非国民通信

ノーモア・コイズミ

それでもボクはやってない

2008-09-08 23:03:27 | ニュース

露鵬「やっていない」大嶽親方法廷闘争も(スポーツニッポン)

 幕内・露鵬(28=大嶽部屋)は、それでも疑惑を否定した。相撲協会からA検体が陽性だったとの報告を受け、6日正午すぎに師匠の大嶽親方(元関脇・貴闘力)、弁護士とともに東京・江東区の同部屋で会見。あらためてマリフアナ吸引の事実を完全否定し、2日の抜き打ち検査が公平性を欠いていると主張した。大嶽親方は法的手段に訴えることを示唆しており、大麻問題は泥沼化の様相も呈してきた。

 無数のフラッシュを浴びた露鵬の肩が怒りに震えていた。2日の簡易検査に続き、A検体の精密検査も“クロ”だったが「自分は大麻とかやっていないし、相撲が大好き。相撲を一生懸命頑張る。以上です」と潔白を主張した。再度、吸引の事実を問われても「絶対に吸っていません。結果は信用していない」と吐き捨てるように訴えた。

 時に育毛剤の成分がドーピング検査に引っかかって出場停止を喰らう選手がいるわけでして、ブラジルの英雄ロマーリオもその一人でした。白露山の尿から薬物の反応があったと聞いたとき、真っ先に思い出したのはこれです。ちなみに髷が結えなくなったら引退というのは嘘だそうです。

 さて、露鵬と白露山の尿から大麻成分が検出され、専門機関の検査でも陽性だったとか。本人は疑惑をきっぱりと否定しますが、非常に厳しい状況です。よく知られているように、オランダでは大麻やマリファナなどソフトドラッグが合法であり、中毒者の増加や犯罪との結びつきも見られないわけですが、言うまでもなく日本では禁止されています。聞くところによると覚醒剤は取り締まりの対象とする理由が法律に明記されているのに対し、大麻取締法には大麻を禁止する理由が明記されていないのだとか。とにかく禁止だから禁止、そんなところですかね。

 「薬物問題」とか「ドーピング」と聞くと、スポーツファンが思い浮かべるのは筋肉増強剤など競技能力の向上に結びつくであろう薬物です。ステロイドの蔓延するMLBの世界ですね。しかるに今、問題になっている相撲界の薬物問題、これは競技力とは何ら関係のない薬物です。そりゃ非合法であるからには、警察から何らかの罪を問われるものなのかも知れませんが、その競技に対する不正を働いたわけではない、そのことには留意すべきです。ステロイドを打って作った世界記録は抹消されますが、例えば窃盗など競技とは関係のないところで何か非合法行為を行ったとしても、その世界記録は抹消されない、そういうものです。

 塩谷氏は(1)簡易検査は氏名を特定せず、先入観を与えないことが前提。今回は露鵬本人や周囲の親方、力士に陽性反応が分かるような検査方法だった(2)尿を採取するコップは任意で選択すべきなのに、一方的に手渡された(3)簡易検査で陽性反応を示した時点では大麻吸引と特定できないのに、その段階で警察に通報した――など公平性に問題があると指摘。露鵬によると、検査キットでの色の反応が他の力士と同レベルだったのに、大西氏から陽性を示す「薄い」色だったと断定され、精密検査では尿の入ったボトルに名前を書くラベルを張られた形跡もなかったという。

 色々な意味で日本社会の縮図とも感じられる相撲界ですが、今回の件も同様です。能力よりも「上が決めたルールに黙々と従う従順さ」が求められる点もそうですし、容疑のかけられた段階で犯人扱いされる辺りもそうです。まだ簡易検査で誤診の可能性も少なからずあった段階で早くも処分が取り沙汰されていましたし、今だって民間の機関が検査結果を提出しただけです。限りなく黒に近くはあっても、まだ確定はしていない、容疑者ではあったとしても、犯人ではないはずです。

 疑惑を欠けられた露鵬と白露山もさることながら、同様に非難に晒されているのが師匠である北の湖理事長と大嶽親方です。北の湖理事長は理事長職を辞任するとか。不祥事といえば不祥事には違いないのでしょうけれど、しかし弟子を庇う、「やっていない」と言う弟子を信じる姿勢まで非難に晒されるのはどうでしょうか? それは角界の隠蔽体質とは違うと思うのです。

 大麻なんかに比べれば、暴行致死の方が格段に重い、前者は誰も傷つきませんが、後者は人が死んでいるわけです。被害者がいるかいないか、そこは考慮されるべきものではないでしょうか? 深刻な被害を生み出してしまったのなら、それは真相究明や再発防止が優先されるべきですが、今回の大麻騒動、被害者はいません。むしろ逆に露鵬と白露山が無実だったら、「冤罪」という被害は発生するわけです。これこそ防ぐべきものではないかと、私は思うのです。ここでの親方の責任は、疑惑を欠けられた弟子を切り捨てて周囲と一緒になって責め立てることではなく、被疑者が無実を訴える限りはそれを信じること、親方は親方であって弁護士ではありませんが、周りがいかに自白を迫ろうが被疑者のそばに立つのが勤めではないかと、そう思うわけです。

 

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元露鵬は自白を「強要された!!」(日刊スポーツ)

 元小結露鵬が、ロサンゼルスでの大麻吸引を認めたことについて、強要されたと主張した。11日、3日ぶりに本人と対面した代理人塩谷安男弁護士(58)が会見。2日に行われた再発防止検討委員会(再防委)が終了し、大西先生ら専門委員が退室した後に、露鵬は親方衆5人に「認めさえすればいいんだよ。それでそれ以上問題にならない」と迫られたといい、あらためて解雇処分の撤回を求める意思を示した。


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14 コメント

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今回の検査は (Bill McCreary)
2008-09-08 23:28:28
簡易検査の段階で、名前が大々的にマスコミに報道されるなど、少々常軌を逸したものだと言われても仕方ないと思います。これでは力士の最低レベルの人権も保障されません。

それでいて、例の気の毒な傷害致死事件での対応は、きわめて緩慢でお粗末なものでしたからね。あの事件があったために、今回は迅速な対応ということかもしれませんが、けっきょくこの二つの不祥事は、力士への人権の希薄さのコインの表と裏だと思います。
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Unknown (ノエルザブレイヴ)
2008-09-08 23:30:24
私は状況は非常に厳しいと見ています。大麻使用そのものよりそれによって生じるイメージダウンのほうが痛いと思われるからです。イメージを落としたことが十分処罰する理由になると見ている人は多そうです。

露鵬と白露山の犯したと思われる一番の過ちは自分達のいる国の就職先の世界がどういう場所か認識しきれていなかった点にあるでしょうね。そこは日本の縮図であり、外国人を招かれざる客と思っている人も多いわけですから…。
そして日本という国では「限りなくブラックに近いグレー」はブラックと同義と見なされるということに気付けなかったことも。

一方震源地となった若ノ鵬は不起訴で謝罪会見を開くこととなりました。恐らく破門されて世間からも吊る仕上げを喰らったことで十分に社会的制裁を受けたことが理由として作用しているものと思われます。私は彼の会見を見て「分かった!もういいから!」と思いましたし、「火遊びしたのは確かだけど精神はまだ腐っていないじゃん」とも思いました。しかし、それに不満を持ち刑務所行きなどを主張する人も存在するといういつもの光景が繰り広げられています。しかし、刑事罰のみに全てを依存することはもうやめにしたほうがいいのではないのでしょうか?そう思うわけです。
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Unknown (非国民通信管理人)
2008-09-08 23:47:37
>Bill McCrearyさん

 杜撰な隠蔽体質への反省があるなら良いのですが、今回はその反動が悪い方に、真相究明ではなく皿仕上げ、吊し上げの方向に向かっていますよね。被害者を守るべき場面で被害者を守れず、被疑者を守るべき場面で被疑者を守れず、これではどうしようもありません。

>ノエルザブレイヴさん

 「疑わしきは罰せず」なんて発想のない社会ですからね。露鵬と白露山が本当に大麻を吸ったのか、そこはまだ断定したくないところですが、ともあれ疑われた時点でアウト、隙を見せないように振る舞わなければならなかったのでしょう。やれやれです。若ノ鵬にしたところで、またチャンスを与えても良さそうなものですが、僅かな瑕疵でも許さない人が多いようで……
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Unknown (トム)
2008-09-09 00:26:52
大麻を吸ったから即解雇(永久追放)では、厳しすぎると思います。そして迅速に厳しい対処=解雇(永久追放)では、見当違いだと思います。他のスポーツでは、出場停止処分程度だと思います。
若ノ鵬と露鵬が訴訟を起こす可能性もありますが、是非やってもらいたいと思います。明らかに間違った判断なのですから。
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ダブルスタンダード(二重基準)が頻繁にありそうですね。 (貝枝五郎)
2008-09-09 11:31:25
>「疑わしきは罰せず」なんて発想のない社会ですからね。

いや、権力者の場合は「疑わしきは罰せず」という主張がうけいれられ、権力のないひとは証拠を警察に認定してもらうことさえみとめず自分で立証しなければならない、というダブルスタンダード(二重基準)が
、しばしば「日本」とよばれることもある愚昧な列島空間においては支配的な価値観でありつづけているのではないでしょうか?
権力者は、だれからもあきらかな明々白々な物的証拠がないかぎりは、複数の証人がいても無罪。権力のないひとは、ごくごくごくごくひとにぎりのひとにうたがわれても、うたがわれたこと自体が罪。
このような状況がえんえんとつづいているのではないですかな?
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「疑わしきは罰せず」と言う言葉は死にました。 (GX)
2008-09-09 17:45:22
 これ無罪だったらどうするんでしょうね。また、知らん振りを決め込むんでしょうか。あるいは疑いの目を向ける人はいなくならないでしょうか。ともかく日本で本当に白を証明できるのは真犯人の逮捕捕以外ありえないですね。そういう意味では松本サリン事件の河野さんは良い方だったと思います。

 かばう人への批難は、まあ、罪を犯した者の弁護士(無罪にしろならまだしも、罪は償うべきだと言っているにもかかわらず)すら「悪人」にされる世の中ですからね。かばった人間も批難するというこの展開はある意味当然でしょう。

 そして、仮に彼らが黒だったとしても非国民さんのおっしゃるように被害者はいません。もし被害者がいるならば、それは薬を使用した彼ら自身です。他の誰のためでもない自分自身のための償いをして、すべてが終われば彼らを迎えてくれる社会が望ましいと思うのですが、出所どころか社会のレールから脱線した人々すら許さない社会では夢のまた夢ですね。これでは死刑になった方がましなのではないかとすら思ってしまいます。もちろん、そんな社会も死刑制度も変えていかなくてはいけないことを誤解のないよう注釈しておきますが。
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異様なマスコミ報道 (はなのけいじ)
2008-09-09 18:11:28
今回の一連の報道で異様だと思うのは、マスコミに出てコメントする人のすべてが相撲協会の体質や体制批判に結び付けていることです。
 大麻疑惑が真実なのかどうかは実はどうでもよくて、何かしら批判できる材料があれば何でも批判して
やろう的魂胆が透けて見えるのは私だけでしょうか?
 そもそも抜き打ちの薬物検査に関するルールがどこでどのように決められたものなのかが明らかでありませんし、本人の知らぬ間に突如としてきめられたルールで職業を変えなければならないような事態が発生してしまう国が人権意識が高い国とは思えません。
 マスコミの一方的な論調に世論が誘導されていく現象を見るたびにやりきれない思いがつのります。
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さながら魔女狩り (flagburner)
2008-09-09 21:06:42
今日のニュースを観てたら、露鵬と白露山の解雇処分について「国技の名を汚したのだから解雇は当然」云々という発言もあったんですよね。
・・・ノエルザブレイヴさんの言う所の事態が生じてる感が否めないです。

ちなみに、若ノ鵬は相撲協会に復帰を嘆願したけど、さっくりと却下されたとか。
相撲協会としても、簡単に解雇の決定を覆すわけにいかないのでしょうが・・・。
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Unknown (非国民通信管理人)
2008-09-09 23:11:51
>トムさん

 とにかく何か咎があれば徹底的に罰せよと、そんなノリも日本社会の縮図と言えそうですね。仮に黒であったとしても、誰一人として傷つけていない微罪のために、永遠にチャンスを奪うような、そういう社会ではあって欲しくないですよね。出場停止や降格ならまだしも、追放とは……

>貝枝五郎さん

 そうそう、上には甘いですよね。権力者、とりわけ大衆的な人気のある権力者に対しては「疑うことを許さず」そんなノリでもあります。やってらんねーですよ。

>GXさん

 稀に冤罪であることが証明されることもありますが、真犯人が出てこないと日本では難しいのでしょうね。仮に冤罪が証明できたとしても、そうなるまでに全てを奪われてしまうケースも多々あります。罪を犯したものにはチャンスの与えられない世の中であるだけではなく、疑われた段階ですら機会を奪われてしまう、どん底です。

>はなのけいじさん

 仰るように、「批判できる材料があれば何でも批判してやろう」そういう魂胆は少なからず感じられますね。まだ検査結果が暫定的なものに過ぎない段階で、早くも犯人扱い、処罰を叫ぶ有様ですから。相撲協会は腐敗してやるから、徹底的に叩いてやれ、そんな歪んだ正義感が渦巻いているようです。

>flagburnerさん

 若ノ鵬に対する態度がまた国技の国技たる所以と言うべきでしょうか、些細なものであっても法を犯した人には人権がないと言わんばかりの態度、それが日本的でもありますね。前相撲から出直しぐらいで許してやればと思うわけですが、再チャレンジの機会はないようです。
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Unknown (ノエルザブレイヴ)
2008-09-10 01:11:20
もしかしたら世論には「少しでも違法者に温情を見せたら正義が完全に失われる」というような恐怖感があるのやもしれませんね。しかし、それは息が詰まる考え方に思います。
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