京都 洛北の時計師 修理日記

時計修理工房「ヌーベル・パスティーシュ」京都の洛北に展開する時計修理物語。
夜久野高原で営業再開しました。

時計師の京都時「京の朔時間」

2017-11-18 09:37:48 | 時計修理

11月18日土曜日旧暦神無月の朔日。
 昨日が水仙の花が咲き始める「金盞香」
京の20時42分が朔の時間帯になります。事故にご注意ください。私もやらかした。

時計師がよくやるミスはサイズ調整のタイミングで起きます。ネジ止めコマを抜く際にドライバーが滑って指に刺さる事故です。ドライバーを垂直に立てて使えないと良く滑ります。初心者がよく血だらけになるので忙しい年末の風物詩でもある。
質の良い傷テープをお探しなら時計師に聞くことです。値段は高めですがバンドエイドをお勧めします。水に強い!頻繁に手を洗う仕事なので長持ちします。

昨日の事故は旋盤でキサゲ(カッター)を使い材料を加工作業をしていた時に起きる。
夢中になってしまう材料を見ながらの作業、両刃のカッターの刃を立てている面を指側に、刃を落としている面を材料側に立ててしまいザクッときってしまう。
虫眼鏡で見ながら作業なので何となく指がヌルヌルして来たね~と失敗に気が付く。

私は左利きなので左指をよくけがをしてしまいます。その後外科の病院に行ってもあまりに細かく深い傷なので消毒する程度になる。
精密外科なんて科目があればいいね~と失敗の度に思う。

夕方5時からいつものチェロの練習が始まる時間。けがをした箇所が弦を抑える人差し指なのでなんとかスイートペインに耐えながら練習を終える。
満月、新月の近くになると朝礼でもミスに注意を呼び掛けてバンドエイドを切らさないようにします。

「神は越えられない試練をお与えにならない。」時計師を優しく励ましてくれる言葉です。
ところが試練を乗り越えられなかった人はとっくにこの業界にいない。
会社のリストラに遭ってタクシーの運転手をやている仲間もいる。「まだ時計にしがみついてるの?今のほうが気がらくですよ」と聞くと何となくご都合主義のお言葉のように思う。
「試練を無理に乗り越えようとしないことです!」
飼っていたペットも殺処分して家族も転勤ばっかり無理をさせた挙句、会社は倒産。それでも時計の仕事にしがみついている。
まるで時計師版「ヨブの試練」の物語のようです。
時計師の一番の試練が貧乏神!金欠病は死に至る病だ。これで時計師はバタバタとやられる。

また、ボージョレヌーボー解禁日に合わせるように時計業界では盗難、強盗が増えます。先日は関東で億単位の被害が起きましたね~。ショーケースの天板ガラスをバールで割って時計をとりだす荒っぽい中国人窃盗団独特の方法で、元旦、クリスマスなど日本の大切な行事は無視されて決行されるのも特徴です。
私もバイヤー時代からこの手口に何度かやられたことがあります。

こんな朔の一日。それでも写真のフランクミューラー。天才が作った品物に触れる幸せがあるお仕事はやめられないね~と思う。





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