非国民通信

ノーモア・コイズミ

派遣叩きの理由

2008-12-26 23:24:10 | 編集雑記・小ネタ

324 :無名の共和国人民 :08/12/25 21:20:32 ID:5tGSQEab
ニュー速板で派遣関連のスレッドが立つ度に、
「派遣なんて自己責任だろ!」というアンチ派遣と
「政府は派遣を救済すべきだ」という救済派
が激しい論争(罵り合い?)を繰り広げる。
それが要因でスレが凄く伸びるのだけれども、
派遣を叩いているのはどういう人達(職業・年齢・年収)なのだろう?

http://yy31.kakiko.com/test/read.cgi/x51pace/1159007496/324-325

 なぜか私の環境からではオルタナティブ@政治経済板に書き込みできないので、代わりにここで疑問に答えてみます。どういう人がどういう理由で派遣を叩いているのでしょうか?

 例えば、若い世代や貧困層は、他の階層より自民党支持傾向が強いわけです。そして自民党政治、とりわけ若い世代の支持を集めるようになった向こう10年の自民党政治を真っ向から批判してきた身として、その支持母体たる若者や貧困層に、私は厳し目です。中年男性や中堅サラリーマン層はとっくに自民党を見限っているのに、若く貧しい抵抗勢力のせいで政権交代が妨げられている、そんな現状への苛立ちから派遣叩きが起っているのでしょうか? さすがにそれはないです。

 少し、視点を移してみましょう。例えば国旗・国家の強制に対する不服従がありますが、この不服従を、どういう人たちがバッシングしているのでしょうか。色々と考えられます。そんな中でも有力なものの一つとして、「自分自身が様々な場面で物事を強制され、その強制に抗うことが出来ない人」の存在に注目してみましょう。何かを強要されているのは教員だけではない、自分達だってあれやこれやと非合理なものを強いられている、だけど背かずに耐えている、自分達は我慢している、それは仕方がないことだ、みんなで耐えていくしかないんだ、それなのに我慢せず反抗している奴らがいる、けしからん! ……と、そんな風に考えている人がいますよね?

 公務員とかマスコミとか、実態はさておき好待遇とされている職業へのバッシングも似たようなものです。自分達の給料は低いけれど、我慢している、みんなで耐えて行かなきゃダメなのだ、誰でも苦しいのだ、それなのに一部には自分だけ楽な仕事で高い給料をもらっている奴らがいる、けしからん! ……と、こんな風に自分の持っていないものを持っている人をバッシングの対象とする、そうした傾向があるわけです。

 顔の見えない無名の投稿者による派遣叩きも、似たようなところがあるのではないでしょうか? 強制に抗うことの出来ない人が不服従を貫く人を憎悪し、劣悪な労働環境から抜け出せない人が健康で文化的な職場を誹謗して止まない、自分の持てないものを手にしている人を悪罵する、そして切り捨てられてゆく派遣社員への攻撃もまた同様です。

 公務員の好待遇と同じで、それは実状より「思いこみ」に近いわけですが、派遣社員には「気軽さ」があります。少なくとも、あると信じられています。そこで「民間人」が公務員は高給取りと信じて公務員を叩くのと同じノリで、派遣社員を叩く人がいます。派遣社員は「気軽な」存在と信じて!

 非正規労働者が増える中で、正社員は少なからず選別され、そこに加えられる重圧も高まるばかりです。派遣社員で働いてみれば「派遣も正社員も同じ、派遣だからって真面目に働かなくていいと思ったら大間違いだぞ」と、一度や二度は説教されるものですが、逆に正社員になれば「社員は派遣とは違うんだから、もっと責任を持って働いてくれないと困る」と言われます。非正規オンリーですと、何となく社員と同じ仕事をしている気分になりがちですが、しかるに正社員経験しかないと、正社員として非正規とは違う過重な責任を負わされている気分になるでしょう。

 正社員と派遣社員の仕事の差は職場によりけりかも知れませんが、正社員の業務負担はどこでも増加の一途です。何時でも会社に縛り付けられ、身を粉にして働かなければならない、正社員の座にしがみつくために、残業代の不払いなどの不法行為も飲まなければならない、そんな人も多いわけです。そこで大した責任も負わされず、会社とも簡単に縁が切れる派遣社員が、自分にはない「軽さ」を持っている、そう感じる正社員も少なくないのではないでしょうか。思いこみに過ぎないとしても、です。

 自分は会社に拘束され、自由を犠牲にして尽くしている、それなのに会社に縛られない派遣社員はけしからん! ……と、こういう勢いで派遣叩きに精を出している人の姿が思い浮かんだわけです。統計調査も何もないので推測ですが、公務員叩きに熱狂する人が公務員の厚遇を信じているのと同様、派遣社員叩きに盛り上がっている人は、「派遣社員は自由で気軽な存在」と信じているのだと思います。自分は責任を負わされているのに、あいつらは気楽に生きやがって! 派遣叩きは、そんなノリです。たぶん。

 

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23 コメント

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奴隷制に最も強固に反対するのは、奴隷根性の持ち主である。 (sutehun)
2008-12-26 23:43:18
そんな話を思い出しましたー。

『苦しいのはお前だけじゃない』論を見ると、ただのからかいネタではなく一定の真実を含んだ警句だったのかもしれないなんて考えたりもします。

でもたぶん、彼ら自身は『自分は奴隷根性に染まっている』なんて考えちゃいないわけで。
真っ直ぐ言ったら大喧嘩になりそう。

喧嘩してやろうかとも思う今日この頃。
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Unknown (非国民通信管理人)
2008-12-27 00:06:39
>sutehunさん

 奴隷制廃止に反対するのも、奴隷根性の持ち主でしょうか。精神的には奴隷でありながら、そのくせ高みから見下ろすような態度を取る、そんなイメージも浮かびますね。プライドだけは超一流で、真っ向から何か言っても逆ギレに遭うだけのような気もしますが、放っておいてどうにかなるものでも……
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Unknown (BR-S)
2008-12-27 00:25:23
>なぜか私の環境からではオルタナティブ@政治経済板に書き込みできないので

おそらくはプロバイダ単位でアク禁処理がされているのだと思います。
現在の管理人であるカマヤン氏と直接コンタクトを取ってみてはいかがでしょうか。
http://d.hatena.ne.jp/kamayan/
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そして真に責任がある人間は冷笑する (ふみたけ)
2008-12-27 00:37:35
亡くなった青木 雄二氏が言っていた貧乏人同士が喧嘩し合い、それを愚かと冷笑する金持ちの構図が今もなお繰り返される事に正直呆れています。
色々思うに、相手に対し憎悪を高める元凶は、『無関心』そして『無知』にあると思います。
この事に気づかなければ、負の悪循環は何時までも続く気がするのです。
雇用形態、賃金、さらには学歴信条色々ありますが、『それが違う』と排斥と憎悪に身を焦がすよりも、『それが当たり前』と認める事からはじめて行くべきではないか?と思います。
それと、仮に他者の違いが許容出来ない事は置いておくにしても、今はっきりしてるのは『事情や理由は何であれ、それだけで人の命や生活が無為に奪われたり、阻害されてはいけない』という事実です。
まだ憎悪に費やす余力があるなら、不毛な戦いに疲弊するよりも、真に立ち向かうべきモノと戦う事に振り向けるべきでしょう。
私はこんな大変な時代だからこそ、人であり続ける事を放棄してはいけないと思います。
憎悪と悪意に身を焦がし、果ては自らも消し去る愚かな所業に陥るのは、真っ当な人間がやる事じゃないと思います。
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「努力」への信仰 (おおいけ)
2008-12-27 00:38:52
管理人氏とは少し違った視点なのですが、
派遣や非正規を批判する人の言説にはしばしば「派遣の連中はいままでどんな努力をしてきたんだ」「これまで気楽に生きてきたから派遣なんだろう。いまさら助けてくれなんて虫が良すぎる」
などというのがあります。そもそも人間として最低限の保障を受けるのになぜ「これまでの努力」とやらが必要なのか理解できないのですがね。
彼らはまた、自分たちが幼少から勉強に頑張ってきた、あるいは資格や技術のために何百時間も取り組んだ、それが能力の差につながっており、だから派遣や非正規に同情などする必要はない、という言い方をします。非正規の連中の努力とは「質も量も」が違う、とも。
しかし、努力っていつも報われるとは限らず、報われるかどうかも、努力の「質や量」以外の環境や運などいろいろな条件に左右されるものです。諸事情で自分の望む教育を受けられなかった人もたくさんいます。
他人の努力を評価するってそう簡単なものではないのに、安易に自分の苦労や努力を絶対視し、他人の努力を否定する人が多いです。
彼らの『苦しいのはお前だけじゃない』論=「お前の苦労などたいしたことない。世界で一番自分が苦しいんだ」ということだとおもいます。

非正規労働者で新自由主義を支持する人も一定存在し、その人たちは「公務員・官僚」「団塊世代」「無能・怠け者の正社員」などを叩いています。
彼らもまた、自分たちがあいつらより努力しており、あいつらが自分たちより高待遇なのはけしからん、引き摺り下ろせ、と非難しているのが頭の痛いところです。

『苦しいのは自分だけじゃない』→「他にも苦しんでいる人がいる。一緒に協力しよう」、とはなかなかならないですね。
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抑圧された感情の都合の良い捌け口 (kensyou-R)
2008-12-27 00:51:57
管理人さん、お久しぶりです。

>奴隷制廃止に反対するのも、奴隷根性の持ち主でしょうか。精神的には奴隷でありながら、そのくせ高みから見下ろすような態度を取る

これは結局の所、多くの人間が持つ「抑圧された感情」に起因する構図だと考えています。(まあ昨今は国家や経営者を批判する人間を憎悪している様な人間がのさばっているケースが多々あるからですが。)

これは「権利」ってモノの考え方にも通底しますが、権利とは「主張する事によって初めて獲得出来得る物」であるのですが、昨今の大勢としては「自分の献身」の対価として、又は「権利を主張しない事」の対価として、上位者に「認めて頂く」という感じの一種歪な捉え方です。
↑これでは「お恵み」を乞う乞食とさして違いが無い。(溜息)

現在の日本において「国民の権利」と「労働者の権利」という概念は上記の様な価値観に囚われた「他者の敵意」というリスク無しには主張出来ないモノに堕してしまいました。

これを脱しない限り国民は「奴隷」と一体「何処が本当に異なるのか?」という命題を笑い飛ばせなくなるでしょうね、それも遠い未来の事でも無く・・・。

何れにせよ国民や労働者はもっと図太くなる必要があると思います。
↑例えば国民の生活を守れない国家は要らない!とか、労働者に正当な賃金や労働条件を担保しない(出来ない)企業は要らない!とか・・・。
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Unknown (ノエルザブレイヴ)
2008-12-27 01:39:48
やっかみと言うよりは「耐えることができている自分たち」のほうが美徳を持っていて道徳的に優れている、と信じているのかもしれません。
みんな大変と言いつつ実は自分が一番かわいそうだと思う、というのははまりやすい罠のように思いますので気をつけなくてはなりません。
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Unknown (Gl17)
2008-12-27 01:57:48
派遣がどうだとかは興味の範囲外、しかし与党は大好きで、政権へ批判の向かいそうな話は何でも逆側を攻撃するという脊髄反射に過ぎない人もかなりいそうな気がしますね。
米軍人に暴行された女性がいれば加害者でなく女性が悪い、自衛艦が海事法無視して漁船を当て逃げすれば漁船の不注意、イラクへボランティア行って誘拐されるのは行く方が悪い・・・。
派遣で契約に反してクビになるのは、派遣なぞになるから悪いのです。
そうして政府与党は無限に免責され続けます。「責任政党」の責任って一体何だろうと思わずいられません。
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隣の芝は青い (紅葉修)
2008-12-27 06:20:24
私の周りにも「派遣は正社員になる努力をしなかった」とか「今まで気軽だったんだから」などという声をよく聞きますね。
気軽がいいのなら正社員辞めて派遣になればいいのに、と思いますが、実際、そういう「勇気」をもっている人はほとんどいません。
苦しいのが分かっているからです。苦しいのが分かっているのにそれを気軽だと叩くのは、管理人さんが常々述べておられる、他人の権利を許せない日本人の性なのでしょう。

日本ほど共産主義に向いた国はないのかもしれないですね。みんなが働くようお互いを叩き合うわけですから。
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はじめまして (こみつ)
2008-12-27 10:44:10
>「派遣社員は自由で気軽な存在」

という理由で「正社員を守るために派遣を切るのは当然」
と考えている教師が私の高校にいます。
また、クラスメイトにも派遣叩きする者がいます。

私の高校は県内でもかなり就職率がいい方で、大企業も少なくなく、内定取り消しもまだです。
そんな地位の安定が約束された(と思っている)人々にとって、
派遣切りは他人事でしかないのだろうなと、最近思います。
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