非国民通信

ノーモア・コイズミ

こういう上司の下では働きたくない

2009-11-01 23:06:35 | ニュース

「霞が関」は大ばか=菅担当相(時事通信)

 「知恵、頭を使ってない。霞が関なんて成績が良かっただけで大ばかだ」。菅直人副総理兼国家戦略担当相は31日、民主党都連の会合での講演で、激しい言葉で官僚を批判した。

 「効果のない投資に振り向けてきた日本の財政を根本から変える」と財政構造改革に取り組む決意を明かした菅氏は、官僚から「2兆円を使ったら目いっぱいで2兆円の経済効果だ」と説明を受けたことを紹介した後に、「大ばか」発言が飛び出した。官僚嫌いで知られる菅氏は、学業は優秀でも過去の例にとらわれて柔軟な発想に欠けると言いたかったようだが、官僚の反発を招きそうだ。 

 批判、と言うのはある程度まで筋の通ったものを指すべきで、今回のように「大ばかだ」などと罵倒するだけであったならば「誹謗」とか「中傷」と書くのが正しいのではないでしょうか。この辺はこうすべきで、あの辺はああすべきとか具体的な話ならいざ知らず、「大ばかだ」などと言われたところで官僚サイドとしては応えようもないですし。ある意味で菅“カイワレおじさん”直人氏は、ただ部下を怒鳴り散らすだけの無能な上司を思わせるのですが。

 まぁ細部は前政権とは異なっていることを期待したいですが、「効果のない投資に~」と相変わらず小泉時代と同じようなことが語られています。官僚サイドからすれば「何を今さら」「またか」ぐらいの感覚だったのかも知れません。しかし上司の接待も部下の仕事、上司が偉そうな能書きをたれれば感動したフリをするのも部下の勤め、それが美しい国の常識というものです。カイワレおじさんとしてはガツンと決めたつもりだったのに部下の反応が冷めたものだったから、その辺を逆恨みしているのでしょう。まぁ功成り遂げた人にはよくあることです。

 これが民間企業であったなら、つまり会社の上司が部下を「大ばかだ」と詰れば、半分くらいの人はパワハラまがいの言動として受け取るのではないでしょうか(残りの半分は社畜であり、経営者目線でしか物事を考えられない人々です)。そして公務員でありながら例外的に国民から愛される存在である自衛隊員に対して同様の発言を行ったとしたら、間違いなく世間から囂々たる非難を浴びるでしょう(参考)。でも「官僚」が相手であれば誹謗中傷も許されるんですよね、むしろ喝采を浴びるくらいで。

 官僚嫌いで知られる菅氏、と書かれていますが、やはりこの「嫌い」の部分が大きいのだと思います。その辺は国民も同様で、だからこそ菅氏も支持されるのでしょう。自分たちの嫌っているものを先頭に立って罵倒してくれるわけですから、まぁヒーローみたいなものです。しかし部下を怒鳴り散らすだけの上司が無能であるのと同様に、こうやって公務員のネガキャンに励むばかりの政治家もまた、社会に利益をもたらすものではないと認識されるべきですね。何でも官僚のせいにしておけば楽なのでしょうけれど、もうちょっと政治の責任も考えて欲しいものです。

 さて好意的に解釈すれば「学業は優秀でも過去の例にとらわれて柔軟な発想に欠けると言いたかった」らしいです。「学業は優秀でも~」という行もまた偏見の産物だと思いますが、その辺はさておき「柔軟な発想に欠ける」とはどの程度まで真実なのでしょう、柔軟な発想が求められていたのならまだしも、柔軟な発想が固く禁じられていたとすれば、それを責めるのは酷ですよね。今まで官僚が柔軟な発想に基づいてどんどん行動することが許されてきたのでしょうか? それとも官僚はあくまで政治家の定めた方針に添って行動すべきで逸脱は避けるべきものと考えられてきたのでしょうか?

 私自身は、官僚が自身の判断で柔軟に対応しても良いと思っています。もしかしたらカイワレおじさんもそういう在り方を期待しているのかも知れません。でもそれって、民主の言う被害妄想的な官僚主導どころではない、正真正銘の官僚主導に近づいてしまうのではないでしょうか。官邸に決定権を一元化させた強権政治を理想とする民主党の方針に合わせるのであれば、官僚に求められるのは柔軟な発想ではなく、内閣(政治)の命じるがままに忠実に行動することのはずです。

 官僚を支配したいという欲望を露わにしながらも、その一方で官僚に柔軟な発想を求めるとしたら、まったく以て矛盾した要求です。仕事量を増やしておきながら残業を減らせと迫るようなものでしょうか。まぁ「民間では当たり前」って奴ですね。あるいはこの柔軟な発想とやらも、民間企業で言う「コミュニケーション能力」みたいなものなのかもしれません。つまり上司(党閣僚)の望んでいることをいち早く察して、命じられる前に事前に上司の要望に応えてみせる能力、これが要求されているわけです。すなわち官僚もまた、民主党の思惑に収まる範囲での柔軟性という、なんとも難しいものを求められているのでしょう。やれやれ、どこの職場でも本業に邁進というわけには行かないようです。

 

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7 コメント

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Unknown (源内山人)
2009-11-02 10:06:49
橋本内閣の厚生大臣だったとき、薬害エイズ事件の処理に当たり、血液製剤によるエイズに感染した被害者たちに対して行政の責任を認め土下座をして謝罪したことが、当時世間では感動を呼んだようですが、考えてみれば、薬害エイズ事件が進行中の頃に大臣だったわけではなかったため、菅自身が責められることはなかったわけです。
だから正義漢面して土下座して謝罪した・・・私はそのように考えています。
官僚をバカ呼ばわりしたこの男も「クソ教育委員会」などと言った橋下と同類の、中身からっぽで「エエ格好しィ」のパフォーマンスおじさんだと思っています。
最近印象に残っているパフォーマンスといえば、丸坊主のお遍路さん姿ですかね。
今度はどんなみっともないパフォーマンスを楽しませてくれるのか、
今からワクワクしています。
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首相の資質という本題からは、はなれるかもしれませんが、 (貝枝五郎)
2009-11-02 12:42:56
>「効果のない投資に振り向けてきた日本の財政を根本から変える」

という箇所について、財政に関して、タカマサさんの懸念では、「生産業者中心主義」に似ているのではないかという(http://harana.blog21.fc2.com/blog-entry-993.html#comment2921)点、すなわち財政の収入については財政学者もおおく論じてきたが、支出についてはそもそもほとんど論じてこなかった、つまり過去の議論を参考にすることができない、という根本的な難点を、指摘しておきます。本題とズレているかもしれず、すみません。
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Unknown (非国民通信管理人)
2009-11-02 23:04:32
>源内山人さん

 まぁ当該分野の最高責任者だったわけですから、組織の代表として頭を下げるのは間違っていないとも思いますが、土下座はパフォーマンス色の強さを感じないでもありませんね。反省の意を示す土下座だったのか、それとも単に「エエ格好しィ」だったのか…… 今回のバカ呼ばわりは仰るように橋下流のパフォーマンスと大差のないもの、その本質が透けて見えるようです。
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菅さんを批判するのは構わないが… (Willy)
2009-11-03 14:33:51
>「2兆円を使ったら目いっぱいで2兆円の経済効果だ」

うーん、これを言った官僚は、大学1年生の教科書に書いてある「乗数効果」さえ否定しているわけで、ある意味斬新だと思いますね。それをスルーして別のところで怒っている菅さんも凄い。
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Unknown (非国民通信管理人)
2009-11-03 14:40:36
>Willyさん

 「教科書に書いてあるから」などと乗数効果を頭から鵜呑みにしていたらそれこそ「学業は優秀でも/柔軟な発想に欠ける」と言われるものなんじゃないでしょうか。ましてや財政出動よりもムダ削減に熱心な党であればなおさら、否定したい概念でしょうし、それだけにカイワレ野郎の矛盾の方が目立ちます。所詮は、官僚に対する個人的嫌悪感をまき散らしているだけの人ですから。
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どっちもどっちという気がするけど (ヒイロ)
2009-11-03 21:36:25
両方とも「国民の奉仕者」という点を欠いているから世話がないという思いです。
どちらかがもう一方を「自分に都合良く使う」という姿勢から是々非々で対応する方向にシフトしないといけない時期なんですけどね。
政権交代でないと改めるべきことが実現しにくいと思いますから。
管の言い分は「自分の言うことを受け入れてくれなければもう知りません」と言っていることに等しいと受け取っています。
こういう態度ですと確実に人間は腐る一方です。私の性格がそうさせるのかもしれませんが、「自分の望みを叶えてくれれば箸の上げ下ろしまで言わないよ」という程度で収めれば良かった気がします。

政治家や官僚を「バカ」呼ばわりする風潮を感じている方もいると思いますが、きちんと見極めないとロクなことにならないと危惧しています。
返信する
Unknown (非国民通信管理人)
2009-11-03 22:29:17
>ヒイロさん

 まぁ官僚側に関しては、国民に奉仕する以前に(当時の)政権与党の定めた方針を実行に移す役割を求められるところがあるはずで、その点では良く役目を果たしてきたんじゃないかとは思いますけどね。政府の方針に反しても良かったとすれば、また話は別ですが。一方で菅の場合は、単に自分の思い通りにならない相手にぶち切れているだけですから弁護の余地はありません。民間では当たり前の、人間性に問題のある上司とも言えますが……
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