29日午前4時40分ごろ、群馬県藤岡市岡之郷の関越自動車道上り線で、高速バスが道路左側の防音壁に衝突する事故があった。高崎市等広域消防局と群馬県警によると、女性6人、男性1人の計7人が死亡し、39人が負傷。そのうち9人が重傷という。負傷者は周辺の複数の病院に搬送された。群馬県警は、バスの運転手らを自動車運転過失致死傷の容疑で調べる。
群馬県警によると、亡くなった女性6人は20歳前後だという。負傷者には10代もいるという。現場は関越道上り線78.8キロポスト付近で、路面にタイヤ痕はなかった。バスには45人の乗客が乗っていた。運転手(43)もけがをしており、病院への搬送前、居眠りをしていたという趣旨の話をしていたことが、捜査関係者への取材で分かった。
バスは千葉県印西市の針生エキスプレスが運行。28日午後10時10分に金沢市を出発して、東京都内で新宿駅、東京駅を経由し、東京ディズニーランドに向かう予定だったという。
事故そのものについては至る所で報道されているので今更ですが、とりあえず概要は上記の通りです。TV報道ではもうちょっと詳細で、確かガードレールに接触した後、防音壁に「突き刺さる」みたいな説明だったでしょうか。道路の構造上の欠陥でもあるのではないかと思いました。ガードレールがヤワで車体が外側にはみ出し、防音壁へ垂直方向にぶつかるようになったのであれば、道路側の安全対策にも不備があったのではないか……などと事故当時に書いて、もうちょっと他に色々と書き加えてからブログに載っけようと考えていたら今日のニュースでは、この辺の問題も既に指摘されていました。まぁ、その辺は私よりもうちょっと詳しそうな人も提言していましたので、ご参考までに。
「起きると思っていた事故」 TDRでバス運転手に聞く(朝日新聞)
「いつか起きると思っていた」「起こるべくして起きた事故」。多くのツアーバスが駐車場で帰りの客を待つ東京ディズニーリゾート(TDR)で、運転手たちは業務の過酷さを口にした。
関越自動車道で死亡事故をおこしたバスと同じ石川県を前夜に出発、29日早朝に着いた男性(45)は、もう1人の運転手と2時間おきに交代しながら運転してきた。「それでも、事故が起きた時間帯はいつも眠くなる。どれだけ寝ても体のバランスが取れない」
やはり北陸地方から来た男性(47)は「1人では負担が大きすぎる。2人で交代しないと無理」と話す。しかし「大型連休やお盆は運転手が足りない。ふだんは2人で走っていても、この時期だけは1人で走る会社も出てくるのでは」。
伝えられる限り、事故を起こしてしまった運転手は前日までは休暇で過労になるような状態ではなかったそうですけれど、たとえ休養が十分であっても深夜勤務はつらいものです。まぁ、人によって耐性はあるのかも知れませんが(大学時代の友人に「3日ぐらいなら余裕で徹夜できます」と自己アピールして就職を勝ち取った人がいました……)、やはり昼間に寝て夜に働く生活は負担が大きい、昼夜を逆転させるのは余分に睡眠を取っても簡単なことではないわけです。ここで伝えられるドライバー(同業者でしょうか、年齢的には結構なベテランのはずです)の声を聞いても、深夜の長距離運転は相当に堪えることが分かります。国交省の基準では「運転手1人の1日当たりの走行距離と運転時間の上限を2日平均で670キロ、9時間」と定めているそうですが、その基準の範囲内であっても今回の事故は起こりました。
今回事故を起こした高速バスは定期の路線バスと異なり、旅行会社が観光バスを借り上げて運行する「ツアーバス」だった。格安を売りに人気を集め、年間利用者は600万人。一方で過当競争による過酷勤務などから重大事故も起きており、国土交通省はツアーバスに路線バスと同じ法令を適用するよう方針転換したばかりだった。国交省は29日、日本バス協会などに大型連休中の安全確保を徹底するよう通達した。
(中略)
今回のバス料金は金沢-浦安で3500円と、特急と新幹線を乗り継ぐより1万円近く安い。関西大学の安部誠治教授(公共事業論)は「何より値段が安く、快適なサービスも増えて人気が出た。だが、過当競争で旅行会社はチケットを安売りし、そのしわ寄せでバス会社に無理が行きがちとなる」と話す。
19年2月には大阪府吹田市でスキー客を乗せた長野県のツアーバスが事故を起こし、乗客ら27人が死傷。大阪地裁は運転手が過労状態だったと認定した。事故を受け、国交省はバス会社に対し1日当たりの勤務を9時間、670キロまでとするなど安全策を強化した。
一方で、貸し切りバス会社は11年度の2336社から22年度の4492社へ倍増。行政処分も18年の237件から昨年は過去最高の625件に増えた。バス会社の関係者は「過当競争で旅行会社からの無理な金額設定を断れず、法令順守など安全対策がおろそかになっている零細のバス会社も多い」と打ち明ける。
深夜に店員を一人しか置かず、同業他社に比べて圧倒的に強盗に入られる件数が多いことではゼンショーのすき家が有名です。あまりにも強盗が多発するので警察から直々に指導が入ったという筋金入りですが、コストダウンに熱心な会社とはそういうものなのでしょう。北陸から東京近県までの深夜バスの運転も「1人では負担が大きすぎる。2人で交代しないと無理」と言われつつ、ドライバーを2人に増やしたら採算が取れない、そういうギリギリのラインで運営されているのではないかと推測されます。あたかも憲法に「競争は日本国民の義務」書かれてでもいるかのように、とかく国内レベルの競争は賛美されがち、一方で競争していないとされる世界(公務員や電力業界)は、それこそ国民の義務を果たしていないかのごとく扱われるものですけれど、もうちょっと競争のもたらす弊害に日本人は目を向けた方がいいのではないでしょうかね。
消費者への提供金額が安いと言うことは、その分だけ他のどこかにしわ寄せが来ているわけです。にも関わらず消費者の利益と経営側の都合だけが考慮されて、労働者の立場が蔑ろにされるのが我々の社会の常なのかも知れません。価格競争を激化させ、日本国内、業界内部でのつぶし合いに勝利した企業を経済誌やコンサルタントの類は賛美しますが、果たしてそれが我々の社会を豊かにするものなのか、大いに疑わしいものです。タクシー料金とかでもそうですけれど、こうしたバスツアーに関しても「自由な」料金設定には歯止めをかけた方がいいようにも思います。安全を担保するためのコストを負担し、末端の従業員に十分な賃金を支払えるだけの採算性を備えた料金設定になっているかどうか、そうした面での規制も必要でしょう。旅行会社の無茶な料金設定を放置したまま、バス会社に安全対策を求めるだけではどうやったって無理が出ますから。どこかの会社でちょっと経営が苦しくなろうものなら、すかさず「リストラで」というのが当然のこととして受け入れられてはいますけれど、その結果として失われるのは雇用だけではないのです。
ブラックな労働条件を強いられる従業員のことなんて「あっち側」の人間のことであり、考慮する必要はないのでしょう。
市民代表のような芸能人がテレビに出てきて「病院や役所は土日も開け!」などと、いかにも市民ウケする言葉を吐いている姿も見ましたが、彼らはモンスター市民ですね。
病院や役所が土日も業務を行えば、それだけ人件費は多くなり、市民の負担も増えます。でも彼らは人件費の増大による負担増は受け入れないでしょうね、だから「モンスター」だと言うのです。
施設を長い間開こうとすれば、労働強化にならないよう人員を増やす必要があります。また休日や夜間も業務を行わせようとすれば正規時間外の手当を払わねばなりません。
その負担の覚悟もできていない連中が、気易く手前の都合ばかりを押しつけてくるな、と言いたいです。
日頃はコスト意識がどうのこうのとうるさい人でも、その実は「コストを下げろ」と叫んでいるだけで、サービスの向上や案税対策その他諸々に、どれだけのコストを要するかは全くといっていいほど分かっていない場合が多いように思いますね。ただただ一方的に要求するばかりで、それに必要な対価を支払う意識がない、いい気なものです。
もしJRなり交通機関がストライキで止まったとして、憤慨する人の方が多いのではないでしょうか。いろいろ自分に不便があっても、それが労働環境の改善になるなら許容するという国民性にならないといけません。
国際的に見てどうみても少ないにもかかわらず、公務員や議員定数の削減を当たり前と思っているような現状をみると、悲観的になります。
一方では、これは(過去の私もそうですが)ブログ主にも見られると思いますが、増税反対という主張もまかり間違うと、行政サービスに応じた対価としての税金の支払い反対ということになりかねないので注意して欲しいです。
日本の政府支出の対GDP比率は、OECD加盟国でも最低ランクで、日本は小さすぎる政府なわけです。せめて並の社会保障を求めるなら、増税が必要ということも理解していただきたいです。
国民が増税反対であるかぎり、支出の社会保障や所得再分配を削るしかなくなります。小さな政府・新自由主義が蔓延しているのは、ある意味では社会党や共産党にも責任の一端があります。
増税=逆進課税の促進という政府方針に添って考えるのなら、そうなのでしょうね。私や共産党の主張してきた累進課税の強化は、aさんの言う増税には該当しないと富裕層に担税力はない、貧乏人からしか税は採れないとお考えなら、もうそれで結構ですよ。
>くり金時さん
よほど昼夜の逆転した生活に慣れてでもいない限り、どうあっても深夜には眠気が襲ってくるものですからね。そうした深夜の労働で安全を確保するのは、昼間の場合に比べれば格段にコストがかかるものなのですが、しかるにコスト削減を進めて消費者に安値でサービスを提供する、価格破壊で同業他社を押しのける、そういう企業が賛美されてしまうのですから何とも……
3500円なんてコストがどうのこうのという次元じゃない値段、
他社とこんなに差がある自体もうどう見ても怪しまなければならない、
消費者も考えねば。
話は違いますけど、昔秋葉原でオウム真理教の信者がパソコン売ってたけどとっても安かった
後であんな事件が起こり、
そんな訳だったのかと納得したことがありました。。。
ここでちょっとaさんをフォローすれば、aさんのいう増税は別に消費税に限らないんじゃないでしょうか? 累進的な増税なら賛成ですし、私が増税対象になってもいいです。
あと共産党が富裕税を主張したときには、ネトウヨのバカどもにより「年金暮らしの老人の家にまで課税する気か、このアカ」などという書き込みであふれましたが、この連中は一次資料を全然見ていません。(ちゃんと元資料読め!)
共産党の「富裕税」の対象は「相続税対象資産5億円以上に1~3%」です。
年金暮らしの老人や一般のサラリーマンなどまったく対象になりません。
こうしたマスコミ(も正確に報道すればいいのに)の表面的な報道を見て脊髄反射のように書いてくる連中には辟易します。
無論、わたしも共産党の主張に全面的に賛成してるわけではありませんけど。
あれだけの長い距離を、わずか3500円みたいな料金では、よほどどこかで「無理」をしないと成り立たないわけですよね。しかし、その辺の無理に我々の社会はあまりに無頓着ではないか、オウム系PCショップは教団本体がテロに走ったことで客からも敬遠されるようになりましたけれど、似たような感覚で経営されているような会社は少なくないのではないかと思うところです。
>プチ左派さん
私は元より逆進課税に反対しているだけで、所得税の累進課税強化、法人税の引き上げ(高度経済成長期の水準に戻すだけ)を「公約」と称して主張しております。それをaさんによれば「増税反対」とのことですから、aさんの言う「増税」=「消費税などの逆進課税に限った増税」と扱うのが妥当ではないでしょうか。
ちなみにネトウヨによる富裕税への反対は、完全に反対のための反対でしょうね。むしろ日頃は、高齢者全般を富裕層と見なしたがる人々ですから。
そうなんですよね、リストラ問題にしても何度となく主張してきたことではありますが、叩く対象に合わせて都合良く自分の立場を変えている人が多すぎると思います。