非国民通信

ノーモア・コイズミ

「無謬」の対義語は

2010-02-07 22:54:32 | 編集雑記・小ネタ

 「無謬」という言葉の対義語ってあるのでしょうか? 手元の国語辞典やwebでちょっと検索した程度では見つかりませんでした。う~ん、「謬ることが無い」の反対なら「常に謬っている」辺りで「常謬」とか書くと、何となく意味は通るでしょうか。ちょっと語呂は悪いですが、そういう概念を表す言葉も必要かな、と思いまして……

 取り立てて疑問を持つでもなく世間一般の論調に流されていると、「官尊民卑」とか「官僚無謬論」辺りを常識とばかりに信じ込んでしまいがちです。でも実際のところはどうでしょうか、日本は官尊民卑だ、官僚無謬が罷り通っていると、訳知り顔で口にする人が後を絶たない一方で、当人の態度は正反対、「官」を見下し「民間人」であると言うだけで公務員より偉そうに振る舞っている、官僚は常に間違っていると確信している、そういう人ばっかりのはずです。一方的に投げかける非難の言葉としては「官尊民卑」「官僚無謬論」なのかも知れませんが、世間一般の感覚を表す言葉としては「民尊官卑」「官僚常謬論」の方が適切でしょう。

 そこで官僚「常謬」論です。官僚(公務員/役所)のやることは常に謬っている、そうした感覚が蔓延し、その弊害が顕著となっているのが現在ではないでしょうか。官僚のやることに誤りはないとする官僚無謬論に基づいた政治もまた問題になり得ますが、今はむしろ逆の方向性を心配した方が良いように思われます。痩せている時には太る心配ではなく痩せすぎる可能性を心配すべきなのと同様ですね。しかるにデフレでもインフレの心配を続けるお国柄のせいでもないでしょうけれど、「官」が絶対的な不信を抱かれている現状においてすら、「官」を信頼する危険性が取りざたされるばかりで、逆に「官」を頭から否定することへの危険性は完全に無視されているように見えます。

 ともあれ、世論は「官僚常謬論」一色です。「官」のやることは絶対に間違っている、そうした前提で行動することが政治家にとって幅広い支持拡大に繋がります。だから地方自治体であれば自治体職員を非難の対象とし、それと対立することでこそ支持を集められるわけです。「官(=自治体職員)」は常に謬っているのですから、その反対陣営に立つ府知事なり市長なりは正しい、住民の味方であるということになります。敵の敵は味方、「民」の敵である「官」の敵であるなら、民間人の味方である、そう扱われがちです。

 「官」と対立することによって住民からの熱烈な支持を集めている首長としては大阪の橋下や名古屋の河村、阿久根の竹原と言った連中が挙げられます。この辺の連中、私からすると極右系に見えますけれど、右からから見れば一概に「右」とは言えないようです。例えば橋下ですが、自民党の強い支持基盤であるはずの若年層の支持が実は最も薄いなど、自民党とは異なる支持傾向を持っていますし(参考)、河村も民主党出ということもあって極右層からは必ずしも歓迎されていない、竹原に至るや自称「護憲派」であり、天皇蔑視発言で本物の右翼から脅迫を受ける有様です。

参考、政治主導と住民至上主義

 そこで私には思われるのですが、上に挙げたようなポピュリズム系の首長と政治的な「姿勢」が近いのは実は自民党ではなく民主党なのではないでしょうか。私を含めこのブログの読者には「左」に属する人が多いと思います。だから自分中心に見るとポピュリズム系首長も自民党も同じく「右」に見えるかも知れません。しかし「右」から見ると実は明確な違いがあって、むしろ共通する要素が多いのは自民党ではなく民主党である、そう考えてみる必要もありそうです。「官」は常に謬っている――官僚「常謬」論に、より強く寄りかかっているのは自民党でしょうか、それとも民主党でしょうか?

 自身と対立する相手を「悪者」として描き出すことで逆に自分を正当化してみせる、そうした手法を流行させたのは小泉純一郎ですが、その路線を引き継いだのが小泉の所属政党であるとは限りません。「悪者」として描き出す相手の選び方を誤って空回りの度合いを深めるばかりの自民党よりも、小泉が「抵抗勢力」と呼んだ対象の大部分を同様の批判対象としている民主党の方が、むしろ正当な後継者と言えるはずです。そして昨今の政治資金疑惑で、民主党はより一層官僚「常謬」論への傾倒を深めたようにも見えます(この辺はやや手口が拙劣で、阿久根の竹原よろしく支持者が付いてこれなかったフシはあるにせよ)。「官」を常に謬っているものと位置づけ、それと対立してみせれば有権者の支持は稼げる、その傾向は当面は変わらないでしょう。ただ、官僚「常謬」論のもたらす弊害に向き合わされることを我々は覚悟せねばなりません。

 

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4 コメント

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Unknown (ポール)
2010-02-08 01:42:04
> 民主党の方が、むしろ正当な後継者と言える

ところで「ネトウヨ」は民主党をむしろ率先して支持しても良さそうなもんなのにと私などは思うんですけど、ニコ動のアンケートとかを見るとわかるように(笑)いまだに毛嫌いしてますよね。その理由を考えてみるとけっこう面白いかも知れません。

管理人さんの言われる「官僚常謬論」も含め、わかりやすい「敵」を誂えてそれを叩いてくれる上様サイコー、と安息を得る心理というものは一種の宗教じみたところがありまして、そういう意味で捉えるとすればなるほど民主党は今まで"反対"っぽい側にいたことに一応なっている訳ですから、まあすぐには受け入れられないのもわからなくはないのですが(カルトから脱会した元信者がしばらく精神的に不安定な状態にあるのと同じ)、そういう言わば「ブランド信仰」以外に理由がもしあるとするなら、果たしてそれは一体何なのでしょうか。
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Unknown (非国民通信管理人)
2010-02-08 12:53:36
>ポールさん

 まぁ民主党の場合、排外主義や歴史習性主義を容認しつつも積極的に荷担するほどではありませんから、その辺がネトウヨにとっては受け入れにくい部分なのでしょう。そして競合する政党(自民党)は世間一般の冷めた目には気づかないまま極右に媚びを売る、そうなると公務員叩きよりもレイシズムを重視するネトウヨにとっては、やはり自民党が唯一の選択肢になるのだと思います。逆にレイシズムに無関心な層ですと、橋下や民主党の公務員叩きや官僚悪玉論の方が関心事に近いわけで、その辺が支持率に反映されているのでしょう。
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個人的な見解ですが (コンポコ)
2010-02-08 19:30:19
私は共産党を支持していますので、自分とは合わない思想は全て右に感じてしまう悪いとこがありますが、本当の右翼より、民主党的な考えや、コネズミやシンゾーやネトウヨのようなアメリカに言われれば信条を180°転換する、中途半端な右の連中の方が不快なものを感じます。
本当の右翼とは一度は対話してみたいとは思いますが、中途半端な右どもとは対話する価値がないと思ってます。
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Unknown (非国民通信管理人)
2010-02-08 23:08:16
>コンポコさん

 逆にネトウヨから見れば民主党ですらも左翼政党ということですから、自分との距離で測ってしまうと色々と見落としてしまうのかも知れません。本当の右翼というのもまぁピンキリで、鈴木邦男氏なんかは割と筋の通った人ですけれど、筋を通すが故に極右層からは左翼と見なされることもあるとか……
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