海賊対処法案、衆院通過=今国会成立へ―海自活動を拡大(時事通信)
アフリカ・ソマリア沖での海上自衛隊による海賊対策の新たな根拠法となる海賊対処法案は23日午後の衆院本会議で、自民、公明両党などの賛成多数で可決、参院に送付された。民主、共産、社民、国民新の野党4党は反対した。民主党は参院でも審議引き延ばしはしない方針。同法案は同党などの反対で否決されても、衆院で与党の3分の2以上の賛成で再可決、今国会で成立する見通しだ。
衆院海賊対処・テロ防止特別委員会は同日午前、麻生太郎首相が出席して締めくくり質疑を行った。首相は「海上輸送の安全確保は、(日本にとって)優先順位が極めて高い。日本の人命、財産(の保護)にきちんと対応するのは、政府に与えられた大きな仕事の1つであり、緊急かつ重要な課題だ」と述べ、同法案の必要性を強調した。中谷元氏(自民)への答弁。
有名人が泥酔して全裸になったとかでTVニュースではロクに放送されませんでしたが、それなりに物議を醸していた法案が通過しました。今が旬の(落ち目になってからでは色々と悲しいですから)美人タレントが脱いだのならまだ理解できますが、男が脱いだってねぇ、そう騒ぐことじゃないと思うのですが。
さて、麻生首相曰く「日本の人命、財産にきちんと対応するのは、政府に与えられた大きな仕事」だそうです。日本の「財産」というのはわからないでもないのですが、日本の「人命」というのはどうでしょうかね? 果たしてソマリア沖を公開している船のうち、日本船籍の船がどれだけあるのか、そして日本国籍を保有する乗組員がどれだけいるのか、その辺を考えて欲しいものです。ただ単に日本の企業が出資しているだけで、船はパナマ船籍、乗員の大半はフィリピン人とか、そういう状態で「日本の人命、財産~」と言われても、ねぇ。
同法案は、海賊行為を制止するために他に手段がないときは、停船を目的とした船体射撃を認めるとし、日本に関係する船舶だけでなく外国船舶の護衛もできるようにした。また、海賊行為は「無期または5年以上の懲役」、さらに人を死亡させた場合は「死刑または無期懲役」に処するとした罰則規定も盛り込んだ。
日本人が乗り組んでいる日本の船が「脅かされている」と、そう印象づければ国民を信じ込ませることはできるとしても、実態は違うわけです。そこで「日本に関係する船舶」なる迂遠な言い回しが使われるわけですが、そんな回りくどいことをしなくとも「外国船舶の護衛もできるように」するようです。まぁ、これ自体は別にいいのではないでしょうかね。日本人じゃないからと言って排除しても構わないとするならおかしなことですから。国籍の有無によって差別的に取り扱う日本の国是からすると例外的に見えますが!
ちなみに海賊行為は「無期または5年以上の懲役」、さらに人を死亡させた場合は「死刑または無期懲役」だそうです。相変わらず日本は死刑が好きなようですが、これって司法の手続き無しで話が進むのでしょうか。逮捕してソマリア政府に引き渡すという話でもなさそうですが、かといって日本まで連行して日本の刑事罰に問う、というものでもなさそうですし、国際的な取り決め云々というものでもなさそうです。まさか司法を介さず自衛隊内部で「死刑」判決が下される、そんな代物じゃないでしょうね?
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海外に自衛隊を送る口実として好んで用いられるのは、湾岸戦争時に「日本は金を出すだけ」と批判された、というものです。本当にそんな批判があったのかは知りませんが、「金だけではなく血と汗を流さなくては」という理由で自衛隊派遣の必要性が説かれます。ですが、その自衛隊が「護衛」しようとしている船は日本船籍ではない、乗組員も日本人とは限らないわけです。実質的に国が丸抱えしている捕鯨船ですら外国人船員に頼っている、そんな時代ですから。日本は金を出すだけではない、と言い繕って自衛隊を派遣する一方、その護衛の対象は「日本が金を出しただけ」の船なのです。
ソマリア沖で日本の船、日本人ばかりが乗っている船となると、それこそ自衛隊の艦船だけでしょう。それ以外の船は「日本が金を出しただけ」の船に過ぎません。だったら、軍隊だって同じです。「金を出すだけ」で十分でしょう。外注できるものは外注する、そこで気を使うべきことがあるとしたら、正当な対価を支払う――立場の強弱につけ込んだ一方的な搾取にならないようにする――ことであって、何もかも日本の手で賄わなきゃいけないというものではないはずです。金がある人/国の役割は金を出すことなのです。
だから、ソマリア人でも雇ったらどうかと言いたいわけです。日本の企業がパナマ籍の船にフィリピン人を乗せて航海に出るように、海賊を取り締まる船にもソマリア人を乗せたって何ら問題ないでしょう。海賊ぐらいしか金を稼ぐ手段がないソマリア住民に別の仕事を斡旋すべきなのです(現地事情にだって精通しているでしょうし!)。まぁ、それでも軍事力の行使によって物事を解決したい人、最短経路で問題を解決するよりも自分好みの「手段」で対処したい人が、何かと幅を利かせているのが現状なのかも知れませんけれど。
これは怖そうですねえ。もっともアメリカだって、「容疑者」を拉致してシリアとかの怖い国で尋問するとかむちゃくちゃなことをやっていましたが。
>軍隊だって同じです。「金を出すだけ」で十分でしょう。
アメリカの軍隊も、ずいぶんいろいろ外注しているみたいです。傭兵なんていう時代錯誤であるかのようなものもそれなりに復活しているようですし、金を出すだけのほうがよっぽどおりこうさんかも。
「死刑」などと相変わらず勇ましいことが書かれていますが、いったいどこで死刑にするんでしょうかね。アメリカと提携して何かやるのでしょうか、それとも「軍部」が独自に刑罰を???
そして軍隊を戦闘行為に出す以上、日本の「人命」はむしろ危険に晒してます。日本の(一部の人の)財産は守ってるけどね。
守るつもりがあるなら、こんな遠いところもいいけど国内の「財産」と「人命」をまず先にしてほしいわん。
さて、海賊と言えば、骸骨の旗を掲げて、財宝を求める旅をしている・・・というのが御伽話や従来での海賊の姿ですが、ソマリアの海賊はそんなわけないですよね。非国民さんのおっしゃるとおり国を豊かにすることが必要だと思うのですが、北朝鮮同様敵を作ってそれを倒すと言った目標を掲げることによって、支持率を稼ぐ意図でもあるのでしょうか。今回もどうでもいいような事件を報道し、国民に知られたくないような法案を密かに通すという手が使われたわけですが、今現在では、反対する人を国民側が押さえつけてくれますし、上記の理由から支持率も稼げるのでしょうから、堂々と公開した方がよいのではないでしょうか。(もっとも後から発表しても問題ないでしょうけど。)もちろん、我々にとっては悪夢ですが。
結局「守る」ってのは口実であって理由じゃないのでしょうね。軍隊を送ること、それ自体に高揚感を覚えているのが実状のような気がします。
>GXさん
たしかに昨今の世論なら、海賊対策は大々的に打ち出した方が支持層を固める上でプラスかも知れませんね。北朝鮮の発射実験で支持率が上昇するなら、定期的に軍隊の影をちらつかせた方が???