくめの男が立っているという。
英語で、安倍政権のこの間の動きを批判し、日本が「イスラム国」と戦う連合に参加したことを理由に後藤さんを殺害すると語り、最後に後藤さんの首にナイフを突きつける場面で映像が暗転。その後、男性の遺体が映し出されているという。
映像の左上には、「イスラム国」のメディア部門のロゴが映し出されていることから、信憑性は高いという。
動画の中のメッセージは以下の通り。

「日本政府よ。
邪悪な有志連合を構成する愚かな同盟諸国のように、お前たちはまだ、我々がアラーの加護により、権威と力を持ったカリフ国家であることを理解していない。軍すべてがお前たちの血に飢えている。
安倍(首相)よ、勝ち目のない戦争に参加するという無謀な決断によって、このナイフは健二だけを殺害するのではなく、お前の国民はどこにいたとしても、殺されることになる。日本の悪夢が始まる」

直後の会見で安倍総理は強い口調で「政府として全力で対応してきた」と言うが、それは本当だろうか。アメリカ政府に「身代金を払うな」と言われて逆に安心して対応をサボり、ヨルダン政府に甘えてきただけではないか。もちろんヨルダン政府にはいかなる瑕疵もない。事態が膠着していたのではなく、日本政府がちゃんとした外交策を持っていなかったのは、誰の目からも明白である。解決に向かわず、かの地にいろいろなパイブを持つ人たちを遠ざけてきていたことも、既に知られている。
安倍総理は「非道、卑劣きわまりないテロ」というが、彼らを挑発したのは日本側だ。

対イスラム社会で言えば、安倍総理がイスラエルと手を組むことを世界に宣言したことが決定的だった。
パレスチナ人民は、決してテロリストではない。
パレスチナの一般市民に対する空爆を繰り返す国際法違反のイスラエルこそ「テロ国家」なのである。それは最大の親イスラエル国であるアメリカに逆らえない日本以外の国々が基本的にコンセンサスとしていることである。
報道によれば、イスラエルのネタニヤフ首相は今年になって同国がパレスチナ自治政府のために徴収している税金の送金を凍結することを決めた。イスラエルは1990年代にできた取り決めで、パレスチナが課す関税などを代行徴収し、毎月送金しており自治政府の重要な財源になっていた。凍結を決めたのは次回の送金分約5億シェケル(約150億円)で、自治政府職員の給与遅配などの影響が出る。
イスラエルの非情な収奪は、パレスチナが国際刑事裁判所(ICC)加盟手続きを進めたことへの報復措置だという。空爆などだけではあきたらず兵糧攻めにしているのだ。
パレスチナ自治政府のアリカット交渉責任者は送金凍結について、「パレスチナの財産の白昼における強奪であり、政府ではなく海賊が行うにふさわしい行為だ」「これは戦争犯罪であり、われわれがICCに加盟申請したことの正しさを証明するものだ」と激しく非難している。
日本政府による「人道的支援」というなら、反「イスラム国」の「間接的軍事後方支援」に二億ドルを支払ったりするのでなく、例えば困窮するパレスチナの生活者たちをこそ救うべきなのだ。
しかしイスラエルを訪問した安倍総理は、最悪の演説をした。
外交については殆ど幼児に近い。パレスチナ自治政府に対して、国際司法裁判所に提訴するという公明正大かつ合法的な手段を、不穏当だとした。
安倍総理はイスラエルで、ユダヤ教のキッパを被ってのお祈りなど公開し、経済連携強化を宣言し、「イスラエルと日本は同盟を組んだ」ととられても仕方のないだけのことをした。
これはそもそも日本国憲法の「政教分離」に反している。
政府は先の1月9日の閣議で、総理大臣の靖国神社への公式参拝について、「宗教上の目的によるものでないことが外観上も明らかである場合には、憲法の禁じる国の宗教的活動に当たることはない」などとする答弁書を出したが、これを理性ある人は詭弁と呼ぶ。
「戦没者の追悼」を宗教と切り離して行うなら、神社以外の別な方式を設けるのが世界的な常識である。
総理大臣に私人としての信教の自由が保障されているとしても、公職の立場でユダヤ教のキッパを被ってお祈りするような宗教的な行いは断じて許されるべきではない。避けるのが筋である。
そうしてこの国はあからさまにアラブのイスラム教徒を自分から敵に回したのだ。あの瞬間日本はテロの対象国への道を一気に推し進めた。
安倍総理は「国際的なテロへの取り組み」というが、「反パレスチナ」を表明した以上、イスラム社会に対して宣戦布告をしたのは、どう言い逃れをしようと、安倍総理の方なのである。
安倍政権は「テロや暴力に屈しない」という言葉を軽々しく使うが、パレスチナのイスラエルへの反撃を「テロ」と認識する国は極めて「政治的」な判断の上でそうしているだけである。
岡村善文国連次席大使の国連総会での「イスラム国」への宣戦布告がそれに追い打ちをかけた。

防衛省は日本の防衛関連企業から武器を購入した開発途上国などを対象とした援助制度の創設を進めようとしている。武器購入資金を低金利で貸し出すほか、政府自ら武器を買い取り、相手国に贈与する案も出ている。政府開発援助(ODA)とは別の枠組みだ。
これは、日本の戦後の平和を保ってきた武器輸出三原則を損なうものであり、いますぐにでも武器輸出を原則認める防衛装備移転三原則をこそ破棄するべきなのだ。
日本を「戦争ができる国」にしようとしている現政権の舵取りは、世界中が承知しているところだ。

安倍総理は今朝も「テロリストを決して許さない。罪を償わせるために国際社会と連携していく」と言っているが、空疎で無内容なのは今に始まったことではないが、翻訳されて世界に配信されることを考えてほしい。これはさらなる戦争宣言である。
そもそもこの事件の発端は、安倍総理こそが「「イスラム国」がもたらす脅威を少しでも食い止めるため」「「イスラム国」と闘う周辺各国に支援を約束する」と言ったことなのだ。「イスラム国」は「戦争」を仕掛けられたと解釈したのである。
そもそも「イスラム国」は、「イラクの聖戦アルカイダ」が前身であり、アメリカが仕掛け日本が支援したイラク戦争から生み出されたのだ。
「テロとの戦い」などという言葉には何のリアリティも実態もない。安倍のエジプトでの演説も、日本がアメリカの尻馬に乗り、イスラム社会への差別を深め、シオニズムに与したと受け取られたというだけのことだ。
ほんとうに迷惑だ。これから日本人の海外活動は著しく妨げられる。中東に関わる友人たちの命に関わる。

安倍政権がこの件を集団的自衛権行使実行に結びつける? そんな屁理屈は通るはずもない。断固として拒絶すべきである。理性あるジャーナリズムの皆さんには、うかうかそうした論議に乗っからないでもらいたいものだ。

とにかくはっきりしているのは、ジャーナリストとして自立した活動を保障されるべき後藤健二さんを殺したのは「平和国家日本」を消滅させた安倍政権であるということだ。
日本のジャーナリズムを、日本という国が殺したのだ。
外交力ゼロも罪だが、日本を戦争当事国にしてしまった政権の罪は、かつてないほどに重い。
引責辞任は当然のことである。
そしてこの国が憲法に従い、ほんとうに平和を望むなら、国としての軌道をただし、日本が「平和国家」であり続けることを一刻も早く世界に示すしかない。

後藤さんについての報道への批判など世間は喧しいが、そうしたことよりも、安倍政権が既に何十個目かの、ほんとうに致命的なミスを犯したことを明確に認識すべきだ。

これらは私の「私見」ではない。世界の目はそう見ているはずだ。

悔しさと虚しさに耐えながら記す。
「国」の都合で失われていい命など、ない。
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41 コメント

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聞く耳持たずですね (あああ)
2015-02-01 11:46:03
安倍総理を普段から批判してるから
全ての事件の事象が「安倍をなんとか批判できるかどうか」でしか考えてないのでは?
どうみても悪いのはテロリストでしょ
その材料がもらえて意気揚々としてるようにしか見えない
公平さってもんがないね、あなたには
信じたいものしか信じない、そういう記事ですよこれは
返信する
同感 (のり)
2015-02-01 13:42:52
そうだ、あなとの言うととおりだ!

この場合の解決方法は軍隊派遣しかない。国民の税金を身代金にしてはいけない。

安倍政権はテロリストは許さないといいながら、自衛隊を派遣して救出活動を実行しなかった。

自衛隊派遣を実施しなかったことにより、これで日本はテロを野放しにする国家というレッテルを貼られることになる。


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Unknown (Unknown)
2015-02-01 14:33:55
>これらは私の「私見」ではない。世界の目はそう見ているはずだ。

そうですね。分かります!
はずだ。ということは、私見ではなく思い込みですよね。素晴らしいと思います。

戦争が出来る国なら救える命があるということも事実ですよね。

>「国」の都合で失われていい命など、ない。

わかります。
国がテロ組織の要求に従っていれば失われなかった命ですよね。
これからも政権批判頑張ってください!応援しています。
返信する
Unknown (hanomatk0805)
2015-02-01 15:07:43
坂手洋二さん
これからも発信
期待しています。

いち高校演劇関係者
返信する
Unknown (SOY)
2015-02-01 15:24:46
安倍政権支持というわけではないのですが、邦人殺害の事実に目を背けて、全ては政府・為政者の責任であるは、世界共通認識ではないと思いますよ。

安倍政権批判は、結構ですが、本件、まず非難されるはテロ行為です。また、邦人解放のカギは、ヨルダン政府が握っていたと思います。日本政府ができることは限られていたと思われます。

事実に反して、何かにつけ、政府のせいだの、世の中のせいだのという批判する風潮はどうかと首をかしげます。

亡くなった方、遺族、救出しようとしていた方の配慮もなく、安倍批判で正義をかざしても、むなしいだけです。
返信する
無責任なこと書くなよ (Unknown)
2015-02-01 15:27:05
それじゃこれを書いてる貴方に聞きますが、どうするのが良かったのだというのですか?。身代金を払うの?、それとも他国の死刑囚を解放するの?。そんなことして何が解決するんですか?。あなたが一国を預かる総理ならそうするのか!?。そんな無責任なことする奴には総理大臣なんかやらせられないよ!。
こういう理不尽極まりない行為の犠牲となった後藤さん、湯川さんはたいへんお気の毒ですが、悪いのは明らかにイスラム国の方でしょう?。
トンチンカンなこと書いてるんじゃないよ!。
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Unknown (野田成人)
2015-02-01 15:29:52
仰ってることは分かりますが、安倍政権だけの話ではないでしょう。

イスラム圏への文化的侵略を主導してきたアメリカ、そこに従属し続けてきた歴代の自民党政権全てと、それを容認してきた国民全員の問題だと思いますが。
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Unknown (山田)
2015-02-01 15:50:50
イスラム国のコメントをそのまま紹介すべきではないし、
ここで政権を批判することはテロリストの思う壺というものだろう
返信する
Unknown (Unknown)
2015-02-01 16:25:36
私はインドネシア系2世の、日本国籍を持つイスラム教徒です。父がインドネシア人、母が日本人、私は生まれも育ちも日本です。
ただし、新興と礼拝を通じて在日のイラン人やイラク人、トルコ人など世界中のイスラム教徒と日々交流を持つものであります。

拝見しました記事中でイスラム国とイスラム教国を混同するような記述が見られたことが残念でならず失礼ながらコメントさせていただくことといたしました。

中東情勢に詳しいわけではありませんが、2億ドルの支援はヨルダンやトルコなど、ISISの脅威に脅かせれているイスラム教国に対して、そしてISISから逃れて難民として暮らすなんの罪もないイスラム教徒に対して送られるものです。
ほぼすべてのイスラム教徒にとってISISこそ敵です。
ISISとの戦いは戦争ではなく犯罪取り締まりであると考えていただきたいです。

日本に暮らす異教徒として、靖国や政教分離の徹底はとても神経質な問題です。ですが安部首相はトルコではイスラム式のお祈りをしてくれて私達イスラム教徒の間では大変に好印象に映りました。今回ユダヤ式のお祈りをしたことでそれを非難する方は少なくとも私の周りには見当たりません。彼はイスラム教徒でもユダヤ教徒でもなく、あくまで外交先の文化に対する敬意を示しただけに過ぎないと理性的に理解しているからです。
もちろん痛ましくも二名の命が奪われてしまったことに対して外交上の不手際があったと今後検証されるべきだとは思いますし、万が一にでも今回の件から自衛隊が海外において武力を行使できるようになることは絶対に反対です。

最後にう一度、ISISによって苦しめられているのはだれでもない、一般のイスラム教徒であり、ISISと主に戦っている主体はヨルダン、シリア、イラク、トルコといったイスラム教国であることをどうか忘れないで下さい。
返信する
正解はないけど (+141)
2015-02-01 16:32:44
「手術は完璧でした」が亡くなりました。と、「マニュアルとは別の認められていない方法をとりました」といって命が救われるのは、どちらが正解?私は身代金でも人質交換でも命を救うカードを切るべきだと思う。担当医は首相1人しかいないのだから。それで非難されるなら辞任してやれ。
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