非国民通信

ノーモア・コイズミ

Arch Enemy Within

2009-12-27 11:11:18 | 編集雑記・小ネタ

 コアな支持層の声が判断を鈍らせる、ということもしばしばあると思います。コアな支持層の声は当然のことながら自らの耳に届きやすいものではあるのですが、だからといってそれが幅広い層に通用する意見であるとは限りませんから。例えば自民党の場合です。21世紀の自民党の「コアな」支持層といえばなんと言っても極右層ですけれど、この極右層に媚びた結果がどうなったかを考えれば冒頭の一文の意味はご理解いただけるでしょうか。極右層に阿ねって日教組などの労組、アジア諸国やついでに民主党を仮想的に見立ててきた結果は、ごらんの有様です。

 この辺は民主党だって同じことで、何が何でも民主党支持の人もいるわけです。その辺の民主党信奉者にしてみれば小沢の献金問題だって検察の陰謀になってしまうもので、ついには小沢までそうした論調に感化されつつあるように見えるのですが(こちらの後半部)、それはあくまで信者同士の内輪の話、外の世界では通用しません。排外主義を掲げて支持層(極右層)との結束をいくら強めても自民党の支持は萎むばかりであったように、陰謀論を訴えて党と信者がいくら自己弁護/擁護を繰り返したところで、民主党を与党の座に押し上げた本当の功労者である無党派層は離れていくばかりです。

 そして小沢だけではなく、鳩山にも金銭面での疑惑は尽きません。やっぱり「コアな」民主党支持層にとっては追求する方が悪いということになっているようですが、それは少数派の意見であって真の多数派である無党派層には全く通用していない言い訳でもあります。それだけに国民新党などの身内が庇い立てする動きこそあれ、支持率低下のペースは再加速、自民だろうが民主だろうが政治とカネの問題には厳しい目線を向けてきた党からのみならず、スネに傷ある党からも追求を受けているわけです。

 いうまでもなくスネに傷ある党とは自民党のことですが、自民党側に問題があるからといって民主党の疑惑を帳消しにできるものではないのは、欧米諸国にも問題があるからといって日本の戦争責任を相対化することが許されないのと同じことです。自民党は自民党で反省すべき点はありますが、それとは別に民主党の疑惑を追及するのは間違ってはいません。

 で、ここからが本題の予定だったのですが(前フリが全然まとまらなかった……)、自民党の民主党に対する姿勢は党として統一されていないように見えます。つまり現党首の谷垣や小池百合子、安倍晋三といった民主党に否定的な人もいれば、河野太郎、小泉純一郎、そして舛添といった民主を引き合いに出して自民党を批判するばかりで、その過程で少なからず民主党を称賛している人もいるわけです。一般に極右層は民主のやることなら全否定ですが、一方で極右とは距離を置くタイプは、より政治姿勢が近いと感じる民主党にこそ肯定的になるのでしょうか。

 安倍や小池と違って谷垣は極右とは言えませんが、何を思ったか靖国神社に参拝するなど自民党のコアな支持層=極右層に目を向けるタイプであり、小泉は右派色も強いですけれど、自民党支持層「以外」の部分に目を向けている点では前者のグループとは異なります。そしてこの「コアな支持層」を狙うか(谷垣や安倍)、コアな支持層「以外」すなわち浮動票に訴えるか(小泉や舛添)で、否定する対象が異なるようです。前者は民主党すなわち「外」を責め立て、後者は自民党すなわち「内」を攻撃する、と……

 総じて「内」に敵を見出すタイプの政治家の方が人気があるような気がします。「外」に敵を見立てた安倍以降の自民党は、極右層からの支持を強固にすることはできたかも知れませんが、支持の広がりは皆無でした。逆に広範な支持を獲得したのは自民党にありながら「自民党をぶっ壊す」と拳を振り上げた小泉であり、責任を負うべき立場にありながら責任を追及する立場にあるかのごとく振る舞い、自分が責任者であるはずの厚労省への批判を繰り返していた舛添だったわけです。民主党だってどうでしょうか、支持獲得に繋がったのは自民党ではなく官僚を攻撃の対象に定めたから、与党となった今や「内」であるはずの官僚を事業仕分けなどを通じてこれ見よがしに叩いてみせたからではなかったでしょうか。

 自治体首長なんかでも、人気のあるのはそういうタイプですよね。つまり、「内」をこそ攻撃の対象にするタイプです。「ウチの職員は皆頑張っている」なんて言ったら非難囂々ですが、「ウチの職員はどうしようもない意識改革が必要だ~」などと言えば喝采を浴びるわけです。「外」ではなく「内」を叩くことこそが国民の共感を得ることに繋がっているのではないでしょうか。一見すると、我が身を厳しく律するかのような態度で……

 高校の頃「世を挙げて皆濁れるに我一人澄めり」という漢文のフレーズがなぜか流行ったことがあります(漢文の先生の言い回しが面白かったからだったかと)。流行ったのは私のクラスだけのことなのですけれど、日本の有権者の心理はこれに近いのかも知れません。自分が属する社会を批判するように装いつつ、その実は自分自身を批判の対象から外しているわけです。かの産経新聞の「溶けゆく日本人」など、これぞ反日と呼ばれるべき悪意に満ちた日本人に対する誹謗中傷としか思えないわけですけれど、逆に「愛国」を称する人々からさえ歓迎されているのは、要するに「自分自身を批判の対象から外す」センス故でもあります。自分を批判の対象から外しつつ、「内」を論難する、これこそが最も広範に受け入れられるスタイルなのでしょう。

 ……そういうわけで、自民党が往年の支持を取り戻すには小泉や河野、舛添のように民主党は無視してひたすら自民党自身を批判することであり(「我一人澄めり」という顔をするのは忘れずに!)、谷垣のように「与党」という「外」を批判している間は国民の支持は広がらない気もしますが、まぁ自民党の支持など広がってもむしろ困るものですからどうでもいいです。

 

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7 コメント

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Unknown (Unknown)
2009-12-27 14:06:19
石破氏は、どちらに分類されるのでしょうか?
最近は、安倍氏や谷垣氏とともに「統帥権干犯けしからん」ととみに右傾化しておられるようですが。
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Unknown (非国民通信管理人)
2009-12-27 22:59:33
>Unknownさん(次回よりハンドルネームをご記入ください)

 石破氏はかなり中途半端なポジションですね。大筋では右ですが、右になりきれない、だから総裁「候補」に名前が挙がる程度で党内の人気もせいぜい5番手くらい。一方で非自民党支持層から変な持ち上げられ方をする時もあったりしますが、無党派層に食い込むほどでもない。民主党で言えば前原みたいなポジションでしょうか。
返信する
ここにも報道の悪影響が (名古屋人)
2009-12-28 01:09:34
>「世を挙げて皆濁れるに我一人澄めり」

実践女子大教授の広井多鶴子氏のHPで紹介されていたデータに「日本のしつけは低下した」という回答が多数を占め、一方で「自分の家のしつけは十分である」という回答も多数だそうです。
矛盾してますよね。

同様に2004年の新聞調査でも「社会のモラルは低下した」という回答が多く、しかし「自分はモラルが高い」という回答が多かったそうです。

自分以外のすべては悪いが自分だけは正しい、日本社会は政治家や官僚が悪いからこうなった。自分は正しい人間なのに…。
私に言わせれば思い上がりなんですが、新聞も「民間人」を悪く言うことはないので、これにおもねった論調ばかりです。
こうした勘違いした増長人間を増やした最大の原因は、大衆迎合のマスコミにあると思っています。
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コンプレックス? (岡目八目)
2009-12-28 09:45:15
>管理人様、
失礼しました。最初のコメントも私です。よろしくお願いします。

 仲間に対して何らかのコンプレックスを抱えている人が、忠誠心をみせようとして過激な行動をとることは政界以外でも見かけます。
・安倍氏…突然の総理辞任と入院雲隠れで、国と党に多大な迷惑をかけた。
・谷垣氏…加藤の乱と脅されてポシャった過去、(ご本人は否定されているが)ハニートラップの噂。
・小池氏…日本新党→新進党→自民党の途中入社。
・石破氏…自民党離党→新進党→自民党出戻り。田村氏離党の責任。

 一方、小泉氏や河野氏や舛添氏はコンプレックスが無いので、是々非々と平気で自民党批判や改革提案ができる。無党派がこちらを好むのは、客観性の担保と改善意欲を買うから。こういう面もあるのではないでしょうか?
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例えば某動画投稿サイトの場合 (ノエルザブレイヴ)
2009-12-28 21:47:19
わたしもよく出入りしている某動画投稿サイトにて行われた世論調査では支持政党のトップは自民党でしたが今後どんな政権ができてほしいかという質問のトップは「政界再編で新しい政権ができる」でした。それは例えば「河野・長妻連合軍」的なものへの期待なのか、それとも攘夷願望の現われなのかは私には分からないです。
ただ、こういうサイトによく出入りしている自民党支持層(恐らく攘夷願望の強いタイプ、民主党ですら極左に見えてしまっている可能性も)は自民党が政権を取り返すに当たってはあまり良いお得意様ではないようにも思えますけれども。

あと、結果発表動画に恐らく民主党に反発する人によってつけられたコメントの中に民主党のことを「ミンス」と表現しているのが結構ありましたけど正直どんな政党を支持しようが勝手だけれどもその意識の中にある差別志向は捨てなさいよ、と思いましたね。
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Unknown (非国民通信管理人)
2009-12-28 23:15:19
>名古屋人さん

 昨今では「国民」は何でも正しいことになってしますからね。専門家が何を言おうと「民意」の多数を得た方が正しいことになりますし、メディアも「お客様」である視聴者層には媚びるばかりですから、そうした「思い上がった」民間人が育てられてしまったのかも知れません。

>岡目八目さん

 なるほど、コンプレックスの有無もありそうですね。傲岸不遜で自身の過ちに無自覚な人ほど、堂々とカイカクを唱えることができ、それが喝采を浴びると……

>ノエルザブレイヴさん

 なんだかんだ言って若い世代は自民党が強いんですよね。某動画投稿サイトと言えば選挙権のない10代まで調査を広げていたのが記憶に残っています。往々にして妄想の中に生きる人々ではありますが、こうした層に訴えかけた先の選挙における自民党の惨敗を見ますと、まぁ誰にとっても付き合わないようにした方が良い連中と言えるでしょうか。
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傲岸不遜はつらいかな (岡目八目)
2009-12-29 09:03:13
>管理人様

 傲岸不遜を貫くのは大変ですよ。ひとつ前のエントリーにあるように、「我一人澄めり」を許さず、仲間内での過剰な同調性を強要する圧力は強いですから。
 たいていの大人は嫌というほどそういう経験をしているので、傲岸不遜を貫く強い人を尊敬する気持はあるでしょう。上記の自民党の御3方だけでなく、民主党のあの方に対しても。
 一方、自身のコンプレックスを自覚する人も多いので、コンプレックス臭を感じさせる政治家に対しても、尊敬はしないまでも同情や共感を持つことはありそうです。政治は作用に対して反作用、そうそう一方方向には動かないようですよ。
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