非国民通信

ノーモア・コイズミ

司法の判断は無視か?

2007-12-31 23:26:27 | ニュース

判決前の強制送還に「遺憾」=異例の苦言-中国人女性の不法就労訴訟・東京地裁 (時事通信)

 不法就労していたとして東京入国管理局に摘発された中国人女性(28)が強制収容の差し止めを求めた訴訟の判決が28日、東京地裁であった。定塚誠裁判長は不法就労には当たらず、収容令書の発付を違法と認定した。しかし、女性は判決期日指定後に強制退去させられたため、訴え自体は却下。裁判長は「違法な手続きで、遺憾」と異例の苦言を呈した。

 裁判長は「遺憾」と、今や重みのない言葉で苦言を呈したようですが、今回の件、非常に重大ではないでしょうか。何しろ裁判がまだ終わっていない、違法なのか合法なのかが争われている段階での執行です。司法の判断を待たずして強制送還が実行に移されたというのは何とも信じられません。しかも司法の判断は「不法就労には当たらず」と、本来であれば強制送還されるべきでなかったわけです。

 ちょっと大袈裟に喩えて言いますが、裁判所で係争中の被告を、司法の判断を待たずに死刑執行してしまったとしたらどうでしょうか? 実際にはことが大きくなれば執行する側ももう少し慎重になるものですが、根本的な考え方は同じです。司法の判断を待たずに、勝手に刑を執行してしまう、極めて危険な行為であり、上記裁判長の言うとおり疑いの余地のない「違法な手続き」なのです。

 確かに日本の司法は、上に行けば行くほど憲法判断を避け、法と行政が対立した場合は行政を優先するなど司法の独立を自ら放棄してきた傾向があります。とは言え、司法がまだ判断を下していない事柄に対して、入国管理局が勝手な判断で身柄を拘束して強制送還したのは一体どういうことでしょうか。

 これはそう、日本においては公正なジャッジが存在しない、第三者によって予め定められた法に基づいて裁かれるのではなく、現場が司法の判断を無視して何らかの刑を執行する、そういう有様を示しています。それはもはや法治国家ではありません。

 今回の件は司法がシロと判断した人を、その司法の判断を待たずに強制送還したもの、言わば冤罪のごときもので、日本の法律上の罪がない人を誤って罰した訳でもあります。このこと事態が恥じるべきですが、仮に司法の判断がクロであったとしても、ことの深刻さに変わりはありません。人を取り締まる権力が与えられるのは法的な正しさに依拠しているからであって、法を飛び越え司法による統制を無視して行われるならば、それは治安維持や取り締まりといったものではなく、弾圧や抑圧と呼ばれるべきものなのです。

 

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Unknown (Bill McCreary)
2008-01-01 22:02:43
死刑執行と同じで、不法入国に問われている人物に対する国外強制退去処分て、執行されたら取り返しがつきません。慎重の上にも慎重にが当然ですし、またこの件に対しては、最高裁が行政側に厳重抗議と厳重注意をするが当然でしょう。日本は何はともあれ三権分立国家なのですからね。
Unknown (非国民通信管理人)
2008-01-01 23:28:15
>Bill McCrearyさん

 いやはや全く、司法の独立が危ぶまれる一件です。裁判所の判断を待たずに勝手に強制退去させるなど、これでは司法など無視して何でも独断で処分すると宣言しているようなものです。今回の件がたまたま入管の勇み足だったとか、そういうレベルで済ませるものではないはず、司法が司法としてこの国で機能できるのか、今回のような件をたとえ1件たりとも認めたとあらば非常に危ういことになると思いますね。
さらに一歩進んだつまみぐい (焚火派GALゲー戦線)
2008-01-03 19:47:14
 日本で被告になり1審無罪の判決が出た場合、不法滞在の外国人の場合は国外退去になるのが本来の筋です。(罪は不法滞在だけだかから)
 東電OL殺害事件のネパール人被告が上級審で有罪が出されるまで日本で拘置され続けたように、こちらのスイス人被告も1審無罪ですが拘置されたままで、裁判所もそれを肯定しています。
 これらも問題がある判決です。(釈放中に国外退去されたら、上級審で有罪にすることができないから、たとえ下級審で無罪だからといって釈放しない。)
 しかしながら、これは上級審でも有罪にできそうにないと考えて国外退去にしたのでしょうかね?
 だとすると、本当にネパール人被告やスイス人被告の例ではまだ司法のお墨付きをとっていたものの、さらに権力の恣意的運用が進んだようです。
失礼ソースを落としました (焚火派GALゲー戦線)
2008-01-03 21:09:57
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2007121502072277.html
一審無罪のスイス人被告の件はこちらです。
Unknown (非国民通信管理人)
2008-01-03 22:57:09
>焚火派GALゲー戦線さん

 なるほど、興味深い事例です。一方は上級審で有罪にできると踏んでの勾留延長でしょうか、全く理由がないわけではないとは言え、かなり恣意的な運用ですね。こちらでは日本の司法の独立心のなさを感じさせないでもありません。

 そして今回の件ですが、司法は完全に無視された形になりました。仰るように、司法が無罪と判断することを予想しての入管の暴走でしょうか。警察でも一度容疑をかけた以上は、無罪の証拠が見つかってもメンツに賭けて有罪に仕立て上げるケースがあるようですが、これはいくら何でも……

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