政府は10日、北朝鮮が「人工衛星」と主張して発射した弾道ミサイルの呼称を、従来の「飛翔体」から「ミサイル」に改めた。河村官房長官は同日の閣議後の記者会見で「ミサイルと呼ぶことにした」と明言。河村氏が発表した対北朝鮮制裁の延長理由などを説明する文書「我が国の対北朝鮮措置について」でも、「(北朝鮮による)ミサイルの発射」との表現を用いた。
まさに目眩のしてくるようなアホなニュースですが、ここで引用した読売だけではなく朝日も産経もNHKも、どこも同じ様なことを垂れ流しているから困ったものです。この人達、頭は大丈夫なんでしょうか? いかに「お客様(=視聴者、読者)」を喜ばせるのが商売といってもねぇ……
政府及び河村官房長官の方は後で突っ込むとして、報道機関はもうちょっと頭を使って欲しいものです。端的に言えば「ミサイルをミサイルと呼ぶことにした」ですから。発射実験直後は「飛翔体」と国際的に通用しそうな表記を一時的に採用していた美しい国のマスコミですが、ほとぼりが冷めるや「ミサイル」に逆戻りしてしまったようです。なにしろ政府与党の組織本部長が「国連脱退くらいの話をしてもよい」などと言い出すなど孤立主義を夢見る日本のこと、一国だけで「ミサイル」と言い張って大はしゃぎしている、その恥さらしぶりが自覚できていないのでしょう。
ともあれ、ミサイルと断定できる根拠もないまま、ただ願望だけでミサイルと呼び習わしてきました。一応、政府はその支持者よりも少しだけマシなようで若干の慎重さを見せたものの、結局は「ミサイルと呼ぶことにした」わけです。しかるに、それを報じるメディアは先んじて「ミサイル」としか呼ばなくなっていたため「ミサイルをミサイルと呼ぶことにした」みたいな珍奇な報道になってしまったようです。官房長官が記者会見で「ミサイルと呼ぶことにした」と、それを報じるのは結構ですが「何を」そう呼ぶのか説明するために「ミサイルを」と書くのは、もはやトートロジーと呼ぶことすら面倒に感じるほどの馬鹿らしさです。
政府、「ミサイル」と表現 「ミサイル関連飛翔体」から(朝日新聞)
河村長官は変更の理由として、(1)国会の北朝鮮への抗議決議で「ミサイル発射」と断定している(2)北朝鮮側の打ち上げ成功の発表にもかかわらず、電波を受信できないなど「人工衛星としての実態がない」――の2点を挙げた。
さて報道の仕方も変ですが、「変更の理由」も正気とは思えない代物です。なにしろ理由その一は「我々が断定しているから」ですよ。自分達がミサイルと断定しているのだから、アレはミサイルなのだと、そう言いきったわけです。Wikipediaだったらそれでも通用するのかも知れませんが、それじゃ「将軍様は偉大だと断定している」から「将軍様は偉大なのだ」と語るどこかの国と変わりません。いや、確かに目指す方向性は似通った部分が多いかも知れませんけれど。
そして理由2は北朝鮮側の打ち上げ成功の発表にもかかわらず、電波を受信できないなど「人工衛星としての実態がない」からだそうです。う~ん、「打ち上げに失敗したから電波を受信できない」というパターンもあり得るわけですし、「打ち上げ失敗」はほぼ国際的な認識の一致するところだと思いますが、日本は違うのでしょうか。どうも北朝鮮の大本営発表であるところの「打ち上げの成功」を前提に話を進めているように見えます。「成功したのに電波が受信できないのかおかしい」というからには、「打ち上げ失敗」の可能性を除外しているわけですよね。日本と北朝鮮だけが、打ち上げは成功と言い張ることになりそうです。
そもそも「人工衛星としての実態がない」=「ミサイル」なのでしょうか? 「猫ではない」→「犬と呼ぶことにした」みたいな論理の飛躍を感じないではいられません。確かに人工衛星としては機能していないわけですが(初めからその機能がないにせよ、失敗のためにその機能を果たせないにせよ)、それを言うなら「ミサイルとしての実態」はあるのでしょうか? 衛星を積んでいなければ人工衛星の打ち上げ実験ではない、とするなら、同様にしかるべき弾頭を積んでいなければミサイルとは呼べないはずです。せいぜいが「空飛ぶ粗大ゴミ」でしょう。でも「ミサイル」と呼びたくて仕方がない人がたくさんいるようですね。やれやれ。
今朝、電車でおじいさんに話しかけられました。
最初は、「北朝鮮みたいなところは、賠償・賠償で会話にならないねえ。」などど言っていて、お年を召した方でもそういう思いがあるんだなあと思っていました。が、そのうち「今の北鮮を見ていると、戦中の日本と同じだんだよねえ」「天皇陛下万歳って言ったって、良い思いをしたのは取り巻きだけなんだよね」「今回の人工衛星も成功したって言っているけど、日本の大本営発表と同じだよね」「北鮮に言って、ばかなことはやめろと言ってやりたいよ」「日本が平和のリードオフマンになるべきなんだよねえ」と。最後は心から同意して聞いていました。
決して、「ネトウヨ」的な矛盾に満ちた人ばかりではないんだと安心した朝でした。単純化はしたくないのですが、戦中の日本を自分で体験した人だからこその認識なのかな、と思いました
義務教育では唯物論を必修にするべきだとつくづく思います(笑)。
…理由2はなんと申しましょうか、
「実態が無くて悪かったな失敗したんだよ失敗!」
と(半泣きで)云わせたいが為の高度なイジメ芸のよーな気もします。だとしたらマア、この位の意趣返しは許されるでしょうププー。
散々緊張を高めておきながら、
「アレは全部張りぼてです」と、
あの国が公式発表したら、
どれだけ多くの人が日本国内で恥ずかしい思いをしただろうか…。
それに比べたらやはり、撃ってくれた方が日本国内で恥をかく人は少なかったのでしょう。
現場にいる自衛官や、身を守る物のない一般の人にとっては迷惑な話だけど…
p.s.3月31日の北海道新聞に、
拉致被害者の会の蓮池さんのインタビュー『強硬論から「融和」へ』
という記事がありました。
もう一人の方のインタビューも載っていて、温度差を感じる記事ですが、
ネットに出ている物は、
抜粋なので、縮刷版など、
紙面で読むことをおすすめします。
一時は「飛翔体」で我慢していたようですが、どうしても「ミサイル」であって欲しいという思いが表れていますよね。ミサイルでないと北朝鮮の脅威を煽れない、北朝鮮を敵に見立てて害害主義と軍事優先に走るためには、どうしてもミサイルで「あって欲しい」と、そう思っている人が多いのでしょう。
>山下さん
でも「飛翔体」では煽動にも大義名分にも使えないでしょう?
>momoppuさん
「賠償・賠償」というのはネット上で増殖した割に新しいイメージかと思いきや、高齢層にも浸透しているのですね。そうでありながらも一方で戦争を「リアルに」感じてきた世代だからこそ、今の日本のおかしさにも気付くことができるのかもしれません。
>ポールさん
日本で「毅然とした態度」と言った場合、要するに「外からの批判から耳を塞ぐ」「自分達の信じたいものを信じる」ことですからね……
>助詞厨学二年生さん
曖昧な表現なら最後まで曖昧に……と思いきや、最後は「ミサイル」と言い切ってしまうなど、妙なところで果断になるのも特色でしょうか。灰色のものを灰色というのではなく、白か黒か自分の好きな方を選ぶ、曖昧というより恣意的なのかも知れません。
>看板当て本塁打さん
「日本に恥をかかせる」ことが目的なら、北朝鮮は「張りぼてです」と発表すべきですね。張りぼて相手に戦々恐々、日本だけが大はしゃぎしていた国ですから。しかるに北朝鮮も国内向けのメンツがあって、成功を強弁するしかない。そこに日本が乗じているところでしょうか。
子の件に関しては私も記事起こそうと今推敲中ですが、どう触れればいいやら喉まで…という状況です。しばらく他の方へのTBはしませんでしたが、今回は何人かの方には送らせていただきます。下手な一文ですけどね。
正直頭に血上りすぎで、本当に問題解決しようとしてんのか、という意味でがっかり来ますね。
と生意気書いたところで失礼します。
どうも私なんかには、とても問題解決を図っているようには見えないんですよね。誰もが実は脅威でも何でもないことを知っている、だからこそ解決すべき問題としては真剣に捉えていない、むしろ軍事優先を主張するための口実に使っているような印象を受けるのが専らです。
'50年代の米ソのそれよりかは優れているのかな、という程度のものでしかありません。
旧ソ連は自国のミサイルに共通する欠点である、燃料が液体であるために充填に時間がかかる点を
運搬専用のトラックや列車を開発し、発射位置を自由に変更する事で補っていましたが
旧ソ連の技術から独自に作られたテポドンは、それらのミサイルと比べてあまりにも大きく、輸送そのものが困難です。
アメリカはもとより日本や韓国も偵察衛星を保有している現代では、地上の施設に据え付けている時点で国威発揚のためのこけおどしにしかなりません。
それ以前に、テポドン二号の射程距離は八千キロとも一万キロとも言われ、
アメリカを目標にしている事が容易に推測でき、そもそも日本向けのものですらない、と言えます。
これを日本の脅威とみなすことは、完全に集団的自衛権の行使に踏み込む事になります。
某ブログでもそうでしたが、そもそもテポドンが兵器なのか、日本にとってどれだけの脅威となるのか、
人工衛星の打ち上げは建前で軍事転用の可能性があるというのなら、わが国のH-2「ロケット」はどうなのか、などという大事な点に目をつぶって
やれミサイル防衛がどうの、日米関係がどうのと天下国家に花を咲かせているのには呆れます。