自民党の谷垣禎一総裁は14日、党本部で就任後初の定例記者会見を行い、子ども手当創設など鳩山政権が掲げる政策について「困っているところがあると補助を入れようという議論が非常に多い。かなり社会主義的な政策体系で、大いに対決する必要がある」と述べ、臨時国会で論戦を挑む考えを強調した。
自民党新総裁の谷垣氏が、なにやら不可解なことを口にしています。曰く「困っているところがあると補助を入れようという議論が非常に多い。かなり社会主義的な政策体系」だとか。困っているところに補助を出すのは政治の役割として当たり前のことで、一時期までの自民党政府だって多少なりとも実践してきたことのはずですが、なかなか奇抜な発想です。まぁガチガチの小さな政府論者、新自由主義者連中にしてみれば「社会保障」=「社会主義」のようですから、小泉内閣の重鎮だった谷垣氏にしてみれば民主党の政策ですら社会主義に見えるのかも知れません。
先の総裁選では小泉構造カイカク路線を反省、修正する素振りを見せていた谷垣氏ですが、実態はこの程度のようです。まぁ、これも一面では「古い自民党」的な部分なのでしょうか、「建前としては反省しながらも時にボロが出る」辺り。例えば歴史問題を思い浮かべてください、建前としては先の侵略行為を反省すると言明しておきながら、たまに「本音」が漏れるのが昔年の自民党政治家というものでしょう? その点では谷垣氏も立派な「保守本流」なのかも知れません。悪い意味で。総裁選の対立候補だった河野ジュニアは、過去の誤りを認めないどころか正当化を図るばかりで、公然と過ちを繰り返そうとしている等々、こうした「新しい自民党」的なものに比すれば、建前だけでも過去の罪を認める姿勢を持っている点は無視すべきではないのでしょうけれど……
で、話題に上っている「子ども手当」にも賛否両論あります。「社会主義的だ!」なんて言う意見は相手にする価値がないとして、その他には「富裕層にまで支給する必要があるのか(所得制限が必要ではないのか)」とか、財源の問題とかがありますね。まず前者に関してですが、私はベーシックインカム的な考え方をするものですから、別に制限など無くとも良いかな、と思います。細かな制限を付けずに「誰でも」もらえるような形にした方が好ましい部分もあるでしょう。麻生内閣の定額給付同様に評価してやっていいのではないかな、と。
一方で問題と感じるのは、財源の方です。民主党が説明する財源とはすなわち「ムダを省く」であるわけですが、これでは全てが台無しです。そうではなく、法人税や所得税を高度経済成長期の水準に戻すことによって得られる税収を財源に充てるのなら話は変わってくるのですが。給付が均等、貧しい者にも富める者にも同額の給付であったとしても、その財源として富裕層への課税があるのなら、所得の再分配として機能しますから。しかし、累進課税ではなく「ムダを省く」を財源とする場合はどうでしょう?
国会議員とか公務員とか、「官」の世界は何もかもムダだと思っている人からすれば、それこそ無尽蔵にムダがあるように見えているのかも知れません。しかし国会議員も公務員もムダとは言い切れない、削れば済むというものではないわけで、容易く捻出できる「ムダ」、本当に誰からも必要とされていない正真正銘の「ムダ」など限られているはずです。だから代わりに配偶者控除の廃止など、何かを新たに「ムダ」と見なして放棄ことになる、結局のところ看板の掛け替えに止まる、富の再分配という面では大した進歩が期待できない面も否めないわけです。
持てる者から税を徴収して持たざる者へ分配する、この辺が基本線だと思うのですが、民主党案はそこに達していません。「持てる者と持たざる者の双方から 公 平 に 税を取り、持てる者と持たざる者の双方へ 公 平 に 給付する」これが民主党の掲げていることですから。しかも現時点では「ムダを省く」に止めつつも、将来的には消費税増税という逆進課税を視野に入れているわけですから猶更でしょう。いやはや、この程度で社会主義など錯誤も甚だしいですよね。社会主義的な方向性にはきっぱりと背を向けているのが民主党なのに。
おっしゃることはまったく賛成いたしますが、宗主国であらせられる米国様はもっとスゴイです。オバマ氏による社会保障改革という同一の題材をあつかったもののうち、気になった(気にいった?)ページを3例あげておきます。日本はまだここまで行っていないので大丈夫でしょう…いや、ここまで行ったら完全に終わりであるので、行っていないから大丈夫というのは暴論かも……
1.次のページは距離をおいた分析をしています。
「オバマはヒトラー?共産主義者?」
http://blog.livedoor.jp/y15settunueko/archives/1220651.html
2.次のも分析ですが、もうすこし詳細あるいは当事者の視点にちかそう。
全米で「21世紀のボストン茶会事件」、オバマ政権の経済政策に抗議
http://www.afpbb.com/article/politics/2592833/4035181
そのなかでも、以下の写真など、オバマの頭文字「O」をある象徴になぞらえており、かなりスゴイ(苦笑)。
http://www.afpbb.com/article/politics/2592833/4034446
3.これも上記の2と類似した感じの分析です。
「茶会事件」再び?全米各地でオバマ政権へ抗議活動
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/world/america/243867/
そのなかの以下の写真など、イタい。
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/world/america/243867/slideshow/174025/
http://y-sonoda.asablo.jp/blog/2009/09/13/4577661
「理」に関しては、「平等性の確保」が必要です。「実質的な平等を目指すこと」が大切なのに、「悪平等」で片付けられてしまうことがあまりにも残念でなりません。
税金でも消費税ばかりに焦点を当てることは逃げの一言で終わりでしょう。
「所得税の累進課税を再検討する、大企業の甘やかしにしかならない法人税の減免をもう止めるなど税法上の改正は他にあるだろうが」と言いたいです。
「情」に関しては、社会的に苦況に立たされている人々に対して逃げずに目を向けることです。
自己責任で切り捨てられたら堪ったものではありません。立ち直る術を示すことができる政策を望む気持ちからそれも必要だと思っています。
正直、日本は地理・言語の問題その他があって欧州などよりはるかに高額所得者の海外移住などが少ないのだから、所得税だって昔みたいに累進の度合いを強くすればいいと思うんですけど、不思議と貧乏人をふくめてそのような主張をしないんですよね。ほんとにタックスへヴンに出国するんなら、勝手に行けと割り切ればいいと思うんですけど(止めようもないんだし)、金持ちが賛成しないのは当然として、貧乏人はなぜなのか理解に苦しみます(笑)。
本当、増税=消費税増税であって、法人税や所得税の累進課税の引き上げは全く考慮の対象にならないんですよね。所得再分配を考えるなら税に対する考え方を改めなければならないはずなんですが、平等を悪平等に見せる、理を情で誤魔化そうとするような政策が幅を利かせているようです。
>Bill McCrearyさん
まぁ先の選挙期間中は極右層向けのアピールを頑張ったものの、それが票に結びつかなかっただけに自民党も迷走中なのでしょう。しかし、金持ちが金持ち優遇税制を支持するのは当たり前のこととして貧乏人もまた累進課税に否定的な傾向が強いのは不可解ですよね。いずれ自分たちがリッチになれると信じているわけでもないでしょうに、お互いの足の引っ張り合いが好きなんでしょうか。
たのもしこう?みたいなもんだ
困った時の金だ民主主義だ~~~~
国家が積極的に関わらない事こそが美徳という思想の是非はともかく、それがすべてと毒され過ぎてる谷垣氏こそ「新しい自民党」的なモノに相変わらず囚われているように見えます。大事なのは谷垣氏の言う所の国民にとって何が有益かつ重要なのか?であって、質の悪い与党批判してても仕方無いだろうにと思うのですが。
そもそもこの雇用・経済低迷の元凶を作ったのは他でもない自公政権である訳で、まず自民がすべきは何を反省し何を重んじるかという自らを省みる真摯さでしょう。河野あたりは賛同しかねますが、その辺はまだ思慮があったと思いますが、谷垣氏にはそうした思慮すらないようです。もっとも、あったところで言えないのでしょうが。
私自身は自民が本当に変貌するのは、戦犯格の歴代総理クラスが議員を辞め、マトモな人材を招き入れる事ぐらいに無いと考えますが、現状の連立与党の上げ足取りでドサクサにまぎれて与党復帰を画策してるようでは、健全野党にもなれぬまま衰退するのでは?と思う次第です。
まぁ、与党時代は俺(私)は総理なりたいとでしゃばってた連中が復活当選という負い目があったにせよシタリ顔で様子見してるような政党ですからお先真っ暗といったところかと。
一応、二三週間前のNHKの『日本の、これから』で、民主党の大塚耕平副大臣が、子ども手当てでは所得制限をやらないけれど、お金に余裕がある方々については所得税の累進をどうだこうだ的なことをはっきりと言ってました。
ちゃんと実現するかどうかはわかりませんが、一応こういう方向性がそれなりに多くの民主党議員の念頭にあるのはたしかなようです。
そう、国に預けたお金なんですから、それを国民のために使うのが当たり前なんですが、国民ではなく「まず国家のため」に使いたがる人が多いようです。
>ふみたけさん
まぁ谷垣は口先だけでも近年の自公政権/構造改革路線を反省した分、何の反省もない河野よりはマシだと今でも思いますけれど。露出度が高い分だけ「歴代総理」の問題点も目立ちますが、本当に問題があるのは小泉以降に幅を利かせるようになった連中であって、むしろ古株の復権の方が政党としての「質」は改善できるのではないかと。国民の支持を集めるのが目的なら、ふみたけさんの仰る方向性で良いと思いますが……
>あおしまさん
それなりに多く、ですか。本当にそうであったらどんなに良いかと思いますね。確かに民主党の中にも多少はまともな考えの持ち主がいて、累進課税が頭にある人もいるでしょうけれど、残念ながらそれが党の方針として出てきたことは無いわけです。そういう議員もいる、と言うレベルではどうにもならない世界ですから。
私は競争自体は否定しませんが(勝手にやる分には構わない。私だって、ゲームの大会で優勝できたらうれしいですし。)、これを人生に組み込むのは勝ち負けができ不利益を被る人間ができてしまうため、人生の主幹にするべきではないと考えております。しかし、競争をするにしても、スタートラインを同じにしなくては、不正なレースになってしまい、同じにすることが社会保障の役割のはずなんですがね。そんなレースがお望みなのでしょうか。