非国民通信

ノーモア・コイズミ

大阪府知事選の戦略を考えてみる

2008-01-24 23:34:18 | ニュース

橋下氏が先行、熊谷氏追う 大阪府知事選、4割は未定(共同通信)

 大阪府知事選で、共同通信社は19、20の両日、電話による世論調査を実施。自民党大阪府連と公明党大阪府本部が支援する弁護士でタレントの橋下徹氏が先行、民主など3党が推薦する元大阪大大学院教授の熊谷貞俊氏が激しく追う。共産党推薦の弁護士梅田章二氏は伸び悩んでいる。ただ4割が投票する候補者をまだ決めておらず、無党派層を中心とした有権者の今後の動向が当落を大きく左右しそうだ。

 ぼんやりとしていたら、いつの間にか大阪府知事選の投票日が迫っていました。大阪とはさっぱり縁のない私ですが、他人事扱いせずに少し考えてみるとしましょうか。後から何かを言うよりも、投票日前に何か意見の一つも、と。

 いつだって話題性のある候補が圧倒的に強いのが日本の選挙、批判も賞賛も両方が多い橋下氏が相当程度、抜きんでているようです。橋下氏に投票するなんて、大阪らしく受け狙いでボケているつもりか、などと突っ込んでもいいのですが、全然笑えませんね。

 もちろん私自身、橋下氏の主張には反対で、橋下氏の当選は阻みたいと思うわけですが、そのためにはどうすべきなのでしょうか? 私が巡回しているブログの多くは、橋下氏の問題発言を取り上げて、彼がいかに酷い人物かを語ります。私はそれに頷き、やはり橋下氏の当選は避けたいと感じるわけですが、ただそこに疑問がないでもありません。

 一つの疑問は、橋下氏を批判しているブログにしても、主役はいつも橋下氏にならざるを得ないことです。「セクハラだ」と掲載を拒否されて物議を醸した裸祭りのポスターが話題を呼び、逆に大規模な宣伝となったように、肯定でも否定でも、大きく取り上げられればそれは宣伝になります。政策や主張ではなく話題性がモノを言う選挙であるならば、より有効な選挙戦略は真っ当な批判ではなく、黙殺なのかも知れません。たとえ言っていることがまともでも、巷の話題に上ることのない対立候補は無力です。

 もう一つの疑問はそう、橋下氏を支持する人は、私達が問題発言と呼ぶそれを問題視してはいないのではないか?ということです。「被告人を速やかに死刑にすべき」「日本人による買春は中国へのODAみたいなもの」「日本の一番情けないところは、単独で戦争が出来ないことだ」「税金を払わない奴は生きる資格がない」・・・問題ある発言はいくらでも探すことが出来ますが、私達が不愉快と感じるこうした発言を、橋下氏の支持者はむしろ快く受け止めている可能性を考えてみるべきでしょう。

 「被告人を速やかに死刑にすべき」これを聞いて私は橋下氏に反対するわけですが、私と同じように感じる人ばかりかと言えば、もちろんそうではありません。反対にこれを聞いて快哉を叫び、橋下氏を支持するようになる人も多いわけです。「ババア」と呼ばれた女性達が石原慎太郎を支持したように、ダメな発言を指摘すれば支持が落ちるというものでもない、むしろ逆の結果すら招きうるのです。橋下氏の問題発言をいくら指摘したところで、それに共感する人々にとっては逆効果となる可能性もあります。

 反橋下派をより明確な反橋下派にしたところで、票の数は動きません。選挙戦略を考えるなら、親橋下派を動揺させることが必要でしょう。そのためには「反橋下派が怒りを感じる言動」=「親橋下派が共感を覚える言動」を探すことよりも、親橋下派が失望するような言動、行為を探した方が有効かも知れません。そうですね、たとえば「歴史的経緯のある特別な永住外国人について、当然これは参政権を与えるべき」という橋下氏の発言、この点について私は橋下氏に賛成しますが、逆に橋下氏の支持者としては受け容れがたい発言ではないでしょうか。この辺りがクローズアップされると、橋下氏支持の極右政党などは大いに困るはずです。

 「私はこの飛鳥地区で育ち、ど真ん中で差別も利権の構造も見てきた。親の世代はまだまだ差別に苦しんでいた。」との発言や、事件報道における被害者・被疑者の氏名を匿名にすべきとの主張、この辺は橋下氏の数少ない肯定できる側面ですが、むしろ橋下氏の支持層にとってはネガティブな要素でしょう。こうした側面の指摘や強調は、それが結果的にではあれども橋下氏の支持基盤の切り崩しに繋がる可能性がありますし、戦略としては検討に値するのではないかと思うわけです。

 

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 やれやれ、対立候補の名前を一度も出さずに終わってしまったぜ。


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11 コメント

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なかなか厳しいでしょうが… (Bill McCreary)
2008-01-25 04:57:03
>「被告人を速やかに死刑にすべき」「日本人による買春は中国へのODAみたいなもの」「日本の一番情けないところは、単独で戦争が出来ないことだ」「税金を払わない奴は生きる資格がない」

とくに最後の発言は、橋下のような奴を支持する人間には訴えるものがあるかと。もちろん私も、彼のような人物が「知事」になるなんてとんでもないと思いますが、しかし石原や東国原が知事になる現状では・・・・・。あまり期待はできませんが、大阪府民の良識を信じたいところです。
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Unknown (GO)
2008-01-25 21:42:16
いや~民主党がカツぐ候補が、ロクでもないから、ちっとも盛り上がらんのですわ。
「阪大工学部教授」?これで大阪の一般庶民に受けるかい!阪大工学部なんて、良かれ悪しかれ、政治向きじゃない。また、ほぼ大企業に就職できるから、一般庶民に目を向けた政治なんかできるかい!
大阪人の怒りですわ。
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Unknown (非国民通信管理人)
2008-01-25 23:38:01
>Bill McCrearyさん

 大阪府民が東京都民や宮崎県民と同じような考え方をするならば、数々の暴言の故にこそ橋下氏が多数派の支持を集めてしまう、残念ながらその可能性は高そうです。やはり国民自身が変わらないと、と思うのですが、差し当たってはどうすればいいものやら……

>GOさん

 不支持の理由に阪大工学部が出てくるというのは予想できませんでした。地元の人には阪大工学部というと、何かを思わせるものがあるのでしょうか? その辺は別の地域に住む人間には計れない要因ですね。
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Unknown (ニュースコープ)
2008-01-26 09:55:18
石原再選の頃から思っていましたが、政治的インパクトのある有名人が出ると、その時点で投票する前から「勝ったも同然」になってしまう今の風潮は、何処かで歯止めをかけないと大変なことになりますね。
まして今のような時代は、あの手の人々は何だかんだ言いつつも与党側からの支援を受けたがるでしょうし(例外は田中康夫氏ぐらいでしょうか)、それは最早「選挙」とすら呼べないものでしょう。
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キーポイント (匿名)
2008-01-26 22:15:07
大阪の選挙の戦略を考える上で重要なポイントは
「マスコミによく出てくる有名人」と「創価学会」です。

「有名人」については西川きよしや横山ノックの名前を
あげればおおよそ見当がつくと思います。
新しい大阪市長の平松邦夫(民主、国民新推薦)は
元毎日放送アナウンサーです。

それから例であげておられる
「歴史的経緯のある特別な永住外国人について、
当然これは参政権を与えるべき」というのは、公明党が
以前法案を提出したほどに強く実現を目指しているもの
です。公明党の支持母体と言えば、創価学会。大阪は
創価学会が日本でもトップクラスの勢力をほこっている
所です。この発言をしたことによって、今回公明党の
「推薦」を受けていない橋下氏が公明党支持者、つまり
創価学会員からの支持を固めることが出来たのかもしれません。
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Unknown (非国民通信管理人)
2008-01-26 22:50:13
>ニュースコープさん

 田中康夫は反発心があっただけでも良い方でしたが、その他の有名人は何かを変革すると言いつつ、与党とがっちり手を組んでいますからね。有名人のイメージと与党の組織票で圧倒されてしまう、どうにもなりません。

>匿名さん

 ただ公明党は、自民党案に頻繁に反対しながらも最後は自民党案に従うのがお決まりのパターンですから、外国人参政権の問題などなくとも、結局は自民党が支援する候補に付いたでしょう。ただ躊躇しながら橋下氏に与した勢力よりも、より熱心に橋下氏の支持を表明している勢力にとって、外国人参政権の問題はなかったことにしたいものではないでしょうかね。
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創価学会は創価学会ですよ。 (匿名)
2008-01-27 19:55:38
学会員は結局池田大作が投票せよと言った候補に投票するんです。池田大作の教えを守って、池田大作の言う通りに投票をすることで功徳が得られる、と信じているのです。
宗教はアヘンである、という言葉があるが、創価学会の場合はカルト同然ですから、まさにこの言葉がぴったりなのです。

>より熱心に橋下氏の支持を表明している勢力にとって、外国人参政権の問題はなかったことにしたいものではないでしょうかね。

それは池田大作や公明党の考え次第です。みんな、そちらの考えを守るのです。もう一度言います。大阪は創価学会の勢力が日本でもトップクラスの強さがあるのです。「常勝関西」と呼ばれるほど強固な地盤を誇っているのです。
貴方の考えた戦略は、残念ながら今の創価学会がある限り、そして「常勝関西」の状況を把握しない限り、常に失敗する運命にあるのです。
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http://blog.goo.ne.jp/mccreary (Bill McCreary)
2008-01-27 21:32:28
予想通りとはいえ、やはり橋下当選になってしまいました。残念です・・・。
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Unknown (非国民通信管理人)
2008-01-27 23:06:07
>匿名さん

 してみると、橋下支持者はどこか後ろめたさでも感じていて、自分達の支持の結果を創価学会に責任転嫁するのでしょうかね。私の「戦略」は単なる逆説みたいなものですが、匿名さんの反応を見ていると意外に効果的なのではないかと思えてきました。

>Bill McCrearyさん

 結局、こうなってしまいましたね。開票結果が完全に明らかになってから、もう一度取り上げたいと思いますが、いやはや何とも……
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縦読みじゃありません (caz)
2008-01-28 20:15:02
まことにごもっともなご意見ですね
橋下支持層が嫌いそうな橋下の行動として、もうひとつ、
右派の産経新聞を「オナニー新聞」、週刊文春を「三流以下の死に体週刊誌」と罵倒したこともありましたね。
きっかけは、例の修正申告報道。
先鞭をつけた産経を罵倒し、さらにその修正申告の内容として、「義父のキャバレーの飲み代」が入っていることを記事にした週刊文春に対する罵倒を、橋下本人のブログ内で展開しました。
しかし、「キャバレーの飲み代」が含まれていること自体は否定できず、単なる逆切れ。
府知事になって、自分の不正を告発したマスコミに対して逆切れしないかと心配です。

ネット上で何度かこのことを私は書きましたが、一方で選挙前に何を書いたところで当選するのは確定的でした。彼の右派的スタンスを支持している人よりも、彼の政治的位置づけ関係なく彼を支持している人の方が多いですからね。
若くて熱意がある。宮崎県知事のように冗談もわかる。テレビでよく見ている。これだけで他の候補を圧倒していました。有名で顔と名前と人柄を知っているというのは、選挙ではしばしば政治的立ち位置以上に強力です。だから顔を名前をアピールするだけの騒音公害選挙カーがまかり通るわけです。

かつて東京を青島、大阪をノックという「お笑い有名人」時代がありましたが、今では東京を石原、大阪を橋下という「右派有名人」時代になりました。
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