非国民通信

ノーモア・コイズミ

労組を敵視する人々

2010-10-17 22:57:34 | ニュース

紳士服アオキ労組、8割脱退 「会社が違法勧奨」訴え(朝日新聞)

 大手紳士服店チェーン「AOKI(アオキ)」を展開する「株式会社AOKI」(横浜市)の企業内労働組合「AOKIグループユニオン」で、9月末までの4カ月で組合員の8割を超える約1380人が組合を脱退したことがわかった。ユニオンは「会社側が異動や解雇をほのめかす違法な脱退勧奨をした」と訴え、神奈川県労働委員会に不当労働行為の救済を申し立てた。

 会社が組合を辞めるよう促したり、組合活動を理由に解雇や配置換えをしたりすることは労働組合法が禁じた不当労働行為にあたる可能性がある。労働委員会が救済命令を出しても従わない場合は50万円以下の過料が科される。

 ユニオンによると、組合員数(契約社員、パートらを含む)は6月10日時点で1642人だったが、6月下旬から急に脱退が目立ち始めた。8月28日には139人、同29日には175人が一度に脱退した。今月15日現在の組合員は255人まで減った。

 ユニオンの主張では、複数店舗を統括するマネジャーが7月ごろから、部下を店の事務室に呼び出すなどして個別に面談。「トップが組合を毛嫌いしている」「脱退しないと異動させられる」などと言って脱退を促したという。

 朝日新聞の取材に応じた30代の女性社員は9月上旬、上司から電話で「トップが組合をやめない者は解雇だと言い切った。今日中に脱退届をファクスして」と脱退を迫られ、慌てて組合事務所などにファクスを送った。「解雇と聞いて急に怖くなった」と振り返る。

 ユニオンはこうした脱退勧奨が組織的に行われたと主張。マネジャー同士のメールの写しとして「部下さんの為に!を前提に1人目標10名で頑張りましょう」などと記した文書を労働委に証拠提出した。

 ユニオンは、AOKIが2005年に吸収合併した紳士服店の社内組合が前身。合併時の組合員は381人だったが徐々に増えた。労使間でこれまで深刻な対立はなかったというが、柴山敏郎・中央執行委員長は「組合員が増え続けていることに会社側が危機感を覚えたのかもしれないが、異常な事態だ」と話す。

 ユニオンの上部団体であるUIゼンセン同盟が事態を重くみて、AOKIグループ民主化対策委員会を設置し、抗議活動に加わった。

 職を転々としてきた割には労組の存在する職場に巡り会ったことがなく、労組なんて都市伝説なのではないかと自分には思えるのですが、今回の記事から察するに業界大手であるAOKIも2005年までは労組が存在しなかったようです。きっとそういうものなのでしょう。とかく雇用の問題を雇用主「以外」に求めたがる人が多い、中には若年層や非正規雇用の問題を労組のせいにしたがる論者も少なからずいるわけですが、そもそも普通の会社には労組なんて存在しません。労組が存在する会社なんて、むしろ例外と見るべきでしょう。労組が改革を阻んでいるみたいな妄言を吐いている連中は、日本の教育を日教組が牛耳っているなんて被害妄想を抱く連中と同レベルと言えます。

 それはさておき、希少な存在であるところの労組加入者がわずか4ヶ月で8割超も脱退する事態が起こったと伝えられています。日頃から労組のネガキャンに励んでいる人々の語るところでは労組は強制加入で当人に選択の余地はないようですが、随分と簡単に脱退できてしまうものみたいですね。ともあれ、解雇や異動を脅しに使って組合の脱退を促したとか。事実が確認されれば不当労働行為となりますが、この違反によって科されるのは「50万円以下の過料」だそうです。これでは現行の法制度が企業側への歯止めにはならないのも当たり前なのかも知れません。結局、日本では社員を不当に異動させたり残業代を支払わなかったり、あるいは不当に解雇したり不当労働行為を働いたとしても、会社側が厳しく責めを負うことはないわけです。何でも雇用側のやりたい放題、この辺は真面目に規制を加えていかなければならないはずですが……

 ちなみにAOKI労組の上部団体はUIゼンセン同盟とのこと。UIゼンセン同盟といったら旧民社党系の政治家と繋がりが深く、昨今では外国人参政権に反対する集会を開くなど、かなり「右」に傾倒した団体でもあるのですが、この辺はどこまで知られているのでしょうか。民主党、中でも現首相である菅は市民運動出身であることなどから、「左っぽい」イメージを主として右派から持たれていますけれど、労組全般も似たようなものと思われます。つまり労組であるというだけで中身もロクに見ず「左っぽい」イメージを抱いて、それで敵視している人が右派でもとりわけ若い世代には多いのではないかと。一昔前までは右と左の対立軸と、雇用側と労働者の対立軸は別個に存在していたのに対し、21世紀の新しい右派はその辺の区別が付けられていない気がします。だから労組を一律に敵視する、UIゼンセン同盟のような露骨に右よりな労組までをもまとめて嫌悪しているフシはないでしょうか。こういう勘違いの結果もまた、労組をレアな存在たらしめているのかも知れません。

 「トップが組合を毛嫌いしている」「トップが組合をやめない者は解雇だと言い切った」との証言も報じられています。AOKIはガチガチの同族経営、トップはみんな青木さんです。こういうポジションにいるとなおさらのこと、会社並びに社員を自分の所有物であるかのごとく思い込むところもありそうです。そして2005年までは労組もなかった。しかし吸収合併した会社の方から労組が誕生して、それが徐々に加入者を増やしていった。そうなると社長としては、自分の体を浸食されていくような恐怖を覚えたのかも知れませんね。だからこそ毛嫌いする、今の時代の労組に大したことができるとも思えませんが、右派層の妄想する日教組像のように社長の頭の中ではAOKI労組は巨大な「敵」に見えているのでしょう。



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7 コメント

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Unknown (ノエルザブレイヴ)
2010-10-17 23:16:48
管理人さんのおっしゃられるところの「労組が改革を阻んでいるみたいな妄言を吐いている連中」の中で実際に労働組合と関わりを持った人というのは案外多くないのではないでしょうか。だからこそある意味で組合のことを過大評価してしまうのかもしれません。
そして「過大評価された組合の姿」がよりリアルに近いならまだ頼りがいがある、とも言えるかもしれません。
>UIゼンセン同盟 (Bill McCreary)
2010-10-17 23:28:09
こりゃ完全な右翼組織ですよねえ。旧総評系でもなく、どのくらい労働者の立場を守ってくれるかも疑問です。何かと話題の現法務大臣もこの系統みたいですね。

さてさて、私今年めでたく組合の役員になりました(笑)。これも拙ブログで記事にしようかなと。
Unknown (非国民通信管理人)
2010-10-18 11:07:01
>ノエルザブレイヴさん

 その辺は引き合いに出した日教組と同様で、ある種の人は敵として過大評価したがる傾向にありますよね。まずはあるがままに、等身大の評価をすることから始めるべきではないかと思うのですが、何かを敵に見立てる習慣が染みついた人もいるのでしょう。

>Bill McCrearyさん

 組合の役員ですか。おめでとうございます、というポジションなのかどうかは正直わかりませんが、残念ながら本物の組合を直に見る機会が今までなかったものですので、生の声が聞けるのを楽しみにしております。
私も (ローリー)
2010-10-19 00:16:25
民間企業の組合というと企業側から役員が送られてくる御用組合というイメージしかなかったのですが…某車メーカーは正社員は組合に強制加入じゃなかったデスかね?
Unknown (非国民通信管理人)
2010-10-19 01:14:59
>ローリーさん

 その辺も、反労組の立場から過大に強調されたイメージだと思うんですよ。そういう労組も存在するのでしょうけれども、大筋では経営側から敵視されているタイプが多いのではないでしょうか。
失業中ですが組合員です(苦笑) (伊東勉)
2010-10-19 03:16:10
 お晩です(というか、もう朝です)。
 しばらくPCいじるのもままならない状態になっていましたが、ようやく少しは落ち着きまして…お邪魔します。

 まずこの労組の大量離脱の件についてですが…正直、びっくりしましたね。ここ数年、労組をはじめとした『金もちばかり好き勝手にはさせないぞ』という反撃で、ある程度の生活改善を勝ち取ってはいますが、それが怖く感じたんでしょうね。

 私から見れば「何労働者の生きる道ぶっ壊して自分たちだけいい思いしているだよ」ということで、別に会社つぶそうってわけでなく、ただ「行き過ぎの是正」をしていただけだったのですが、その「行き過ぎ」が当たり前だと思っている人たちにとってみれば、自分たちの“利”を崩そうという奴許すまじ、で、必要以上にむきになっている様子が見えます。

 この大量離脱の他にも、労働者なのに「この人は請負です」と労働組合との交渉にすら応じなかったり、形は違えど「たたかう人」に対する嫌がらせは陰湿化、高(←なんて言葉は失礼ですが)レベル化しています。

 自分が失業中でありながら個人加盟組合の戦列に加わったのは…少しでも力になりたかったからです。

 他にも「象徴にすがる運動のあり方」に対する疑問(政治を変えるのは~だけだ、という類の)も書こうと思いましたが、ガツガツ詰めすぎてはだめですね。色々思う事が多いけど、ブログ界で話せる人も少なくなりまして…何とかワープロに向き合えるようになりましたので、後日何とか書ければ、と思います。

 どうも長文、お邪魔しました。
Unknown (非国民通信管理人)
2010-10-19 18:54:49
>伊東勉さん

 労組が必要になる場面が否が応でも増える中で、それを危険視する経営側も増えるのかも知れませんね。仰るように別に会社を潰そうというものではない、あくまで共存共栄の道を探っているに過ぎないはずですが、いかに働く人の取り分を削るかに血道を上げている経営側にとっては、何かと気に入らない存在なのでしょう。こういう労使関係もまた、是正されねばなりませんよね。

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