薬屋のおやじのボヤキ

公的健康情報にはあまりにも嘘が多くて、それがためにストレスを抱え、ボヤキながら真の健康情報をつかみ取り、発信しています。

つい自己中心となってしまう私たち(三宅薬品・生涯現役新聞N0.346)

2023年11月25日 | 当店毎月発刊の三宅薬品:生涯現役新聞

当店(三宅薬品)発行の生涯現役新聞N0.346:2023年11月25日発行

表題:つい自己中心となってしまう私たち

副題:今日はいい天気ね。いいお湿りね。何気なく使っていますが…

(表面)↓ 画面をクリック。読みにくければもう1回クリック。以下同様です。

   

(裏面)瓦版のボヤキ
    (日付を間違えて12月25日としてしまいました。)

    足が弱ってきたと感ずる昨今

   

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24節気の健康と食養:小雪から大雪まで

2023年11月21日 | 24節気の健康と食養

24節気の健康と食養:小雪から大雪まで

 24節気を約5日ずつ3区分した「七十二候」というものがあり、気象の動きや動植物の変化を知らせています。「略本暦」に掲載された七十二候で、本節気は次のとおり。
 小雪 初候 虹蔵不見(にじ かくれて みえず)虹を見かけなくなる
    次候 朔風払葉(きたかぜ このはを はらう)北風が木の葉を払い除ける
    末候 橘始黄(たちばな はじめて きばむ)橘の実が黄色くなり始める

 立冬の次にやってくる24節気が小雪で、毎年11月22日頃(2023年は11月22日)になります。「冷ゆるが故に雨も雪と也てくだるが故也」とのことで、小雪と言われるのですが、これは中国大陸中心部でのことでしょう。
 ちなみに中国のとある旅行社の説明では、西安(昔の長安)の気候について「温和な気候と自然環境に恵まれた土地であり、原始先住民族が生活するのに理想的な土地でもあった。」と書かれ、
そして、西安の気温が月別に表示されており、平均最低気温を東京と比べると次のとおりとなっています。西安の緯度は紀伊半島の真ん中辺りになりますが、冬はとても寒そうです。
 11月:2.6℃(東京:8.8℃)、12月:-3.1℃(東京:3.8℃)
 このことからすれば、11月下旬には雪が舞うということになるでしょう。

 小雪ともなると、日は日増しに短くなりますし、日射しが弱まり、外気温もぐんと下がってきます。濃尾平野では“伊吹おろし”、関東平野では“からっ風”が吹き荒れるようになり、しぐれる日がでてきますから、とうとう冬が来たな、と実感できるようになります。ちなみに岐阜地方気象台での初霜の観測日は平年で11月20日、小雪の頃になります。
 植物はあらかた葉を落とし、すっかり休眠状態になりますし、動物も冬眠したり、
あまり体を動かさなくなってきます。ヒトも動物ですから冬ごもりの態勢に入り、生体反応は不活発になります。あわせて防寒対策をしっかり取るようになります。

 現代社会においては、常日頃から体をあまり動かさず、寒くなるとよけい体を動かさなくなりますから、体熱生産が落ちて、より寒さを感じるようになります。
 これでは体に良くないです。努めて体を動かしたいものです。
 お勧めなのは、どこでもいつでも簡単にできる膝(ひざ)屈伸運動です。これは、20年以上前からのことですが、女優の女優の森光子さん(故人)が、体力の衰えを感じた72歳のときから、膝屈伸運動を1日150回やられるようになって、ますます若々しく元気になられ有名になったものです。1回に30回やると、けっこう足にきます。小生にはこの回数が限界。でも、これで体が温まります。皆さんにもお勧めします。

 寒さの訪れとともに、食においても体を温めるものが求められます。
 これから冬野菜が旬となり、冬野菜は基本的に体を温める効果がありますから、毎日の食卓にのぼるようにしていただきたいものです。間違っても時期外れの夏野菜は常食されませんようにご注意ください。夏野菜は体の芯を冷やしてしまいます。

 前回の繰り返しになりますが、冬に共通する食養生をまずご説明しましょう。
 冬の食味は「塩味」です。塩っ辛すぎてはいけませんが、おいしいと感ずる程度に塩味をお楽しみください。減塩ブームが出てから久しいですが、その必要は全くありません。
 詳しくは、次の記事をご覧ください。
  立冬から冬、何を食しますか。まずは塩味が重要です。

 次に、「小雪」からの節気の食養生について、特に留意すべき点を記すこととします。
 この時期、急激な冷え込みがくることがあり、まだ体が慣れていませんから、体の芯まで冷えきってしまうことがあります。
 こんなときは、意識して少々塩味をきつくするとよいです。なぜならば、塩ほど体を温めるものはないからです。少し濃い目の味噌汁や豚汁になさるといいでしょう。
 そして、そうした冷え込んだ日の夕食にお勧めなのが、鍋物です。外からも中からも体を温めてくれますからね。

 芋類で一番最後に旬がくる里芋。イカを入れた芋の煮っ転がしが、ことのほか美味いですね。その里芋、けっこう体にいいんです。ガラクタンとムチンがいっぱい含まれています。ガラクタンは、動脈硬化の予防、免疫力強化、脳細胞の活性化などに効果がありますし、ムチンは唾液の分泌を促進して消化を助け、便秘を改善します
(2018.8.9追記:ムチンにはこのような効果はないことが判明しましたので削除します。)
(2018.11.22追記:ガラクタンについて、脳細胞活性化効果は立証されておらず、動脈硬化予防や免疫力強化に関しても一部に期待できる程度の研究途中にあります。)

 また、漢方では、腎陰虚(手足がほてる、頭のふらつきやのぼせ、イライラ、不眠、耳鳴り、口渇、腰がだるい)に、芋類では山芋と並んで里芋が良いとされています。
 これから旬となる里芋を食卓に飾っていただきたいものです。

 冬は、海の幸があれこれ旬になります。何がいいかとなると小生も分かりかねます。
 ここは、魚屋さんに聞いて買うのが一番。
 今年もサンマの水揚げが不漁で、
もう食べられなくて残念です。サンマのはらわたは、けっこううまいのですがね。小生は、はらわたと腹周りの小骨も肉と一緒に口に放り込み、よく噛んで食べるようにしています。また、サンマの骨は冷凍保存しておき、まとめてフライパンで炒って酒の肴にする、これもけっこううまいです。

 果物では、リンゴが本格的に出回っています。前にも書きましたが“リンゴが赤くなれば、医者が青くなる”という言葉があり、それだけ栄養価が高く、抗酸化力があったり、免疫力を付けたり、ということになりましょう。リンゴは平性の食品に分類されていますが、食べ過ぎるとやはり体を冷やすようですから、ほどほどの分量としたいです。
 そして、みかんが旬となります。こちらは温性の食品に分類され、体を冷やすようなことはなさそうです。みかんは風邪に対する抵抗力を付けてくれましょうし、特に皮は漢方では陳皮(チンピ)と呼ばれ、風邪に薬効ありとなっています。みかんの皮を料理に入れたり、漬物に加えたりしていただきたいものです。陳皮は七味唐辛子にも加えられています。

 次回は、「大雪」(12月7日頃)からの健康と食養です。

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我が女房の心不全闘病記

2023年11月16日 | 高血圧

我が女房の心不全闘病記
(初投稿:2018年11月末、追記:2020年5月20日)

 2018年9月10日の記事 「ついに古希を迎えた小生、人生の考え方がまたひとつ変わってきました」 のなかで、女房の病気について次のように書きました。

 2か月ほど前に、3つ年下の女房が治療法がない慢性心不全とわかり、今のところ日常生活にさほど支障はないものの、もはや全く無理が利かない体になってしまった…。
 
なお、女房の体力低下は前からあり、女房が高齢者の仲間入りをした2年前に店の定休日を週2日(日、月曜日連休)としたところです。…女房も、無理が利かない体と上手に付き合いながら、“暇つぶし”と“ボケ防止”に店をやっていこう、そして、店は気の合ったお客様との楽しいコミュニケーションの場、という考え方に変わってきていますので、この先、夫婦で細く長く店はやっていけることでしょう。

 女房の体調変化は、4年ほど前(2014年:63歳)からありました。それまでは低血圧傾向にあり、血圧(上)が常時110程度でしたが、急に140ほどに上がったのです。こうした血圧の急激な変化は、血管のどこかで血液の通りが悪くなり、その先への血流確保のために心筋の収縮が以前より強くなった、という可能性が大きいと考えらます。
 でも、体調になんら変化がなくて、女房は、“まあ、これは年のせい。年齢相応の血圧になったわ。”と言い、検査も受けませんでした。そんな頃、小生の血圧も20ぐらいポーンと上がったものですから、“お互い、年を食ったもんだ”と、小生も気にしませんでした。

 今、思うに、このときに検査を受けておけばよかったのかも…。
 このブログの高血圧の記事 「 高血圧は健康で長生きできます。血圧の薬は飲んじゃダメ。中高年は180でも大丈夫。(改訂版)」 のなかで、小生は次のように書いているのですからね。
 
☆ 注意が必要、急な血圧上昇 
 ほぼ一定の値を示していた血圧が、過剰なストレス負荷などの原因が思い当たらないにもかかわらず、あるときから急に上がり始め、恒常的に3、40なり、それ以上にも上がってしまった、というような事態が発生したときには、何らかの血流阻害が体の中で起きていると考えるべきでしょう。こうした場合には、早速に生活習慣を改めるとともに、精密検査を受けられたほうがいいでしょうね。

 その後、女房の血圧は若干上がり気味でしたが、せいぜい150ほどにしか上がらず、体調も良好でした。しかし、それから2年ぐらい経った2016年頃、再び血圧が急上昇し、180ほどになりました。“こりゃあ、放っておくと、どこかの血管が詰まるかもしれん。”と、小生も少々心配になりました。 
 女房は薬剤師であり、無資格無免許の小生(ただし登録販売者の資格あり)よりも医学的・薬学的知見はあり、また、自分の体は自分が一番よく分かることですから、血管の詰まりを解消する漢方薬「丹参製剤」を飲み始めました。
 しかし、一向に血圧は下がってくれず、以前から感じていた“むくみ”が増してきました。そこで、当店に出入りしている漢方製薬会社の営業マンとあれこれ相談し、もう1種類漢方薬をあれこれ試すも、むくみはどれだけも取れず、血圧も高値安定。
 体調の変化としては、むくみの他は、少々息苦しさを覚えるだけで、日常生活に特に支障はなく、加齢により動脈硬化が進んでいるか、としか捉えていませんでした。
 今、思うに、ここまで急に上がって、決して下がらなかった血圧ですから、少なくともこの時点で検査を受けておけばよかったかもしれませんが、血管の詰まりを解消する方法は「手術か丹参製剤か」そのいずれかしかないでしょうから、女房は後者を選択したところです。もっとも、丹参製剤は規定量の半分しか飲まなかったですが。

 そうした対応を続けながら、さらに1年ほど経った昨年(2017年)11月に夫婦で富士五湖へ1泊2日で出かけ、標高差450mほどを往復する山登りをしてきました。恒常的に少々息苦しさを覚えるようになっていた女房ですから、往きは小休止をこまめにとってゆっくり登りましたので標準時間の5割増しを要しましたが、下りは標準時間で難なく降りられました。“けっこう丈夫いな、女房は。これなら心配はいらんわ。”と感じた次第です。
 ところが、今年(2018年)1月に女房が一人で名古屋へ行ったとき、長い階段を上る途中で息切れし、苦しくなって、しばらくじっとしていなければならない事態に。女房は、けっこう歩いたからそうなっただけかと思い、新たな対処法は何もとらず、やりすごしました。
 その後、息切れは少しずつ高まったようで、2月には漢方薬を1種類増やすことにしました。この時点で飲んでいた漢方薬・健康食品は次のとおりです。
 10数年前からずっと飲んでいる「銀杏葉エキス製剤」(抹消血流改善)と「高麗人参・シベリア人参製剤」(細動脈血流改善、冷え症改善)、最近飲み始めた「丹参製剤」(大動脈の詰まりを解消する漢方薬<ただし規定量の半量しか飲まず>)と「苓桂朮甘湯」(最終的にたどり着いた、むくみがどれだけかとれるようになった漢方薬)
 これに静脈流の改善に良い「四川富貴廣」(田七人参ほか生薬配合)を足す。

 しかしながら、息切れの改善は見られず、4月から疲労を感じたときには「牛黄製剤」を頓服で飲むようにしました。これは疲労解消にかなりの効果があります。
 この時点で、遅ればせながら精密検査を受けるべし、という状態に至っていたのですが、女房は娘と2人で6月に海外旅行に出かけることにしており、検査は旅行から帰ってから、ということにしました。旅行中は「牛黄製剤」を毎日しっかり飲む、これで乗り切れると考えられたからです。

 さて、何とか無事に海外旅行から帰って、早速に近所の循環器内科医院に行き、その紹介でG病院で精密検査を受けることになりました。
 その結果はというと、“こりゃあ、ひどい”という状態になっており、かなり特殊な症例ということで精密検査も2回にわたって行われ、後日、補足検査も行われました。
 診断の結果は、循環器内科医院のW大先生(元G病院長で循環器内科のベテラン)とG病院の若手医師で若干見解が分かれましたが、最終的には「拡張型心筋症を伴う慢性心不全」という判定が下され、治療法はないというものでした。
 2回目の精密検査のあと、小生も立ち会って心臓の状態について説明を受けたのですが、聞くより見たほうがはやい。CTだかMRIだが知りませんが、その画像を見ると、左心室の冠動脈が真っ白で血流が止まった状態。左心室の周りから新たな血管が随分と伸びてきており、それでもって左心室の心筋を何とか働かせているといったところ。随分前に血管が詰まってしまったんだなあ、という印象を受けました。
 その辺りの説明を詳しくしてくれればいいのに、若手医師は、心臓の働きの基礎の基礎を説明した後、画像説明はそこそこにして、飲まなきゃいけない薬の説明をくどくど言い、おまけに食生活改善のため栄養士の指導を受けなさい、とまで言う。
 しびれを切らし、小生が“女房は薬剤師ですから…”と告げると、“あっ、そうでしたか”とくる。検査前に、調書には職業もちゃんと書いてあるのに、それを全然見ていない医者。出す薬もマニュアルどおり。これじゃあ、とんでもないヤブだ。
 ついでに付け加えておきますと、2回目の精密検査はカテーテル主体で、手術の扱いになり、きっと詰まっている血管の掃除でもしようということになったのでしょう、それを研修医にさせたものだから、これがへたくそで、無理にカテーテルを通そうとする。女房は一時的に窒息状態。死ぬかと思ったと言う。そして、生検もするからと、心筋の一部をつまみ取る。“あっ、取りすぎた”との声。心臓に穴が空くんじゃないかと、女房は心配になったそうな。まあ、そうしたことで、無事解放された後には、女房は心身ともクタクタに。恐れ入りました。

 ところで、左心室の冠動脈が詰まりかけたときには、何らかの狭心症の症状が出てもよさそうなものですが、女房には何らそうした症状が出ませんでした。そうしたこともあって、高血圧やむくみがどこからきているのだろうか、肝臓なのか、腎臓なのか、膵臓なのか、肺なのか、といったところを女房はいろいろ自分なりに探っていたのですが、どこということもない、さっぱり分からない、という状態でした。まさか心臓そのものだったとは思いもよらなかった、というのが検査結果を聞いてからの女房の弁。

 さて、その後の状況ですが、最初の検査で鉄欠乏性貧血がけっこうひどいことが分かり、これは女房も承知していたものの、鉄剤なり総合ミネラル剤を少しでも飲むと便秘し、なんら対処しないままできましたので、7月から循環器内科医院で定期的に鉄剤注射を受けることにしました。
 G病院の若手医師から処方された薬は、降圧剤2種類、血液をサラサラにするアスピリンと制酸剤、そしてコレステロール値がたいして高くもないのにコレステロール薬、あとは、むくみを取るための利尿剤が2種類、たしかそんなところでした。
 で、これら全部を規定量どおりに飲んだらどうなるか。女房も心得たもので、基本的に何も飲まず、です。(コレステロール薬については、このブログ記事 「 コレステロール降下剤は毒薬。更年期すぎの女性は飲んじゃダメ!(改訂版) 」を参照ください。)
 もっとも、利尿剤は即効的にむくみを取ってくれますから、2種類のうちどちらか一方を量を加減して飲んでみる、といったところです。そして、血圧が180と、医師から見ればチョウ高いですから、150を下回る程度に抑えられるよう、どちらか1種類をチビチビ飲んで、その後の検査をパスする。そうした飲み方をしています。
 その後、予後を見てみたいとのG病院の若手医師の要望があって、2度通わされるも、あとは循環器内科のW大先生に定期的に通うからと頼み込み、なんとかG病院のヤブ医者からおさらばさせていただきました。
 さて、G病院から解放された11月下旬に循環器内科医院へ女房が行きましたら、W大先生は心配顔で、“降圧剤が前回より倍量出ているがどうしてだろう?”とおっしゃる。すかさず女房が、“わたし、降圧剤、飲んでませんから心配いりませんわ”と返答する。すると、W大先生は笑いながら、“少しは飲んだ方がいいんじゃないかあ~”といったようなやりとりをして、鉄分注射だけで帰ってきました。

 11月現在の体調は、7月から定期的に鉄分注射を受けるようになってグングン良くなりました。ヘモグロビンが少なきゃ、息切れするのは必然ですから、当然の結果です。加えて、赤血球に活力を与える(だから疲労も取れる)「牛黄製剤」を毎日飲むようにしましたから、より快調です。両先生とも慢性心不全がかなり改善していると驚いてみえます。
 でも、長い階段を上る場合はやはり息切れし、途中でストップして小休止、という登り方をしています。そして、日常は心臓に負担がかからないよう、決して無理な動きはしないと心がけています。でも、少しは足の筋肉に負荷を与えないと筋肉がやせてしまいますから、加減しながら自転車に乗ったり、歩いたりしています。

 治療法のない病ゆえ、最初の精密検査のあと、W大先生は、“あなたは、もって20年でしょうなあ。”と、おっしゃる。即、女房は、“20年もなんて、先生。5年もてば十分ですわ、わたし。”と応答したとのこと。これにはW大先生もあっけにとられたそうな。
 還暦がとうに過ぎ、高齢者にもなり、あとは、いつピンピンコロリと逝ってもいい、できればそう願いたい、という気持ちになっている我が夫婦ですから、そうした返答になります。
(参考 延命治療を受けないためのリビングウィル(死の間際にどんな治療を望むかをあらかじめ示した書)を書く )

 ところで、女房が日常生活をするうえで、一つ困った問題が生じました。これは4月頃から出ていたのですが、ときおり咳き込むことです。スギ、ヒノキ、その他が原因して花粉症の症状が春先から6月頃まで毎年出ますから、咳の原因は花粉症と思っていたのですが、それがずっと続くのです。慢性心不全であると肺に水が溜まり、それがゆえに咳が出る、ということが往々にしてあり、原因は花粉症ではなく、慢性心不全だったのです。
 慢性心不全が原因して肺が弱る、水が溜まる、咳き込む、ということになるのですから、肺に活力を与える生薬を飲めば、咳が減ずるのではなかろうか。となると、霊芝がファーストチョイスで、これを毎日飲んで何とかならないか。そこで、霊芝配合の健康食品「参霊茸」を目安量の半量ですが、これを2か月飲み続けました。
 しかし、残念ながら改善の兆候は全く出てきません。よって、接客中や夜中に咳き込みがひどいときは、やむを得ず咳止液を頓服で飲んで咳を抑えていますが、そのうち漢方の咳止めを試してみようと女房は考えているところです。

 以上が、2018年11月末現在の女房の「心不全闘病記」(ちょっとオーバーな表現で、すみません)ですが、折をみて、その後の状況を追記したいと思っています。
 類似した病気をお持ちの方の参考に少しはお役に立てれば幸いです。

(2020年5月20日追記)
 当初は、半年ごとに追記しようと思っていたのですが、もう1年半も経ってしまいました。症状が進むのが当たり前のところ、逆に良くなってきて、お医者さんもたまげておられるような状態になってきたからです。
 当初は咳でけっこう悩まされていたのですが、これは市販の咳止め薬を頓服で使うことによって乗り切っています。
 今は3か月に1回お医者さんに行って鉄分注射をしてもらっています。
 利尿剤はその後、弱いものに変えてもらい、毎日飲むことによってむくみを緩和させています。
 何といっても、やはり漢方薬の力はすごいものがあります。
 なお、当初飲んでいた「丹参製剤」(大動脈の詰まりを解消する漢方薬)は飲むのを止め、血管改善のためのものは以前から飲んでいた「銀杏葉エキス製剤」(抹消血流改善)のみとし、「高麗人参・シベリア人参製剤」(細動脈血流改善、冷え症改善)はシベリア人参単剤のものに変更しました。
 静脈流の改善に良い「四川富貴廣」(田七人参ほか生薬配合)と「牛黄製剤」(赤血球に活力を与える。だから疲労も取れる)は引き続き毎日飲用。それに「鹿茸製剤」(生命力を養うベーシックなもの。牛黄の働きを補助。)を足しています。

 階段を登るには10段で小休止、こうしないと息切がひどくなる、という状態は続いていますが、何をするにもゆっくり動けば日常生活に全く支障はなく、症状の進行は全く認められない、といったところです。
 検査数値も異常に良くなり、W大先生も漢方系の薬・健食に驚いてみえます。
 降圧剤は一切飲んでいないのですが、当初180ぐらいあったのが、今は130ぐらいになり、どうしてこんなに下がったのか不明ですが、小生思うに、心臓の働きが鈍ってきて高い血圧を維持することができなくなったのではないか、といったところでしょう。なんせ慢性心不全なんですからね。
 気がかりなのは体重増加。これはお医者さんが言っておられたとおり。食欲が旺盛なのは変わらず、動きはのろくなった、よってエネルギー差し引き計算すれば余りが出る、というものです。
 各種花粉に反応する女房です。例年、初夏もくしゃみや咳をすることが多く、加えて心臓の弱りから肺に水が溜まり、そのために咳が出やすい状態にあるものの、今年はコロナ対応もあって接客中はこれらはご法度なのですが、ほとんどくしゃみも咳も出ず、何が功を奏しているのかつかみかねていますが、とても助かっています。

(2023年11月16日追記)
 月日が経つのは早いもので、前回追記して以来、3年半が過ぎました。
 その後、体調が悪化することは全くなく、どちらかと言えば、少しずつ良くなってきているという、有り難い状態にあります。また、体重増加も止まっています。通院は3か月に1回で、いただいている薬はむくみに効く利尿剤のみ。ときおり鉄分注射。これだけです。
 W大先生は、“どんどん悪くなっていくはずの慢性心不全が、あなたの場合はどんどん良くなっていく。不思議だ。どうやら漢方薬が効いているようだ。G病院で近く漢方勉強会を始めるから、あなたの症例を紹介したい。今飲んでいる漢方薬を書き出してほしい。”とおっしゃる。保険適用されない漢方薬ばかりですが、参考になればと、女房が全部書いてお渡ししたところです。
 一番効果があったと思われるのは牛黄製剤なのですが、牛黄はここ何年かずっと中国で投機対象となっており、投機家によって買い占め傾向が続いているようで、品薄となり、価格は高騰を続け、うちが仕入れている牛黄製剤も、この6月に3年前の2倍にもなっています。毎日けっこうな量を飲んでいる女房です。金銭的な負担も痛いですが、万一入荷できなくなったら弱ったことになってしまいます。仕入れ制限も掛かっており、お客様への販売にも支障をきたす、昨今です。

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11.10 恥ずかしながら「空の巣症候群」なる言葉を初めて知る。それも当店薬屋のお客様から。

2023年11月11日 | 薬屋のおやじの一日一楽日記

(別立てブログ“一日一楽日記”で投稿した記事をこのブログに再掲しました。)

11.10 恥ずかしながら「空の巣症候群」なる言葉を初めて知る。それも当店薬屋のお客様から。

 当店のお客様には様々な方がいらっしゃる。特に印象深くて目立つのが、遠方のお客様である。どれだけもお手伝いできないのに、めちゃ感謝していただける方がけっこういらっしゃる。そうした方には、ほんと恐縮している。
 そのなかで、当店新聞を楽しみにしておられる方が、滅多に来店できないからと、このたび84円切手を30枚送ってくださった。顧客台帳の記録を見てみると、令和2年3月が初来店で、その後、遠方にもかかわらず3度のご来店で、最終が令和4年1月。この間に、すでに2回、お手紙とともに84円切手を20枚ずつ送ってくださっている。
 前回のときも、お返事を書き、もう切手は送らないでくださいとお願いしたが、弱ったもんだ。今回もそう書いたが。

 さて、その方、今回のお手紙の中で、娘さんが単身赴任することになり、家から出て行ったものの「空の巣症候群」には全然ならなかったと安堵している旨、書かれていた。
 “空の巣症候群?なんだこれ?”と一瞬思ったものの、話の内容からなるほどと合点した。
 そこで、ウイキペディアを開いてみたら、次のように解説されていた。
 空の巣症候群(からのすしょうこうぐん、Empty nest syndrome)は、子どもが家を出たり結婚したりしたときに、多くの両親が感じる憂うつで不安になる苦しみの一般的な信念を表す言葉である。子育てが終わり、子供が家を巣立っていったあたりからこの症状が出てくることが多いためこのように呼ばれる。

 薬屋家業をやっていながら、この言葉をお客様に教えられて初めて知るなんて、ほんとお恥ずかしいかぎり。
 しかし、ウイキペディアでは「両親」とも感じるやに解説されているが、父親も感じるんだろうか? 母親だけではなかろうか?
 うちでは、娘も息子も巣立っていったが、小生も女房も「空の巣症候群」には全く縁遠かったが、小生の妹は、娘が結婚で巣立った後、息子も結婚で巣立ってしまい、巣が完全に空になったら「空の巣症候群」になり、しばらくしてそれが高じて、ひどい「鬱(うつ)病」に罹ってしまった。随分とそれに振り回され、飲ませた漢方薬が効いたかどうか、それは不明だが、その後、なんとか立ち直り、安堵した。
 そうしたことどもを懐かしく思い出す。
 それにしても「空の巣症候群」とは、実にいい命名。恐れ入りました。

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24節気の健康と食養:立冬から小雪まで

2023年11月08日 | 24節気の健康と食養

24節気の健康と食養:立冬から小雪まで

 24節気を約5日ずつ3区分した「七十二候」というものがあり、気象の動きや動植物の変化を知らせています。「略本暦」に掲載された七十二候で、本節気は次のとおり。

 立冬 初候 山茶始開(つばき はじめて ひらく)
         山茶花(さざんか)が咲き始める
     次候 地始凍(ち はじめて こおる)大地が凍り始める
     末候 金盞香(きんせんか さく)水仙の花が咲く

 霜降の次にやってくる24節気が立冬で、毎年11月7日頃(2023年は11月8日)になります。これより季節は冬となります。
 漢方の世界では、通常の感覚より1か月前倒しされています。
 外気温からすると、“これはおかしい”となりますが、通常の植物は、これがぴったり当てはまります。草は種を残し、木は葉を枯らして立春の頃まで冬眠するのです。
 植物を食べる動物も、この時期は食べられるものが少なくなりますから、生体は休眠状態になり、あまり体を動かさなくなってきます。ヒトも動物ですから、生体反応は活発さが弱まってきます。

 ところが、今日的感覚では、この節気は晩秋として捉えられ、五穀豊穣を迎え、今年採れた穀類、芋類、豆類がわんさと入手できるようになり、それらは皆とてもおいしいです。こうして食欲の秋がまだまだ続きます。
 しかし、五穀豊穣のお祝い、新嘗祭は一つ先の節気、小雪の頃に行われ、神社では今年採れた稲穂が新嘗祭で供えられ、新米が出回るのはもっと先のことです。
 でも、今日では早々に稲刈りが行われ、1節気か2節気早く新米が出回りますし、春夏秋冬、あらゆる農作物が早期育成、早期出荷の傾向にあります。早ければ早いほど高値で売れるという経済活動がこぞってそうさせてしまうのですが、もう少しスローライフで行きたいものですね。
 こうしたこともあって、本来なら立冬の頃は、味が落ちた古米を食べ、冬野菜もまだ出回らず、食材に美味しそうなものはなくて、自然と少食へと向かっていったのでしょうが、現在は立冬の頃に五穀と冬野菜がどっと市場に出ますから、つい飽食してしまいます。

 さて、立冬から季節は冬となり、冬に共通する食養生をまずご説明しましょう。
 冬の食味は「塩味」です。塩っ辛すぎてはいけませんが、おいしいと感ずる程度に塩味をお楽しみください。減塩ブームが出てから久しいですが、その必要は全くありません。詳しくは、次の記事をご覧ください。
  立冬から冬、何を食しますか。まずは塩味が重要です。

 次に、「立冬から小雪まで」の節気の食養生について、特に留意すべき点を記すこととします。
 先ほど申しましたように、今日的感覚では、この節気は晩秋として捉えられ、
食欲の秋がまだまだ続き、無理に食欲を抑えるのは精神的ストレスが溜まりすぎますから、五穀豊穣にしっかりとした感謝の気持ちを持って、有り難くあれこれいただきましょう。感謝の気持ちがあれば、良く味わってゆっくり食べることになりますから、早食いに付きものの過食をけっこう防ぐことができます。

 穀類では、新米の出荷が始まり、御飯をお代わりしたくなりますし、蕎麦(ソバ)も新蕎麦が出回りますから、蕎麦料理もとてもおいしくなります。芋類では、サツマイモは既に出回っていますし、長芋や山芋もこれからが旬です。里芋はもう一つ先の小雪以降が本来の旬となりましょう。立冬の頃は芋がまだ成長中ですからね。
 こうして
出回りだした新物の穀類や芋類を有り難くいただきたいものです。

 これからの時期、海の幸があれこれ旬になります。何がいいかとなると小生も分かりかねます。ここは、魚屋さんに聞いて買うのが一番。
 
果物では、晩生の「富有柿」が終盤となります。そして、リンゴが本格的に出回りだします。前にも書きましたが“柿が赤くなれば、医者が青くなる”という言葉があり、りんごについても同様に言われます。それだけ栄養価が高く、抗酸化力があったり、免疫力を付けたり、ということになりましょうが、毎日ほどほどの量を、ということになりましょう。特に、柿は冷性の食品ですから、食べ過ぎると体を冷やしますので、ご用心なさってください。リンゴは涼性ないし平性ですから、さほど体を冷やすものではないですが、ほどほどにしておきたいものです。

 さて、これからの時期、注意せねばならないのが「ノロウイルス」です。昔は、胃腸風邪と言われることが多かったです。
 通常、11月になってから罹患者数が急上昇し、年が明ける頃からダラダラと減り始め、暑くなった6月には沈静するといった傾向を示します。
 症状としては吐き気・嘔吐や下痢、腹痛などがみられ、発熱は軽度で、多くは1日から2日で改善するものの、ときに長引くことがあります。
 対症医療法的に吐き気を止める薬や下痢止めを使いたくなりますが、これではノロウイルスを胃腸の中で増殖させることになり、逆効果です。出すものは出すしか手がありません。そして、水分補給(白湯)だけにし、食を断つことです。あとは自然治癒力でもってノロウイルスを殲滅(せんめつ)するしかないのです。
 つまり、免疫力が高ければ、感染しても発症しなかったり、軽い発症で終ったり、早く治癒したりするのです。ノロウイルスに対する免疫力は特徴的なものがあり、腸免役が高ければ容易に対応できます。つまり、腸内環境が良ければいいのです。
 これについては、順天堂大学大学院医学研究科(2011年5月10日)の報告があります。その要旨は「介護老人保健施設に入所する高齢者にラクトバチルス カゼイ シロタ株を含む発酵乳を飲用してもらった結果、感染性胃腸炎(ノロウイルスによることを確認)に起因する発熱症状を緩和する効果を確認した」というものです。ざっくばらんに申せば、“ヤクルトを毎日飲んでいるとノロウイルスに感染しても治りが早い”というものです。
 “だからヤクルトを毎日飲むといい”となるのでしょうが、そんなことをしなくても、肉を控えて野菜のおかずを多くするという料理、
そして漬物(植物性の乳酸菌が特に効果的)を毎日食せば、腸内環境はグーンと良くなりますので、これに勝る対処法はないでしょうね。
 なお、ノロウイルスにやられてしまった場合に良く効く漢方薬があります。それは「柴胡桂枝湯(サイコケイシトウ)」です。長引く風邪にも効きますから、冬季は1箱常備されるのをおすすめします。
 巷では、新型コロナがまだ侮れないし、インフルエンザが流行り始めたと大きく報道されていますが、“コロナもインフルもそう騒ぐでない。ノロウイルスと一緒で腸内環境を整えさえすれば大丈夫”なんです。なんせ免疫は主として腸で作られるんですからね。

 次回は、 「小雪」(11月22日頃)からの健康と食養です。

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立冬から冬、何を食しますか。まずは塩味が重要です。

2023年11月07日 | 漢方五季の食養

立冬から冬、何を食しますか。まずは塩味が重要です。

 11月7日頃(2023年は11月8日)に立冬を迎え、暦の上ではこれより冬に入ります。そして、1月16日頃に冬は終わり、1月17日頃から大寒(1月20日頃)を挟んで2月5日頃の立春の前日までが冬の土用です。
 漢方の世界では、正確に言うと以上のようになり、広くとらえても、冬は11月7日頃から2月4日頃までと、通常の感覚より1か月前倒しされています。
 外気温からすると、“これはおかしい”となりますが、通常の植物は、これがぴったり当てはまります。草は種を残し、木は葉を枯らして立春の頃まで冬眠するのです。
 植物を食べる動物も、この時期は食べられるものが少なくなりますから、生体は休眠状態になり、あまり体を動かさなくなって、クマのように冬眠するものまででてきます。
 人もそうです。紀元前の初期古代ローマの暦がそれを物語っています。1年は3月から始まり、12月で終わってしまい、暦のない期間(1月、2月)が61日間もあったのです。
 その間は、人(農民)は何もせず、地中海性気候特有の曇天が続く時期でもありますから、じっと家の中にこもっていたことでしょう。
 その当時、中国には、既に丸1年の暦がありましたが、人(農民)の活動は古代ローマとどれだけも違いがなかったと思われます。冬は、格別にせねばならない農作業はなく、冬晴れが続く地域では、日向ぼっこでもしていたことでしょう。
 ところが、現代社会は、小売・サービス業の就労者が増え、12月は師走と言われるように、1年で一番忙しく走り回らねばならないですし、1月は初売りセールで忙しく、2月は年度末の決算を控え、目標達成のために売上確保に躍起となります。
 これでは、生体の生理現象と逆行し、動物の生き方としては決して望ましいことではなく、心身にどうしても無理がかかります。この無理が年々積み重なって、野生動物は基本的に病気しないのに対して、人だけがやたらと病気する動物になってしまった大きな要因になっていると思われてしかたありません。
 今日の西欧では、夏季に長期間のバカンスを取りますが、日本人であれば、“心身のオーバーホール”のため、冬の時期に長期間のバカンスを取って温泉に行き、“湯治”するのが一番良いのですが、こうした風習は滅多にみられません。
 冬季の湯治が一番!
 そう思っている鼠年生まれの小生ですが、1年365日、こま鼠のように(後期高齢者となった今はノソノソと)動き回っており、“心身のオーバーホール”は、残念ながら1泊2日の湯治旅行を冬の期間に2、3回(最近は付き合いも減って1回のみ)するだけでして、これでは“烏の行水”であって何の効果も得られません。でも、1年間に知らず知らず溜まった精神的ストレスを抜くにはどれだけか効果的でして、これは欠かさないようにしています。

 冬は、本来は何もかも休めてあげる時期ですから、これに逆らった生活はできるだけ避けねばなりません。一番簡単な方法は早く寝て遅く起きることです。お日様にお付き合いなさってください。つまり、冬は毎日睡眠時間を十分に取り、体を休めるに限ります。
 そして、天気がいい日には「ひなたぼっこ」がおすすめです。ビタミンDは紫外線を浴びることによって容易に生成されます。ビタミンDは骨作りだけでなく、免疫力増強と免疫の適正化(免疫暴走の抑制)に欠かせません。特に冬の後半にはビタミンDが欠乏がちとなり、それによってインフルエンザや風邪に罹りやすくもなりますから、ばかにできません。
  参照 → 冬はお日様に当たって健康づくり 
 次に、冬の寒さにどれだけかは耐える生活が望まれます。本来は、“子供は風の子”と言われるように、これは何も子供に限ったことでなく大人も、薄着して暖房を控え、寒さストレスに生体をさらして、初めて健康が得られるのです。
 現代人には、この真似はできませんが、体調を崩さない程度にどれだけかは寒さを我慢したいものです。もっとも、そうなると寒さストレスが溜まってきますから、毎日1回、何らかの方法で寒さストレスから開放してあげねばなりません。
 その方法は、家でできる“湯治”です。ゆっくり、温めの湯に長く浸かることです。できれば十分換気して露天風呂と同様の状態にし、かつ半身浴で。最初は寒いでしょうが、20分浸かれば、体の芯が温まり、寒さストレスが抜け切ってホッとした気分になれます。
 熱い湯は、皮膚が直ぐに寒さストレスから開放されて快感を生ずるのですが、生体反応は、体温を急上昇させてはならぬとして、血流を体表面だけ良くするように絞り込みますから、内蔵への血流が悪くなって体の芯は冷えたままですし、逆に、頭皮への血流は盛んになりますから、長湯すると、のぼせてしまいます。
 なお、湯上りに冷水シャワーを浴びると皮膚が締まり、湯冷めしません。(今の時期からいきなり始めるのは危険性がありますから、手足の先だけから順次慣らしながら進めてください。→ …始めましょう、冷水シャワー。万病に効果あり。… )

 さて、本題の冬の食事です。冬は腎の季節です。腎臓、膀胱そして生殖器や副腎が1年で1番働きを高める季節です。その腎を養生してあげねばなりません。
 漢方の世界では、五味に注目します。酸味、苦味、甘味、辛味、塩味の5つです。
 冬は塩味で腎に対応します。つまり、冬は腎が塩気を求めています。
 日本人は塩分の摂りすぎで、これが高血圧の元になり、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こす危険があるからと、減塩が声高に叫ばれていますが、年中、塩っ辛いものを食べるのは問題ですが、冬場は気にする必要はないです。
(参照)→塩を摂りすぎると高血圧になる?心配ご無用!でも、食塩感受性が高い人は注意すべきでしょう
 なお、寒い地方ほど塩分過多となる最大の理由は、塩は体を温める最右翼の食品だからです。塩っ気の強い物を食べると体が温まるから、ついそうしてしまうのです。
 冬は腎のために
塩味がメインとなりますが、度が過ぎると心臓にダメージを与えます。塩分の摂り過ぎで即発的に血圧が上がる方がけっこういらっしゃることからも明らかです。そこで、心臓を守る苦味を足す必要があります。それに酸味を加えるとベストです。

 <主・塩味、従・苦味、添・酸味>この三味の組み合わせを知っておいてください。
 その代表的なものが、冬場の保存食である漬物です。
 当然に塩味が利いていますし、発酵して酸味があります。足りないのが苦味ですが、カブは苦味食品ですから、その昔はカブラ漬けが漬物の主流であったと思われます。
 ところが、今日では、カブも品種改良されて苦味がほとんどなくなりましたし、また、今も昔も、カブ以外の野菜も漬物に利用しています。
 そこで、捨ててしまう苦味食材を上手に使うのです。それは、柑橘類の皮です。ミカンの皮でも良いですが、ユズやスダチの皮がベスト。なお、カブの葉っぱは、品種改良されたものも苦味がありますから、なるべく多く使いたいものです。
 こうして、三味を調えると、大変美味しくなるのが漬物でして、冬の食品として理想的なものになるのです。毎日、どれだけかは食べたいものです。
 唐辛子で、4つ目の味である辛味を少し付けるのも良いでしょう。

 ところで、今日、漬物の主流になっているタクワンは、その歴史は新しく、白米を食べるようになった江戸時代途中からのもので、米から取り除かれた糠を少しでも利用しようとした生活の知恵から出たものです。
 なお、
大根は甘味、物により辛味の食品になりますが、中には苦味を感ずるものがあります。苦味を感ずる大根は、化成肥料の撒き過ぎで、窒素肥料が肥料のままで残留してるからです。ついでに申しておきますが、ホウレンソウが五味食品表で苦味に掲げられている場合がありますが、本来は甘味食品でしょう。うちで自家栽培しているホウレンソウは甘味があり、決して苦くありません。ところが、ホウレンソウは、たいていハウスで促成栽培され、残留窒素肥料が多く、これによって苦味を感じるのです。その昔、全国的にこれが問題になり、施肥量を減らすよう指導がありましたから、たぶん今は、そのようなことはないと思いますが、果たしてどうか。露地ものなら大丈夫でしょうね、きっと。

 もう一つの保存食が味噌です。
 これを少し加工した「ユズ味噌」が冬の三味のベストな組み合わせになります。
 味噌は塩味、ユズの皮が苦味、ユズの汁が酸味ですからね。なお、ユズの皮と汁の量は好みで加減して入れればよいです。ただし、通常「ユズ味噌」には、かなりの砂糖を入れますが、冬は甘味を避けなければならないですから、極力控えたいものです。
 さて、冬の料理と言えば、鍋物です。漢方養生法からすると、味噌鍋が一番です。味噌は体を温める食品でもあるからです。
 味噌鍋に合う冬の食品はゴボウです。ゴボウは苦味食品ですからね。そして春菊。この二つは味噌鍋に付き物です。
(注:場合によって、ゴボウは「辛味」「酸味」、春菊は「辛味」「甘味」に分類されることもあります。)
 あとは酸味です。ユズやスダチの絞り汁を好みに合わせてかけたいものです。地方によっては、何にでもこれをかけるところがありますが、冬場は大いに利用したいものです。

 さて、冬に避けねばならない甘味です。ご飯も肉も甘味食品です。よく噛めば甘味が感じられるもの全てが甘味食品です。冬は、閉じ篭りがちになりますから、カロリー消費が落ち、少食にせねばいけないのは当然のことにもなります。
 冬に体重が増えるのは考え物で、一般的に
メタボが心配になりますが、何よりも腎臓に大きなダメージを与えていると考えてください。
 そう言う小生、毎年、冬に体重が増加します。還暦を過ぎてから、冬場は年々、小便の出が悪くなってきました。食べる量を減らさないから、腎臓へのダメージが大き過ぎて、そうなったと考えるべきでしょうね。前立腺肥大を齢のせいにしてはいかんでしょう。
 漢方栄養学を学んだからには、今冬は少食を実践!(できるかなあ?)

(追記)
 ところで、冬は長いです。そこで、「24節気」ごとの健康と食養について紹介しています。併せてお読みいただければ幸いです。
 24節気の健康と食養:立冬から小雪まで
 24節気の健康と食養:小雪から大雪まで
 24節気の健康と食養:大雪から冬至まで
 
24節気の健康と食養:冬至から小寒まで
 24節気の健康と食養:小寒から大寒まで

 24節気の健康と食養:大寒から節分まで(冬の土用)

五行配当表
(下図) 各ブロックの端に味が表記されています。
     
 「水」・「冬」のブロックの左端が味の「鹹」ですが、塩のことです。

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24節気の健康と食養:霜降から立冬まで

2023年11月03日 | 24節気の健康と食養

(今年の秋はあまりにも暖かく、いや暑くって「霜降」の節気に入っていたことをすっかり忘れており、遅がけの投稿となってしまいました。失礼の段、お許しください。)

24節気の健康と食養:霜降から立冬まで

 24節気を約5日ずつ3区分した「七十二候」というものがあり、気象の動きや動植物の変化を知らせています。「略本暦」に掲載された七十二候で、本節気は次のとおり。
 霜降 初候 霜始降(しも はじめて ふる)霜が降り始める
    次候 霎時施(こさめ ときどき ふる)小雨がしとしと降る
    末候 楓蔦黄(もみじ つた きばむ)もみじや蔦(つた)が黄葉する

 寒露の次にやってくる24節気が霜降で、毎年10月23日頃(2023年は10月24日)になります。前節気の寒露もそうですが、今節気の霜降となると、日本の大半の地域の気候から随分とずれて感じます。10月下旬に霜が降りるとは、です。
 これは、24節気が作られたと言われる中国戦国時代(紀元前3~4世紀)の前の時代も後の時代も現在の西安(昔の長安)辺りが中国の中心地であり、温度差が大きい大陸性気候のその地域の気候でもって命名されたからでしょう。
 ちなみに西安の月別平均最低気温を東京と比べると次のとおりです。
  10月:9.3℃(東京:14.8℃)、11月:2.6℃(東京:8.8℃)
 霜降を過ぎると、朝の気温は日本の大半の地域ではやっと寒露(一つ前の節気)といったところでしょうが、それでも快晴の朝は放射冷却で気温が10度を軽く下回るようになり、秋が深まりつつあるな、と感じます。
 この時期は、後から説明しますが、季節の変わり目に相当するものの、晩秋という捉え方もでき、朝晩はカラッとした大陸の冷たい空気でもって、秋の臓器である肺が痛みつけられる恐れがあります。肺は乾燥を嫌いますから、肺が弱い方は肺に潤いを与えるべく、保湿器を引っ張り出したり、マスク(変なところでコロナ対応が役立ちます)などを着装されるといいでしょう。

 さて、漢方5季(春夏秋冬と土用)の区分では、霜降から立冬までは、季節の変わり目である秋の土用(10月20日頃~立冬の前日まで)と概ね一致します。
 
よって、『24節気の食養:霜降から立冬まで』は、投稿済みの次の記事と大きく重複しますから、先ずはこれをご覧ください。
 
秋の土用は土用食を。先ずは甘味ですが、重労働をするときだけに。

 これに少々補足します。
 秋の土用の頃は、保存食糧の収穫シーズン真っ盛りとなります。日本では米の収穫がそうですか、畑では
サツマイモの収穫が始まり、山では栗の収穫が続いています。
 よって、秋の深まりを感ずると同時に、ますます
食欲が湧いてきます。この時期、食欲煩悩を抑えるのは至難の技ですから、旬のサツマイモや栗をおいしくいただきましょう。
 第一生命の「サラリーマン川柳」に次のものがあります。
 
やせてやる!! コレ食べてから やせてやる!! 栗饅頭之命くりまんじゅうのみこと]
 これは、ダイエットの失敗例ですが、“秋の土用が過ぎ、冬になったら、やせてやる!!” でいいのです。→冬ヤセ、夏ヤセで毒だし!おすすめします1日断食の繰り返し
 このことについては、前々回(秋分)、前回
(寒露)でも申しましたが、四季がある地域に住む動物は、冬の食糧不足と寒さ対策のために、この時期に限って飽食します。ヒトも同じ動物ですから、秋に飽食したくなる体質になっており、大いに食欲の秋を満喫していいのではないでしょうか。ただし、冬になったら腹八分かそれ以下にすべきですが。

 この時期、海の幸もいいですね。前にも取り上げましたが、サンマ、イワシ、サバがおいしい季節です。調理法は塩焼きが一番。これら青背の魚には体にいい油脂(DHAとEPA)がたくさん含まれ、大いに摂るとよいと言われますが、今の日本人は油脂全般にあまりにも摂りすぎですから、旬となって脂の乗った青背の魚は、昔の調理法のとおり十分に脂を切って食べるべきものなのです。油脂はバランスが重要ですから、「足りない油脂を足すのではなく、過剰摂取の油脂を引く」と、心得ておいたほうがいいです。

 果物では、何と言っても柿が旬です。前回(寒露)でも申しましたが、“柿が赤くなれば、医者が青くなる”という言葉があります。それだけ栄養価が高く、抗酸化力があったり、免疫力を付けたり、ということになりましょうが、毎日ほどほどの量を、ということになりましょう。特に、柿は冷性の食品ですから、食べ過ぎると体を冷やしますので、ご用心を。でも、旬のものですから、冷え症の方も少しは食べましょう。体にこもった熱や炎症で生ずる熱を取り去る力が柿にはありますから。

 次回は、「立冬」(11月7日頃)からの健康と食養です。

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