前の派遣先が意外と長かったこともあって、就職活動をするのは割と久しぶりになったのですが、3~4年前と比べると格段に状況が悪くなっているように感じてなりません。以前ならばある程度まで妥協すればそこまで苦労せずとも仕事は見つかったものですが、何しろ昨今の有効求人倍率は0.5前後と、選ばなくても仕事はないわけです。5年前だったら書類選考の段階で落とされることなんてほとんどなかったのですが、今となってはハナも引っかけられない有様です。この辺は景気動向もさることながら年齢的な要因も大きいのだろうなと思われるだけに、何かと手詰まり感が漂ってきます。
で、先日ある派遣会社から求人案内のメールが届きました。
「本日は○○区役所様に常駐いただく、キャリアカウンセラー募集の案件を御案内いたします!」
……ですって。
ちょっと遠いなりに通勤可能なエリアではありますし、時給も前職に比べると低いですが許容範囲でしたので、つべこべ言わずに応募できるものはと応募してみました。たぶん、週明けには向こうからお断りのメールが帰ってくるでしょう。募集要項には人材紹介会社や学校の就職課、あるいはハローワークで3年以上働いた経験がある人を募集とありましたので、万に一つも見込みはありません。そもそも派遣会社には私の職歴を登録しているわけで、今回の募集で要求されている職務経験を満たしていないってことはわかりそうなものですが、たぶん派遣会社側は通勤可能圏の登録者に一斉送信しているのでしょう。
ハローワークの窓口相談の人は基本的に非常勤であると以前から聞いていましたが、そうした仕事の口が、まさか私にまで紹介されるとは思っても見ませんでした。普通に考えれば就職に関して相談に行く側である失業者に対して、そうした相談を受け付ける仕事を紹介するという行為は、もはや派遣会社からすれば当たり前なのかも知れませんが、私からすればシュールにすら感じられます。まぁ身をもって失業を経験している人であればこそ、仕事を探している人の置かれた状況を理解できるフシがあるとも言えるのかも知れませんね!
以前に、セクハラでクビになった大学の就職課職員の話を取り上げました(参考)。その時の職員もまた、当初は人材派遣会社からの派遣で働き始めたことが報道されていたものです。ハローワークの窓口相談役にせよ学校の就職課にせよ、そして役所の「キャリアカウンセラー」にせよ、この手の就職相談を受ける人の非正規雇用率は相当に高そうです。定年退職した人が年金受給年齢までのつなぎとしてハローワークのバイトをしているくらいならまだ理解できますが、それなりに若い人も少なからず目にします。詰めかける求職者の相談に応じているのは、実はいつクビを切られて失業するかわかったものではない、そんな不安定な立場に置かれた人たちでもある、何とも不思議な光景ではないでしょうか。
どこの世界も営業は激務が多いのか、派遣会社の営業も結構頻繁に辞めていくイメージがあります。それこそ私が雇い止めに遭うより、担当営業が退職していく頻度の方が高いくらいです。今回のキャリアカウンセラーの募集要項にあるような類の勤務経験なんてどこで得られるのか、それこそ普通の派遣社員では得られないような職務経験を派遣の求人において要求されているように見えるわけですけれど、たぶん派遣会社の元営業などの元・正社員が派遣として働くことを想定しているのでしょう。日本の雇用は流動的ですから、それなりにキャリアのある人でもどんどん下に落ちてくるものです。
ともあれ「世間」の感覚からすれば、これも必然的な流れなのでしょう。とにかく公務員を減らすことが是とされる中では、ハローワークや役所の、国公立の学校でも正規職員から非正規への切替が進められる、そうなると就職相談を受ける係も非常勤に置き換えられるものです。あるいは善意の人に「貧しさ」を求める風潮もあるはずです。貧困や格差の問題に取り組む人に対して、その人自身が貧しくあることを求める風潮はないでしょうか? 貧困層や社会的弱者のために活動している人に対して、その人が裕福であることを非難めかして強調する輩も少なからずいる、自らも貧しくなければ貧困問題に言及する資格などない、みたいな態度を取る連中は珍しくないわけです(参考)。そういった点では、失業して仕事を探している人の相手を、これまたいつ失業するかもわからない不安定雇用の人に任せるのは国民の感覚に沿ったことなのかも知れません。
例えば昔いた蟻の町のマリアさんなどそれを自分に課していた節はあるような気はします。しかし、それがあまり行き過ぎると「困っている人を助けること」へのハードルが上がりすぎるという弊害にもつながりかねないという気もします。
蟻の町のマリアと呼ばれた方も、随分と早くに亡くなられたそうですね。人を助ける、貧困問題に取り組むことに自己犠牲が条件として求められるとなると、徒にハードルが高くなるばかりであり問題への取り組みを阻害するものなのですが、どうも世間には美談的なものではないと受け入れられないのかも知れません。
>HANAKOさん
それをやらせるくらいなら行政が責任を持って雇用しても良さそうなものですけれど、契約ではなく負い目に付け込む形で仕事をさせるのは、何とも日本的な労働観を表している気がしますね。
ビルゲイツのような一代で富を成した経営者は勿論、ハリウッド俳優やロックミュージシャン、プロスポーツ選手まで、そう言ったボランティアや地域貢献に熱心です。
翻って日本を見てみるとボランティアや地域貢献に熱心な企業やタレントが誰がいるんでしょうか?せいぜいタレントで黒柳徹子さん、ミュージシャンで小林武史さん、スポーツ選手で中田英寿選手、野茂英雄選手くらいしか浮かびません。
経営者では皆無。みんな堀江某や村上某みたいに金儲け第一の気がします。
昔の経営者でもせいぜい松下幸之助が私費で政経塾作った程度ですが、それも今や経団連の思い通りの政治家を作るだけの洗脳施設に成り下がってますからね。
あとは精々、流通業が植林活動をしてる程度ですね。
どちらかと言えば日本において経済的に成功した人に求められるのは、自身が慎ましい生活を送ることの方のような気すらしてきます。金を稼いで有効活用するよりも、節約に励んで貯め込むことの方が是とされる、経営者でもコストカットで利益を出してこそ評価されるお国柄ですから……