林 住 記

寝言 うわごと のようなもの

哀れなお月さん

2017-11-10 | 歌の翼に

    

福祉センターで自主開催するじじばばの手作り昼食会のメインディッシュは、みんなでこしらえたコロッケだった。
松茸の土瓶蒸しや、しめじの茶碗蒸しよりずっと美味かった。

締めは、恒例の童謡の斉唱である。
今回は「十五夜お月さん」を満月のように大口を開けて熱唱した。
季節外れな歌になったのは、集まったじじばばが季節外れだから仕方がないよ。


ところであなた、この歌の歌詞をはっきり覚えていないでしょ?
じじばばたちもあやふやだったけど、指揮者のアグリーじぃさんが歌詞を配ってくれた。

  

  ◎ 十五夜お月さん 野口雨情作詞 本居長世作曲

  十五夜お月さん ご機嫌さん 婆やは お暇(いとま)とりました

  十五夜お月さん 妹は 田舎へ貰(も)られてゆきました

  十五夜お月さん 母(かか)さんに も一度 わたしは逢いたいな

歌い終わって、ひと騒ぎになった。

  何て暗い歌だったんだろう、アタシ、知らなかった/そうねぇ、このお月さんって、可哀想だわ。

と言うおばばの発言をきっかけに、

  お母さん死んじゃったのね/いや若いツバメと駆け落ちしたんじゃないの? 
  お月さんの家、婆やがいたなんて相当裕福だわ/でもお暇を取ったのは破産したのさ、きっと。
  妹が田舎に貰われたそうだけど、養子縁組じゃなく子守か便所掃除なんかだと思うよ。
  お月さんって、可哀想。・・・・
がやがや、わいわい。

やっぱり、亀の甲より歳の効。野口雨情も裸足で逃げだす凄い妄想力だね。
若いじぃさんが言った。

  こんな歌詞だったかなぁ。お嫁に行くのに傘があるとか無いとか言ってたようだけどなぁ。
  う~ん、そうだったかもしれない。・・・・がやがやわいわい。

別の爺さんが言った。

  そうだっ! こんな歌だったと思う。別ん家のお月さんだよ。

  

森生は帰宅してから調べてみた。作詞は雨情だけど別の歌だった。

  ● 雨降りお月さん 野口雨情作詞 中山晋平作曲

  雨降りお月さん雲の蔭 お嫁に行くときゃ誰とゆく

  ひとりで傘(からかさ)さしてゆく 傘(からかさ)ないときゃ誰とゆく

  シャラシャラシャンシャン鈴付けた お馬にゆられて濡れてゆく

でも雨降りお月さんと十五夜のお月さんは、同一人物だったのかもしれない。
傘も無く、付き添も無い哀れなお月さんだった。

 

挿絵は氏原忠夫卓上暦から。

171110



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2 コメント

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月が鏡であったなら・・ (小肥り)
2017-11-11 17:27:46
面白いなあ。オールドパワー。
野口雨情の後姿が見えるわい。
・・・・・・・・・・・・・・・あのね。
お嫁に行くのに傘がいるだのいらないだのっていうのは別の歌ね。
アッ・・・すでに書いてある。
だいたい古今東西、月にまつわる歌は太陽と違って淋しい陰気なのが多いと思います。
ベートーベンの月光ソナタ、荒城の月・・・
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雨情 (森生)
2017-11-13 11:57:39
小肥りさま
大昔 茨城県にある野口雨情の実家を訪れたことがあります
古いけれど 豪勢な邸宅でした
雨情って 性格が暗いんです 家庭がフクザツだったんでしょうね
月だって 明るい歌がありますよ
炭坑節 月がとっても青いから 月影のワルツ ブルーライトヨコハマ・・・・・
歳をとったら 明るい歌にしましょう
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