非国民通信

ノーモア・コイズミ

あまり効率的とは思えないけれど

2010-09-07 22:58:21 | ニュース

事務系全員 海外赴任 日立、24年春入社から(産経新聞)

 日立製作所は4日、平成24年春以降に入社する大学卒以上の社員のうち、事務系については全員、海外赴任の可能性が将来あることを前提に採用する方針を明らかにした。技術系も半数を対象とする。

 日立は事業のグローバル展開を一層強める戦略を打ち出しており、語学力を必要とする業務で即戦力となる人材を早期に育てる態勢作りに、採用段階から取り組む。

 当面は日立本体の新入社員を対象とし、入社希望の学生に対して海外赴任の意思を確認した上で、事務系は全員を「グローバル要員」として採用する。主に国内で研究開発に携わる技術系は半数にとどめる。

 ただ、採用段階での語学力については試験での一定以上の点数取得といったハードルは設けず、入社後の研修を通じてレベルを向上させることを基本とする。

 24年入社の社員は22年実績と同水準の約700人となる見込みで、グローバル要員は新入社員全体の約60%になる計画という。日立本体に続いてグループ各社でも順次、同様の採用方針をとる。

 また、実務研修や語学留学、長期出張などで若手社員が海外経験を積む機会を増やし、現在は年50人程度の派遣ペースを今秋から年700人程度とする。

 日立は「グローバルな成長戦略を最優先に推進する」(中西宏明社長)として、海外売上高比率を21年度の41%から24年度には50%超に引き上げることを目指している

 まぁ所得の減少で購買力の低下が続く日本市場は魅力がない、とりわけ製造業にとって日本市場は魅力がないだけに、海外マーケットに軸足を移すのは致し方ないところでしょう。日本人が頻繁に家電製品を買い換えたり、あるいは政府方針としてハコモノの建設を増やし電気設備を大量に導入したりするのなら話は別ですが、そうでない以上は日本の外に販路を求めざるを得ませんから。ただ、事務系全社員を「グローバル要員」とやらにする必要性はあるのでしょうか? これから採用する社員の60%が「グローバル要員」になるとのことですが、貿易が本業でもあるまいに、そんなに海外赴任要員を抱えても無駄ばかりが多いように思えます。

 多国籍企業は多々あれど、本社所在地で採用した人の6割を海外赴任要員とする会社というのはかなり珍しいのではないでしょうか。一般的に企業が他国に進出する場合、当然ながら本社からも人員は送られるものですが、それ以上に現地で人を採用する数の方がずっと多いはずです。外資系企業が日本に進出してきたけれど、全従業員が本国から送られた外国人みたいなケースはかなり限られますよね? 普通は、現地で人を雇う、本国から送られてくる人員は指揮命令者として大きな権限を持っているかも知れませんが、数の面ではそれほど多くないわけです。日立だってそう、海外市場に注力すると言ったところで、日本人社員を大挙して国外に送り出す必要性はありません。海外に日本人ばかりの部署を作るなんてことは現実的ではないですから、実際に海外に赴任させる必要がある人数は、グローバル要員として採用された人に比べると格段に小さいものとなると考えるのが自然です。

新入社員半数「海外で働きたくない」一方、積極派も増加(朝日新聞)

 今春の新入社員のおよそ2人に1人が「海外で働きたいとは思わない」と考えていることが、産業能率大の調査で分かった。過去の調査よりも大幅に増え、内向きな意識の高まりを示した。一方で「どんな国・地域でも働きたい」も27%と過去最高。海外勤務についての考え方の二極化が鮮明になった。

 調査は2001年度から3年ごとに実施している。今回はインターネット調査会社を通じ、今年4月に新卒で入社した18~26歳の400人に聞いた。

 「海外で働きたいと思うか」という質問に、49.0%が「働きたいとは思わない」と答えた。「国・地域によっては働きたい」は24.0%、「どんな国・地域でも働きたい」が27.0%だった。

 回答結果がかなり乱高下しているところもあるようですが、「海外で働きたくない」との超えもある一方で、「国・地域によっては働きたい」と回答した人は24.0%、そして「どんな国・地域でも働きたい」と回答した人は過去最高の27.0%を記録しました。たぶん、これで十分に人手が足りるのではないでしょうか。いくら海外市場に目を向けると言っても、全員が全員、海外で働く必要はありません。27%の積極派と、24%の条件付き派、この中の一部だけでも十分に、海外に赴任させる人員は確保できるはずです。本人の適性や思考を生かす意味でも、その方がいいでしょうし……

 しかるに日立の場合、事務系は「全員」を「グローバル要員」と称することにしたわけです。確かに、誰を海外に送るのか、それを選別する側からすれば全社員を候補にできた方が楽なのでしょう。海外志向の強い社員の中から選ぶよりも全社員の中から選びたい、そうした会社側の思惑もありそうです。ただ、海外赴任に備えた研修や社内教育を事務系全社員に施すのは随分と無駄の多いやり方に見えます。それでも敢えて全員を「グローバル要員」とするのは、負の横並び意識もあるのでしょうか。海外赴任の負担に金銭的報酬で報いるよりも、海外赴任の可能性を全社員に課すことで、負の平等を実現させようと言うところもあるのかも知れません。「できる」人材ばかりを海外に送り込むのではなく、これからは平凡な人も海外に飛ばす、あまり効率的ではないように見えますが、それが日立の思い描くビジョンなのでしょう。

 

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5 コメント

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で、お給料は「現地並」にすのかな (こっぱなお役人(北のほう))
2010-09-08 00:17:38
日立のお偉いさんが考えている裏のシナリオとしては、
できない奴を購買力平価の低い地域に飛ばす→で、現地採用社員と同じ給料にする(労働条件は日本と同じサービス残業上等の状態)→耐えられなければ辞表を出すだろう(退職金にしても基準の給与が壊滅的に下がってる状態ですのでそんなにかからない)→耐えきったら(経営者が考える素晴らしい)日本の労働を世界に伝える伝道師に(待て)
まあ、最近の企業は労務者を「燃料」としか考えていないみたいなのでこういう発想なのかな~と思ってしまいました。
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Unknown (最下層公務員)
2010-09-08 01:50:59
これはチャンスです。と、言ってもダイヤモンドのまねじゃなくて、いつまでも日本人は特別って発想の経営者からすれば、見えない首輪がつけられてると思い込んでいますが、同様の仕事をライバルの会社がやってて、その仕事を正当に評価してくれる事を知ったら、さっさと外国企業にと~~~~~~~ら~~~~~~~ば~~~~~~~ゆ~~~~~~!
や~~~~~~~ら~~~~~~~ぼ~~~~~~~~~~~~~ちゅ!
てな事になるんですけどね。
国内だから無理難題も押し通せるのを忘れちゃってるんじゃないんですかね。
日立に知り合いがいて、管理人さんの言われる通りで、人件費の削り節が仕事の全てみたいな様ですからね。
かつては人と品質と実直さで勝負してた事もあった様に聞きますし。
もうガダルカナル症候群としか言いようがないみたいです。
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Unknown (非国民通信管理人)
2010-09-08 14:55:51
>こっぱなお役人(北のほう)さん

 海外赴任というのが一つの「選別」の仕組みになっているところもありそうですね。できる奴を送り込む従来型から、できない奴を送り込むことで篩にかけるような発想が少なからずあったとしても、今や不思議ではないですから。海外に適応できない奴はさっさと出て行けと……

>最下層公務員さん

 本当に海外でのビジネスに適応できる人なら、もうちょっと待遇のいいところに逃げ出してしまうこともあるでしょうね。そうなるとむしろ適応能力が低い人の方が会社にしがみついてくれるから使いやすい、みたいなところもあるのかも知れません。それではなおさら、生産性も下がろうというものですけれど。
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昔みたいに (Bill McCreary)
2010-09-08 23:44:45
海外勤務が花形っていう時代でもないですからね。そういう意味では、新入社員の人たちも、海外勤務は甘くないってことを理解しているということでしょう。

ついでながらに書いてみると、よほどの金をくれるのならいいけど、海外で仕事をするのは大変ですよね。法律も宗教も商習慣もぜんぶちがうんだから。決して楽ではないはず。

さて私のブログは最近かなりアクセス数がいいんですが、やはりそうなると以前にはなかった馬鹿が書く馬鹿なコメントが増えてきました。管理人さんもこのような馬鹿のお相手をずいぶんされていると思います。相手にしないのが一番ですかね。よろしかったらご意見を。
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Unknown (非国民通信管理人)
2010-09-09 10:41:58
>Bill McCrearyさん

 その辺、花形だったからこそ従来は海外赴任手当とかの上積み分が大きかったのでしょうね。今後は「全員」を海外赴任要員とすることで花形としての地位は名実共に失われ、必然的に海外赴任手当も……と言ったところでしょうか。

 馬鹿なコメントは何かと鬱陶しいですよね。何を言っても彼らは自身の偏見にしがみつくばかりで、マトモに応答するだけ虚しいですから。こちらが暇なら誤りを指摘することもありますが、速やかに削除してしまうのも手だと思います。
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