非国民通信

未来なんてあるわけがない

全額消費税方式

2008-05-20 23:18:03 | ニュース

消費税9・5−18%に 基礎年金「税方式」で政府試算(共同通信)

 政府は19日、公的年金制度の基礎年金部分について現行の「社会保険方式」をやめ、財源をすべて税で賄う「全額税方式」に切り替えた場合、必要となる消費税率は09年度で9・5%、11%、18%−とする3通りの試算を示した。政府として初の将来シミュレーション。家計への影響では、基礎年金相当の保険料がなくなる負担減と、消費税引き上げ分の負担増の「差し引き」を推計。高齢、現役世代とも負担増に。

 私自身は前々から全額税方式を推していたと言いますか、話題になる前から思いついていました。そもそも年金だけではなく健康保険、教育費、医療費、その他公共サービスに関わる費用は一括して税金で賄われるべきだと考えていたわけですが、とりあえず年金に関してようやく全額税法式が話題に上るようになったようです。とは言え、私が考えていた全額税方式とは何か違うぞ?と。

 私の思いつきでは、高所得者への累進課税と法人税を高度経済成長期の水準に戻し、それで確保できる税収を財源とするのが全額税方式だったのです。しかるに政府案は消費税を増税することで財源の確保に充てるという代物、私の案と一緒にされたくはありませんね。政府案の方はちゃんと「全額消費税方式」と呼ばれるべきです。正しく実態を伝える言葉を選ばなければならないでしょう。

 さて、全額消費税方式ですと、高齢、現役世代とも負担増になるそうです。じゃぁ、代わりに負担減になるのはどこだ?と。例えばそう、全額消費税方式を推進している日本経団連に属する企業などがそうですね。現行の社会保険方式ですと労使折半ですから、企業側にも保険料納付は負担であったわけで、これが消費税に転嫁されれば確実に負担が減ります。勿論、企業も消費税を納付しますから、消費税増税によって納税額は増えるわけです。とは言え、それはあくまで国内販売中心の企業に限った話、トヨタやキヤノンなど、輸出が大半を占め消費税をほとんど納税していない、かつ納税額を大幅に上回る額の還付金を受領している企業の場合、保険料納付の負担が減るばかりか増税によって懐に入る還付金の額も増えるわけで、美味しいことずくめなのです。

 日本の法人税は高いと強弁する人もいるわけですが、仮に法人税が高かったとしても、必ずしも企業側の負担が重いとは言えません。企業が人を雇うには社会保険料などの給与外のコストがかかるわけですが、日本の場合はこれが労使折半ですし、企業側が負担するのも不十分な年金保険、健康保険、雇用保険程度に過ぎません。そのため日本における給与外の労働コストは人件費の13%弱と見積もられているのですが、これは20%を上回るOECD平均と比べて相当に低い値です。仮に日本は法人税が高いとしても人を雇うためのコストが安く済むわけで、企業にとっては負担が少ないのです。そしてこの、ただでさえ少ない給与外の労働コストをさらに軽減しようというのが今回の全額消費税方式でもあります。

 OECD平均はアメリカが足を引っ張るおかげで20%強に止まっているわけですが、ヨーロッパ諸国は軒並み30%を越えます。例えばフランスなど、この給与外の労働コストは47%に達します。日本で給与20万円の労働者を雇うには給与の他に約13%、2万6000円程度を保険料等で納付する必要があるのですが、フランスの場合は同じ給与の労働者を雇うにも要する給与外コストは約47%、9万4000円程度に達します。日本は雇用する側にとって非常に負担の少ない制度が敷かれているわけです。ならば実績のある欧州方式、企業側の保険料負担を引き上げることで対応するのも無理のない選択肢なのですが、その正反対の方向を向いているのが日本の全額消費税方式なのですなぁ。

 

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参考、

Doing Business - Economy Rankings

全額税方式という欺瞞(花・髪切と思考の浮游空間)

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7 コメント

Unknown (kama)
2008-05-21 11:38:46
この件に関して(全額税方式も含めて)思ってたことを全て解り易く纏めておられて、スッキリした〜^^
特に最後のヨーロッパ企業の給与外コストの件は経団連も政治家も官僚も殆どのマスコミも絶対言いませんな。それを知らずに消費税増税は仕方ないかな。なんて庶民の方々を見てると、もう・・・
大体口を開くと国際競争力って彼らは言うわけなんですが、じゃぁヨーロッパの企業にそれは無いのかよ?とか、それが必要な輸出企業がどれだけ内需に貢献しているんだよ?内需拡大の方が喫緊の課題だろうがよ。とか思うわけですね
Unknown (これお・ぷてら)
2008-05-21 19:53:45
ご紹介いただき、ありがとうございました。

非国民通信さんが的確にのべておられるように、政府の考えている「方式」はまさに全額消費税方式ですね。この上ないネーミングだと思います。

ようは、税源をどうするのかを問わずに、保険料方式か税方式かと問うても無意味でしょう。むしろ、(日本の)悪しき慣習であった保険料の労使折半すら危うくなることを懸念します。企業の負担を極小化することが財界のねらいであり、政府の方針もそこにある。

再分配の観点を否定するものといってもよいのかもしれません。いっそうの貧困を強いるものではないでしょうか。
ついでに言うと (Barguest)
2008-05-21 20:40:27
 どうも、無能経営者甘やかしは止まるところを知らないようですね。雇用コストでは言われていることの上に、サービス残業や有給休暇の未消化を当然のごとく扱うことで時間給計算での人件費も無闇矢鱈と下げられていますしね。これで国際競争力と言われても、経営者自身の競争力が全くもって育つことは無いでしょう。
 全額税方式での年金制度自体は私も賛成はします。ただし、全額消費税で賄うなんて暴論は正気の沙汰とは思えません。べつに消費税以外からの税金が使われてはいけない理由も無く、また現在でも年金には国庫支出があるのでこれを消費税に転嫁しなければならない理由も無いはずです。なのに消費税増税と言う国民の負担へ直結する方法しか提示しないのは悪意にしか感じられません。これも企業優遇のためと言うのならもはや企業は(社会資源を食いつぶして市民に割り振られるはずの社会資源を横取りすると言う意味で)社会にとって有害な存在と言っても良い程です。
 企業に適正な責任を果たさせない限りこの手の問題は解決することはなさそうです。
Unknown (仲@ukiuki)
2008-05-21 21:12:34
今回はぼやき漫談かいなと思わせるイントロから、
ギョ!ハッ!とさせられる「全額消費税方式」なるネーミングへの展開!
目が覚めた心地です(爆)。

ネーミングってやっぱり大切だなあと、あらためて実感しました。
マスメディアにこそ、きちんと使ってもらわなきゃなりませんね。
Unknown (非国民通信管理人)
2008-05-21 23:28:10
>kamaさん

 業績を伸ばしているのは厳しい国際競争に晒されているはずの輸出企業であり、不況から抜け出せないのが国内市場中心の企業でもあるわけですが、財界も政府も大手メディアもその辺は同様に口にしませんよね。で、国民も国際競争云々に平然と欺されてしまうわけで、政策論議も現実の問題から乖離したままです。これじゃぁ何を議論しても抜本的な対策など取れるはずがないと……

>これお・ぷてらさん

 そう、税方式でも本来ならばその税をどこから持ってくるかも当然、問われなければならないはずですが、なぜか消費税しか選択肢がないかのように語られているわけですよね。問われるべきものが問われず、それが既定路線であるかのごとく進められてしまう、所得の多いところから少ないところへ分配するべき社会保障が、井戸から水を汲んで同じ井戸に水を注ぐような代物になってしまいそうです。

>Barguestさん

 元より経営側に甘かった制度が、諸々の規制緩和でなおさら経営側有利になりましたからね。奴隷労働のごときものがどんどん合法化されていったわけですが、社員を絞り上げることでしか経営を維持できない欠陥企業をのさばらせて何が国際競争力だ!と。それでも尚、企業の負担軽減、国民の負担増になるモデルだけを検討の対象にしているわけで、もはや企業が我々を食い物にする世界ですよ。

>仲@ukiukiさん

 「純化」「棄民党」「民主党集中制」など、ひっそりと造語を織り交ぜてきたわけですが、今回などは特に、普及しないものかなぁ、と。ホワイトカラー・エグゼンプションや後期高齢者医療制度などもそうですが、実態を表す呼び名もあれば、推進する側がその意図を隠した呼び名もあるわけで、それが与える印象によって風向きが変わることもあります。全額消費税方式という通称が広まれば世論も変わってきそうですが、う〜ん、大手メディアは税方式を推すべく聞こえのいい通称を広めようとするでしょうか。
Unknown (友さん)
2008-05-25 13:50:33
こんにちわ。はじめまして。
これお・ぷてらさんのところでこの記事を知り読ませていただきました。
そうだそうだと。
私も一文書いてみましたのでお邪魔でなければ、よろしくお願いします。
TBがと通らないようなのでここから。

http://toyugenki2.blog107.fc2.com/blog-entry-486.html
Unknown (非国民通信管理人)
2008-05-25 16:13:17
>友さん

 コメントとトラックバックありがとうございます。リンク先も拝見させていただきました。収入の多いところから徴収して収入のないところに分配するのが本来の役割なら、全額消費税方式など本末転倒のはず、それを全額税方式と一緒にして欲しくないものですよね。

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