怠けている連中に税金払う気なし 厚労相、『派遣村』で言及(東京新聞)
舛添要一厚生労働相は十八日午後、横浜市内の街頭演説で、昨年末から今年一月にかけて東京・日比谷公園に設けられた「年越し派遣村」に関し、「(当時)四千人分の求人票を持っていったが誰も応募しない。自民党が他の無責任な野党と違うのは、大事な税金を、働く能力があるのに怠けている連中に払う気はないところだ」と述べた。
これに対し、派遣村実行委員だった関根秀一郎・派遣ユニオン書記長は本紙の取材に「求人として紹介されたのは確かだが、誰も応募しなかったというのは全くのでたらめ。たくさんの人が応募したが、断られたのがほとんどだ。舛添氏の発言は現場の実態が全く分かっておらず、あきれてものが言えない」と批判した。
舛添は参議院なので、当面は安泰なんですよね。まぁ衆議院であっても舛添なら当選してしまう可能性が高いわけですが。で、その発言の内容は「全くのでたらめ」と評されています。状況から考えればきっと、そうなのでしょう。役所では「働く能力がある」として社会保障の給付を拒んで就職を勧める、一方で雇用者側は「(ウチで)働く能力がない」と見なして採用しない、日本ではよくあることですし。「働く能力」の判定が二重基準になっているんですよね、日本はダブルスタンダードの国ですから。
舛添は「四千人分の求人票」と自己申告していますが(真偽はさておき)、その内容はどうだったのでしょうか? 介護や農林業など、いわゆる「成長産業」ばっかりで、製造業派遣よりも手取りが少なくなるような求人であったのなら、ありがた迷惑どころでは済みません。職を失っている弱みにつけ込んで、普段なら低賃金で人の集まらない仕事を押しつけようとしているとしたら、それこそ非難される行為です。あるいは、待遇はいいけれど条件が厳しく、実質的な意味をなさない求人だったりとか。いずれにせよ、自分が問題解決に役立てなかったことを舛添は自覚するべきですね。
……で、自民党政権はもうダメだと言われます。私もそう思いますが、一口に「自民党」と言っても色々な面があるわけです。そうした「自民党」のどういう面を否定しようとしているか、そこもまた問われねばならないところでしょう。とりわけ小泉以前の「古い自民党」と、小泉以降の「新しい自民党」の間には顕著な違いがあります。支持層だって随分と入れ替わりました。そうした自民党の変化を考慮せずに、ただ漠然と「自民党」を野党に追いやるだけでは、遠からず道を見失ってしまうことでしょう。
まず「古い自民党」とは「互恵関係」を基盤としていたように思います。政官財(+米軍)が肩を組んで、それぞれに連なる業界や選挙区に利益を引っ張ってくる、そして業界や地域の有権者が自分たちの代表を支持する、持ちつ持たれつの関係が基本線にあったはずです。これが「新しい自民党」となると、財界や米軍との関係は維持される一方で「官(+業界団体)」や地方(とりわけ農村部)との互恵関係が一方的に破棄され、新たな方向性が模索されるようになりました。そして従来の行政と官僚のタッグは解消され、政治(官邸)主導でカイカクが進められたわけですが…… (故に鳩山が盛んに訴える脱官僚/政治主導とは古い自民党への批判であって、新しい自民党への批判ではないのです)
地方の中高年層から都市部の若年層へと支持基盤を移した「新しい自民党」の基調は互恵関係ではなく「勧善懲悪」でした。有権者や業界に対して利益をちらつかせて支持を訴える代わりに、「悪い奴」を指さして「あいつらをやっつけてやる」と勇ましく約束することで、支持を集めるようになったのです。その「悪い奴」とは官僚/公務員だったり、従来の互恵関係型の自民党議員だったり、あるいは各種の労働組合や周辺の仮想敵国だったりしたわけですが、ともあれ利益ではなく「罰」によって国民に訴えかけるようになったのが、最大の転換点だったのではないでしょうか。
そしてこの舛添は、典型的な「新しい自民党」タイプだと思います。もし互恵関係を重視する政治家であったのなら、逆のことを訴えなければならないはずですから。つまり、いかに自分たちが国民の役に立ったか、国民に利益をもたらしたか、弱者を助けたかを語る必要があるわけです。しかし勧善懲悪をその哲学とする政党/政治家であるならば、いかに「罰したか」を語らねばなりません。つまり「怠けている連中」という悪者に対して「利益をもたらさないこと」がアピールポイントとなるわけです。だから「払う気はない」と。
それでも舛添は声望のある政治家です。こういうタイプが好まれる時代なのでしょう。「利益をもたらす」ことではなく、「利益をもたらさない」ことを約束する、そんな政治家を国民が望んでいるのでしょう。似たようなタイプは今後も、増え続けることになりそうです。
もし書店で発見したら、一度目を通してみてください。
http://www.daysjapan.net/
政権の政策により自分の生活が全く成り立たなくなるくらいの影響を受けない限り、大半の国民にとって政治は他人事なのではないのかと思います。(本当はそうであってはいけないのですが…)
さしあたり、ドラマ「水戸黄門」でも見ているような感覚なのでしょう。
ただし印籠には「葵の紋」ではなく「民意」と刻まれてたりして・・・。
まあ、「勧善懲悪」が一番単純明快だから国民にも他人事ながら支持がうけやすいのでしょうね。
しかし、「勧善懲悪」ってヒトラーも使った手口では?
しかし、もうすぐ選挙を控えているのに、この発言とは…。有権者は離れていくのではないでしょうか。最近は労働者の問題に気づいた人も多いように感じる…というは気のせいでないにしても舛添大臣(の所属する自民党)の発言により、票が集まってしまったりするのでしょうか。
即戦力ばかり求め、育てようとしない。
頭に来る言葉を、言われた聞いてよ‥基本給10万で‥‥させて戴いて居るのよ‥‥だってさ‥‥‥
病棟病院理念より‥‥
金よこせ‥失礼いたしました。
ご紹介のコラム、webでは公開されていないようで未読なのですが、「改革」は小泉前も、小泉後も依然として人気ですよね。根底に政治否定があって、だからこそ既存の政治を否定する「改革」が永遠に期待され続けるのでしょうか。それは担い手を変え、政党を変えて引き継がれる……
>源内山人さん
そうそう、「民意」の書かれた印籠を突きつければ、どんな批判も退けられてしまうのが昨今の政治ですから。政策の妥当性や正当性、採算性よりも、まず「民意を得ているかどうか」で勝負が決まってしまう。国民が支持すりゃユダヤ人を殺すことも躊躇われなくなりそうです。
>あるふぁさん
結局、自分が果たすべき責任を失業者側に転嫁しているだけですからね。まぁ、この責任転嫁こそが舛添の本業なのかもしれませんけれど。
>GXさん
人手不足と言いつつ、雇用側も「誰でも良いというわけではない」でしょうからね。だから、求人票さえ持って行けば済むわけではないのですが…… さて今回のような発言はどう影響するでしょうか? 「元から自民党など支持しない人」の反発を買うでしょうけれど、一方で「なにがなんでも自民党しかない人」は、より一層の支持を強める――これだけですと、票の数は変わらないかもしれません。
>介護員さん
現場のことをいくら語ったところで、意に介さないのが舛添ですから。やるのは責任転嫁ばかり、待遇が悪いのも従業員自身のせいにされてしまうのでしょう。
>発言の真意を「働く能力と機会がありながら働かない『怠け者』に貴重な税金を1円も払うつもりはない、ということを言った」と説明した。
積極的に求職機会を得ようしない人間を責める暇があったら、悪質な求職と解雇(雇い止め)を繰り返す業者こそ責めるべきと思うんですけどね。
これが雇用問題に直接関与しない一議員の発言ならまだ認識不足で済んだのでしょうが、行政サイドの最高の長がこの程度の認識という点がなんとも頭の痛い状況ではあります。
(積極的に)働かざるは悪だ!という部分はとやかく言いません、むしろ大多数の日本人は毒され過ぎというほどこの認識を共有している訳です。
ただ、それが過ぎて一切合切働かざる者は悪なんて言い出すとそれはただの差別でしょう。雇用のミスマッチやら「働いたら負け」的な低賃金と生活すらままならない雇用実態を押し付ける業者の存在を放置しといて、何言ってるんだと吐き捨てたくなるんですけどね。
まぁ、資力無きは根絶やしになっても構わないと総裁が公に語るような政党が政権担っているわけで、ああ愚民は死ねって事ですと解釈すればいいのかなと思うところです。
本当に弁明になっているのかどうか、かなり疑わしくもありますね。まるで麻生の台詞みたいです。結局のところ舛添の仕事とは国民の生活をどうこうではなく、自民党を支えることの方、そのために政権与党から他の何かに責任を転嫁することにあるのでしょう。
短文ですが…管理人さんのブログ記事紹介しました。tb送りましたが…届きましたでしょうか。
後4日。お体ばかりお気をつけてお過ごしください。失礼します。
ご無沙汰してます、TB届きました、ご紹介ありがとうございます。なかなか満足できる候補に投票できそうにない今回の選挙ではありますが……