非国民通信

ノーモア・コイズミ

死刑万歳!

2008-04-23 23:00:44 | ニュース

当時18歳に死刑判決=回避する事情なし-光市母子殺害差し戻し審・広島高裁(時事通信)

 山口県光市で1999年に起きた母子殺害事件で、殺人と強姦(ごうかん)致死などの罪に問われた当時18歳の元少年(27)の差し戻し控訴審判決公判が22日、広島高裁で開かれ、楢崎康英裁判長は「死刑を回避する事情を見いだすすべもなくなった」と述べ、死刑を言い渡した。

 なんだか週刊誌の書いた筋書きを裁判官が真に受けたような判決が下ったわけですが、どうなんでしょうね。

 衰えは早かったけれど人気は高かったパヴァロッティさんの対極に、アルフレード・クラウスという歌手がいました。「私の使命は芸術を与えることです。聴衆が私のところへ来るのであり、私の方から歩み寄るのではありません」などとインタビューに答えていたのですが、この辺が大衆人気の差に繋がったような気がします。あーあー、若い頃のパヴァロッティなら私も好きですけど。

 「国民の目線」という言葉があり、概ね、というよりあらゆる面で肯定的に用いられているわけです。もちろん、これを全否定するつもりはありませんが、だからと言って無条件に肯定できるものなのかどうか? そして「国民の目線」の対極は「専門家の目線」でしょうか。もちろん専門家の意見だからと言って全面的に肯定できるとは限りませんし、そこに違った視点を導入する必要性もあります。専門家の視点に欠けているものを補う意味で国民の視点の必要性は否定できないのかも知れませんが、昨今はどうも立場が逆転しているかに見えます。「国民」が驕りを以て「専門家」の意見を一蹴するような! 専門家の使命は、その専門性によって正確な情報を国民に知らせることであって、国民に媚びることではないと、そう思いたいものです。

 さて、地裁や高裁の判決から体制を守るのが最高裁の使命です。今回の事件も地裁や高裁の判決が最高裁の横槍によって覆されてしまいました。日本の司法は独特ですね、三審制によってむしろ基本的人権の保護が損なわれている、これなら最高裁を廃止して審理の機会を減らした方が人権が守れそうです。ともあれ三審制のおかげで高裁までの判決は覆され、週刊誌の筋書き通りの判決が下りました。被告の犯行時の年齢は18歳と1ヶ月、これは最年少記録だそうで、死刑判決の最多記録を更新したばかりでもありますが、またもや新記録達成です。次の目的は何でしょうか? 中国に勝つこと?

 「死刑を回避する事情を見いだすすべもなくなった」という発想が新しいと、そう思います。これだけを見ると、あたかも「死刑を回避する事情」がなければ死刑、そんな発想に見えるわけです。既存の判断基準ならば、その他の刑では対応できない場合の消去法的な選択肢として死刑があったはずですが、今回は死刑に出来ない特別な理由がなければ死刑にすると、積極的に死刑を選択しています。ともすると地味ですが、これは重大ですよ!

 すなわち本来はない方が望ましいが、やむを得ない事情により存続を認めざるを得ないネガティヴなもの、言わば「必要悪」のような位置づけだったものが、積極的に行使すべきもの、拍手喝采を以て迎え入れられるもの(現に傍聴席からは死刑判決に拍手が湧きました)、「正義の執行者」へと姿を変えたわけです。他に手段がない場合に限り死刑を言い渡していたはずが、可能な限り死刑判決を下そうと努力する方針への変更されたのです。断腸の思いでやむなく人を殺す時代から、正義のヒーローが誇らしげに人を殺す時代へ、そんな移り変わりを感じさせます。

 

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「死刑になりたかった」=自衛官、20カ所以上切る-運転手殺害・鹿児島(時事通信)

 鹿児島県姶良町でタクシー運転手を殺害したとして、陸上自衛隊第一普通科連隊(東京都練馬区)の一等陸士(19)が逮捕された事件で、一士は県警加治木署の調べに対し、「人を殺して死刑になりたかった」と供述していることが22日、分かった。また、運転手は首など20カ所以上を切り付けられていたことも判明。一士は「なかなか死ななかったので複数回、切った」と話しているという。

 死刑に魅了される人が後を絶ちません……


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21 コメント

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絶望 (死ぬのはやつらだ)
2008-04-23 23:29:51
被害者遺族の本村さんには、テレビは誰も「異議ナシ!」ですよ。

だから、俺は「異議アリ!」を言い続けます。


傍聴席から拍手とは……

裁判官は注意をしなかったのでしょうね。
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異常な状況下での裁判 (怪人20面相)
2008-04-23 23:45:13
この事件は死刑を回避する見出すべき理由はいくらでもあります。
事件当時18歳になったばかりだったこと。
不幸な家庭環境で育ったこと。
どうみてもはじめから殺意はなかったこと。
等々。
従来の基準なら死刑判決は回避できたケースです。
地裁、高裁の判決も無期懲役です。
それに対して、最高裁が差戻し。
死刑の適用基準を拡大するために、最高裁と検察権力が利用しました。
メディア、ネット等の「死刑だ」「死刑だ」の大合唱がそれを後押し。
とてもじゃないが公正な状況で行われた裁判とはいえません。
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Unknown (非国民通信管理人)
2008-04-23 23:57:57
>死ぬのはやつらださん

 もう、誰もが原告の立場から見ていなかったですからね。傍聴席から拍手が起きるというのも異常なことで、まるでヒーローショーの観客かと言いたいところです。こういう勘違いこそ正されるべきと思うのですが、法廷がファンサービスに走っているのでしょうか……

>怪人20面相さん

 被告側の立場でも考えれば、仰るとおり死刑を回避すべき理由はありますよね。それを原告側が、あるいはメディアが、もしくは世論が、一つ一つ拒絶していった結果として死刑を積極的に選択した、そんなところでしょうか。当初のワイドショー化する前の判決、地裁と高裁の判決の方が公正に思えるのですけれど。
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野蛮な光景 (Bill McCreary)
2008-04-24 00:25:27
たとえば米国なんか、一審で無罪判決が出たら、検察は控訴権がありませんし、上級審でより重い刑を選択するのも強く制限されています。その伝でいけば、この間のビラ投函事件も無罪でしたし、この事件も無期懲役が確定してましたよね。

ましてやこの事件、地裁、高裁で無期懲役でしょう。たしかに犯人の元少年はどうしようもない人間のクズ、生きる価値もない男なのかもしれませんが(私見では、たぶんこの元少年は、知的障害、精神障害です)、2回も無期懲役判決が出た人物を、上告までして、あらためて死刑判決を下すこともないと思うんですけどねえ。私には、非常に野蛮な光景にしか思えません。はてはて、これで裁判員制度はかなりやばい事態になるのではないかと本当に心配になります。

それにしても、橋下徹大阪府知事が、この判決については黙っているのも笑えます(失礼、笑ってはいけません)。そういうデタラメな男です。
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Unknown (傍観者)
2008-04-24 00:41:02
今の世の人々にとって死は軽い。
必殺仕事人の見すぎではないかと思う。
死刑は見せしめでしてはいけないと思う。
難しい事は書けないんで、ま、ふと思った事をメモした次第です。御免。
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もうココまで来たら・・・ (ニュースコープ)
2008-04-24 00:46:17
昨日の午後からずっと、この事件のことで精神に変調を来したままです(メンヘル持ちなので…)。
ネット上で個人的に付き合っている友人たちも、本件については「死刑当然!」の大合唱です。
こんなことは言うべきでないのでしょうが、もうココまで来たら国連かEUに経済制裁でも課されない限りどうにもならないのかも知れませんねぇ。「外圧を当てにするなよ」という意見が聞こえてきそうですが、そう言いたくなる気持ちも察して下さい…。
6割くらい本気で、北欧かオーストラリア辺りへ「亡命」でもしようかと考えている今日この頃です(これは移住ではない!「難民」だ!)。


誰か助けて下さい!
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Unknown (siegmund)
2008-04-24 01:13:39
私が危惧するのは、これで「故意と過失の境界をなくす方向に進むのでは」ということです。今回は被害者側からの視点で事が進み、多数の国民もそれに流されてしまいました。被害者側からすれば故意だろうが過失だろうが関係ないわけで、感情的に「たとえ過失であっても厳罰せよ!」という方向に進みそうな気がしてなりません。「国民感情を考慮して・・・」などと公言する検察側からすれば「国民がそれを望んでいる」のですから、これほど楽なことはありません。悲しいことですが、これもまた、国民自身が自分で自分の首を絞める一例ということになるのでしょう。
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うーん (shu)
2008-04-24 01:44:40
今回の判決は意外でした。原告には同情的な自分ですが。

でも怪人20面相さんのはちょっとどうかと
事件当時18歳になったばかりだったこと。
不幸な家庭環境で育ったこと。
これが死刑回避の理由でしょうかね
これ侮辱じゃないでしょうか?
不幸な家庭で育った18歳は殺人起こしてもしかたないという風にも読めちゃいますよ。
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人間はおっかねえ (ノエルザブレイヴ)
2008-04-24 02:00:42
人間は底知れ無く恐ろしいです。「死刑は最後の手段」で無くなるのが恐ろしいです。しばらくテレビも新聞も週刊誌もネットも見たくないです。いっそ山にでも籠もりたいです。

あと、私はこの事件に「被害者という名のご神体を担ぎ出す怪しい新興宗教」という絵を見てしまいます。神は何人たりとも侵せないと。

そして、上記のような意見を抱く私は自分の孤独さが身に染みるのです。
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感情が生々しすぎて一度でまとまりません。すみません。 (ノエルザブレイヴ)
2008-04-24 02:36:49
そして、私は昨日この事件について親と口げんかする夢を見ました。私にとって親は最大の理解者、最も信頼できる人間だと思っているのにこのざまです。正直被害妄想というか、疑問を抱くことへの恐怖や四面楚歌の恐怖を感じすぎている気が自分でもします。
話が個人的すぎてすみません。ダメなら没で結構です。ただあらゆるもやもやが私を苛んでいてしかもそれを誰も分かってくれなそうで…。はっきり言って原告被告どちらも余りにもかわいそうすぎます。なぜかは自分でもよく分からないのですが…。
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