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非国民通信

ノーモア・コイズミ

役得は許すけど

2008-05-15 23:19:46 | ニュース

鯨肉持ち出し疑惑、「証拠品」示す グリーンピース(朝日新聞)

 日本の調査捕鯨で捕られた鯨肉を乗組員が無断で持ち出している疑惑について、環境NGO「グリーンピース(GP)・ジャパン」が15日、東京都内で記者会見した。船から配送されたという段ボール箱に入った塩漬けの肉を「証拠品」として示し、疑惑解明や調査捕鯨の見直しを訴えた。同日午後、乗組員ら12人を業務上横領の疑いで東京地検に告発する。

 GPによると、箱に入っていた鯨肉はベーコンの原料になるウネスと呼ばれる部分で23.5キロ。市価で11万~35万円相当という。星川淳事務局長は会見で、「調査捕鯨には税金も使われている。日本の信頼にかかわる問題で、政府は徹底して真相解明する必要がある」と話した。また、水産庁に対し、調査捕鯨を実施している財団法人日本鯨類研究所などの調査捕鯨許可を停止するよう求める文書を送ったという。

 概算だと合計で1000万円相当でしょうか、持ち出しがあったようです。単純に計算すると一人当り4箱、100万円弱ですが、段ボール4箱分の鯨肉を身内だけで食べきるわけでもないでしょうし、謙虚に一箱だけ持ち帰った人もいれば、その分だけ一人で10箱くらいがめた人もいるはずです。せしめた鯨肉はどうなるのでしょうか? 家電製品なら買い取り業者にも事欠きませんが、鯨肉となりますと流通経路も限られてきます。財団サイドで現金化のルートも斡旋していたかも知れませんね。

 この持ち出し自体は、別にどうとも思っちゃいません。真面目に働いたところで報われることの少ない世の中です、この程度の役得がなきゃ、やってられません。雇用主が従業員を十分に報いてくれることなどないのですから、従業員には自助努力、会社が内部保留しようとする利益をこっそり掠め取るなどの自衛策が必要です。目の前にお宝が転がっていれば、目をつけられる前にさっさと懐にしまうのも生活の知恵、自分の取り分の不足は自分で補填するなど、アテにならない雇用主を相手に生き延びるための工夫は欠かせません。

 ところがまぁ、日本ってのは個人が利益を得ることを許さない風潮があるわけでして、例えば敷地内に生えていた筍を勤務中に採っただけで減給処分されるどころか新聞デビューまで果たしてしまった例すらあるなど、御上が下賜する以外のところから僅かでも利益を得ると、ボロクソに非難されるものです。ですから、ここで鯨肉を私的に確保した乗組員だってあれやこれやと誹謗されそうなものですが、ところがそうはなっていません。ここが今回のポイントです。

 まぁ同じ犯罪でも加害者と被害者の立場によって非難される場合とそうでない場合があるように、甘い汁を吸ったケースでもその人の立場によって非難される場合とそうでない場合があるわけです。基本的に社会的強者、裕福な人は非難されませんし、逆に社会的地位弱者、貧しい人は苛烈な視線を向けられます。そしてまた潜在的な先軍社会ならではの「軍>民>官」みたいな序列意識もあるでしょうか、軍人の犯罪や不正には甘く、公務員にはどんな些細な瑕疵も許さないのが通例で、特定財源で自衛隊用にゴルフ場を建設するのは気にしないが公務員がマッサージ椅子を買うのは許さない、このような考え方が主流なのです。行為の規模よりも相手の立場によって、それを罰しようとする意識も変わってきたわけです。

 で、一応は自衛隊も公務員なのですが、「軍」であるせいか公務員叩きの対象からは常に除外されてきました。じゃぁ、稲作も真っ青の補助金漬けの不採算部門、天下り先の利権団体である捕鯨は? もちろん本質的には日本人の大嫌いな「官」なのですが、でも「軍」に近い役割を期待されていて、それだからこそ支持されているような気もします。つまり他国を攻撃する役割を担っており、それを期待されているからこそ、排外主義者がこぞって捕鯨を支持しているのではないでしょうか? そんなわけで、自称調査捕鯨が他国への威嚇や挑発行為として機能している限り、捕鯨関係者がどれだけ私腹を肥やしても日本国内での非難は盛り上がりそうにありません。

 ちなみに鯨より頭の悪い人にとっては、問題は鯨肉の私的な持ち出しにではなく、NGOの調査手段の方にあるそうです。そりゃまぁ政府や軍、治安機関や利権団体といった権力は合法的な手段では自分達の不正が明るみに出ないよう制度を整えておくものですからね。例えば共産党以外の政党を法律で禁止しておくなどが典型的な例ですが、こうしておけば共産党独裁を覆そうとするには非合法なルートを選択するしかありません。相手が情報を公開しない隠蔽体質の組織で、公権力のメスが入ることも期待できない天下り先ともあらば、取るべき手段は限られてきます。一方で中国政府的な手段を好む人々からすれば、権力を守るための法は不可侵なのですなぁ、日頃は犯罪者や犯罪「予備軍」への監視強化を叫んでいるくせに。

 

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参考、
頭が悪いと思われそうだ
日本が商業捕鯨の再開を拒否!


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Unknown (Bill McCreary)
2008-05-16 00:00:27
>一方で中国政府的な手段を好む人々からすれば、権力を守るための法は不可侵なのですなぁ、日頃は犯罪者や犯罪「予備軍」への監視強化を叫んでいるくせに。

個人的には、今回のグリーンピースの調査は、ようやったと思うんですけど、日本人て内部告発や潜入調査(かつて、自動車工場に住み込んでルポを書いた人を、取材の仕方がフェアでないとまで言った馬鹿文化人がいました)を嫌いますね。で、ほんと、おっしゃるように、強権政治(ビラ投函有罪とか、君が代日の丸強制とか)は好きなんですよね。これは、日本人独特の権威主義なんでしょうが、頭の悪い人間というのも困ったものです。
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TB ありがとうございます (flagburner)
2008-05-16 21:01:54
>ちなみに鯨より頭の悪い人にとっては、問題は鯨肉の私的な持ち出しにではなく、NGOの調査手段の方にあるそうです。
今回の一件って、今まで貯まっていた greenpeace への不信感が爆発した感が否めないんですよね。
その上で、政府のやることに反論するのはけしからん、という心情が鯨肉の持ち出し云々への批判を消したような気がします。

まぁ、greenpeace が不信感を減らす取り組みをどれほど行ってきたか、という意見もでるかもしれませんが・・・。
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Unknown (非国民通信管理人)
2008-05-16 23:47:27
>Bill McCrearyさん

 おぉ、自動車絶望工場ですね。潜入調査がダメなら、大本営の発表するプロパガンダをそのまま垂れ流すのが彼らにとっての「フェア」なのでしょう。それでは隠された機密など暴かれようはずもなく、党宣伝機関の伝えることだけが真実として流布される世界そのままなのですが、そうした国を悪し様に罵っている人ほど、実は同じやり口を支持しているのがいつものパターン、鯨より頭が悪いです。

>flagburnerさん

 まぁgreenpeaceも色々な権力を敵に回してきたわけで、労組に対するそれと同様の悪質な宣伝に晒されてきたところもありますし、それは日本では殊更に信用されている部分もあるような気がします。私の場合は他人や組織に清廉潔白であることなど求めないので、やるべきことをやったときには評価するわけですが、そうでない人も多いのでしょう。僅かでも瑕疵を見つけられれば、そこを足がかりに全体を否定しようとする、虐殺否定論者みたいなのが湧いているのだと思います。
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Unknown (カックエイ)
2008-05-17 00:39:22
WEB上見てるとやはりというか
捕鯨問題におけるグリーンピースの主張を
知らないで批判してる人ばかりですね。
こうなる原因にグリーンピースがやってることは
科学的な話でもあって普通の人には理解しづらい
こともある気がしてます。
グリンピースに問題があるとすれば
やはり日本人の性格の研究が
足りなかったことでしょか。
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Unknown (非国民通信管理人)
2008-05-17 23:17:08
>カックエイさん

 まぁ上のコメントでも書きましたけど、日本で環境保護団体が嫌われたり偏見を持たれたりするのは、労組に対するそれと共通するところも多いような気がしています。御上に異議を申し立てるような団体への拒絶意識が非常に強いわけで、その日本人の性格を研究した上での対策となりますと、う~ん、小泉のような衆に媚びる輩になってしまうような……
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リンクのご報告 (kkneko)
2008-06-14 13:10:22
当方のブログ集にてこちらをご紹介させていただきました。
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Unknown (非国民通信管理人)
2008-06-14 23:48:40
>kknekoさん

 途中から捕鯨とはかけ離れていくエントリではありますが、御紹介ありがとうございました。

 捕鯨ネタですと、下記エントリの方が自信作でございますので、よろしければ。

日本が商業捕鯨の再開を拒否!
http://blog.goo.ne.jp/rebellion_2006/e/b6d02120e5c98826eaa035999bbd65ae
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Unknown (kkneko)
2008-06-15 19:51:13
他の社会問題と結び付ける切り口がむしろ秀逸だと思いますし、読者のみなさんも「なるほど」と納得されると思います。何しろ、捕鯨擁護派の方の意見は視野狭窄で"浮いている"のが特徴ですし・・。
リンク先も拝見しました。参考リンクの付いているこちらの後記事の方から全部読んでいただこうと思います(^^;
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ご無沙汰しております (kkneko)
2009-05-17 14:53:12
まもなくまた"クジラの季節"(IWC年次総会)ということもあり、捕鯨とODAに関する記事をアップしましたので、お時間のあるときにご一読いただければ幸いです。「捕鯨推進の裏にはあの西松建設を始めとするゼネコンがいる」という核心に触れる内容となっています。
「ODAで買うクジラ票・非捕鯨国をご接待」(JANJANニュース)http://www.news.janjan.jp/government/0905/0905140329/1.php
「ODAで買うクジラ票(下)疑惑まみれ水産ODA」(JANJANニュース)
http://www.news.janjan.jp/government/0905/0905150461/1.php
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Unknown (非国民通信管理人)
2009-05-17 22:45:46
>kknekoさん

 記事の御紹介ありがとうございます。ODAを駆使した国連外交で米軍戦略への支持を取り付ける――という手口は以前より指摘されていたことですが、捕鯨外交も同様なんですね。捕鯨とは無関係な内陸国まで巻き込むとは、偽の証人を立てるような行為にすら見えてきます……
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