町長給与半減案を否決 佐賀・上峰町議会 「職員や他自治体に影響」(西日本新聞)
佐賀県上峰町の定例町議会は19日、公選法違反事件で前職が失職したことに伴う3月の出直し町長選で初当選した武広勇平町長(30)の給与を50%削減するための条例改正案を賛成少数で否決した。全国最年少首長となった武広町長の選挙公約だったが、町長選で対立候補を支援した議員らが「職員や他の自治体にも(無用な)影響を及ぼす」などと反対していた。
このところは市民税減税だとか給与カットだとか、なにかと行政の縮小方向に繋がる公約を掲げた候補ばかりが目立ちますね。その手の候補の当選が相継ぎ、一向に歯止めが掛からない有様には頭を抱えざるを得ないのですが、佐賀県のある街では議員達が立ち上がってストップをかけたとか。やれやれ、これで一段落と行けばいいのですが。
「自身の給与をカットする」と言えば聞こえは良いかもしれませんが、大体においてそれは空疎なパフォーマンスに過ぎません。前例を思い出してください、給与カットと言えば、あの安倍晋三が首相就任後、真っ先に打ち出したことですよ! 安倍晋三は真っ先に自分の給与を削減したわけですが、その結果はどうだったのでしょうか? 支持層の喝采を浴びる以外に、何か効果はあったのでしょうか?
「社長は給与返す、社員も返上を」労組反発 英BA(朝日新聞)
経営が苦しいから月給1カ月分を返上してほしい。社長も返上するから――。英航空大手ブリティッシュ・エアウェイズ(BA)のそんな提案に労働組合が猛反発している。平均的従業員は年収でさえ社長の月収の半分。同列に扱う無神経さががまんならないようだ。
BAの広報によると、月給返上の要請は最近、社内メールで全社員に流された。強制ではないといい、自発的に1カ月間休むか、無給の「ボランティア」として働いてほしいと呼びかけた。ウィリー・ウォルシュ社長自身も7月の給料を返上するという。
最近の記事から探したため海外の記事になってしまいましたが、日本でも似たようなケースは多々あるでしょう。「経営が苦しいから月給1カ月分を返上してほしい。社長も返上するから!」むしろ日本でこそ、頻繁に聞かれそうな言葉です。トップが勝手に給与返上するなら、まぁご自由にとしか言いようがありませんが、それが他に波及するとなると迷惑きわまりない話です。
たぶん、目的はそっちなのでしょう。いかにトップが高給取りとはいえ、たった一人の給与を削減したところで会社や自治体の財政には影響しません(社員数名の零細企業ならいざ知らず)。その組織を構成する人々全体の取り分を減らさないことには、有意な支出削減にはならないわけです。とはいえ、いきなり全従業員の給与を一律削減などと言い出せば反発を招くばかりです(日本中の憎悪を一身に集めている公務員に対してであれば「世論」とやらを味方に付けることは出来るでしょうけれど)。給与カットを言い出した雇用主側が「悪者」にされかねません。ではどうすれば?
それはまず、トップが自ら範を示すことです。まずトップが自らの取り分を減らすことで、「下」の人間だけが苦しい思いをしているのではない、と見せかけることです。決して従業員だけに「痛み」を押しつけようとしているのではなく、自分もまた「痛み」を受け容れる側なのだと、そうアピールすることが求められます。「痛みを押しつける側」と「痛みを押しつけられる側」、実際はそうであっても、そう見せないことが重要なのです。そして自らの立ち位置をすり替えることで、トップを従業員と共に「痛みを受け容れる側」に置いてしまう、これによって対立軸を「痛みを受け容れる側」と「痛みを拒む側」に置き換える、そうすれば非難はどちらに向かうでしょうか? 「痛みを押しつける経営トップ」であれば、世間の非難は免れられないかも知れません。しかし、従業員と共に「痛みに耐える経営トップ」であったなら? 非難が向かう先は常に「痛みを拒む側(労組など)」だったわけです。社長ですら痛みに耐えているのに、お前達は自分だけ楽をしようというのか!と。
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むしろトップの報酬カットは、「下」に対して犠牲を強いる前段階であるとして警戒すべきではないかと思います。トップの「尊い自己犠牲」精神の発露だなどと思ったら大間違いです。たぶん今回の佐賀県の事例、世間一般では給与カットを阻んだ議員の方が悪者扱いされることでしょう。皇帝は善政を志しているが、実権を握る悪の大臣がそれを阻んでいる――ツァリズムは日本でこそ健在ですから。ですが、首長の暴走を押し止めたという点では、議員として最低限の仕事はしていると評価したいですね。
さて、イギリスの社長さんの件ですが、まず自身の給料を通常の社員より多少高いという程度まで(組織のトップでしょうし、通常社員よりも少し高くとも…というのは甘いでしょうか。)下げて、それでも利益が回収されない場合に社員に給料を返してくれと頼むのであれば、完全にとはいかなくとも納得なんですがね。これでは、非国民さんのおっしゃる通り、社長さん本人にその気がなくとも、社員のみが痛手を負う結果になってしまいます。
そして、この行為が日本でこそみられる光景だというのもおっしゃる通りですが、日本では社長がこのように自らも痛みをしょっているのに、抗議活動を行うならば「共産主義者」とか「在日(朝鮮人)」とかレッテルを貼られて非難されるという、ワンパターンな結果が見えます。それ以前に、日本ではどこの会社の労働組合でも力は海外の組合程強くなく、このような行動に勤めている社員たちの方まで感動してしまう可能性もありますが、これもまたお馴染みの光景ですね…。
いや、それでも従業員の給与は下げちゃいけないと思うんですよ。従業員の給与は歩合ではなく「労働力」を提供した対価ですから、従業員は経営責任を負わない、経営状態の如何に関わらず、その取り分は保証されなければいけないと。とはいえ「会社が潰れたら社員も~」と、会社そのものを人質として出られると弱いところはありますが。