非国民通信

ノーモア・コイズミ

発電施設自体がゴミに……

2012-02-09 23:05:18 | 社会

10億円した「ごみ発電所」 1万円で持ってって(朝日新聞)

 鹿児島県いちき串木野市は1日、約10億円で建設したごみ発電施設「市来一般廃棄物利用エネルギーセンター」(停止中)の建物や設備などを最低売却価格1万円で売り出した。20日まで入札者を募っている。

 合併前の旧市来町が2004年に国の補助金を受けて建設した。一般ごみと食肉加工場の肉骨粉を混ぜたものを蒸し焼きにして発生したガスを使って発電し、余剰電力を九州電力に売電する計画だった。

 だが、ガスに混ざる不純物が原因でほとんど発電できず、会計検査院から「施設の審査が不十分で、計画通りに稼働していない」との指摘を受け、08年12月から稼働停止している。

 久しぶりに肉骨粉という単語を目にしました……社会から消えてなくならなくても報道からは消えてなくなるものって、よくありますよね。それはさておき、10億円で建設したごみ発電施設を最低売却価格1万円で売り出したそうです。維持費だけでも大赤字であろうことが容易に予想されますが、果たして買い手は付くのでしょうか? まぁ、ごみ発電施設の類は概ねこんなものなのかも知れません。これだって再生可能エネルギーの一つなのですが、昨年の3月ぐらいまでは無駄として槍玉に挙げられるばかりの代物だったわけです。それが原発事故後は一時的に持ち上げられる、計画通りの発電なんてほとんどできていないことなんて無視されて「脱原発への一歩」とか期待できそうな面だけ紹介される記事が紙面を飾るようになりました。なんだかなぁ、と原発事故前の報道を記憶に止めている身としては呆れるばかりでしたが、福島第一原発に遅れること数ヶ月にして朝日新聞記者の頭も冷えてきたのか、再びごみ発電施設の無駄っぷりが紙面を飾るようになったようです。ある意味、震災前に戻ったと言うことでしょうか、こういうところで少しだけ「復興」を感じないでもありません。もっとも記事で取り上げられた鹿児島を含めた西日本は、本来なら平常運転できていたはずなのですけれど。

 でもまぁ、もうちょっと頑張ったらどうかと思うところもあります。自治体の財政も厳しいであろう中、会計検査院からダメ出しを食らうとあっては存続も厳しいのでしょうけれど、そこはまぁ未来への種まきという視点も持って欲しいなと。ただ、今のご時世ですと「将来投資」では許されないのかも知れませんね。「今すぐ」役に立つとアピールしないと予算が下りない、ゆえに今回のゴミ発電施設も建設当初はバラ色の未来を喧伝してきたのではないでしょうか。これを立てればガンガン発電できて、ゴミ処理も捗る、電力売却で費用もすぐに回収できて一石二鳥だと、設備を売り込んだ人はそうアピールしてきたはずです。しかるに、フタを開けてみればご覧の有様、「施設の審査が不十分」とわずか4年で稼働停止に至ったわけです。

 こうなることは建設前からわかりそうなもの、むしろ最初から「簡単に発電できるものではないけれど、ゴミ処理とエネルギー供給の課題解決に向けた将来への布石として割高でも試してみましょう」みたいなノリでも良かったのではないかという気がします、気がしますが――これでは予算が下りないのが現実なのでしょう。だから初めに過大な宣伝があって、それに対する「期待はずれ」が次にくるのです。このサイクルこそ無駄だと言わざるを得ません。にも関わらず、原発事故後は尚更この手の無駄が発生しやすくなっているのではないかと危惧されるところです。水力、火力、原子力「以外」の発電手段に対する期待が現実から大きく乖離した形で膨らまされてきたわけですが、次は萎む番ですから。

 「今、頼れるもの」と「将来への投資」は分けて考えて欲しいな、と思います。いつか化ける可能性に賭けて「将来への投資」を進めることには反対しませんが、「将来への投資」を「今、頼れるもの」であるかのごとくに装った結果が招くのは、誰にとっても不幸なものにしかならないわけです。当てにならない発電手段ばかりを増やして電力供給の不安定化を招けばツケは国民が追わされるものでもありますし、誇大広告で建てた設備はいずれ無駄と呼ばれ、将来投資もろとも葬り去られることでしょう。このような未来を歓迎できる人は、どこにもいないはずです。

 

石原新党 保守色濃く 男系存続へ典範改正(産経新聞)

 東京都の石原慎太郎知事が、たちあがれ日本の平沼赳夫代表らとともに結成を目指す新党の基本政策の草案が2日、分かった。「国のかたち」「外交・防衛政策」「教育立国」など7分野で構成され、憲法9条改正や、男系存続のための皇室典範改正、首相公選制-を明記。保守色を前面に押し出した内容となる。

(中略)

 経済・財政政策は、100兆円規模の政府紙幣発行、国の財政の複式簿記化-など。エネルギー政策としては2040年までの原子力エネルギーゼロを掲げる。

 一方、石原慎太郎の動向が報道されています。たちあがれ日本の平沼赳夫と新党結成を目指すそうです。掲げられた政策的には、まぁ極右系の政治家としては概ね予測の範囲といった感じで今さら驚くようなものはありませんが、エネルギー政策としては2040年までの原子力エネルギーゼロを掲げるとか、この辺は石原も意外にヘタレだなぁと感じるところです。去年の春には自分は原発推進派だと公言していたはず、オカルトじみた反原発論者とエセ科学批判者(≠原発推進派)との対立が深まる中、原発推進派の姿は表舞台から完全に消えて久しいですが、この面の皮の厚い爺さんも例外ではなかったと言うことでしょうか。

 むしろ、この逆風の中で原発推進を堂々と訴え続けることができる人であるなら、それはそれで大したタマだとは思います。逆に、原発推進論者なのに世論に怯えて自説を隠すような人であれば、凡百のヘタレですね。どのみち脱原発は一種のトレンドとしてどこの政党も似たような主張を掲げているだけに、石原新党もまた埋没するであろうと予測します。

 かつて平沼赳夫が「たちあがれ日本」を結成したとき、私は一点だけ彼らを評価しました(参考)。メンバーが全員、高齢者だったことです。日本中どこでも似たようなものですが、とかく年をとっているだけで労害云々とネガティヴに扱われがち、とりわけ政治の世界では若いだけで期待されがちな時代であるにも関わらず、敢えて年寄りばかりで党を作った辺りに気骨を感じないでもなかったわけです(若い議員に相手にされなかっただけじゃないかというのはさておき)。「若さ」を前面に押し出せば、それだけで軽佻浮薄なメディアと有権者は好意的に評価するもの、にも関わらず爺様ばかりで党を作った辺りは一目置いてもいいかなと思いました。そして、これまた石原慎太郎という後期高齢者と手を組もうというのですから良い根性です。まぁ、その根性があっても原発問題に関しては衆に媚びている辺りがヘタレです。どうせなら、高齢者&原発という嫌われ者コンビでとんがって見たらどうかなと思ったりしますが、余計なお世話ですね。

 それはさておき、どこの政党が与党となるにせよ原子力エネルギーゼロというと、日本経済が壊滅状態に陥り、その結果として電力需要は激減、原発なしでもやっていける社会になるぐらいしか思いつきません。石原新党の場合は「2040年」と他の政党に比べれば長めのスパンで脱原発を説くようですが、上で書いたように「将来への投資」と「今、頼れるもの」を区別できているのかどうか。その辺はどこの政党も変わり映えがなさそうで、全くアテにできないレベルの発電手段をごり押しした挙げ句に電力不足を招き、いつの間にか将来投資も無駄扱いされ……みたいな未来しか見えてきません。むしろ脱原発「できなかった」場合のプランとかをしっかり持っている政党こそ待望されるところです。

 

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原発是非投票 (プチ左派)
2012-02-10 23:46:28
石原氏は好きじゃない・・・というのは控えめすぎる表現で、本音は大っ嫌いなんですが、原発の是非を国民投票で決めるということに難色を示しているのが評価できる点です。

長いスパンで原発を廃止していくのならそれでもいいんですよ。
でも今の世論は過激な反原発論が横行し、段階的で現実的な脱原発を主張する科学者すら御用学者と呼ばれる状況です。
少年犯罪凶悪化が叫ばれたとき(実際は凶悪化などしていなかったのですが)、少年法を感情にまかせて改悪してしまった愚行を繰り返すおそれがあります。

こういうことは冷静なときに議論すべきで、頭が熱くなっているときに決めるとろくなことはありません。
それを指摘しただけが石原氏を評価できる点です。
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Unknown (非国民通信管理人)
2012-02-11 01:08:18
>プチ左派さん

 石原慎太郎に関しては、被災地のガレキ受け入れに反対する声を一蹴したことを私は肯定的に評価したわけですが、面の皮が厚いのか我が強いと言うべきか、ともあれ必ずしも流行に媚びるばかりではなく自分の意見を通そうとするところがありますね。この点から、世論に媚びるばかりでポピュリズム一辺倒の政治家よりはマトモに見える局面が出てくるのかも知れません。とりわけ、昨今の脱原発論のように世論がヒートアップしている状況では、そういう(まだしも石原の方が落ち着いているように見える)場面も増えるのでしょう。
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Unknown (ルーピー)
2012-02-12 08:49:47
 橋下も瓦礫受け入れすべき、といっています。そのことをもって、えせ反対派とか推進派呼ばわりする人がいます、
 私も「オカルトじみた・・・」なのかもしれませんが、瓦礫はうけいれるべきだと思っています。リスク負担は公平であるべきでしょう。「反対派」の人は、こういうときにかぎり差別や不公平を是認するのであれば、最低だとおもいます。
あと、原発国民投票にも反対です。北朝鮮が何かやらかしたときに、国民投票をしたり、また憲法改正が国会で通過したら国民投票でどういうことになるのかちょっと考えた方がいいと思います。なんでもかんでも自分に有利になると思ったら間違いです。
 私にも署名がきました。ほかの署名は概ねしましたが、国民投票はしませんでした。
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Unknown (ルーピー)
2012-02-12 09:42:00
とかなんとかいうより、山本太郎の写真をみてドン引きし、署名しなかった面も大ありです。山本のことが大嫌いなので。
 反逆やブリッコは、本業でやるから絵になるのであって、場外でやるのは邪道だと思います。
 
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Unknown (非国民通信管理人)
2012-02-12 11:31:54
>ルーピーさん

 橋下に加えて、早川由紀夫とか河野太郎とか東海アマとか、名だたるアレな面々もガレキ受け入れにまでは反対していないようですが、彼らの信者は教祖様以上に先鋭化している様子が窺われますね。だからカルトなんだと思うところですけれど、もはや自分の信じる正義以外は何も見えていないのでしょう。
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