参院選東京選挙区で、みんなの党新人の松田公太氏(41)の初当選が決まった。
松田氏は、若年層を中心に支持を得たほか、消費税増税への反対を訴え、広く無党派層にも浸透した。
一方、共産党現職の小池晃氏(50)は落選が決まった。比例からくら替え出馬したが、2007年の前回参院選で失った首都の議席の回復はならなかった。
千葉氏「もういいと判断された」 現職法相まさかの落選(共同通信)
「皆さんがわたしの選挙戦を見て『もういいんじゃないか』と判断されたと思う」。現職の法相ながら、まさかの落選となった民主党の千葉景子氏は12日未明、横浜市の事務所で消え入りそうな声で語った。「(選挙結果は)これまでのわたしの取り組みへの評価」と肩を落とし、「引き継いでやってくれる若い皆さんもいると思うので、それも含めて決めたい」と、政界引退の示唆とも取れる言葉を残し、足早に事務所を去った。
個別の選挙区で印象に残ったのはこの辺ですかね。共産党はこの東京選挙区の結果が明暗を分けた気がします。ここで議席を獲得できれば何とか現状維持となったのですが、若年層を中心に支持を得たというみんなの党の候補に惜しくも敗れてしまいました。やはり若年層は今なお構造改革路線への思いが強いのでしょうか。一方、神奈川では現職の法相が落選です。何かと煮え切らないところもあったながら、先代のどうしようもない法務大臣に比べればマシな印象もあった人ですが、死刑大好きなお国柄にはそぐわなかったのかも知れません。候補者を一本化しておけば落選はなかったのでしょうけれど……
民主党 44(-10) 自民党 51(+13) みんな 10(+10)
公明党 9( -2) 共産党 3( -1) 社民党 2( -1)
改革 1( -4) たち本 1( ±0) 国民新 0( -3)
……で、参院選の結果はご覧の通りです。まさかの自民党大勝利です。みんなの党の躍進が伝えられることも多いですが、選挙区では落選も多く、候補者さえ出せば小選挙区でも余裕で当選できる状態だった衆院選時の勢いからすれば、「それほどでもなかった」印象を受けます。むしろ驚きは、自民党が獲得議席数で民主党を上回ったことでしょう。どれほど民主党の支持率が低迷しても、歩調を合わせるかのごとく自民党の支持率も低迷を続け、民主党>自民党という状況が続いているにも関わらず、一人区を中心に選挙区で勝利を重ね、まさかの50議席獲得で民主党を過半数割れに追い込んだわけです。この展開は私も読めませんでした。
得票数を見ると、なんだかんだ言って民主党が自民党を上回っている状況に変わりはありません。比例区に目を移しても民主党の得票数は自民党の得票数を大きく上回ります。しかし、獲得した議席の数では自民党の大勝です。どの選挙区で票を伸ばせば議席がとれるか、どこに重点を置けば選挙に勝てるか、その選挙戦術が適切だったと見るべきでしょう。逆に拙劣だったのが民主党で、票を集めこそすれ議席に結びつかないものばかり、大量の死票を作ってしまったわけです。もはやロクな人材の残っていないかに見える自民党ですが、選挙情勢を見極める能力に関しては、驕れる民主党よりも優れた人材がいたということなのかも知れません。
一方、「大惨敗」と言えるのが3議席全てを失った国民新党、1議席の確保が精一杯で4議席を減らした新党改革、華やかなのは結成当時だけで選挙時には完全に忘れられた存在となった日本創新党です。小政党には厳しい時代とは言え、この3党は食い下がることすらできていません。先日の記事で国民新党は共産党とは反対の選挙戦術を採っている、有権者のウケが得にくい部分は表に出さず、右傾化しがちな国民感情に訴える路線を強めていると指摘しましたが、完全に裏目に出たようです。また新党改革と日本創新党は紛う事なきポピュリズム政党ですが、両党に浮動票が流れ込むこともありませんでした。今さら大衆迎合に走ったところで、民主党や自民党、みんなの党から票を奪うのは難しいのでしょう。
ちなみに共産党は、緩やかな後退となってしまいました。政治ブログ界では鳩山内閣の相次ぐ失態、とりわけ普天間問題を機に民主党から共産党へと関心を移すブロガーも目立つようになり、民主党支持の反共産党主義者が悲鳴を上げるような状況でしたが、世間一般の有権者の動向とは全く無関係だったようです。ネット上の極右層が実際の選挙戦に影響を及ぼさないのと同じことが、左派でも言えるのでしょう。どのみち民主も社民も公明も、それどころか議席を増やした自民党ですら、実は得票数を減らしていたりします。今回が初挑戦となる新党も伸び悩んだことからすると、得票数の面で勝者と言えるのは、唯一みんなの党であると言えそうです。
大阪府の橋下徹知事は12日、民主が敗北した選挙結果について「有権者の評価は厳しい。(事業仕分けなど)いいことをやっていても国民が『これっ』と思うことをかぎ取らないと失敗する」と述べた。
菅直人首相が打ち出した消費税増税論にも触れ「国民は消費税増税だけで反対したのではない。増税をする前に国と地方はもっと行革をしていかないといけない」と語り、政府の姿勢を批判した。
一方、参院選期間中は支持政党を明言しなかったが、「みんなの党の渡辺喜美代表は僕がこうあるべきだと思っていることを進めている。渡辺代表の考えは1から100まで賛成」と評価した。
みんなの党を消費税増税反対の陣営に組み入れ、消費税増税に反対する世論の受け皿になったと扱う向きもありますが、これは疑いの余地があると思います。消費税増税に反対で、その願いを託してみんなの党に投票した人が果たしてどれだけいるのでしょうか。あくまでみんなの党は「増税の前にやることがある」と語っただけで将来の消費税増税にはむしろ肯定的ですし、それ以前に有権者にとっての優先順位の一番は、消費税増税の是非だったのかを考えてみる必要があります。先の衆院選で、民主党は現在のみんなの党と実に似通ったことを主張してきました。「今は」消費税を上げない、ムダ削減で財源を捻出できる等々。そして民主党の政策で有権者から高く評価されたのは「ムダ削減」や事業仕分けなどの官僚叩き系統であり、子ども手当や高校無償化などは賛否両論でしかなかったわけです(参考)。有権者が最も強く望んだのは、消費税率の据え置きではなくムダ削減や官僚(公務員)叩きだったのではないでしょうか。
衆院選前、民主党はムダ削減で財源は捻出できると明言してきました。官僚(公務員)を叩けばいくらでもムダは出てくるかのごとく豪語してきたわけです。その民主党の説明を、国民は今なお信じているのではないでしょうか。ムダ削減、公務員削減で財源を捻出できるはずだ――そう信じる限りにおいて、みんなの党の主張には納得できる一方、ムダ削減だけではもう無理、消費税増税しないと無理と言い出した民主党には失望を感じてしまうはずです。国民はまだまだ削減できるムダがある、もっと官僚を叩く余地があると信じています。しかるに国民の望むムダ削減、官僚叩き路線とは別の出口(=消費税増税)を提示したことで、ムダ削減路線の終焉を思わせた、それが民主党の失速を招いてはいないでしょうか。有権者はムダ削減を最重視しているのに、ムダ削減とは異なる選択肢を持ち出したこと、それが有権者の離反を招いたのかも知れません。消費税増税反対の声を集めてみんなの党が議席を伸ばしたのではなく、ムダ削減を望む声を集めたからこそみんなの党が議席を伸ばした、そしてそれだけ削減すべきムダがあるのだと国民に信じさせたのが他ならぬ民主党であるとしたら、まぁ皮肉というより、後先考えずに行動したことの報いと言えます。
それにしても共産党はここ5~10年くらいだらだらと下り坂を歩き続けている印象が失礼ながら拭えません。そろそろ底を打たないといけない感じではあると思うのですがさてどうしたものでしょうか。
典型がJALでしょう。
あとは数年前のゼネコンとか。
みんなの党には、そうした既得権益を持たない業界の人からの賛同もあるのではと思います。
地方区で当選者を出しているのは、歴史の浅い産業の多い首都圏ですし。
支持母体に特定の新興産業や新興企業がついている可能性はないでしょうかね。
(私と同じことを考えている人をとあるブログでも見ましたが)
みんなの党の言う「公務員」とは、純粋な公務員はもちろん郵政のような特殊会社の職員も当然指すんでしょう。
何を言っても詮無きことですが、目に付いた標的を自分より苛烈な状況にまで叩きのめすほうが、自身を上昇させるより楽なんでしょうか。
「菅」ならぬ「官」への憎悪こそ、無党派層を動かすエネルギーでもありますからね。増税してもそれが「官」に使われると思うと嫌気がさす人が多い、まず「官」を締め上げてからと思う人が多かったように思います。そしてこういう人が多い限り、共産党を含めた左派政党が国民から好かれるのは何とも難しそうです。
>元大阪府民からの伝言さん
少しでも「官」との接点があるところは怨嗟の対象とされがちですよね。逆にそうした「官」と関わりがある組織と争うような業界や団体は、みんなの党の「官」への攻撃姿勢を歓迎するところもあるのでしょう。そして似たような経営者目線を持つ国民もまた……
>Elekt_raさん
結局、民主党が自民党から引き継いだものを、今度はみんなの党が民主党から引き継いだ格好になったような気がします。国民の生活水準の底上げよりも、叩きやすいところを叩く、既得権益者と呼んで悪玉に仕立て上げる、それで問題が解決するかのごとく装う、そういうやり方を続けることが有権者の共感を呼ぶことが示されてしまったわけでもありますし。
それに中高年へのルサンチマンやわが身の不公平感みたいなものが合わさっての投票行動もあるのではないでしょうか?
やはり公務員・官僚と国会議員というワラ人形を出したのが、得票数を伸ばしたのでしょう。みん党のイメージとしては、かつての日本新党みたいなものかもしれませんが。
ところで、もし渡辺喜美が願っている民主や自民の分裂がなければ、みん党はそのまま埋没しそうですけどね。
(余談ですが、左派政党は有権者にとって浮世離れしているように見えるのでしょうか)
最近では先行世代(中高年)へのルサンチマンが盛り上がっているフシもあるだけに、そうした仮想上の既得権益者に割を食わせるタイプの政党が伸びる余地は大きいでしょうね。割を食うのは中高年だけじゃなくて、若年層も含むってことは、いい加減に学んで欲しいところですけれど。
ちなみに左派政党は――左派政党である限り、国民の「好み」とはあわないのかも知れません。国民のためになることではあっても、国民が望んでいるものは左派政党が描く未来とは違うようですから。
江田憲司が元官僚ということを考えれば彼らに逆らう危険性は承知しているはずですから。代表が父親と官僚の関係を十分すぎるほど知れば尚更と思います。
国会運営では民主党が折れれば「自分達の勝ち」でアピールはでき、自分達が折れても「有権者は忘れやすいから問題ない。マスコミだって同じこと」で逃げられる可能性はあります。
ただ、往々にして「元○○」というのは、その○○の部分に強硬な敵愾心を持っていたりするケースも多いように思います。半端に官僚との関係があるからこそ、ムキになって相手を否定しているフシもあるのではないでしょうかね。