企業提案ODAを容認=官民連携で途上国支援-政府(時事通信)
政府は18日、政府開発援助(ODA)を活用して官民連携で開発途上国を支援する新たな枠組みを発表した。ODAは従来、途上国政府から日本政府への要請に基づいて案件を採択してきたが、新たに民間企業が提案する案件の採択も認める。民間との連携強化でODAの効果を高め、途上国の持続的成長を促すのが狙い。
同日開かれた日本経団連の国際協力委員会(委員長・槍田松瑩三井物産社長)で、外務、財務、経済産業の3省の局長が説明した。
新しい枠組みでは、日本の企業が途上国での事業を企画し、その実現には製品輸送網として道路や港湾設備などの改善が欠かせない場合、ODAでインフラ整備を支援することが可能になる。事業が途上国の開発に有効と外務省が判断すれば、当該国の政府に説明し、日本にODAを要請してもらう流れだ。
経済援助を必要とする国よりも日本企業が進出している国に偏っていることで名高いODAですが、露骨な方針転換が見られるようです。日本のODA実績が世界5位まで転落している上、今後5年間で15%の削減目標を掲げるなど規模の縮小は継続されるようで、ならば「支援するつもりはありません」と言ってしまえば正直に見えます。とは言え、ODAという名の投資で唾をつけておきたいのが政財界の本音、それを低予算で実現すべく考え出されたのが企業提案によるODAのようです。
一応はODAにも援助の側面はあるわけですが、それだけでは財界にとって旨みのある話ではありません。もっとダイレクトに投資効果が得られるような形の方が望ましいわけで、そうなると必然的に日本企業の進出先への投資が主流となり、必ずしも援助を必要とする国ではなく、もっと別の国へとODAが流れていくものです。中にはインフラ整備のような投資先の国にとっても利益のある使い道をされるケースもありますが、中にはODA事業を日本企業が独占受注するような、それはただの癒着だろうとしか言いようのない事業も見受けられます。
で、そろそろ中国への投資は完了したのか、それとも中国への集中はハイリスクと気付いたのか、ともあれ(日本企業にとっての)未開の地を切り開く必要性が主張されつつあるようで、今後はアフリカ方面へも投資を振り向けることが予測されるわけです。しかるに、特定の民間企業の提案でODAの使い道を決めることが可能になるようで、ふ~む、ますます以て資源確保、利権確保の匂いがします。
もちろんインフラ整備はそこに進出する自国の企業のためですが、一方で進出先の利益になる側面もあります。中国へのODAで日本企業は大儲けしましたが、中国だって儲かりました。アフリカでも投資先を間違えなければ利益は出るのでしょう(そして投資価値無しと見なされた国は見捨てられるわけです)。ただ、国と国との力関係によっては、ODAが単なる投資に止まらず、支配の道具になることもあります。
投資先の国がある程度大きく、特定国(特定企業)のODAに影響されない規模があればいいのですが、本当に貧しい国は一国のODA次第で大きくその年の予算が左右されてしまいます。そうした貧困国に対してODA予算を脅しに使い、国連投票でアメリカの主張に賛成票を投じさせるなどの裏工作が現にあるわけです。そしてこのODAが特定企業の意向次第で左右されるとなるとどうなるのか、企業城下町ならぬ企業植民地を新たに生むことにもなりそうな気がします。
もう少しせこいレベルの話をすると、最近も何かと話題の捕鯨でも、海なし国(笑)や捕鯨などほとんど何の興味もない小国に「経済援助」でつって、無理やり日本の主張への賛成をさせている現実もあるわけですよね。もちろん日本の国連常任理事国入りも視野に入っているわけですが。
それにしても企業提案のODAって、最低限度の建て前すら無視している、そんな気がします。
一応は、相手国のための援助ですからね。その使い道を企業が自分達の好きなように決めるというのでは、どう見ても企業の海外進出のための援助、名前を変えなきゃいけません。そりゃ工場が建てば現地の雇用が増えたりもするのでしょうけれど、どう考えても進出する企業の方にこそ確実な旨みが……
少なくとも税金使う以上はプロセスを透明化してもらいたいですね。結果検証ってのもあんまり外に出てこないようですし。
ODAそのものは外交戦略の一手段なんで100%の否定はしませんが、国益になっているかどうかも怪しいし、仮になってたとしても彼らの考える国益=国民益では無いような。
それより何より日本国内でもっと効果的な公金投入するのが先だと思いますが。
完全に外交戦略と切り離されたODAというのも考え難いものではあるのですが、対外援助とかの言葉を使うのならもう少し相手国への配慮を見せないと欲得づくの悪名がつくばかりだと思いますけどね。
仮に日本が常任理事国入りをするにしても、その辺りの国連改革とセットでなければならないでしょうが、その「票稼ぎ」自体にODAの「ばら撒き」が使われるでしょうから、いずれにしてもキナ臭い話ですねぇ。
前々からグレーだったものが、もはや隠すつもりもない、そんなところでしょうかね。日本の景気と同じで企業だけが儲かって、国民の所得は下がり続ける、そんな未来も予想されます。それよりも日本の貧困地域にODAを、それも企業の進出のためではなく、住民のための!
>Barguestさん
言うなればアジア版マーシャル・プランですね(正式名称はあるのでしょうか?)。これから増えるであろうアフリカ諸国への投資も、ライバル国に資源を渡さないための「囲い込み」も出てくるのかも知れません。素直に「投資」と言ってしまえば潔い、嘘がないだけ誠実ですが、あくまで表面を取り繕うところが何とも……
>siegmundさん
「日本の外交は国民に何を隠しているのか」という本で読んだのですが、日本の国連外交は本当にチグハグみたいですね。国連で外務省がどう動いているのか議員サイドで全く把握できていないし、しかるに議員側は公開されている情報すら目を通さないと言うことで、主張することとやっていることが別の方向を向いているとか。ODAで票を買うにも、この辺の不統一をどうにか出来ないと、ばらまいて、カネで脅して、それなのに効果はない、そんな結果にも繋がりそうです。