最高裁判所裁判官の暴走を許さない

最高裁判所裁判官の国民審査は、衆議院選挙の時の「ついでに」ならないようにしましょう。辞めさせるのは国民の権利です。

監査手続がリスクに対応していないので会計士協会のHPで公開は問題ない

2020-12-28 20:05:29 | 日記
令和1(受)1900  開示禁止処分等請求控訴,同附帯控訴事件
令和2年11月27日  最高裁判所第二小法廷  判決  破棄差戻  東京高等裁判所

上場会社監査事務所名簿への登録を認めない旨の決定を受けた公認会計士らにつき,その実施した監査手続がリスクに対応したものか否か等を十分に検討することなく監査の基準不適合の事実はないとして当該決定の開示の差止めを認めた原審の判断に違法があるとされた事例

1 公認会計士である被上告人らは,上告人の設置する品質管理委員会に対し,上場会社監査事務所名簿への登録を申請したところ,本件委員会から上記登録を認めない旨の決定を受けた。
本件は,被上告人らが,本件決定が上告人のウェブサイトで開示されると被上告人らの名誉又は信用が毀損されるなどと主張し,上告人に対し,人格権に基づき,上記の開示の差止め等を求める事案である。


公認会計士は弁護士かと同様に、公認会計士協会に登録しなければなりません。さらに、監査の品質についても調査を受けて一覧に記載されることになります。

2 限定事項付き結論を表明し,かつ,その限定事項が上記監査事務所の表明した監査意見の妥当性に重大な疑念を生じさせるものである等の場合には上記登録を認めないことを検討することとされており,本件委員会が上記登録を認めない決定をした場合,本件委員会の委員長は,その決定を受けた監査事務所を上場会社監査事務所名簿等抹消リストに記載し,上記登録を認めなかった旨等を上告人のウェブサイトで開示することとされている。

監査報告書には適正意見、不適正意見、意見差し控えの3つが原則ですが、場合によっては限定付き適正意見というのがあります。例えば、大きな災害等があって期限内に監査しきれなかった部分以外はOKとするようなことです。中には怪しいものがあって、特定の取引についてはおかしいと思った場合につけられます。

(3) 上告人の規則等に基づき定められた「品質管理レビュー手続」において,限定事項付き結論は,品質管理レビューの対象とされた監査事務所の品質管理のシステムに関する担当者又は専門要員等につき「品質管理の基準が求める個々の監査業務における品質管理の手続を実施していない事実」(以下「基準不適合事実」という。)が見受けられ,そのために上記監査事務所が実施した監査業務において職業的専門家としての基準及び適用される法令等に対する重要な準拠違反が発生している相当程度の懸念がある場合等に表明されるものとされている。

監査基準に準拠しないで監査意見を出してしまったと会計士協会は言ってるだけですね。これはプロとしてはやってはいけない例ですね。

(5) 本件会社は,本件監査の以前から,連続して営業損失を計上し,営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスとなるなどしていたほか,1億円程度を現金で保有することが常態化していた。被上告人らは,本件監査において本件会社の現金預金につき特別な検討を必要とするリスクを識別し,現金勘定の出入金記録の確認のため,現金元帳と通帳及び領収書等との突合を上記事業年度のうち約5箇月半につき実施するなどした。また,被上告人らは,上記事業年度の末日を基準時とする銀行に対する本件会社の預金残高確認を実施した。もっとも,本件会社が被上告人らに対して上記現金の所在を明らかにしなかったため,被上告人らは,現金の実在性の確認(以下「現金実査」という。)を上記事業年度の末日である平成26年3月31日までに実施することを予定していたにもかかわらず,これを予定どおり実施することができず,同年5月及び6月にようやく実施することができた。
その上で,被上告人らは,上記財務諸表につき無限定適正意見を表明した。


以前から色々あった会社みたいですね。監査法人が当てにならんということで、新しく変更したけど会社側が抵抗してちゃんと資料を提出しないばかりか、実査もさせない状態でしたか。プロならばこの時点で意見差し控えが相当でしょう。その代りこの会社は、管理ポストに放り込まれますので、その影響は会社存続にもかかわる話になります。

(6) 本件委員会は,被上告人らに対して品質管理レビューを実施し,本件監査において被上告人らが上記突合を監査対象期間の一部につき実施していなかったことなどから被上告人らにつき基準不適合事実が見受けられるとして,平成27年5月,「経営者が進めている継続企業の評価に関する対応策等の前提となる資金である現金預金について,特別な検討を必要とするリスクを識別しているものの,監査意見を形成するに足る十分かつ適切な監査証拠を入手するための実証手続が十分に実施されておらず,継続企業を前提として財務諸表を作成することの適切性に関する監査証拠が十分に入手されていない。」との限定事項を付した結論を表明し,上記限定事項が被上告人らの表明した監査意見の妥当性に重大な疑念を生じさせるものであるとして本件決定をした。

公認会計士が監査をやる上で、実査をしなかったというのは監査をやらなかったのと同じです。

結論
営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスとなるなど財政的安定性や収益性に問題があるというべき状態にあり,かつ,1億円程度に上る多額の現金を保有することが常態化していた。また,被上告人らは,本件会社が上記現金の所在を明らかにしなかったために,本件監査の対象事業年度末に予定していた現金実査を行うことができなかった。これらの事象等は,不正な財務報告若しくは資産の流用につながり得るもの又はこれらの兆候を示すものといえ,本件監査において財務諸表における重要な虚偽表示のリスクを識別すべき要因に当たることが明らかなものであったといえる。・・・上記の点を検討することなく,被上告人らにつき基準不適合事実に該当する事実があるとはいえないとした原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。

これは会計を勉強していれば一発でoutと分かる案件です。これでも一審は会計士側の主張を認めていたというのは、とんでもない裁判官でしたね。

裁判官三浦守の補足意見
1 (公認会計士法により)公的な性格を有する法人であって,その事務の全般にわたり,金融庁長官の監督に服しており,内部的な自律性も,その監督の制約を受けるものと解される。
2 上場会社監査事務所登録制度は,社会的に影響の大きい上場会社を監査する監査事務所の品質管理体制を強化し,資本市場における公認会計士等による監査の信頼性を確保することを目的として,上告人の会則に基づいて運用される制度である(平成27年7月21日付け変更前の日本公認会計士協会会則第6章第2節)。・・・(公認会計士法により)上場会社監査事務所登録制度については,公認会計士・監査審査会による品質管理レビューの結果の審査等を通じて,公的な監督が及んでいるということができる。


??監督??公認会計士は、監査業務が仕事であり監督は業務ではありませんよ。公認会計士法を読みましたか?会計事務所が使用人を監督する義務はありますが、依頼人を監督する条文はただの一つもありません。

3 被上告人らの上場会社監査事務所名簿への登録を認めない旨の決定につき,その前提となった事実の有無等が争われているものであるが,前記のとおり,上場会社監査事務所登録制度が,公認会計士の監査業務の専門性及び独立性を踏まえ,公認会計士等によって組織される上告人の制度として運用される趣旨等に鑑みると,上記事実があるとした場合には,これを前提としてされた品質管理委員会の決定については,その専門性,独立性を踏まえた知見に基づく判断として,その合理的な裁量が尊重されるべきものと解される。

裁判官草野耕一,同岡村和美の補足意見
1 監査対象期間の全部について証憑突合を行うことが現金預金の監査手続として「実効的でない」という原審の見解には看過し難い誤謬があるといわざるを得ない。


その通り!実査をやらない監査は監査じゃないですよ。

2 原審への指摘
(1) 第1に指摘すべきことは,監査対象事業年度に関する本件会社の有価証券報告書上,同年度における本件会社の営業活動による連結キャッシュ・フローの正味合計額はマイナス7億6884万5000円に上っているという点である。
(2) 第2に指摘すべきことは,本件会社が設置した第三者委員会の作成に係る平成27年1月19日付けの報告書には,本件会社が監査対象事業年度のうちで被上告人らが証憑突合を行わなかった約6箇月半の期間の一部である平成26年1月から3月の間に3件の多額現金取引(取引対象額はいずれも2000万円を超えている)を行った旨の記述があるという点である。この記述内容が正しいとすれば,被上告人らが多額現金取引があった期間に限定して証憑突合を行ったという主張は成立し得ないように思われる。


この二人は地裁裁判官の勉強不足を指摘しています。この点はごもっとも。

裁判長裁判官 草野耕一  当然
裁判官 菅野博之  当然
裁判官 三浦 守 条文をきちんと読め!
裁判官 岡村和美  当然

会計士協会は弁護士会よりも仕事してますね。株を買う時、問題を起こした会社の監査法人が監査した会社の株は売れというのが常識です。ましてや、監査人に問題があるとなれば、それを公開してもらわなければ株なんか買えませんよ。