【政治部デスクの斜め書き】世論調査で浮上した「危険な世代」とは…(産経新聞)
実は、全体の数字でみると、「信頼できる」のは麻生首相が31.4%、小沢代表が29.7%で、拮抗していた。今回の世論調査は全体として、麻生内閣の支持率が急落し、小沢氏の好感度がアップしている結果だったので、「信頼」という言葉では、両者にあまり差がなかったのだろかと感じた。
だが、ふと、年代別分析が目にとまった。全体の数字では拮抗している2人だったが、男性の回答だけをみると、世代で大きく異なる数字が出ていた。
男性の「2人の信頼度」に関するデータは以下のようだった。
設問「2人のうち、信頼できるのはどちらだと思いますか」(男性の回答)
男性全体 20代 30代 40代 50代 60代以上
麻生首相 32% 37% 29% 25% 19% 42%
小沢代表 33% 38% 29% 42% 35% 27%20代、30代では、2人の信頼度に差がないのに、40代、50代の男性は明らかに小沢氏に軍配を上げている。40代男性は17ポイント差、50代男性は16ポイント差で、「小沢氏の方が信頼できる」という数字となった。そして60代以上の男性となると、また麻生首相に戻っていく。
(中略)
設問「どちらが選挙の顔として魅力的か」(男性の回答)
男性全体 20代 30代 40代 50代 60代以上
麻生首相 43% 60% 46% 39% 31% 42%
小沢代表 34% 24% 33% 41% 42% 32%
我らが産経新聞の溢れる知性が遺憾なく発揮された分析です。男性の回答だけしか数値を公表しない辺りからも作為的な印象を拭えませんが、まぁ驚くような結果ではありませんよね。いつものことです。老人と子供は嗜好が似るとか聞いたような聞かなかったような気がしますが、20~30代の若者と60歳以上は自民党支持、40~50代のいわゆる「働き盛り」世代は民主党支持が強いわけです。取り立てて支持傾向に大きな変化はありません。
……で、見出しは何と「世論調査で浮上した『危険な世代』とは」です。勿論本文でクローズアップされているのは40~50代、自民党支持が弱く、野党支持の強い世代(ただし産経新聞の視野に入っているのは男性のみ)であり、この世代を指しているのでしょうけれど、ふ~む、自民党を熱心に支持しないことが「危険」と言いたいのでしょうか。まぁ私だって自民党支持層のことは日頃からボロクソに書いてますがね……
これまで特定世代へのバッシングというと、俗流若者論――若者叩きが中心だったわけですが、産経新聞は路線転向でもする気でしょうか。自民党支持の弱さが「危険」なら、逆に自民党支持の強い若者世代を論難するわけには行きませんからね。今まで「溶けゆく日本人」などと、主として若い世代を叩いてきたわけですが、自民党支持傾向を基準に「危険さ」を考えるなら、むしろ産経新聞にとっての希望は若者、反対に「溶けゆく」のは中年層ということになります。、一貫性を持たせるためには大胆な路線転換が必要でしょう。
しかるに、この「失われた10年」の間、抵抗勢力として政府与党を支えてきた若者世代ですが、今でも中年層に比べれば自民党支持傾向が強いとはいえ、「信頼」に関しては麻生支持と小沢支持がほぼ拮抗するところまで達するなど差が縮まってきた印象もあります。自民党も崖っぷちですね。まぁ党首への支持と政党への支持は必ずしも一致しませんし、自民党にはリセットボタンがあると言うべきか、党首の首をすげ替えれば性懲りもなく期待感が盛り返すこともありますけれど。
設問「次期衆院選の後に期待する政権の枠組みは」(男性の回答)
男性全体 20代 30代 40代 50代 60代以上
自民中心の政権 20% 23% 17% 12% 11% 28%
民主中心の政権 37% 31% 25% 44% 44% 39%
大連立政権 38% 39% 50% 38% 39% 30%
さて、自民と民主以外の選択肢がないかのように見せかける設問がどうかとも思いますが、ここでは第三項「大連立政権」が加わっています。若者と高齢者の方が中年層より自民党支持傾向が強いのは相変わらずですが、「大連立政権」を期待する人の多さには少し驚かされますね。特に30代では50%が大連立政権を選択、どうしてでしょう?
政治ブログを読んでいれば、自民党支持層、民主党支持層、共産党支持層のイメージは少なからず思い浮かぶと思います。どういう人が、どういう理由で、何を期待して政党を支持しているのか、大まかに推し量るのは難しいことではありません。しかし自民と民主の大連立政権を支持する人のイメージってどうなんでしょう? 一番、イメージすることを難しく感じるのかこの層です。産経新聞も真面目に取材する気があるなら、大連立政権を支持する理由の一つも聞いてきて欲しいところです。
まぁ確かに、地方行政なら大連立は珍しい話ではありません。私の住む自治体だって自民党系の会派と民主党系の会派、公明党による反共大連立政権です。ある意味、大連立政権は国会以外では十分に実績のあるモデルとも言えます。この地方モデルを国会に当て嵌めよう、国会でも自民と民主の相乗りでいいじゃないかと、そう考えての大連立志向なのでしょうか? いやいや、普通の人は地元の議会勢力なんて気にしない、メディア報道を鵜呑みにして「野党は反対ばかりしている」と、あたかも自民と民主が対立していると信じている人の方がずっと多いはずです。ではどうして?
もしかしたら、政治ブログの言論に馴染み過ぎると、逆に政治に興味のない「普通の」人の感覚からかけ離れてしまうのかも知れませんね。レイシストや修正主義者が自民党を支持し、自公政権打倒を至上命題とする人が民主党を支持、ギャラが出るわけでもないのにわざわざ時間を割いて自分の主張を世に問うからには、相応に思うところあってのことでしょう。こういう人からすれば、支持する政党は綺麗に別れがち、自民党支持も民主党支持も共産党支持も百花繚乱ですが、大連立を支持する政治ブロガーは極めて稀です。しかし、政治に特別な思い入れのない「普通の」人からすれば自民党と民主党の大連立もありなのでしょうか。選挙の鍵を握るのは「普通の」人々、わざわざ自分の政治的見解を口に出したりはしないサイレントマジョリティです。政治ブロガーは各政党を支持する理由を頼まれもしないのにご開帳しますが、大連立を支持する「普通の」人々は声を上げたりしません。でも、この辺を何とかしないといけないんですよね、きっと。
1.マスコミ(今回は産経)の誘導、またはヤラセ。
=第一マスコミが真に中立な世論調査などやるはずもなく、こういう風に世論を持っていきたいという意思表示と見るべきもので、そう考えると大連立に支持を集めたのも、そういう風に話を持って生きたいマスコミの意思というべきかもしれません。
2.マスコミの主張を鵜呑みにしている。
=マスコミは普通、片方の政党の肩をあからさまにもつことはなく、中立を装いつつ、「ねじれ国会で何も決まらない」「この経済情勢に立ち向かうべく、与党も野党もともに立ち向かうべきだ」と、対立そのものを悪者に仕立てていますが、この影響があると思うと分かりやすいですかね。とするとどうも30代の男性世代は話し合いをすれば何でも解決すると考えているのでしょうか?考えて見れば30代だと会社の中ではちょっと低めの中間管理職で、上司の命令には逆らえず、部下に意見も求められず、同じ立場の連中と集まって議論するしか打開策がなかったりする、というのが一般的なので、こういう不可思議なレトリックに引っかかるのかもしれません。
3.単に社会の混乱を嫌う。
=政治的にも、社会的にもとにかく安定して欲しいと思うなら、多数の政党なんてやめて、一党だけにすれば確かに政治は安定しますので、理屈付けにはなるかと(中央官庁の役人による支配を役人党による一党支配と解すればわかりやすい)。ただしこれがマジョリティの理由だとすると、新憲法制定63年を経て、日本が学んだ民主主義とは、一党独裁による政治体制でした、という暗澹たるオチにならざるを得ませんので、とりあえず1.に100ガバス。
身の回りがさすがにマズい事態になったのは認めつつも、劇的な社会変革は望んでいない。
だから、現状がこのままで悪い事態が過ぎればいいという心理が大連立志向を望んだと判断しています。
それと、現状自民党にどう頑張っても小沢並に修羅場くぐり抜けた人材がいない点もあるでしょう、小沢氏の総理就任を肯定しつつ、両党でこの状況を打破して欲しいと願ってる面はあるでしょう。
そう言えば若い連中と思われる層が、未だに麻生擁護と例の国籍法にネガってるようですが、僕が見てる新聞やメディアがおかしいんですかね。(苦笑)
Youtubeのコメントでも麻生ヨイショをしてる連中も同一と思われますが、あそこまで擁護する根拠が逆に知りたく思う今日この頃です。
メディアの誘導意図に原因を求めるなら、産経新聞たるもの自民党有利の結果を出さないとダメでしょう。いままで産経新聞が大連立を説いていたなら理解できないこともないですが、産経新聞ならずとも大連立を堂々と主張してきた全国紙など無いわけですし。
>貝枝五郎さん
う~ん、小選挙区と比例で票を分けても、それが結果に表れるかどうか。ある人が社民に2票し、ある人が共産に2票した場合も、ある2人が社民と共産党に1票ずつ投票した場合も結果は同じ、意図を読み取れるような結果には繋がらないかと。
>ふみたけさん
たしかに自民にも民主にも、双方に反対、双方に対する拒否が強いですから、ならば両方で、という発想もあるのでしょうか。ただブログにしろ新聞にしろ「主張」が目立つところでは大連立論は滅多にお目にかかれない気がするのですが、世代によっては50%越え、色々と考えを練り直す必要がありそうです。
>hanaさん
自民党よりも民主党よりも、一番多いのは「無党派」ですからね。ただ自民も民主も、あるいは麻生も小沢も拒否した人々が、片方でダメだが両方ならOK、連立ならばOKと考えるのかどうか、その辺の流れが推測しにくいのです。「選択しない」「どの政治家もダメ」が多いような気もするのですが、そうした人々が敢えて選択したのは何故でしょう? 結局、消去法的な選択なんでしょうかね。
>サムさん
「あなた」の指す内容が筆者である私のことなら誤解ですよ。私が麻生氏をどう評価しているか、それは本文をお読みいただければわかると思いますが。
たぶん、産経新聞の意図にそぐわない結果だったのでしょう。概ね女性の方が自民党支持の強い傾向があるはずですが、男性と違ってはっきりした世代差が見られなかった等々。あるいは、自民党支持サイドから危機を煽りたい産経新聞としては、自民党支持が低めに出る男性のデータの方が好都合だったのかも知れませんね。
http://fukushimak.iza.ne.jp/blog/entry/820755/allcmt/
> 【問】次期衆院選後に期待するのはどんな政権か
> ・自民党を中心とする政権 21.4%(24.1%)
> ・民主党を中心とする政権 29.4%(32.1%)
> ・自民・民主両党が参加する大連立政権 42.4%(38.5%)
> ・わからない、言えない 6.8%(5.3%)
(男女合計; ( )内は9/25実施分)
「・期待する政権はない」「その他」という選択肢をなぜ入れなかったのでしょうか。「問 いまの日本の首相に一番ふさわしいのは?」には、「・ふさわしい人はいない」「・その他」の選択肢があるのに。大連立を選択した人は、何でも彼でも寄せ集めて、その中から希少な玉だけを抽出できればと思っているのかもしれませんね。
「その他」がないのは、左派政党の影響力が増大することだけは避けたい新聞社が、共産党や社民党の存在を忘れさせようと意図してのことのような気がします。一方「期待する政権はない」が外されたのはどうしてでしょうか、この選択肢があれば、これがトップだった可能性もありますが、そう見せたくない意図があるのでしょうかね。おかげで「大連立」を選ぶ人が増えたわけですが、かといって産経新聞が大連立を支持するとも思えませんし。